私は生まれた時から特別だった。我が家は日本の裏から平和を守る為に暗躍する陰陽師と呼ばれる稼業の名家の1つだった。
我が家は神具の力である神術式を継承し、その力をもって妖魔を退治するのが我が家の生業だ。私も父にそう言われて育ってきた。
本来ならば、この神術式は憎たらしい兄上に継承される筈だったのですが、神も嫌っていたのでしょう。
兄上には神術式は継承されることなく、無事に私に継承されました。
陰陽師は生まれついての才能が必要とされる。その才能は霊力であったり、戦闘に対する適応力であったりと様々あるが、なによりも優先されて見られるのが血筋である。
その血筋さえあれば神具から神術式、固有術式が与えられる。
神術式は勿論のこと、固有術式ですらただの陰陽師では一生涯掛けても辿り着けるかどうか。
だからこそ、神術式を継承出来ずにいた兄上を無能と貶していた両親に影響を受けて私自身も兄上を無能だと下に見ていた。
だが、どれだけ見下そうとも兄上は一切応えた様子はなく、代々続く名家の血を継ぐ者とは思えないほどチャランポランな性格に育ってしまった。
それが余計に腹が立つ。あんな礼儀作法も知らずに育った男だというのに、家の者はあの男が当主であればと影でコソコソと話すのだ。
それは小学校でも同じこと、いくら名家といえど義務教育は受けなくてはならず、兄上と同じ小学校へ入ってみて分かったのは、周りの連中は全て私以下の凡愚であるということ。
何の教えも受けておらず、使命もなくただ生きてきたガキと同じ空間にいる窮屈さ、それは想像以上に退屈で窮屈なものだった。
IQが20違うと会話が成立しないというのは有名な話。幼い頃から名家として教育を受けた私とそうでない者達とでは会話は成立などするはずもなく、受ける授業も低レベルなお粗末なものばかり。
入学早々に学校に通うのが億劫になってしまった。
そして嫌でも見てしまうのが、通学路で友人と思わしき者らと楽しそうに通学する兄上の姿。
何故に選ばれた自分がこのような思いをして通っているというのに、無能と蔑まれている兄上があのように楽しそうに通っているのか?
「……いいな」
幼かったが故に口に出してしまった無能な兄上への羨望の言葉。今思えば恥ずべき行いの1つだ。
あのように鬼龍院家の名に泥を塗るような男に羨ましいなどと口にすることなどあってはならない。
そして何年かの時が経ち、学年も上がり低学年から高学年に上がる頃には周りにグループが幾つも出来上がっていたが、自分の周りには誰1人として集まることはなかった。
そのことについては何の不満もなかった。むしろ、話の合わないガキとの相手をしなくていいぶん気が楽ですらあった。
問題はそういった教室で1人浮いている存在に対する者への対応の仕方だった。
陰口や仲間はずれなどは大して問題ではない。問題などは上履きや教科書の類が無くなったりゴミ箱に捨てらることだった。
前者であれば無視すれば実害はないのだが、後者は明らかな実害を被っているので、即座に家の者に法的処置をとらせるように命じると、翌朝にはHRの時間に先生の口から今後同じことが起これば各家庭に連絡がいくと忠告させれば、その日以降から物が無くなったりすることは一切なかった。
こうして、私の小学校時代は誰とも関わることなく過ぎていった。
そんな私とは対照的に兄上は誰からも好かれるような小学生時代を送っていたと記憶していた。
大して興味はなかった。自分とは違って才能が……神具から得られる神術式を持っていない無能だ。
なのに、何故選ばれた私よりも兄上の方が人生を楽しんでいるのだろうか? そんな疑問を母に問うてみたこともある。
「あの子はね、貴方と違って普通なの。だからこの家では無能とされているのよ。けど、貴方はあんな風になっちゃダメ! だって貴方は特別なのですから……」
そう頭を撫でながら言い聞かせるように母は私に言ってきた。
特別だから幸せにはなれない。だったら特別じゃなくてもいい。そんな言葉が一瞬浮かんだが、もし自分が特別ではなくなったら唯一の理解者である両親も自分から離れていってしまう。
「そんなのは嫌だ……」
漠然とした不安や恐怖が喉に出かかった言葉を飲み込んだ。
それからの私はより一層、鬼龍院家の当主としての立場を重んじて行動してきた。
中学に上がる頃には私は名家の令嬢として恥じぬ立ち振る舞いを習得しており、兄上は一般の中学に進学したが、私は名家の集う俗に言うお嬢様学校というものに進学した。
そこでは私と同じように気品さと立場を重んじる人間ばかりが通っており、私はようやく言葉を交わせる人に出会えた気がした。
そこでは友人と呼べる者らも作ることが出来た。それでも、互いに自身の家柄の差というものがあり、必然的に上下関係が発生する。
誰が最初に喋りだすか、誰が前に立って歩くか。それは傍から見れば友人関係ではなく、主人と従者のような関係性だった。
それは、いつか見た兄上と友人のような気安い関係ではないと自覚していた。それと同時に、そんな関係をしていれば自身の家柄に傷をつける事態もあり得るとも理解していた。
特別であるからこそ、そうでない兄上の存在が嫌に気に触れる。
目障りだった。いつも能天気に好きなことだけする兄上の行動に、そんな兄上の周りに集う連中も……。
何故こんな連中を救う為に私が陰陽師にならねばならぬと葛藤した夜も少なくはない。
だが結局はそういう家に生まれたのだから仕方がないと諦めていた。
衣食住……どれをとっても普通の者よりも豪華なものばかり、それは兄上と比べてもそうだ。
兄上が着る服はそこら辺に売っている数千円かそこらの安物。それに比べて私の着ている衣服はどれも数万円を超える高級仕立て。
食に関しても、私は両親と共に日々の健康に気遣った料亭に出されても遜色ない食事に比べて、兄上は残り物を自身で調理して食している。
住とて兄上は空いている小さな一室に対し、私は大きな広々とした3つの部屋を譲渡されていた。
そんな私に対して兄上は一切文句をつけるどころか「え? そんなに貰って逆に面倒じゃない?」と言い返してきた。
……正直、ええ本当に悔しいことに正直そうは思ってはいた。
衣装の方は別にいい。着心地も見栄えもどれをとっても文句はない。食に関しては、たまにはいつもじゃ口にしない食べ物……兄上が偶に食しているお菓子なる物も口にしてみたいと気になったりもするが、そんなの鬼龍院家の当主の口から出すわけにもいかない。
部屋に関しては本当にその通りで、ここまで大きい部屋を貰ったところで私以外に使用する訳もないので正直に言って持て余している。
そんな私の憂鬱も今日の妖魔退治で全て吹き飛ぶと思っていた。
この日の為に私は常日頃から父上に神術式の手ほどきを習っていた。
無能である兄上と、神術式を継承された私の力の差。此度の戦いでそれが証明され、今度こそ明確に兄上に勝てる。そう考えていた。
結界は当然のことながら私は予想外に現れた上級妖魔と中級妖魔を無傷で退治、それに対して兄上が退治できたのは低級も低級な下級妖魔一匹だけだった。
どうだ、私はあなたよりも強い! 兄上よりも優秀なのだと言外に言ってみせた。
だが、それでもあなたが私に見せたのは悔し気な顔ではなく、いつも通りの気の抜けた顔だった。
それどころか、こちらを子供扱いする始末。
何故? どうしてあなたはそうもヘラヘラと気にせずいられるのですか!?
気に入らない! そうやって笑うあなたの態度が本当に気に入らない!!
「いつか、私の前に跪かしてあげますよ……兄上」
評価が1しかない!?
これからもっと面白くしていくから、どこが悪いとかここを伸ばして書いてとかの感想を送って!!?マジで……!!