気が付けば、俺は自分の家の玄関の前にいた。
なんで俺はこんな所に来てしまったんだろう。何の温もりもない、居心地も悪いだけの他人の住む家なのに。
でも、ここからまた何処かに行くのも億劫だった。
気が重かったが、俺は玄関の戸を開けて中に入った。
誰も居ない閑散とした居間を抜け、自分の部屋のベッドの上に倒れ込むように寝転がる。
別に何かした訳でもないのに、何故か酷く疲れていた。
俺はベッドの上に仰向けになり、目を
心身共に疲れ果て、何も考えたくなかった。ただ眠りたかった。
なのに何故か、
払っても払っても、それは消える事はなかった。
思い出したくないのに、考えたくないのに、まるで俺を嘲笑うかのように。
行かなければ、見なければ良かった。そうすればこんな想いする事もなかった。
ただ、日曜日渚が偶然再会した元クラスメイトと会っていただけだと、そう思うだけで済んだのに。
——本当に楽しそうだったな……
俺と一緒の時には、一度も見せた事がない笑顔で渚は笑っていた。
そう、両親の前でしか見せなかった、あの安心し切ったような心からの笑みで。
いつか俺も、自分の力で渚からあの笑顔を引き出せる存在になりたいと思っていたのに、あいつは再会したばかりであんなにも簡単に引き出してみせたのだ。
悔しくて、ひどく惨めだった。
出会ってからずっと、渚は俺を頼りにして頑張っていたから、少しは渚の力になっていると
——今までお互い支え合って来たと思ってたのに、あいつは自分が思っているほど俺を必要とはしてなかったんだろうか……
ごろりと横向きになり、俺は窓の外に目をやった。
何時の間にか空はうっすらと茜色に染まり出していた。
——渚……もう家に帰った頃だろうか……
ふと、そんな事を思った俺の耳に、部屋の戸の開く音が飛び込んできた。
ギクッとして俺はガバリと跳ね起き、戸口の方を見た。
そこに親父がいた。
くたびれ果てた顔に笑顔を張り付けて。
それを見た途端、胸の奥から言いようもない激しい怒りが込み上げてきた。
俺はそれを必死に抑え、干からびた喉から声を絞り出す。
「……なんだよ」
「いや、朋也くんがこんな時間家に居るのは珍しいから、どうしたのかと思ってね」
「——っ!!」
何時も俺が居ても居なくても関係ない癖に、俺なんかもうどうでもいいと思っている癖にっ。なんで人が滅入っているこんな時に、まるで測ったようにそんな事を言いにやって来るんだっ。
嫌がらせにも程がある。最低最悪の
「俺がどうしようと、あんたには関係ねぇだろっ」
思わずそう叫び、俺は戸口に立つ親父を押し退けて外に飛び出していた。
何時までこんな仕打ちが続くのか。もうたくさんだった。勘弁して欲しかった。あんたはそれ程までに俺が憎いのか。いや、親父にはもうそんな感情すらない。あの日から、親父の中には息子なんてどこにも存在しないんだから。
苦しかった。心が
もう一歩も走れずに俺は立ち止まった。
膝に手を付き、ゼイゼイと道の真ん中で肩で激しく息を吐いた。
その視界の端に「古河パン」の看板が見え、俺はハッとなった。
家を飛び出した後、何処をどう走ったのか自分でも分からないのに、何時の間にか俺はこの場所へと来てしまっていた。
自分でも知らずに俺は求めてしまっていたのだ。渚を。何時ものようにあいつの笑顔を見て救われたくて。
でも、今は会いたくなかった。
無理矢理呼吸を整え、俺はその場から立ち去ろうとした。
その時、聞き覚えのある声が俺の