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やっぱり、まだ何か足りない気がする。そう思って結局告白するのはやめた。
会ってみれば決定的な何かを得られるかと思っていたけれど、どうにもピンとこなくて(彼女との時間が楽しくなかったという意味では無い。それとは真逆だったし、これはもっと個人的な問題だ)。
ちゃんと好きか分からなかったから、振られるのはまた今度にするよ。そんな風に伝えて、その日は解散となった。
ある意味では僕は逃げたと言えるし、ある意味では僕は十分に誠実だったと言える。そしてより重要なのは後者だ。
僕はきちんと終わらせたい。好きなのかどうかすら曖昧なまま振られて、或いは付き合ったとしても。鈍い感覚のまま終わらせたくない。ちゃんと好きになって、ちゃんと振られて。鋭くて、他の何とも違って、得がたい本物の痛みでちゃんと傷つきたい。そうじゃなきゃ終われない。
3年ぶりに再会した彼女は昔と変わらない態度で接してくれたし、髪は少し短くなっていたけれど相変わらずめちゃ可愛いな、と思った。
まず顔が可愛い。それから態度というかリアクションがいちいち可愛い。少しざらついたような声も好きだ。3年前から全然変わってなくて、やっぱりアイドルみたいに思えた。
外から観察出来るものは既に十分好きだった。一体何が足りないんだろう?
ただ好きになりたくて、恋をしてるんだと思いたくて、そのための理由を探してるだけなのかもしれない。恋に恋している。
彼女に対しての想いをあっさり言葉に決めてしまえたらきっと楽にはなれるだろう。
或いは、僕の話を聞いた人は皆口を揃えて言うかもしれない。それは恋だよって。それでも僕は否定する。うるさい、僕が足りないって言ってるんだからこれはまだ未完成だ。
実際、あと1ピース。1000ピースパズルの最後の1ピースだけが足りていないような気がする。他は全部揃っているのに、どうしても完成しない。それをずっと探している。
でも本当は、探しているのは金メッキの豪華な額縁なのかもしれない。自分を主人公に祭り上げるような、それを劇的なものだと思えるような、そんなありもしない何かを探すフリを続けている。それだけなのかもしれない。
或いは額縁に飾って、あの夜空に孤高に輝く星と一緒に、なんとか隣に並べていたいだけなのかもしれない。
そうだとしても仕方の無い事だと思った。半生において僕の恋というものは、信仰というあまりにも大きな輝きと共にあった。あり過ぎて、普通の恋が分からなくなってしまったのかもしれない。
思考は恋で、行動は恋で、人生とは恋だった。そしてその全ての源流に僕を照らさない、僕のピストルスターがあったのだ。
考えてみれば足りてないのは当たり前だ。だって僕達はまだ殆ど話をしていない。3年前も、今も。
こういう表現をすると彼女に失礼だろうけれど、僕達のデートは熟年夫婦のそれみたいだった。
移動に買い物、食事と休憩。会話はぽつぽつとしたもので、大体を無言で歩いていたように思う。買い物もカメラについて少し教えて貰って、あとはお互い見たいものを物色していた。休憩に至っては僕は本を読んでいたし、彼女は頬杖で眠っていた(彼女は朝方まで起きていたようでとにかく眠く、口数もそれで減っていたらしい)。
別に会話が無かった事自体が問題だとは思わない。僕は会話が無くても彼女の隣が居心地が良かった。もちろん彼女が退屈していた可能性は十二分にあるけれど。
問題は僕達が長年連れ添った訳でもなく、ましてや友人ですら無い事だ。関係を築くための土台の時間も、前提の関係性もきっとまだ足りてない。
次はもっと自分の事を話そう。彼女の事を聞こう。僕達はまだお互いの事を知らなさすぎるから、その過程を飛ばしているから、本当に好きなのか分からないんだ。
もっと単純に考えてもいい。僕は顔だけで好きになったことがないのだ。微笑みを浮かべる偶像のまま好きにはなれない。
彼女がアイドルで無くなった時、僕はきっと初めて恋をするのだと思う。
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こういう事を決心すると、大抵連絡が取れなくなって次が叶わなくなる俺の人生。幸福の後には必ず不幸がやってくる事を疑えないよ。