私は貞操逆転世界にTS転生したのに、親友は男のまま転移とかずるい   作:甘朔八夏

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執筆初心者のくせに2作品同時連載しようとするなんて、愚か者!!!


1話 デカいから偉いっていう理屈はおかしいと思う

 

背の順では、いつも先頭で腰に手を当てていた。なんたる屈辱。まぁ、平均身長が170cmであるこのご時世で、私の身長は158cm。仕方がない。

 

え?高くない?

違和感。

 

違和感はそれだけに留まらない。小学校時代、約100名の児童の内、なんと男子は10名にも満たなかった。それから中学校。私のクラスは定員30名。そこに在籍する男子3名のうち、不登校が2人、保健室登校が1人。いや女子校じゃん。(女子校ではない)

 

勿体ぶらずに言おう。この世界は、男女の貞操観念が逆転している。

 

男の人口は女10人に対して1人。そのため、男児を育てている家族には補助金が大量に出るので生活に困ることはあり得ず、彼らは宝物のように大事に大事に育てられる。じゃあ、男に生まれた時点で人生イージーモードじゃん!となるが、そう現実は甘くない。

 

この世界の女性は、非常に肉食であるのだ。毎週夕方には、肉欲に負けた獣たちが頭に布を被った状態でお茶の間に放映される。性犯罪の被害者は全員男性。さらに言えば、この世界では男性の方が身長も低めで、力も弱い。どうやら身体的特徴もある程度逆転しているらしい。

 

だがしかし。元の世界の男ならば。健全な男子高校生であった私からすれば、多少強引であっても大勢の女性から迫られるなんて眉唾物である。私は、この世界でモテモテになってやる!!!

 

私も女性じゃなかったらね!!!!

 

はい、改めましてこんにちは。前世は中の中の男、今世はチビの女。(ひいらぎ) 柚葉(ゆずは)で〜す。みんなからはユズって呼ばれてる。前世の名前が柚月(ゆずき)だったので、呼ばれ方は前世と一緒。なんたる偶然。地味にありがたいね。

 

と、ここまで話したが、実は私は前世のことを朧げにしか覚えていない。家族のこと。住んでいた町のこと。全て夢のようにぼんやりとしていて、さらには高校入学前で記憶がブツリと途切れている。

唯一はっきりと覚えているのは、幼稚園から中学卒業までずっと一緒だった幼馴染だけ。あ、幼馴染って言っても男だから。決してリア充ではなかったので。やめて!!石を投げないで!!!

 

前世に少し嗜んでいた気がするこういうジャンルでは、たとえ女として生まれても男の自我は明確に残ると思っていたのだけれど、女として生きてきた15年間は私にとってあまりに大きな影響を与えた。

 

お気に入りのコスメは数種類ストックしてるし、身だしなみも気にするのが当たり前。まあ端的に言うと、慣れたのだ。女であることに。

 

あっ、身だしなみのこと考えたら、急に髪型が崩れてないか心配になって来た。この時期猛威を振るう春一番は私の天敵だ。

手鏡をポーチから取り出し、前髪を確認する。

うーん、素晴らしい。唸りたくなるほど完璧なシースルーバング。前世では熊手とか言って馬鹿にしてた気がするけど、この髪型にすると顔の印象が一気に明るくなるのだ。

 

 

「——ねぇユズ、聞いてる?おーい……だめだこりゃ。また黄昏てるよ…」

 

「……んぇっ?あぁ、ごめんごめん。なんの話だったっけ?」

 

しまった。少し思考の海に沈み込んでしまっていたようだ。呆れた目でこちらを見る友人に一言詫びる。

会話に追いつくために内容を尋ねると、綺麗な黒髪を耳あたりで切り揃えた快活な雰囲気の友達——岸本(きしもと) 朱莉(あかり)が机を軽くバン、と叩きこちらへ身を乗り出した。

 

「だからぁ、あそこに無防備にも1人でお茶してるイケメンがいるって言ってんの!」

 

朱莉の胸がばるんと揺れる。くそっ、見せつけやがって…… 私だってこのくらい…

自身の胸を見る。うん、CよりのB。よし、朱莉。今までありがとう。さようなら。

じゃない。えーっと?イケメンだっけ?

 

そんな私の顔を見て、朱莉が露骨にため息をついた。

 

「ユズってほんとに枯れてるよね…」

 

「…いや、そんなことないよ?」

 

本当だ。私は決して男性に興味がないわけじゃない。 そういうことを言うと、元々素質があったんですね…とか言われそうだが、違うのだ。

この世界の女性、本能つよすぎ。無論それは私も例外ではない。男性とあんまり関わると、その、疼くのだ。どこがって?言わせんなよ恥ずかしい。

 

そのため、男性にあんまり近づいたり触れたりすると、私は教科書に載せられるほどに完璧なSHOJOムーブをしてしまう。びっくりするほど赤くなっているだろう顔や緊張して少し上擦った声に気づかれてしまった暁には、私は死ねるだろう。

 

しかし腐っても私は転生者。普通に会話する上では、男性とも(表面上)穏やかに接することができるのだ!

 

そういうことでまぁ、遠くから眺めるくらいなら別にいいだろう。

 

「そういえばさっきは流しちゃったけど、本当に1人なの?こんな人の多い喫茶店に?」

 

「信じられないよね。でもそれだけじゃないよ。その人、うなじ丸出しなんだよ」

 

「……えっ」

 

うなじ。少し筋張った、太めのくびすじ。

 

…って落ち着け!!前世なら隠さないのが当たり前だっただろ!

 

「すぐ赤くなるじゃん。ほんと、うぶだなぁ」

 

「もう!私のことはいいから!それで、その男の人って?」

 

「やっぱりユズでも気になる?」

 

ニヤニヤしながら揶揄ってくる友人の肩をぽかぽかと(たた)いておく。本当は頭を(はた)きたいのだが、身長的に子供が大人にじゃれついているような滑稽な光景になってしまうのでやめておく。

 

「ん、ちょっと(くすぐ)ったいってぇ。え?というかなに?その手つき。誘ってる?もしかしてOKサイン?」

 

叩くのが疲れたのですりすりと撫でていたら怒られてしまった。朱莉はこの手の冗談が好きなので後半はスルー。

 

「それより、お客さん凝ってますねー」

 

撫でるのが駄目なら、次は揉んでやる!私よりも広い肩を揉む。冗談ではなく彼女の肩は本当に凝っていた。

 

「あ、わかります?実は胸が重くってぇ」

 

「なるほど、私と喧嘩したいんだね?くらえっ!」

 

「あ、きもちー。ユズって胸のことやたら気にするよね。そのくらいの方が可愛いと思うけどなー」

 

な…!?私の全力握りしめが、効いていないだと…!?

なんて強靭な体。朱莉こそ巨乳を授かるに相応しい。今回ばかりはおとなしく勝ちを譲ろう。

 

「って話脱線しすぎ!!」

 

 

「なんの話だったっけ」

 

「だからぁ、無防備な男!!」

 

そうだった。やっと本題を思い出し、朱莉に連れられて店の少し奥の方へ行く。周りの席の女性たちは、皆一つのテーブルに注目していた。ギラついた目を一点に注ぐ彼女たちを見ると、やっぱり男のまま転生してなくてよかったなと思ったり思わなかったり。なんて高みの見物をしているが、本能には抗えない。すっと噂の男性様を視界にいれる。

 

真っ白なスニーカーにくるぶしの見えたスキニー。トップスはなんと、ロングスリーブTシャツのみ。なるほど、これは無防備(えっち)だ。せっかくなので顔も拝んでおく。……っえ???

 

「伊織!?」

 

短く切り揃えられた柔らかめの黒髪に端正な顔立ち。私の言葉に、少し驚いたようにこちらを見る男は、紛れもなく前世の幼馴染、七瀬(ななせ) 伊織(いおり)だった。

 

…こいつ、また身長伸びてないか?中学校入学時点では私の方が高かったのに、三年であっさり逆転されてしまい悔しい思いをした記憶が蘇る。

 

なんて現実逃避。やってしまった。この世界で男性を下の名前呼び。周りの席の人たちが全員こちらを見ている。朱莉に至っては眼光で人を殺せそうなほどだ。しかも、もちろんこの世界で私と伊織は初対面。

話題の中心は私の顔を見ながら、どこかで会ったかとうんうん唸っている。相変わらず律儀な奴である。しかし、当然彼は今の私を知らない。自称彼女のストーカームーブかな?

冷や汗が頬を伝った。

仕方ない。まさかこの技を使うことになろうとは…

 

まだ唸っている元親友に、近づく。耳を貸せと言うと、当たり前のように私の言葉に従った。この世界で男性とここまで近づいたのは初めてかもしれない。忙しない拍動を無視して言う。

 

「俺、柚月」

 

「…………え?」

 

めっちゃびっくりしてる。ちょっと面白い。

 

「色々あって女の子になっちゃった」

 

彼の頭の上のハテナマークがどんどん増えていく。信じてもらえるかなーとか呑気に思ってたら、周りが以上に静かなことに気づく。見渡すと、血走った嫉妬の目で私を見ている人。変わらず彼に情欲の視線を向けている人。そして、私の隣で能面のような顔をしている、ショートヘアの友人。

 

やべ。

多分聞こえてないと思うけど、男性とこの距離感は非常にまずい。ばらすのも、絶対ここじゃなくてよかった。ひとまず逃げよう。

 

「とりま、うちくる?」

 

周りが一気にざわついた。

まじやべ。

 

 




モチベ次第で続きます
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