「なあ、岡崎」
ふと雑誌を読むのをやめ、春原が声を掛けてきた。
「なんだ?」
「あの穂積って奴、一体どういうつもりなのかな?」
とっくに卒業して大学生活エンジョイしてる筈なのに。
「渚ちゃんの元クラスメイトだって言っても、実際一緒に授業受けたのひと月くらいだっていうじゃん。休んでいる渚ちゃんの家に授業のノート届けたのも一学期限り。その後一度も見舞いに行かなかったみたいだし、そんなのがいきなり横からしゃしゃり出て来てさ、渚ちゃんにちょっかい出すなんて迷惑な話だよね」
「……あの野郎、一年の時からあいつに目ぇ付けてたみたいだぞ」
「マジ!?」
「ああ」と、驚く春原に、俺は雑誌に目を通しながら何気なさを装って応えた。
「隣のクラスに可愛い子がいるって二年間想い続け、三年目で同じクラスになって喜んだのも柄の間、コクる前にあいつが病欠し続けてそのままできずに卒業。
——で、以来忘れられずにしつこく想い続けたあいつに再会できて、デートに誘ったついでに今日その念願を果たしたってわけだ」
「って、おい、岡崎っ」
俺の話に目を
「なんでおまえが、そんな事知ってんだよ!?」
「ここに来る途中、偶然その場面に出くわしたんだよ」
思い出したくないのに、なんで俺はさっきから春原にこんな事をべらべら喋ってんだろう。
自分でも自虐的だと思いながら、俺は話し続けた。
「あの野郎がそう言って、あいつに付き合ってくれってコクってたとこに」
「そんな、マジかよ……」
ショックを受けた春原は呆然と呟くと、ハッとして肝心な事を俺に
「で、渚ちゃんは? なんて答えたんだよ」
「まだだ。答えは次会った時にって、あの野郎逃げたからな」
「そっか……」
一先ずホッとして浮かしていた腰を床に落とした春原だったが、腹の虫が収まらずに苦々しく吐き捨てた。
「くそっ、大学生のクセして渚ちゃんに手ぇ出すなんて、なんて野郎だよっ」
「いや、この場合大学生は関係ないと思うぞ」
「岡崎っ、なんでおまえそんなに落ち着いていられんだよっ」
俺の冷静なツッコミに春原は憤然となった。
「渚ちゃんがぽっと出の奴にかっ
「慌てたら、どうにかなるのか?」
むくりと起き上がり、俺は冷ややかに春原を見据えた。
それに一瞬怯んだ春原は、口ごもりながら俺に言い返した。
「え…、だ、だからほら、渚ちゃんにそんな奴と付き合うなとか——」
「俺達はただヒマ潰しとパン欲しさにあいつの手伝いしてただけだ。そんな俺達にあいつが誰と付き合おうと、どうこう言う権利なんてないだろ」
こいつを見ていると、まるでさっきまでの自分自身を見せつけられているようで、余計惨めで腹立たしかった。
「あいつが俺と一緒に居たのは、学校で俺以外に話す相手が居なかったからだ」
病気でダブったあいつを敬遠し、誰も相手にしようとしなかった。たまたま気紛れに声を掛けた俺以外は。
「けど今あいつには他に話せる相手が居て、頼れる奴も多分これでできる。だったらもう俺は——俺達は必要ないんだよ」
春原というより、自分自身に言い聞かせるように俺は言った。
「元々あいつは人に好かれる性格してるんだ。演劇部が復活して部員が集まれば、もっと友達も増える。そんな時俺達みたいな奴が傍に居たら色々とマズイだろ」
「………」
「おまえももう十分ヒマ潰しになった筈だ。そろそろあいつに見切りを付けたって別に構わないだろ。いつも俺達はそうしてきたんだから」
面白そうだからとちょっかい出し、飽きたらそれで終わり。さっさと手を引いてまた新しいヒマ潰しを探して無為に時間を潰す。そうやって俺達はこの二年間過ごしてきたんだ。
「……岡崎、おまえそれでいいのかよ?」
「いいも何も、あいつと俺達とでは住む世界が違うんだ。関わるべきじゃなかったんだよ」
そう、何も変わらないなら、最初から関わるべきじゃなかった。そうすればこんな想いする事もなかった。
俺はごろりと腕枕をして床に転がり、硬く目を