私は貞操逆転世界にTS転生したのに、親友は男のまま転移とかずるい   作:甘朔八夏

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次回は土曜日と言ったな。あれは嘘だ


5話 過去は振り返らない主義のほうが人生を楽しく生きられる

 

 

「私、見てたよ。今日も一緒に登校してたよね?」

 

またもやハイライトを消してしまった友人と対峙する。この子いっつも闇堕ちしてんな、とは思ってはいけない。

このミッションの目標は、私と伊織が男女関係であることを否定すること。今の誤解された状況が少し優越感あるな…とか思ってない。思ってないったらない。

 

仕方ない。これを使うしかないのか。……いやめっちゃ嫌なんだけど。しかし、これを使わないと私の死因は『友人の嫉妬』になるだろう。この世界では割とある死因だから笑えない。

 

「あの…さ。私って中学生の頃にちょっとふざけてた時期あったじゃん?」

 

オーラのように身に纏っていた鋭い殺意が少し和らぎ、朱莉の目がピクッと反応した。

 

「それって自称イケメンかっこつけボーイッシュ(笑)柚葉クンのこと?」

 

あ"っ!!!

 

人から言われた時のダメージえぐっっ!!!その場に崩れ落ちる。それは私の今世の人生における汚点である、中1の終わり頃の黒歴史。

性の目覚めが遅くまだ女性としての本能が皆無だった時に、愚かにも私は思ってしまったのだ。

 

———男としての過去をもつ私なら、この世界の女性を虜にして百合ハーレムを作れるのではないか?

 

結果としてはもう泣きたくなるほどの惨敗。女友達に男口調で口説いた瞬間、彼女らの目が猛禽類のように鋭くなり、壁ドンしていたはずの私は一瞬で立場を逆転され全員にイケメンムーブをすることを許してしまったのだ。あの時にときめいてしまったのは墓場まで持って行かなければならない秘密である。

 

暴走するあいつらを止めるの、本当に大変だったなぁ…

 

あの時を思い出してなにかを呟き、遠い目をしている朱莉に言葉を紡ぐ。

 

「それでさ、実はあのムーブ、他校の男子にもやっちゃったんだよね」

 

「うわ」

 

本気の「うわ」入りましたー。自分、泣いてもいいでしょうか?

 

「それで気が合っちゃったのが伊織なんだよね」

 

「あー…なるほどねぇ。すっごく納得した……ん?でも前は幼馴染って言ってなかった?」

 

「やだなぁ!あんなに素敵な幼馴染がいたとして、それを高校まで隠し通せる訳ないじゃん!!」

 

それもそうか、と頷く朱莉。……あっぶな!!

 

前は咄嗟だったから、つい真実を交えたことを言ってしまっていたらしい。なんでそんなに記憶力いいの…もう1週間以上も前のことなのに。

 

「だから伊織とは、そういう仲って言うよりは同性の友達って思われてるの」

 

「ふむ… 被告人に判決を下す!!……懲役5分!!」

 

ふぃー、本当に危なかった。なんとか許されたようだ…って、5分?首を傾げている私に、朱莉がニヤニヤしながらにじり寄ってくる。思わず後ずさってしまった。

 

「ユズの言い分には納得したけど、それはそれとして仲の良い男がいるのは妬ましいのでくすぐり5分の刑ね」

 

「え"っ」

 

じわじわと距離を詰める朱莉に、私は本気で焦ったような声を漏らす。

 

「ちょ、ちょっと!私がくすぐったいのすっごく弱いこと知ってるでしょ!? 本当にしゃれにならないってぇ!」

 

何か…何かないか!?この状況を打破できる切り札が!!必死に辺りを見回すと、朱莉の後ろに1人の男の子が立っているのが見えた。確かあの顔は…いける。見えた!朱莉のくすぐり地獄から逃げ出せる活路が!

 

「おはよう。氷鉋(ひがの)くん…だよね?」

 

するりと朱莉の脇を抜けて、後ろの男の子に話しかける。氷鉋(ひがの) 拓哉(たくや)。クラス表で私の真下にいたから覚えていた。つまりは私の後ろの席である。

 

真っ直ぐに伸びた黒髪が切長の瞳とマッチしているクール系。身長はこの世界の男子の平均とだいたい同じ165cmくらいかな?個人的にはもっと身長があった方がいいと思うが、かっこいい方だと思う。って何を品定めしているんだ私は。

邪念を振り払って彼の顔を見つめる。

 

「ごめんね、邪魔だったよね?場所移動するね」

 

「…おう」

 

少し顔を赤くして私から目を背ける氷鉋くん。ん?この反応、もしかして照れてる?いや、女子に近づかれるのが嫌で顔を背けただけかもしれない。あまり自惚れるもんじゃないし、ネガティブに考えておこう。

 

突然の男の出現に硬直する朱莉の背を押して、教室の端っこへ。四隅の掃除用具箱の前まで来た時、朱莉がやっと言葉を発した。

 

「え。なにあのイケメン。彼とこれから一年おんなじクラス?神かよ。よーーーし!!」

 

全身で喜びを表す朱莉に少し引いてしまう。見た目はすごく可愛いのに、こんな仕草をしていたら台無しだと思う。まぁ、彼女の最高潮のテンションに水を刺したくないし、ここは穏便に話を合わせておこう。

 

「朱莉、ラッキーだね」

 

そう言うと朱莉は私の方に向き直り、再度硬直した。

 

「……いやさっき絶対氷鉋きゅんユズに照れてたよね。え?ずるくない?だってユズ可愛すぎるもん!女の私でも時々どきっとしちゃうもん!!」

 

そうか、やっぱりあの時氷鉋くんは照れてたのか。

あくまで自己満足でやっている自分磨き。誰かに褒められたいとか、モテたいとかいう気持ちは微塵もないけれど。

 

「……えへへ」

 

やっぱり嬉しい。自分の努力が認められた気がするのだ。正直褒められたいと言う気持ちは微塵もないって言ったが、嘘かもしれない。だって褒められたらすごい嬉しいもん。

 

「ぐ……これが天然の魔性……」

 

ふと前を見ると朱莉が四つん這いになって項垂れてた。

 

え?なに?

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

チャイムが鳴ったので席につき、担任の先生からのありがたいお言葉を賜る。中学までは前世の知識で無双できたけど、高校からは初見なので真面目に勉強頑張らなくちゃ。そう思っていると、あっという間に放課後。って言ってもまだ11時だけど。

 

部活動見学は来週からなので、今日はもう帰宅以外選択肢はない。先生からもらった資料をファイルに挟みカバンに入れていると、ふと教室がざわついた。

 

クラスのみんなの視線の先には、平均170cmの女性の中でもかなり高身長な、180cmを超えた非常にスタイルの良い生徒。どうやら今登校してきたようだ。

 

……全く。この子はこんなに目立つ身長をしているのにいつも他人からの視線に無頓着だ。なんかそういう人私の周りに多くない?

 

その長身の生徒は、私を見つけると一目散にこちらへ向かい、私の胸に顔を埋めてきた。少しざわつくクラスメイトたち。

 

「優奈…せめて最初の登校日くらいは時間通りに来なよ……」

 

「朝起きたらもう10時過ぎてた。そこから登校しようと思っただけ偉いと思ってほしい」

 

なんて実にダメ人間な発言をするのは、私の中学の時からの友人である新木(あらき) 優奈(ゆうな)

小顔にすらっとした長身のモデル体型という、この世界でも理想的なスタイルをしているのにその中身は実に堕落している。

 

「うーん、男の代替とまではいかないが、程よい小ささ。やはりユズの胸は良い」

 

「張り倒すよ?」

 

「ほう…?押し倒したいと…?まあ私はうぇるかむだ。いつでも挑んでくると良い」

 

「言ってない!」

 

くっそぉ…本当にやらかした…なんで中学のとき優奈にイケメンムーブ(笑)をしちゃったんだろ…これがなければ、今も私の胸に顔を(うず)めたままの優奈の頭にげんこつを落とせるのに……

というかその状態のまま話さないでほしい。くすぐったいので。

 

ちなみにこの世界での平均的な胸のサイズはEである。Eである!!貧乳に厳しいよーー!

 

「大丈夫、ユズくらいの身長で胸だけ大きかったら逆に引く」

 

「それさらっと身長も煽ってない?」

 

優奈の頭を自身の胸から無理やりひっぺがす……ひっぺが………やめろ!抵抗するんじゃない!

そうこうしているうちに朱莉がカバンを背負って私のところまでやってきた。

 

「ユズ、帰ろー…って、優奈。来てたんだ」

 

「さっき来た。寝坊したのに登校を選択した私を褒めて欲しい」

 

「わかった!優奈、えらいぞー」

 

そう言って優奈の頭を撫でくる朱莉。優奈がしたり顔でこっちを見つめてきた。

 

「これが正しい行動。ユズも見習うといい」

 

こいつ……本当にッ……!!

…はぁ。そこまで言うんだったらいいだろう。私の本気を見せてあげる。

 

「朱莉。ちょっと優奈貸して」

 

「うん、いいけど…やりすぎないでよ?」

 

なんのことか分からない。私は今から優奈を撫でてあげるだけなのに。

 

「……優奈、ご愁傷様」

 

「え、なに。お、ユズもとうとう私を甘やかすべきだと気づいたか…くるしゅうな…わぷ」

 

そういえばこれ、優奈にしたことなかったな。

優奈は私の胸が好きらしいので、彼女の頭を胸でそっと抱きしめる。そして優奈の後頭部をゆっくりと、優しく、ぽんぽんしたり撫でたりしながら、耳元でとろけるような声で甘く、甘く囁く。

 

「優奈はえらいね。いつも面倒そうにしてても勉強も頑張ってるし、困ってる友達がいたら放っておけないのも知ってるよ。私のことが好きなのもしっかり伝わってる。私も優奈のことが大好きだよ。いつも私たちを笑顔にしてくれて、あり———」

 

「ストップ!ストーーップ!ユズちょっと止まって!優奈溶けてるから!」

 

おっと、やりすぎてしまったか。優奈の頭を胸からそっと離すと、顔を真っ赤にして焦点のあっていない瞳でこちらをぼんやりと見つめる優奈の姿。

 

「……かわいい」

 

そっと、優奈の額に口付けを落とす。とどめだ。優奈はただでさえ赤かった顔をもうこれ以上は無理だろってくらいまで赤くして、言葉になっていない声を漏らしながらその場に崩れ落ちた。

 

「ふっ。勝った」

 

柊 柚葉、完全勝利の瞬間である。右手を高く上げて喜びを露わにしていると、ふと周りが異様に静かなことに気づいた。

隣を見ると、頬を少し染めて呆れたようにこちらを見る朱莉の姿。

周りを見渡すとクラスの9割くらいがこちらを凝視していた。

 

………やらかしましたね。

 

この後めちゃくちゃトイレに逃げ込んだ。

 

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