鏡の中の愛   作:鏡の国のアリス

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こんにちは
今回は難産でした。昨日丸1日展開を考えたんですけど全然思いつかなくて結局ご都合主義満載のうんち展開になってしまった。
許してください何でもしますから(何でもするとは言ってない)


7 幕引と始まり

アイたちの自宅にストーカーが現れ、その場を去ってから数分後。ルビーの通報で駆け付けた警察によって3人は保護された。

 警察はすぐさま犯人の捜索を開始。監視カメラの映像等を元に身元を特定し、即座に確保に向かったが……それは叶わなかった。

 犯人のリョースケこと須藤亮介は、自宅のアパートにて死亡していた。

 警察の調べによると、須藤亮介は都内の大学に通う22歳とのこと。それ以外に特筆すべきことはなく、どこにでもいる只の大学生だった。

 

今回の事件は、発生して直ぐに世間へとばら撒かれた。

 SNSでも事件はトレンド入り。センシティブな話題に飢えているSNSやネット掲示板は、事件に関する話で持ちきりになる。

 アイに同情的な意見が多数寄せられる中、犯人の男に対する批判が殺到。既に死亡のニュースが出回っていたにも関わらず、男を批判する声によってSNSは大炎上した。

 今後のアイの動静に関しては、苺プロがアイの活動休止と東京ドーム公演の延期を発表。この発表にショックを受けたファンは一定数いたものの、批判的な意見は殆どなく、アイの安否や精神状態を心配する声が多く上がった。

 また、アクアとルビーに関しては戸籍を斎藤夫妻の元へ移していたこともあり、話題の中心として取り上げられることはなかった。

 

 その後、警察の捜査が進んでいくと、須藤亮介は何者かに殺害された可能性が浮上した。自殺に見せかけた犯行であったが、亮介の自宅で彼のものではない毛髪と足跡が発見されたことから他殺の可能性が高いと断定。

 また、只の大学生である亮介がアイの住所を入手できたことを不審に思った警察は、亮介に情報を提供した共犯者がいると推測し、その共犯者が亮介を殺害した可能性が高いとして捜査を行った。

警察が関係者たちに犯人に心当たりがないか聴取を行ったところ、警察相手に隠し通すのは無理だと悟ったのか、アイが「住所を教えた人間がいる」と述べた。

 アイの口から出た人物の名は、カミキヒカル。今年19歳になった役者だった。

 警察がカミキヒカルについて洗いざらい調査を行ったところ、実行犯である亮介と事件の数日前に接触していたという事実が判明した。

そして事件当日、亮介の自宅付近で黒いパーカーを被ったカミキヒカルと思わしき人物の目撃情報が上がったうえ、周辺の監視カメラにも姿が映し出されていた。

それらの証拠を精査し、カミキヒカルを事件の容疑者と断定、身柄を確保した。

 警察署での聴取の際、カミキは容疑を否認していた。しかし、警察が家宅捜索を行った結果、事件当日に着用していたと思われる黒いパーカーを発見。鑑識によってパーカーの線維に亮介の血液が付着していることが確認された。

 決定的な証拠を突き付けられたカミキは遂に罪を自白。

 亮介を唆してアイの殺害を促したこと、口封じのために亮介を殺害したことを告白した。

 こうして、カミキヒカルは今回の事件の犯人として、起訴されることとなった。 

 

カミキは未成年のため、少年法が適用される。

少年法61条により、少年本人が推知されるような報道は法律で禁止されているため、カミキの実名や職業などが報道されることはなかった。

アイとの関係に関して、カミキは「以前の恋人のようなもの」と供述したが、知名人の元恋人という情報は「少年本人が推知される報道」という部分に引っかかる為、世間に報じられることは無かった。

法律の手助けもあり、アイの隠し子の父親というあまりにも闇が深すぎる関係や、2人の関係や隠し子の存在が世間にバレることはなかった。

しかし世間には『アイには隠し子がいる!』『首謀者とアイは元恋人!』などといった何の根拠もないくせに、無駄に鋭い考察をする人間も一定数存在し、その推測に便乗して好き勝手言い始める人間も現れる。

しかし根拠も何もない推測を本気で信じる人間は殆どおらず、それらの話題は多少の盛り上がりは見せたものの直ぐに飽きられ、観衆の興味は次の話題へと移っていった。

 

 こうして、今回の事件は幕を下ろした。

 

――

 

アイが襲われた事件から約1週間が経った日の夜、俺は自宅のリビングに置かれたクッションに体を預けていた。

引っ越しを翌日に控えた部屋には、今まで置かれていた家具や小物の代わりに段ボールが所狭しと置かれており、今俺が体重を預けているこのクッションも、明日の朝には段ボールに仕舞われてしまうだろう。

アイが襲われた事件は、実行犯が自死、首謀犯が逮捕という結果で幕を下ろした。

幕を下ろしたとしても、アイを殺そうとしたことは許していないし、一生許す気はない。

それに、4年前に俺が殺された事件もカミキヒカルが黒幕だろう。実行犯が同じだし、ほぼ間違いない。

俺が殺された事件は明るみになっていないし、死体も未だに見つかっていない。今までは見つけてほしいと思っていた。けれど今は、もう見つらなくてもいいと思っている。

黒幕が逮捕され、これから罪を償っていく。

何の奇跡かは知らないが、俺は今こうして生きている。

アイとルビーがいて、これからも普通に暮らしていく。俺にとっては、それだけで十分だ。

 

カミキヒカルは19歳でギリギリ少年法が適用されるとはいえ、今回の犯行は計画的且つ凶悪なものだ。家庭環境などの状況が考慮されたとしても逆送は免れないだろうし、長期の懲役はほぼ確定。未成年者に課せられる最も重い罪である無期懲役になる可能性も高い。

 

「あれ、アクア?まだ起きてたの?」

 

いつの間にかリビングに入ってきていたアイが、俺の姿を見て声を上げた。

ふと時計を見ると、もう既に日付が変わっていた。普通の子供ならとっくに寝ている時間だ。

 

「うん、ちょっと寝れなくて」

 

「そっか。怖い夢でも見ちゃった?」

 

「まあ…そんな感じ。アイは?」

 

アイもこの時間に起きているのは珍しい。アイは健康と美容には特に気を使っているため、余程のことが無い限りは日付が変わる前に床に就いている。

 

「私も眠れなくってさ。ほら、色々あったしね」

 

「……」

 

アイも能天気に見えて、何か思うところがあるのだろう。いや、今回の事件を経て何も思わないわけがない。

 

「あのさ、アイ」

 

「ん?」

 

そこまで口に出したものの、そこから先の言葉がなかなか出てこない。

アイはもじもじと言い淀んでいる俺を優しく見つめている。急かしたりはせず、俺がちゃんと言葉にするのを待ってくれた。

 

「捕まった犯人ってさ、俺らの……」

 

「まあ、アクアは頭いいし気付いちゃうよね。うん、アクアとルビーのパパだよ」

 

「そっか」

 

俺の予想は見事的中。やはり、カミキヒカルは俺たちの父親だった。予想はしていたし覚悟もできていたとはいえ、殺人犯が実の父親というのは少し……いや、かなりショックだ。

父親が19歳ということには驚いたが、アイもまだ20歳だしな。むしろ、40~50とかのおっさんじゃなくてよかった。アイがそんなおっさんと夜を共にしたと想像するだけで吐き気がする。

 

「今回はね、アクアとルビーをパパに会わせたくて連絡したの。それがまさか、こんなことになるなんてね」

 

ポツポツと言葉を紡ぐアイは、普段の快活な様子とはかけ離れた儚い雰囲気を漂わせている。

 

「はあ~…あいつ、前からヤバい奴だと思ってたけど、ここまでとはね~」

 

ヤバい奴だって思ってんなら子供なんか作んなよ、と言ってしまいそうになったが何とか堪える。

 

「アクアはパパが居なくて寂しくない?」

 

「全然。アイとルビーがいるし、父親なんていらないよ」

 

本心のままに即答した。

普通、俺くらいの年齢の子供は父親を恋しいと思うのだろうが、人殺しの父親なんて御免だ。俺にはアイとルビーが無事に生きていてくれるだけで十分だ。

 

「そっか」

 

「うん。アイがいれば十分だよ」

 

「ふふ、ありがと、アクア」

 

アイは微笑みながら言う。その微笑は普段のアイドルとしてのものではなく、俺たちの前でしか見せない母親としての笑みだった。

 

「俺の方こそ、いつもありがとう、アイ」

 

「……アクアって、私なんかよりずっと大人だよね」

 

「は…ははっ…」

 

そりゃそうだろ。こちとら中身は三十路越えのアイドルオタクだ、などと言えるはずもない。何とか笑って誤魔化そうとするも、引き攣った笑い声が出てしまう。

このまま俺の精神年齢について深堀されるのは勘弁願いたいので、適当に話題を逸らすために口を開く。

 

「そっ……それよりも、アイ。明日引っ越しだろ?もう遅いし、早めに寝よう」

 

「そうだね。アクアも寝よっか」

 

「ああ」

 

クッションから体を起こし、アイと共に寝室に向かっていく。

 

「アクア」

 

「ん?」

 

「愛してる」

 

「うん……俺も」

 

「俺も?何?」

 

「…あ……あ、あいして、る……」

 

「アクアったら照れちゃって~!きゃわ~~~!」

 

「う、うるさいっ」

 

推しに「愛してる」って言わされた挙句からかわれるとか…どんな羞恥プレイだよ。

 

――

 

石動リオンの朝は早い。

7時にセットした目覚ましで飛び起きると、素早く着替えを終わらせる。その後は即座に洗面所へと向かい、身支度を整える。

顔を洗って歯を磨いた後、リオンがリビングへと向かうと、そこには朝食をテーブルに並べている母・玲奈の姿があった。

 

「おはよう、母さん」

 

「おはよう、リオン」

 

もう既に朝食の用意は終わっているようだった。

玲奈とリオンは2人揃って椅子に座ると、「いただきます」と同時に声を出した。

本日のメニューはトーストにスクランブルエッグとベーコン、サラダと牛乳だ。リオンはトーストにいちごジャムをたっぷりと塗り、思いっきり頬張る。

外はサクサク・中はもっちりとした食感のパンは、リオンの大好物だ。モグモグと美味しそうに口を動かすリオンを見て、玲奈は思わず破顔した。

リオンはその後も必死で口と手を動かし、あっという間に朝食を平らげた。

リオンが食後の牛乳を飲んで一息ついていると、玲奈がスケジュール帳を取り出した。パラパラとページを捲り、本日のリオンのスケジュールを告げる。

 

 「今日は午前中にバラエティー番組の撮影、午後はCMの撮影よ」

 

「わかった」

 

 「最近忙しいけど、大丈夫?仕事減らしてもいいのよ?」

 

 「大丈夫!撮影楽しいし!」

 

「そう……無理はしないでね?」

 

「うん」

 

朝食を食べ終えた2人はゆっくり寛ぐ……なんてことはしない。素早く準備を行い、仕事に出発できる体制を整えた。

準備万端の2人は仕事に向かうべく、玄関の扉を開いてマンションの内廊下へと足を踏み出す。すると丁度同じタイミング隣室の玄関も開き、隣人が姿を現した。

 

「あ、おはようござい……えっ?リオン君!?」

 

隣室から姿を現したのは、リオンの見知った顔、かつての共演者であり、つい先日まで世間を大騒ぎさせていた人物だった。

 

「アイさん!?」

 

そう、隣の部屋から出てきたのはアイ。日本のトップアイドルであり、現在は活動休止中の人物だった。

リオンとアイは驚愕のあまり声を上げるも、玲奈は取り乱すことなく冷静に挨拶を返した。

 

「あら……初めまして、リオンの母の石動玲奈です」

 

「あっ、えと、石動さん、初めまして。アイといいます。よろしくお願いします」

 

他人の名前を覚えるのが苦手なアイも、流石に目の前の女性の名前は覚えていた。

石動リオンの母親で、日本で知らない人間はいないほどの著名人。以前主演を務めた作品でありとあらゆる賞を総なめにした、日本屈指の実力派女優。

流石のアイもこんな場所で会うとは思っていなかったのか、珍しく動揺している。そんなアイの様子を見て、玲奈は優しく微笑を返した。

 

「そんなに緊張しないで。私もアイさんとは仲良くしたいと思っていたの。リオンと共演したドラマの演技、凄くよかったわ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「アイさんは今、活動休止中よね?お出かけ?」

 

「あ、今から撮影なんです!今日から復帰するんで!」

 

「ママ~?そこで何して……」

 

玲奈とアイが仲良さげに世間話をしていると、金髪の女児がアイの部屋から顔を出した。女児は玲奈とリオンの姿を認めると、少しずつ顔を蒼くしていく一方、玲奈とリオンも顔を蒼くしていた。

アイの部屋から子供が出てきたこと、その子供がアイを「ママ」と呼んでいたこと、その意味を理解してしまった2人の脳みそはフリーズしてしまう。

 

「あっ…なんでもないですぅ…」

 

女児は気まずそうに扉を閉める。ガチャンという音が内廊下に鳴り響いた。

 

「はは……えっと~……」

 

周囲は静寂に包まれる。

アイは、あまりにも急な出来事に上手い言い訳が思いつかず、ただ乾いた笑い声を出すしかなかった。

先程まで楽しく世間話をしていたとは到底思えない程、気まずく冷たい空気が周囲を支配していた。

誰も何も喋らずに、ただ時間だけが経過していく。

一瞬にも永遠にも感じられる時間を経て、最初に口火を切ったのはリオンだった。

 

「あの…僕、何も見てないし聞いてないので…」

 

もうすぐ5歳になるとは思えない、素晴らしい気遣いだ。それを聞いてようやく我に返った玲奈も、リオンに習って精一杯のフォローを口にする。

 

「私も何も見てないし…特に何もなかったわね」

 

「で、ですよね~…!何もなかったですよね~!」

 

 「え、ええ。そうよね、リオン」

 

 「う、うん」

 

 再びの無言。

 あまりにも気まずい。

 

「じゃ、じゃあ、私たちはそろそろ行くから。またね、アイさん」

 

 その気まずさに耐えかねた玲奈は、リオンを連れて去っていく。まるで逃げるような足取りだったが、それも仕方ないだろう。

 残されたアイのスマホが鳴り響いた。着信が来たようだ。アイはスマホを手に取り、応答する。相手は苺プロの社長である斎藤だった。

 

『おい、もう迎えついてるぞ』

 

「あ、うん。今行くね。あとさ、佐藤社長」

 

『斎藤だ』

 

「ちょっと大事な話があって~」

 

『あ?大事な話?』

 

「バレちゃったんだよね~」

 

『は?何が?』

 

「ルビーが」

 

『……はあああああああ!!!!!!!?????』

 

ーーー

 

かくしてプロローグは終わり、新たな幕が上がる。

この物語は、復讐のための物語ではない。

石動リオンが、星野アイが、星野アクアマリンが、星野ルビーが、まだ見ぬ誰かが。

皆が各々の幸せを掴むための物語だ。




ワードで書いてるんですけど、文頭にスペースが入らない時があるのはなんでなん?
カミキヒカルくんには退場してもらいます。なぜならこいつがいると今後の展開が面倒だからです。

補足
1、今回出てくる少年法ですが改正前のを適用してます。理由は改正前の方が書くのが楽だったからです
2、リョースケ君の本名は捏造です。原作に出てなかったと思うので。出てたらすみません。
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