ウマ娘 プリティーダービー GTR最速伝説 作:frostvernt
翌日。
待ち合わせより少し早く桜井は学園のカフェテリアで待っていた。
コーヒーを飲みつつ、ノートPCに情報をまとめていく。
そこに一人のウマ娘が近づいていく。
「お待たせしましたか。」
そのウマ娘 ブルースカイラインが尋ねた。
「いや、担当がいないもので暇でね。こうしている。」
桜井がそう答える。
「ならいいのですが。」
ブルースカイラインが席に着いた。
「ああ。敬語は不要です。普段と同じ話し方で構いませんよ。」
昨日も最後の方は明らかに猫が剝がれていた。
「どうぞ。今日来てくれたお礼のようなものです。」
支払いは持つが、ウマ娘は健啖家が多い。この子はどうだろうかと思いつつメニューを渡す。
メニューを受け取りつつ、
「そう?そいつは助かるね。店員さーん。紅茶セット。うま娘チーズケーキと紅茶のホットで。」
メニューから顔を上げると、店員を呼びながらそう答えた。そのまま、ケーキセットを注文する。
「トレーナーさんも普段通りで構いませんよ。」
バレたか。
「職業病みたいなもんだ。」
桜井はバツの悪そうな顔をして答えた。
紅茶セットが届くのを見計らってから口を開く。
「今日は来てくれてありがとう。食べながらでいいから聞いてほしい。簡単に自己紹介したいんだが。」
「俺は桜井恭介。トレーナーだ。去年までチームのサブトレーナーをしていた。担当を持つようになるのは今年からだ。」
「はい。どうも。私はブルースカイライン。ラインとでも呼んでください。知り合いはそう呼ぶので。」
ラインが、紅茶に砂糖を入れながら答えた。
「ありがとう。とは言っても何から話したものか・・・何か聞きたいことはあるか?」
「普通に、なんで私をスカウトしようと思ったか。じゃないの?」
まぁ、そうなるな。最初に言った方がいいかな。
「君に実力があると思ったのは本当だ。色々あってそういうのに詳しくてね。あと・・・」
「あと?」
「人違いだったら申し訳ないが、数日前の夜に君が走っているのを見た。」
「んー。そんなの・・・あぁ、あれか、見られちゃってたか。」
「門限がどうの。というのは置いといて。第四倉庫の近くのコースで走ってたのはラインであってるんだよね?」
「門限は黙っといてもらえると助かるかな。第なに かはわからないけど、学園の端の方の倉庫近くのコースを使ってるよ。」
良かった。どうも人違いではないらしい。
七不思議扱いされてることを言うべきだろうか。
「数日前そこを通ることがあってね。その時、君が走ってるのを見て・・・」
「遅かったでしょ。」
「おs、んんん???」
あれ合ってるのか?俺の記憶だとラスト3ハロン33秒ぐらいのスピードが出てたんだが?
「あの、コースは他のコースと違って走りやすいんだけどね。それでも、あんまりスピードが出ないんだ。平坦だしね。」
「コース?・・・ウレタンのことか?ゴムみたいな。」
「そうそう。それそれ。」
それ、ヒトミミの陸上用だぞ。なんでトレセンにあるのか解らん施設だ。だから誰も使わんのだが。
だから、芝のレースで違和感あったのか。
「後、遅くなかったと思うぞ。というより早かったと思う。」
「そうなの?」
そうなのって。。。
いや、何となくわかってきた。こいつ知識がないタイプだ。昨日のレースでも定石とか知らなそうな感じだったしな。
「コースが違うから何とも言えんが、芝のコースなら3ハロン34秒で速い方だ。というかジュニア級ならめちゃ速だ。」
「3ハロン・・・ってどれくらいだっけ。」
思わずズッコケそうになった。何で知らないんだ。
「何で知らないんだ・・・」
おもわず声に出てしまったらしい。
「授業サボってて・・・」
おい。
「ったく。1ハロンで200mだ。だから600くらいだな。」
「だったら、そんなに早くないんじゃないの。時速60kmぐらいでしょ。」
「それで充分速いんだよ!レースでその速度で走れれば、ふつう勝てるの!」
「あ。そういうものなんだ。」
そういうものって。。。こいつなんでトレセンにいるんだ?
「まぁ。話を戻すが、あの時の君の走りを見てたのもある。それでスカウトを決めたわけだ。」
とりあえず話を戻す。
「そうなんだ。でも私、芝だとあんなに速く走れないよ?」
「そんな気がしてたが、大丈夫だ。ウレタンからの転向なんてさすがに経験はないが・・・これでも、もともとはチームで転向組のトレーニングを見ることが多かったんだ。君の力になれると思う。」
「君の速さに惚れ込んだんだ。ラインが走る手助けをさせてほしい。」
正直なところ、確信はない。だが、自分の経験を信じることにする。
それに、彼女の速さが適正の問題なら解決したい。彼女のあの走りに魅了されたのは間違いないのだから。
「うん。私はいいよ。」
あっさり頷いた。大丈夫か。あんまり解ってないんじゃないか?
「そんな顔しなくても大丈夫だよ。私だって、あのコースで速く走れるのは一般的じゃないことぐらいわかってるし。それに。」
それに?
「それにOKなのは私の方。トレーナーが私をOKするかは別だけどね。」
ピンときた。
「・・・走り方のことか?」
「察しが良くて助かるね。あの平地だと隙だらけな走りのことよ。」
「正直なところ見てみないと分からんな。」
「そう。なら見てもらえる?トレーナーさんはこの後お暇かしら?」
「ああ。こちらこそお願いしたい。」
その後、走るところを見せてもらった。芝のコースだがこの前の夜ほどではないが速かった。
走り方も分かった。彼女の弱点も。
何とかなりそうだ。いや、自分の経験にかけて、何とかして見せる。それがトレーナーというものだしな。
ラインと契約の握手をしながら、俺は自分の胸に火が付いたことを感じていた。