いつもの代わり映えのしない風景の中を、俺は一人歩いていた。
本来なら登校する生徒達で
それも当然だった。この時間こんな所を歩いているのは俺くらいなものだ。
後はみんな今頃教室で真面目に授業を受けている。
まぁ、春原は寮の自分のベッドの上でまだ寝てるだろうが——
何もかも、どうでもいいことだった。
俺は目の前に続く緩やかな長い坂道を見上げ、溜息をついた。
この町は嫌いだ。思い出したくもない、忘れたい想い出だけが増えていく場所だから。
毎日学校に通い、授業を受け、友達とだべり、そして帰りたくもない家に帰る。何も変わる事は無い、くだらないだけの日々になんの意味があるのだろうか。
そんな事考えるだけ無駄だった。
だから俺は何も考えずにゆっくりと坂道を歩き続けた。
目の前の最後のカーブの向こう、そこから直線になった坂道の先に学校の校門がある。
俺はゆっくりとした歩調でそのカーブを曲がり、そして目を
そこに居るはずのない人物が一人、人待ち顔で立っていた。
「岡崎さん、おはようございます」
ホッとしたように顔を
「おまえ、なんでここに……」
「待ってたんです。岡崎さんが来るのを」
「待ってたって——」
何時来るかも知れない俺を、朝早くからずっと一人でここで……
一瞬その言葉に胸が熱くなった俺は、それを振り払うように言い返した。
「俺が居なくても、もう一人で学校に行けるだろ、おまえ」
「はい。でも、一人で行くのは淋しいですから」
「っ……」
胸を押さえるように片手を握り締め、真っ直ぐに俺を見据えて言った古河に、俺は咄嗟に返す言葉が思い付かず、絶句した。
あれからずっと目を
親父と喧嘩し、決定的に親子の関係が壊れてしまったあの日から、俺はずっと独りだった。春原とつるんで馬鹿やっててもそれは変わりなかった。
なのに、古河と出会い、まるでそれが当たり前のように俺はこいつと共にいるようになり、独りじゃなくなった。
先週までは——
だから俺はまた元の独りに戻って、心の何処かで淋しいと感じてしまっていたのだ。こいつが言うように。
俺が何も言えずに愕然としていると、古河は
「——昨日、春原さんから皆聞きました。岡崎さんが急に部室に来なくなった
——あいつ、こいつに何を言ったんだ!?
「あの時、岡崎さん聞いてらしたんですね。穂積くんの話を」
「——っ」
春原の野郎、よりによってあの事をこいつに喋りやがってっ!
俺は今更ながらに自分の迂闊さを呪い、同時に春原に対する言いようもない怒りが込み上げて拳を握りしめた。
「別に聞きたくて聞いたんじゃねぇ。あんなトコで話す方が悪いんだよ」
古河から顔を
「はい、嫌な思いをさせてしまって、ごめんなさいです」
「何もおまえが謝る必要ねぇだろ。おまえが誰と付き合おうと、俺には関係ねぇんだから」
「そうですね……」
突っぱねるように言った俺の言葉に、古河が傷ついたような
俺に拒絶されたように感じたんだろう。古河は話が続けられずに何度も口を開きかけては
その姿を見て、俺は訳もなく罪悪感にかられた。
——一体俺は何やってんだ……
もうこいつとは関係ないんだから、このままこいつなんか無視して行ってしまえばいいんだ。
なのに、何故か俺はそこから動けずにいた。