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嫌われたな、と思った。
そう感じた瞬間、身体中の毛穴が開いてじんわりと汗が滲んで全身が総毛立つ。そして心の奥底から冷えた感覚が全身に伝わって、寒気と脱力感に襲われる。風邪を引いた時によく似ている。病は気からとはよく言ったものだと思う。
遊びに行った数日後、返事が返ってこなくなった。それはいい、あなたのかつての信仰対象は1ヶ月近く返信が無い事もままあったし、わざわざ返信するような中身のある会話だった訳でもない。問題はその後、以前勧められた漫画の感想を送っても返事が無かったことだ。
ふむ、とあなたは考える。彼女は死んでしまった、もしくはスマホも触れないような重体なのかもしれないぞとあなたは本気で心配した。あなたはとても純粋で健気で、頭がおかしかった。
しかし困った。家も知らなければ親も知らないのだ。たまたま見つけたInstagramのアカウント(たまたまである)を毎日確認する事しかできない、本当に困った。
10日程経った頃、ストーリーが更新されているのを見て、あなたはようやく自分が嫌われた事に気が付いた。身体中の血が、それまでの熱を伴って一斉に引いていくようだった。
どうしてだろう、と首を捻ってみても分からない。思い当たる節が無かった、からではない。逆だ。心当たりがあり過ぎて原因がどれなのか判断がつかなかったのだ。
3年前と似ている。どうやらあなたの予想は見事に当たってしまったようだった。自分が不幸になる予想はよく当たる。幸せになる想像ができなくて、いつからか悲しい想像ばかりするようになったからだ。
仕方が無いな、と思う。そもそも最初から夢を終わらせようと思いながら選んだ道だった。予定より少し期間が伸びただけ、1ヶ月。
ただ、3年間温め続けたものにようやく気が付いたのか、この1ヶ月で芽生えたのかわからないそれに、きちんと終わりが言い渡されない事をあなたは悲しく思った。昔からそうなのだ。終わる事ばかり夢見ているのに自分の手で終わらせられない性質だった。我ながら面倒な人間だ。
この悲しみから立ち直ったあなたはまた、懲りずに終わりを想いながら恋をするのだろう。
あなたはもはや誇りだけで生きているようなものだ。何故わざわざ傷付くとわかった上で底の見えない穴にその身一つで飛び込んだりするのだろう? 何も狂ったマゾヒズムに傾倒している訳では無い。
あなたが傷付くのは信仰の証明の為だ。
不条理な暴力を前にあなたは信仰を持ち続けられるだろうか? これはそういう問題だ。
あなたは試されている。傷つきながら誠実であり続け、人に優しくし続ける態度を。例え相手がもはや此方を見ていなかったとしても。殆ど自傷行為みたいなものだ。
神は乗り越えられる試練しか課さないだろうか。10年、20年、あるいはこの生の終わりの際まで続く試練だ。もっとも、あなたの神はもはやあなたの胸の内にしか存在しえないのだが。
嗚呼、棒に振る未来が良く見通せる人生の、なんと嘆かわしいことか。それでもあなたは誇りに思っている。あなた自身と、あなたの歩んできた道。あなたの神と、それを胸に抱き続けられる事を。あなたを照らさなかった光を。
自らの孤独に気が付かないままどこまでも進み続ける光はあまりにも美しくて、僕は助けにもならないと分かっていながらせめてその周りを包む暗闇でありたかった。
傷など一過性のものに過ぎない。歩みを止めない光にあなたは成らなければいけないのだ。
光を失った後に出来るのはそれくらいだ。
あなたは信念に反さなかった。あなたは嘘をつかなかった。あなたは誠実であった。あなたはあなたの信仰を守った。
それで嫌われたのならば仕方の無い事だ。
努力が実を結ばない事は往々にしてある。というかそんなのがしょっちゅうだ。だからといって全てを投げ出すことは無い。
何故ならあなたは知っている。実がならずとも花が咲いた事を。花が咲かずとも葉が繁った事を。葉が繁らずとも茎が伸びた事を。茎が伸びずとも芽が出た事を。
忘れてはいけない。どんなに小さな一歩であろうと前に進んでいる。可能性だけを信じて歩み続ける姿こそ、何より気高いあなたの信じた光そのものであると。
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そうやってあなたは一人、また一人と置いていく。或いは、置いていかれるのだろう。