むなしさだけが心にのしかかる。
言いようもない徒労感が全身を
三食の献立すら頑張った自分へのご褒美に変え、前に進もうとしていたあいつの健気な姿を見て、何時だってそんな奴等を嘲笑い、傍観者でいたこんなロクでもない俺でも少しは力になれるならと、あいつの傍にいた。
でも結局、あいつは俺なんか居なくても一人で頑張れたに違いない。
今までお互い助け合ってきたと思っていたのは錯覚で、俺だけが一方的にあいつの存在に救われていただけだったんだ。
それを今日、嫌というほど思い知らされた。あの穂積って野郎によって。
——あいつ、やっぱ受けるんだろうな……
俺とたった一つしか歳は違わない。いや、俺と違って高校三年間真面目に勉強して大学まで行った奴だ。俺なんかよりずっと立派で頼りになる。
現に俺なんかと一緒に居るより、あいつは楽しそうにしていた。
大体考えなくとも、最初から分かり切った事だった。真面目なあいつと不良の俺なんかが一緒に居ること事態おかしいと。余りにも釣り合いが取れない。
けど、あいつはそれが分かっていて傍に居てくれた。俺を傍に居させてくれたんだ。それに俺は甘え、居心地がいいからと、もう必要もないのに傍に居続けた。
だが、それも潮時だった。
これからはあの野郎が代わりに傍に居て、あいつを支えてやるんだろう。
そして俺は、また元の無味乾燥とした怠惰な日常へと戻る。
ただそれだけだ。なのに俺は、なんでこんなに動揺してるんだろう。
そんな日がいつか来ると分かっていても、その「いつか」がこんなに早く来ると思ってもみなかったからか。
だからあいつと付き合いたい奴が出てきて、俺はこんなにもショックを受けたんだろうか。
あいつに彼氏ができたら、今までのようにあいつの傍に居られないから。あまりにも居心地が良過ぎたあの場所を、まだ手放したくなかったから。
——あいつ、俺があんな奴と付き合うなって言ったら、やめるかな……
ふと、そんな事を考えて、俺は自分の
——んなワケねぇか……
あの男に手厳しい杏でさえ、ケチ一つ付けずにあれなら任せても大丈夫と言ったんだ。あいつがどちらを選ぶかなんて考えるまでもない。
「……おいっ、岡崎。聞いてんのかよっ」
「あ?」
苛だたしげな何処か聞き覚えのある声がして、俺はハッと我に返った。
見ると、目の前に、こたつの上に身を乗り出した春原の顔があった。
滅入っている時に、こんなアホ面見るなんて最悪だ。
「なんでおまえが居るんだ。出て行けよ、鬱陶しい」
「ここ僕の部屋なんですけどっ」
「え……?」
春原のぶうたれた文句に改めて辺りを見回して見ると、確かに学校の男子寮の散らかり放題に薄汚れた春原の部屋の中だった。
全然記憶にないのだが、あれから俺はここまで歩いて来て、何時もの場所に腰を落ち着けていたらしい。意識しなくても体が勝手に動いて普段の行動をしてしまっていたとは、習慣って恐ろしいものだ。
「仕方ねぇな、居させてやるから感謝しろよ」
「アナタ一体何様ですかっ!?」
「岡崎朋也様だ。いい加減覚えろよ」
面倒臭そうにそう言うと、俺は床に転がるペットボトルや雑誌をどけ、ごろりと横になった。
手近にあった雑誌を引き寄せ、パラパラとページをめくる。
それを見て春原は諦めたように小さく吐息を漏らすと、俺と同じように適当に雑誌を取って読み始めた。
これが、一年の時から繰り返されてきた俺達の日常だった。