惡の帝王 作:承認欲求
惡として華々しく散りたい。いつかに望んだ俺の夢。
自分でもかなり歪んでいると思うが、それでも俺が変わる事は無かった。
世の中には様々な悪役がいる。自分の利益のみを追求して主人公と相対する者や、「こうすれば世界は平和になる」という一つの考えに固執している者など。枚挙し始めたらキリがない程、様々な惡で溢れていた。
何故そんな歪みきった夢を持ったのかと問われれば、はっきりとした理由は無いと答えるだろう。俺のとっての『惡』というものは、『忌避されるべきもの』でもあり、同時に『正』でもあったからだ。
人は生まれながらに『惡』としての面と『善』としての面を持っている。
俺にとって、それが善より惡の方が魅力的に思えただけで。
勧善懲悪とはよく言ったものだ。
善を勧め、惡を懲らしめる。
なるほど。確かにそういう意見もあるだろう。
ただ、必ずしも『惡』が悪いとは限らないし、その『善』が果たして惡を裁く程の正当性があるのか? という問題も出てくる訳だ。
そもそも、『善』とはなんだ?
困っている人を助けることか?
世に賞賛される事をすることか?
人の為、世の為になる事をすることか?
それに比べて、『惡』はその線切りがはっきりしている。
悪い事をしたらそれは『惡』になる。
人を殺したら『惡』。
放火をしたら『惡』。
人からモノをとったら『惡』。
今俺が手に取っている本から例を出すならば『ディオ・ブランド―』や『吉良吉影』が代表的だろうか。
他にも名だたる悪党どもがこの世にいるが……まぁ、なんだ。つまるところ、俺が言いたいのは、漫画に出てくるような悪役のように華々しく散りたい、というだけだ。
勿論、この現代社会ではそんな死に方をするのが難しいのもこの数十年の人生で解っている。解っているのだが……それでも、心のどこかで憧れてしまうのだ。
とうとう自分も末期だな、と内心で苦笑しながらレジで会計を済まし、店を後にする。
横断歩道の前で足を止め、信号が赤から緑に変わるまでの間、俺は先程買った漫画の表紙を眺めていた。
横断歩道を渡っていると、突如として瞬間的に鈍く閃いた光が突撃してきた。
視界が紅に染まり、やがて灰色に変化していく。
「ゥぅ……ァ?」
さっきまで自由に動かせた手足はビクともせず、死を告げるように視界を奪っていく。
さっき俺の手足がありえない方向に折れ曲がっていたので、まぁそういうことだろう。
こういう時、俺の憧れている惡ならどう思うのだろうか。
どう行動して、どういう思考をして、何を成し遂げるのだろうか。
立ち上がるのだろうか。
そのまま瞼を閉ざすのか。
泥臭く足掻くのか。
なんにせよ、今の俺にはもうそんなことをする余力は残されていない。
身体の感覚はとうになく、視界だけが白く染まってゆく。
後悔はない。
後悔することがあるほど中身のある人生を送ってきていないからだ。
悲しみは無い。
涙を流すほど大事なモノはもっていないからだ。
曲芸師のようなアクロバティックな動きで宙を舞っていた俺の身体は、重力に従って堕ちていく。
視界が白く染まり、意識が消えかけているその時、一冊の本が目に入った。
―――ジョジョの奇妙な冒険
(ディオ……もしも生まれ変わったら、生まれ変われるとしたら……ディオの様に……)
思うだけなら自由だろう。
憧れるだけなら自由だろう。
なら、死に際くらいちょっとは自分勝手でいていいはずだ。
《確認しました。対象の保持情報を基に外見情報の構築を行います。並びに、対象の種族を『
《確認しました。ユニークスキル『
(惡のカリスマ、惡の帝王、共感できる惡。……厨二臭いけど、やっぱり格好いいなぁ……クソ」
《確認しました。エクストラスキル『惡のカリスマ』『惡の帝王』『
(……こえ……?)
最期に聞いたのは、得体のしれない無機質な声だった。
悪役はかっこいい。そうは思いませんか?
ヒロイン(スライム)について
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YES, YES, YES!
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NO,NO,NO!