私は貞操逆転世界にTS転生したのに、親友は男のまま転移とかずるい 作:甘朔八夏
伊織の状況は大体わかったので、次はこちらの事情を説明。伊織はかなり複雑そうな顔をしてた。まあ仕方ないね。私が伊織の立場なら、何言ってんの貴女?ラノベの読みすぎじゃん、って思っちゃう。
でも疑う前に信じてくれようとする彼は本当に人が良い。こんなんじゃ悪い女に引っかかっちまうよ!その結果我が家に来たんですね。はい。なんかすみません。
「そういえば、私高校からの記憶が無いんだけど何か知ってる?」
「いやぁ…幼稚園から中学まではずっと一緒だったが、高校からは別だったからなぁ」
「伊織ってなんでもできるのに勉強だけは苦手だよね」
「…うるせいやい」
少し拗ねたような伊織の態度に笑ってしまう。伊織って高身長の割に童顔だから、子供っぽい動作も似合うんだよね。思わず頭を撫でたくなる。………いや、これはセーフか…?母性本能はしゃーないか…?
まあ前世のことも知れるならば知りたいが、あまり覚えていないのでそこまで未練はない。唯一の心残りだった伊織とも会えたし。
「……ほんとにずっと一緒だったよね。あの時以外は」
少し冷たくなった私の声に、伊織の肩がびくりと跳ねた。
何を隠そう、こいつは中学2年のときおよそ3ヶ月間
「いや、あの時はユズも納得してくれたじゃん、ちゃんと好きじゃないならずるずる続けるのはよくないってアドバイスも従ったじゃん…」
しどろもどろに弁明する伊織をほんの少しだけ冷たい目で見つめる。
くっそぉ…少し高身長でイケメンで人当たりが良いからっていい気になりやがって…いや、いい気になるか。むしろこのスペックで彼女いたことない方がおかしいわ。
それにしてもあの女狐、伊織がちょっと押しに弱いことを利用して勢いで付き合いやがって…面食いのくせに…あれ?今私何考えてた?
待て待て待て待て。下腹部で喋りすぎ。こいつはただの友達!こいつは友達!この人は親友!この男の人は大切な人!
「いや思春期かい!」
「!?」
唐突にセルフツッコミをした私に伊織がすくみ上がった。とばっちりすぎて笑う。かわいそう(他人事)。
伊織って昔から怒ってる人にほんと弱いよね。少しいたずら心が湧いてしまう。
「ほら、申し訳ないと思ってるなら誠意を見せてよ」
「え…なんの…?えなんで睨むの?え…」
「返事は?」
「はいっ!」
私に無条件で従う彼にぞくぞくしてしまう。何をしてもらおっかなー。
「私の頭をしばいてください」
「本当にどうした」
正気に戻った。なんですかぞくぞくって。今日で新しく5個は性癖開いたわ。男恐るべし。とりあえず痛みで淫気を吹き飛ばそう。
私の内面を知ってか知らずか、伊織は気まずそうに頬をぽりぽりと掻いた。
いや普通は自分の内面は自分しか知らないはずなんだが。なんで伊織にあんなに心読まれてるの私?待てよ。今の心の中読まれてたらあまりに不味くない?
「…話してるとやっぱりユズなんだなって分かるけど、ユズだと思うと口調の違和感がすごいわ」
ほっ。心の中はバレてないみたい。え、なんで目を合わせてくれないの?ねぇねぇねぇ。
そんなくだらないことを考えるのをやめ、伊織の疑問に答える。
「まあ女として15年は生きてるからね。ただ、伊織と喋ってるとなんか前世と同じ気分になってくるよ」
いや前世も伊織に発情してた訳じゃないからね?なんでそんなに薔薇の花咲かせようとするの?そこを除いた
「一回柚葉としてじゃなくて、柚月として喋ってくれないか?」
それは、つまり前世の口調で喋ってくれとの要望。思わずうえぇ、と嫌そうな顔をしてしまう。
「なんで嫌なんだ?」
「だってぇー。私の見た目で男っぽく振る舞うのは似合わなさすぎるし、変な目で見られちゃうこともあるし」
そのせいで、この世界で中学の時えっぐい黒歴史を作ってしまったのだ。中身が男なら百合ハーレムを作れる!そう思ってた時期が私にもありましたよ…
「じゃあ俺の前では問題ないんじゃないか?俺はユズが元男だって知ってるから違和感も感じないし、もちろん変な目で見ることもない。………というか今の方が変な目で見そう」
「そう?じゃー、一回そうしてみよっかな」
男口調で喋るのなんて実に2年ぶりくらいだろうか。少し緊張する。ちなみに15年ぶりではないのはお願いだから触れないでほしい。
「…これでいいか?」
「おう、そんな感じだったな」
「で、俺はなにをしたらいいの?」
「そういや考えてなかったな…あ、そうだ。施設の人が申し込んでくれてな。来週の月曜日から雲州高校ってことに通うことになった」
「え、雲州高校!?俺が入学するとこと一緒じゃん」
「ユズもそこだったのか。それはありがたい…って、ユズが居るってことはもしかして」
伊織の顔色が曇った。思わず笑みを浮かべてしまう。
「そこそこ賢いとこだよ」
「うわぁ…まじか…最悪…」
何を隠そう、伊織は勉強だけはできないのだ。前世でもテスト前には頻繁に泣きついてきた。
「まーまー、また俺が助けてやるからさ…あっ、無理だ」
「え!?なんでだよ!?」
「だって伊織、2年じゃん」
崩れ落ちる伊織。おっ、テスト返しの時の伊織だ。でもいつもより項垂れ具合が大きい。そういえば長期休みにはいつも伊織の家に行って学期の復習を一緒にやってたな。懐かしい伊織の
「伊織、高1範囲も怪しい?」
「ヴッ」
……本当にこの男は。ぽんと肩に手を置く。
「一緒に勉強、頑張るか」
「その時は私も呼んでね、お姉ちゃん!」
「いいけど、ちゃんと真面目にやるんだよ
飛び上がるほど驚いた。私の隣にちょこんと座っているのは我が妹、柊 日向だった。
「ずいぶん楽しそうに話してたね。お姉ちゃんってどうして男の人にあんなに穏やかに接することができるんだろうって思ってたけど、やっぱりいたんだね。彼氏」
まずい。家族にだけはバレたくなかったから、手も洗わずにここまでこっそり部屋に入ってきたのに。あ、それは良くないよね。ごめんなさい。
でも仕方ないじゃん!前世の親友ですーなんて意味わからないこと言うわけにもいかないし、なんて言い訳すればいいかわからないもん!
「…いや、あのね?信じてもらえないかもだけど、本当にただの友達なんだよ」
「そうやって人払いしておっぱじめるつもり?下にお母さんいるし、流石に不味いんじゃない?」
「ほんとに違うから!」
ちょ、伊織。後ずさらないで。というかお前、事情知ってるだろ!!わたわたしていると、日向がいたずらっぽく表情を崩した。
「冗談冗談、まさか家族が家にいるのにそんなことするとは思わないよ」
「日向…」
いや本当にやめてほしい。シャレになんないから。
「本番する時は言ってね?協力するから」
「日向!!」
全然わかってないじゃん!!伊織絶句してるじゃん!!
日向の顔がニッコニコなのに気づいて、遊ばれていることを理解した私は日向の頭にげんこつを一つ落とし、伊織のサポートを受けながらもなんとか誤魔化すことに成功した。多分。
「ふーん…小学校の時に仲のよかった男友達ねぇ…あ、改めましてこんにちは。私は柚葉の妹の柊 日向です」
「ご丁寧にありがとう。改めまして、俺は七瀬 伊織。ユズのおさな…友達だよ」
そう言って日向に微笑みかける伊織。その笑顔に日向は激しくのけぞって、ものすごい勢いで私に飛びついてくる。
「え?え?え?なに彼。笑顔可愛すぎか?え、伊織さんって私のこと好き?お姉ちゃん付き合ってないんだよね?ね?私がもらってもいいよね?と言うかこれもう脈ありだよね?」
「え、駄目」
無意識にぽつりとこぼれ出た。あ。私の言葉に日向は大きく目を見開いた後、にんまりと笑った。
「やっぱりそうなんだね。私に略奪趣味はないし、ぞっこんの彼と2人でゆっくりしてなよ」
「〜〜〜っ!?」
今私なんて言った!?なんでそんなこと言った!?さらっと言うほうがガチっぽいじゃん!いや確かに伊織のことは好きだし彼女できてたときは寂しさも多少あったけどさぁ!
日向は顔を真っ赤にして俯く私の姿を一枚パシャリとして、部屋から出ていこうとする。堂々と盗撮すな。
扉を開けた瞬間、日向は何かを思い出したかのように声をもらし、こちらに振り向く。
「
バタン。気まずい沈黙が部屋を満たす。
「「…………あの」」
話しかける声が伊織と被る。そのことに不思議な喜びを感じていると、前触れもなく扉が再び開いた。顔だけを覗かせて、扉の音に肩を跳ねさせた私を見て一言。
「お姉ちゃん男言葉似合ってたね。危ないくらいに。使うならちゃんと覚悟しなよ」
再び扉が閉まる。
「……今日はもう帰るわ」
「…そうだね」
伊織を送るために、部屋から出る。目の前にお母さんがいた。予測していなかった対面に、喉がらひゅっと音が漏れる。ゴゴゴゴという擬音がふさわしい雰囲気でこちらを見る母の顔は、まるで機械のように冷え切っていた。
「柚葉?こんな真っ昼間にこっそり家に男の子連れ込んで、一体どういうつもり?」
言い訳に2時間かかった。
つづくかも
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