私は貞操逆転世界にTS転生したのに、親友は男のまま転移とかずるい   作:甘朔八夏

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9話 私が悪いんじゃなくて余計なことばっかりする親友のせい

 

 

騒いでいるともう正午を過ぎていたので、3人でダイニングまで移動する。

 

「伊織、何かリクエストはある?」

 

「うーん…オムライス…とかいける?」

 

「任せて!」

 

先ほどから私に刺さる妹の非難の目線を華麗に躱しながら冷蔵庫へ。なんで日向が怒ってるのか全然わからないなぁ…(汗)

 

それにしても、伊織って結構子供っぽい味とか好きだよね。また今度ハンバーグとか作ってあげたら喜ぶかなぁ。

 

冷蔵庫を開けると卵のパックが三つあった。多い。柊家はみんな卵好きだからね…

せっかくなので潤沢に使わせてもらおう。目の前で誰かにいちゃつかれてダークサイドな日向のご機嫌取りも含めて…

 

 

 

まずは玉ねぎをみじん切りに。目がしみて涙が出そうになる。

 

「涙!」

 

しーん。

 

ガン無視。およよ…いつもは乗ってくれてこういう時調理(オペ)の助手をやってくれるのに…思ったより日向を怒らせてしまったようだ。

…やっぱり日向も伊織のこと狙ってたりする?それとも、彼氏持ちじゃない日向の前で見せつける形になったから「けっ…」ってなってるだけ?いや伊織は彼氏じゃないけど。

 

これはいけない。日向とオハナシするためにも、今すぐ彼女の機嫌を直さなければ。

 

 

きざんだ玉ねぎを飴色になるまで炒めて、鶏肉とマッシュルームを放り込む。そのあとご飯とケチャップを入れて和えたらチキンライスは完成。ちなみに私の好みでケチャップは多め。赤みが強い方がチキンライス!って感じしない?

 

「ユズ、お前本当に料理出来たんだな」

 

「それはちょっと失礼じゃない?…まあ、料理を始めたのは柚葉になってからだけど」

 

なにやら失礼なことを口走る伊織に言葉を返す。確かに柚月だった時は料理なんてあまり興味はなかったけど。煩悩の力は偉大である………おっと、間違えた。モテたいからじゃないよ?私が料理できたらお母さんの負担も減るかなーって、それだけ。私ってば親孝行だなぁ…

 

「ほら、もうすぐできるから。これだけ持って行ってテーブルで待っといて」

 

皿にチキンライスを丸型に盛って、伊織にそれをテーブルまで運ばせる。伊織(おとこ)を働かせて自分がのんびりしていたことに焦ったのか、日向が慌てて立ち上がっていた。別にこのくらい任せといたらいいのにねぇ。まあ気持ちは痛いほどわかるが。

 

さて、調理に戻ろう。次はオムレツ作りだ。卵がたくさんあったので、贅沢に一人3つ使いたいと思う。ボウルに入れた卵に牛乳と調味料を追加。熱したフライパンに流し入れて手早く混ぜる。うーん、良い感じの半熟感。

ここがポイントだ。卵の端をフライパンから剥がして、ヘラで慎重に包んでいく…よし、完璧!

 

「第一陣ができたよ。まずはお客様からね」

 

伊織のチキンライスの上にそっとオムレツを乗せると、それを見た日向が頬を紅潮させてこちらへ身を乗り出した。

 

「え!?お姉ちゃん、それって真ん中切るやつ!?ふわふわのやつ!?」

 

見るからにとろけそうなふわふわのそれを見て、日向が大興奮している。

こうして見ると日向は年齢相応の可愛い妹だ。姉と姉の男友達に3Pを申し込んだことには今は目をつぶろう。……いや、無理だな。エピソードがドギツすぎる。

今は私の作ったオムライスに対して目をキラキラさせて無垢な笑顔を浮かべている我が妹だが、その脳内はショッキングピンクである。悪夢だ。

 

……え?これがこの世界の普通?…そうなんだよなぁ。普通に考えて結婚できたら夫は姉妹でシェアするのが一般的なのおかしくない?

 

 

やめだ、やめ。せっかく妹が機嫌を直してくれたのだ。こんな闇の深いことで悩んでいるとまた墓穴を掘りそうで怖いし、今は昼食に集中しよう。

 

「それじゃあ切るよ?」

 

「…頼む」

 

心なしか伊織もそわそわしている。

知ってるよ。伊織は昔から、薄い堅焼き卵を包むタイプよりも、半熟のオムレツを乗せるタイプのオムライスの方が好きなこと。

 

すっとオムレツにナイフを入れる。切れ目を開いてやると、中から溢れ出すは濃厚な卵の香り。チキンライスが半熟のドレスを見に纏った瞬間、伊織と日向から感嘆の息が漏れた。

二人とも良い反応をしてくれる。作り手冥利に尽きるね!

 

実は自分は堅焼きのオムライスの方が好きだけど、伊織の無邪気な笑顔を見れたのでこっちにしたのは大正解だっただろう。

 

パシャリ。

 

滑らかな動作でスマホを取り出し、少年のように目を輝かせる伊織を一枚。ふふ、上手く撮れた。普段はかっこいい系の伊織だが、この写真では彼の幼さが強調されていいギャップになってる。すぐさまお気に入りアルバムに追加!

 

「え?ユズ?どうした?」

 

………あっ。

あっ!やべ!!つい!!いや違う。伊織が悪いのだ。そんな頭を撫でくりたくなるような顔するから…

本当になんて言い訳しよ……

 

「いや、あの……ね?」

 

しどろもどろになる私を怪訝な目で見つめる伊織。そりゃそう。急に写真撮られたら「なんで?」ってなるよね。

ちなみに伊織の顔を正面から見ていた日向は何かを察したような視線を私に向けている。しまった。ふわふわオムライスのおかげで無垢モードになった日向の目が闇落ちしていく……

 

写真の言い訳……うっかり?…いや意味わかんない。…つい衝動で?…自白してるだけ。…誰かに頼まれた…頼まれた?これだ!

 

「じ、実は溝端さんに伊織の写真を撮って欲しいってお願いされてて…」

 

ごめん、溝端さん。でも嘘ではないし。今思い出したってことにしてほしい。ちゃんと後で画像送るから許して…

 

「…あぁ、溝端さんか」

 

私の言葉を聞くや否や急速に目が遠くなっていく伊織。あ、やっぱりあの人のヤバさは察してたのね…まさかあれで隠してるつもりではないだろうし、当然っちゃ当然か。

 

「え?どういうこと?」

 

伊織の不可解な反応を見て怪訝に思ったのか、日向は目にハイライトを取り戻してきょとんとしている。

闇堕ちを防げたことに安堵する。…いやそもそも闇堕ちってなんだよ。なんで皆そんなに軽率に堕ちるんだよ。

とりあえず彼女は伊織の事情を知らないので、私たちの話題に置いてけぼりの状態だ。オムライスの第二陣を作るためにキッチンへと移動しながら彼女に説明をする。

 

「今伊織は『わくわく養育園』ってところでお世話になってるんだけど——」

 

「えっ!?わくわく養育園!?」

 

素っ頓狂な声を上げて驚く日向。

 

「何か知ってるの?」

 

「知ってるも何も、今この地域の()()()()ところで一番ホットな場所だよ!」

 

曰く。数年前、気づけば団地の跡地に謎の施設ができていた。

曰く。入寮、または通園している園児のほとんどが男児である。

曰く。男児たちはある時急に先生に対する態度が二分に分かれる。一方は先生を異常に怯え始める者。他方は先生を異常なほどに慕い始める者である。

曰く。その養育園には定期的に私服警官が訪れる。

 

……真っ黒じゃないですか。一応全て噂に過ぎないそうだが、火のない所に煙は立たないんだよ…

ただ聞くところだと、わくわく養育園の主な()()()は小学生以下だけらしいし、伊織は大丈夫なのか…?

ん?小学生以下?………やば。

 

「………よし、食べよう!」

 

あ、伊織が思考放棄した。結構自分の安全に直結する話題だと思うんだけど、それでいいの…?

 

「…日向はそこに興味あるの?」

 

「無いって言ったら嘘になるけど、リスクは取りたくないから関わらないようにしてるかなー」

 

ほっ。そこはちゃんと線引きしてるのね。お姉ちゃん一安心。

そうこう話しているうちに日向のオムライスも完成したので、チキンライスの上でご開帳パート2だ。

 

「えっ!?チーズ入ってる!やったぁ!お姉ちゃん大好き!」

 

やれやれ、都合の良い妹である。抱きついてくる日向を軽くいなしながら、伊織にも食べてと促す。私の分ができるまで待ってくれるつもりだったようだ。嬉しいけど、今はそれより出来立てを食べて欲しいからね。

 

「「いただきます!」」

 

やっぱりお腹が空いていたようで、意気揚々と言った様子で食事を始める。

ほぼ同時にスプーンを口に運んだ瞬間、二人の目が輝いた。

 

「…うま」

 

「美味しいー!これはお母さん超えたんじゃない…?やっぱり、伊織さんに振る舞うから張り切った?」

 

日向のからかいにジト目を送りながら、上手く作れていたことを確認して安堵する。なんか今日だけで伊織との関係いじられるの慣れてきたな…

 

「よかったぁ。あと、スープは昨日の残り物のアレンジだけど、よければ食べてみて」

 

コンソメスープにトマト缶を入れたなんちゃってミネストローネを二人の前へ置く。これが簡単だけど結構いけるのだ。

そちらにも手を伸ばし、そのままスープを飲む手が止まらなくなった様子の日向を見て満足していると、伊織がこちらを見てニヤニヤしているのに気づいた。

 

「どうしたの?」

 

「…ユズは良いお嫁さんになれるな」

 

 

 

 

 

 

 

……………は?

 

何言ってんのこの人???

いや、伊織の顔を見れば分かる。料理なんか無頓着だった()()をいじってるつもりなんだろう。だが、今の私は()()である。

しかもさっき私のことむっつりとか言ってなかったっけ?え?分かってて言ってる?ってことは、今私プロポーズされてる?

 

今ここで娶ってやろうか???

 

流石の日向も、この発言には目を点にしている。

 

沈黙が場を支配した。

 

私たちが押し黙ったことに気まずくなったのか、伊織がばつの悪そうな顔で訂正をしてくる。

 

「冗談だって。…その、悪かったよ」

 

……謝られるとそれはそれで悲しいな。

昔から伊織は調子に乗ると、後先考えずに行動したり発言したりする。ぶっちゃけ伊織の元カノが彼に執着していたのも、伊織の態度が無駄に思わせぶりだったからという部分もあるので、伊織にも責任の一端はあるだろう。

 

なんかすっごく冷静になってきた。今日私が散々振り回されてるのも全部こいつのせいな気がするし。前世の記憶が色濃く蘇ってくる。こいつがニヤニヤしている時はいつも碌なことにならなかった。

 

今日の苦労の意趣返しをしたい欲がむくむくと湧いてきた。ネタ発言をしたつもりだったのに、絶句されて絶賛気まずい思いをしている幼馴染にずんずんと近づく。無言での突然の行動に伊織の肩が面白いほどに跳ねた。どうやらこいつはまだ、柚葉(わたし)柚月(おれ)として扱いたいらしい。お望みならばくれてやろうではないか。

 

「——()ッてぇッ!?」

 

そのまま予備動作無しで彼の額にかなり強めのデコピンを叩き込む。くらえっ!!元同性だから暴力はただのじゃれあい判定になるアタック!!

 

「ばーか」

 

額に手を当てて苦しんでいる伊織に言い捨てて、自分のオムライスを取りに戻った。ふー、すっきりした!

 






「伊織さん、私のオムライスも食べますか?」

「お、いいのか?じゃ、ありがたく」

「え″。……伊織ってチーズ苦手じゃなかったっけ?」

「ユズの作ったやつは美味しそうだからちょっと食べてみたいなーって」

「…そう?じゃあスプーン取ってくるね」

「必要ないよ、お姉ちゃん!ほら伊織さん、あ〜ん」

「!?」

「ありがとう、日向ちゃん…あむっ…ん、美味い」

「!?!?」

「え?え?私今男にあーんした?冗談だったのに。本当に?夢じゃなくて?やっぱり私と伊織さんって付き合ってたっけ?間接キスしちゃうくらいだもんね……待って。このスプーン、私のだから私が使って良いんだよね……?」

「日向ちゃん、お返し。あーん」

「どうしよ…明日友達に自慢しちゃおっかな…むぐ」

「おっと、口元に少し着いちゃったな。ごめんごめん。ハンカチ持っといてよかった。…なんか妹ができた気分」

「!?!?…このハンカチって、伊織さんの…しぶ…つ…きゅう」

「…って、あれ?日向ちゃん?おーい。なぁユズ、日向ちゃんが急に動かなくなったんだけど…ってユズ?……死んでる…」
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