無能の陰陽師はフィジカル最強!   作:リーグロード

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ヒロインって難しいね。


初恋

 あの妖魔退治から俺は鬼龍院家から本格的に出来損ないと認定され、その日以降から俺は妖魔退治に参加せよとは言い渡されなくなった。

 

 そして、あれから月日もまた過ぎ去ってゆき、桜咲く春の頃、俺は高校3年になり大学受験を視野に入れる時期になった。

 

 今日はあの日友人となった厳斎と休日に出掛ける約束をしていたので、貴重な休みを男と一緒に街を歩くことになっている。

 

「いや、酷い言い草だな。誘ってきたのは刹の方だろ?」

 

「ははは、すまんすまん。俺も出来れば彼女とかと出掛けたかったなって願望がついねじ曲がって口に出たんだよ……」

 

「随分とねじ曲がった言葉だな!? っていうか、お前学校の方では女子にモテまくってる噂じゃねえか!?」

 

「ああ……。確かにラブレターを貰ったりとか告白とかはよくされるよ。でもさ、全員タイプじゃないんだよね……」

 

「はぁ……、死ねよ!」

 

 ガチの殺気を飛ばしてくる厳斎からの圧に、俺は軽く笑って受け流す。

 前世から彼女無しだった刹にとって、彼女とは相思相愛のラブコメ的な存在であると高すぎる理想を持っており、ある種の恋愛モンスターとなってしまっている。

 

 前世の記憶を持つ刹にとって高校生は年下の女の子といった認識であり、とても一人前の女性としては見れないでいた。

 

 今回の厳斎との約束もそんな女子からのお誘いをていよく断る言い訳として利用したいがためのものだった。

 

「かぁ~、理想が高すぎるイケメンほど厄介なものはねえな!」

 

「自分でも自覚してるんだけどね。こればっかりは心の問題だから……」

 

 嫌味ったらしい顔で睨んでくる厳斎をあしらいながら、目的なくぶらぶらと街をぶらついている。

 

 今の時期に見たい映画は放映していないし、ゲーセンでやりたいゲームもないし、本格的にどうするか悩んでいると、道の先でなにか騒ぎが起こっていた。

 

「あの……、やめてください!」

 

「へへへ……、いいじゃんかよ」

 

「俺らと一緒に遊びに行こうぜ!」

 

「そうそう、俺ら金持ってるから奢ってやんよ!」

 

 どうやら、いかにも漫画で出てきそうなチンピラ3人組が1人の女性に絡んでいるみたいだ。

 周りの人は遠巻きに眺めているが、相手のチンピラのガタイがいいのが怖いのか、誰も助けに行こうとしなかった。

 

 相手の特徴を具体的に言うと悪役プロレスラーみたいなゴリゴリの筋肉ダルマって感じだな。

 

「厳斎、お前助けに行けよ。あの程度の連中、妖魔退治に比べれば大したことないだろ?」

 

「アホ抜かせ! 普通にあの見た目は怖くてビビるわ! それに術式は人前じゃ絶対に使っちゃなんねえから、俺じゃ多分2人はやれても残りの1人にやられる」

 

 確かに、陰陽師の強さの大半は術式だ。それ抜きにしても妖魔という化け物を相手にしているから、一般人程度との喧嘩ならば大抵は勝てるだろうが、基本的に刀で戦うのが主流な鬼灯家の厳斎に徒手空拳であの体格の相手3人を同時に喧嘩しては勝てないか……。

 

「しょうがねえ、あれは俺がぶっ潰すか……」

 

「最初からそうしろよ……。お前ってそういう面倒くさがりな部分あるよな」

 

 だって、下手に助けて惚れられても厄介だからな。こっちが恋愛感情を持っていないのに、一方的に好意を押し付けてくる女子ほど厄介な存在はないぞと教えてあげたら何故か尻に蹴りを入れられた。

 

「こらこら、君たち。下手なナンパは無駄に女の子を怖がらせるだけなんだから、そこらで諦めてお家に帰りな」

 

「ああ゛ん? なんだテメェは……?」

 

「偉そうに説教かよ!?」

 

「とっとと失せろ、このガキ!!」

 

 う~ん、取り付く暇もないとはこのことか。

 っていうか、このテンプレート的なDQNの思考回路ってどうなってんの? ここ異世界版の日本とはいえちゃんとした法治国家だぞ。そういうの脅迫罪とかに該当しそうなんだけども。

 まあ、周りの連中まったく警察とか呼ぼうとはしないけれども……。

 

「あのさ、そうやって高圧的に誘って何人ぐらい女の子とデート出来たの? はっきり言って、成功率低くない?」

 

「「「っぐ、黙れぇぇぇ!!!」」」

 

 俺の言葉がクリーンヒットしたのか、地面に突っ伏して叫び声を上げるDQN達。

 なにこいつら、面白いかよ……。今のこいつらの絵面、プロレスラーのチンピラっていうよりもマッチョな芸人感が凄いな。

 

 ワンチャン、こいつら不遇系の芸人で売った方がナンパの成功率上がりそうな気がするんだが……。

 

「くっそがぁ! 馬鹿にしやがって、ちょっと顔がいいからって俺らのことを見下してやがんだな!?」

 

「いや、俺が見下してんのはお前らの見た目ってよりかは言動の方にあるんだが……」

 

「っテメェ!!」

 

 呆れたように溜息を吐くと、それが馬鹿にされたと勘違いしたのか俺に対して拳を振り上げてきた。

 普通ならこの距離で不意打ち気味で放たれたパンチを一般人が防げる筈はないのだろうが、俺の目からしてみればスローモーションに見えるぐらいにゆっくりとした動きだ。

 この程度の攻撃など避けるのも容易いものだが、ここは分かりやすく力の差を理解させる為にあえて受け止めてやった方がいいだろう。

 

「おっと、危ないな」

 

「っなに? うごっ!?」

 

 あっけなく片手で受け止められたことに驚いた表情を浮かべるチンピラだったが、すぐさま止められた拳に走る痛みに顔を苦痛に歪ませる。

 見た目モヤシっぽい俺の見た目に油断していたようだが、フィジカルチート持ちの俺の握力はゴリラ以上だ。

 勿論、本気で握りつぶそうとしていないから骨は砕けてはいないが、それでも膝を屈させる程度の力は込めている。

 

「おい、マジかよ……」

 

「すっげぇ……」

 

「どんな力してんだ……?」

 

 傍から見ればプロレスラーのようなガタイのいい男がモデルのような細見の男に簡単に組み伏せられる光景に周りで見ていただけの連中は驚いていた。

 中にはスマホで撮影している奴もいるが、流石に許可を取らずに撮るのはマナー違反なので止めて欲しい。

 

「随分と鍛えてるようだけど、まだまだ鍛え方が足りないね。腕立て伏せからやり直したほうがいい……」

 

「っっっ、ぐうぅぅ……!!」

 

 さて、ここらで締めるか……。

 俺は掴んでいた手を離すと、そのまま立ち上がって痛みに息を荒げるチンピラに目線を合わせる。

 

「このまま残りの2人もまとめて相手してやってもいいけど、お前らも顔を腫らして家には帰りたくないだろ? だからさ、今日のところはもう家に帰りな……」

 

「っ、はい……」

 

 今の一連の流れで力の差を理解できたようで、残りの2人を連れてそそくさと帰っていった。

 あの2人も俺の見た目とは違う実力に不気味さを感じて大人しくしてたし、今後あいつらからの余計な逆恨みとかは心配しなくてよさそうだ。

 

「あの……、ありがとうございます」

 

「ああ、気にしな……いで……」

 

 あいつらの影に隠れて今まで見えなかった女の子の顔を見た瞬間、俺の心臓が鼓動を跳ね上げた。

 茶髪のゆるふわパーマ、目はくりっとしており、ふわりと香る香水の甘い匂い、背は俺の顎下まである女子にしては中々の高身長で、胸腰お尻はボンキュッボンの主張の激しい体格をしている。

 総合的な評価で言えば無茶苦茶俺の好みのタイプだった。

 

「? どうなさいましたか……」

 

「ああ、いやすまない。あのチンピラ共がしつこく食い下がる理由が理解できてね。なるほど、これだけ可愛い子なら万が一の可能性にも賭けたくなるわけだ」

 

「ふぇっ!? あ、ありがとうございます」

 

 俺の言葉に顔を赤らめてお礼を口にする彼女に、俺は少し欲が湧いてしまった。

 

「本当なら、このままさよならするつもりだったけど、君に興味が湧いちゃった。どうだろうか、もし君に時間があって俺にお礼をしたいというのなら、このあと近くのカフェで一緒にお茶でも……」

 

「えっと、私はいいんですが……。その、後ろの方は……?」

 

 後ろ? あっ、そういえば厳斎と一緒に出掛けていたのをすっかり忘れてた。

 チラッと後ろを振り返ってみると、顔に青筋を浮かべて首を搔っ切るポーズを送る厳斎がそこには立っていた。

 

「ごめんごめん。つい彼女に見惚れちゃって忘れてた」

 

「なあ、刹。俺はお前のそういう素直なところは好きだぜ。でもな! 女にモテているテメェは死ぬほど嫌いだ!!」

 

 中指を立てて先程のチンピラの仲間といっても信じられそうなくらい極悪な顔で迫ってくる。

 一応、俺が悪いのは自覚はしているが、あんまり鬱陶しいので厳斎を引き剝がす。

 

「今度また出掛ける時になんか奢るからさ、今日のところはここいらでお開きってことで!」

 

「っち! 今度駅前のラーメン餃子セットと替え玉3回で手を打ってやる」

 

「OK! 流石は親友だ。話が早くて助かるよ」

 

 舌打ちしてはきたが、これも俺と厳斎のコミュニケーションみたいなものだ。

 とりあえず、厳斎にはまた次の機会に飯を奢るということで、俺は彼女と2人きりでカフェに行くことにした。

 

「あの、さっきは本当にありがとうございました」

 

「別にそう何度もお礼をしなくても大丈夫だよ。俺もこうして好みの女性とカフェを楽しめてるしね♪」

 

「……っっっ」

 

 俺がニッコリ微笑みかけると、彼女は顔を真っ赤に染めて下を向く。

 その姿も可愛らしいのだが、俺としては彼女の顔を見ていたいのでさりげなくメニュー表を取って彼女に差し渡す。

 

「どれにするか決めた? 俺はコーヒーとホットケーキにしたよ」

 

「えっと、なら私はオレンジジュースとこのワッフルにしてみようかな」

 

 注文が決まったら店員さんを呼んで、それぞれ選んだ品物を注文する。

 頼んだ物が運ばれてくるまでおよそ5分か10分は掛かるだろうし、その間に彼女ともう少し仲を進展させておきたい。

 

「そういえばまだ自己紹介もしてなかったね。俺の名前は鬼龍院 刹。よろしく!」

 

「私は白銀 明日香って言います。こちらこそよろしくお願いします」

 

 互いに自己紹介を終え、それからは軽い世間話をしながら時間を潰していく。

 そんなこんなで、会話を弾ませているうちに飲み物とデザートがやってきた。

 

 刹はわりとインスタなどに手を出しており、明日香もTwitterなどに頻繫に投稿しているようで、互いに写真を撮り終え投稿を済ませると、早速食べ始める。

 ここのカフェはそこまでよく通うというわけではないが、何度か通っているのでここの味はよく知ってるつもりだったのだが、今日のはいつもよりも一段と美味しく感じられる。

 

「ここのカフェ、初めて来たけど美味しいね♪」

 

「お口にあったなら良かったよ。俺も常連ってほどじゃないにせよ、この店は何度か通ってるからね。でも、今日のはいつも以上に美味しく感じるよ」

 

 何故だろうね? と彼女の眼を見つめながら言うと、明日香は恥ずかしそうに頬を紅潮させながら目を逸らした。

 そんな俺達の会話を聞いてたであろう近くの席に座っていた客がコーヒーを注文していた。

 確かに、今の俺達のやり取りは付き合いたてのバカップルのように見えただろう。

 

 言っておくが、俺は年齢(前世含む)=彼女いない歴の男だ。

 お遊びでも女子と付き合いどころかデートもしたことがない。

 

 あんなやり取りを見せといて噓だ! と言う奴もいるかもしれないが、これは本当のことだ。

 そんな俺があんな少女漫画みたいな真似ができたのは単純に俺の顔がいいからだ。

 

 前にも言っただろうが、俺の顔はイケメンの部類にはいる。具体的にイメージしやすくするならノゲ○ラの空の黒髪真面目バージョンって感じかな。

 これは自画自賛ではなく、実際に女子にモテているという結果から自信に繋がり、自信は大胆さに繋がってくる。

 

 失敗を知らない者と成功を知らない者では取れる行動は大きく変わってくる。

 その点でいえば、成功を知らない者(前世の俺)失敗を知らない者(今世の俺)の経験を併せ持つ俺は理想の仕草や言動を選び取れることが出来る。

 

 前世の経験から相手の顔色を伺い、今世の経験から相手の懐に躊躇なく一歩踏み入れる勇気を持てる。

 後の知識はラブコメなんかの二次元から摂取している。

 

 漫画知識も結構侮ることはできない。あれは女性の憧れが詰まったものだ。

 使い時や自分に合ったものであれば充分な武器になれる。

 

 そんな今の俺の全力を尽くして食事を終えるまでの合間合間に彼女にも俺に興味を持ってもらおうと趣味や得意なことを聞いたり喋ったりと会話を交わす。

 ここで重要なのは一方的な会話ではなく、相手にも喋らせて楽しませたり、逆に自分から会話の内容を広げる努力も怠らないこと。

 ただし、相手の興味を引きそうなことが大事で、自分だけ満足するような内容には決してしないこと。

 

 そうこうしているうちに皿の上からデザートが消えてお会計の時間が迫ってきた。

 

「そろそろ出ようか」

 

「そうですね」

 

「お会計は合計2000円ちょっとか、それじゃここは俺が……」

 

「えっ、そんな私が払いますよ。ここに来たのも私のお礼ですし!」

 

 レジ前で財布を出そうとする明日香の手を止めさせ、俺は諭吉を1枚取り出して店員に渡す。

 そのままお釣りを受け取って店を出る。

 

「あの、本当にお金のことは気にしないでください。私、ちゃんと払いますよ!」

 

「別にそこは気にしないでいいよ。だって君にはこんな形でのお礼よりももっとしてほしいお礼があるからね」

 

 スマホを出してラインの友達追加画面を彼女に見せる。

 それで彼女も俺のしてもらいたいお礼を察したのか、同じくスマホを取り出して友達登録をちゃちゃっと済ませる。

 

「この程度のことなら、お礼のうちには入りませんよ!」

 

「ダ~メェ! 明日香は可愛いんだから、これは正当な報酬になるよ」

 

 また財布からお金を取り出そうとする明日香の手をギュッと握って止めさせる。ここまでくればプライドの問題だ。

 今日のところは俺が払う。だから、もし次にデートする機会があったら、その時は奢ってもらおうかな。

 

「あなたは……ズルいです。来週の日曜日、その日は予定が空いているので、予定が合えばですが……また一緒にデートしてくれますか?」

 

「──っ、勿論だよ」

 

 そんな照れた顔でデートのお誘いしてくるなんて、こっちの方がお願いします! って土下座したくなっちゃうじゃないか!? 

 クッソォ! マジのガチ惚れじゃねぇか……。顔が異常なくらいほてってまともに明日香の顔が見れない。

 

「それじゃ、今日はもう帰るよ。来週、俺楽しみにしてるから!」

 

「私も! 来週はもっと可愛い服とか着てくるから!」

 

 これ以上可愛くなんのかよ! っていうか、それってつまり、俺のことを意識している……ないし、好きってことなのでは? 

 

「つくづくイケメンに生まれて良かった」

 

 前世では考えられないくらい充実した時間を過ごした帰り道、思わずそんな言葉が漏れてしまった。

 




レムを……リゼロのレムクラスのヒロインを作りたい!!
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