I will always love you! 作:リアム
リアムが一縷の望みを掛けてから暫く経ったある日、日本からリアムの携帯へ英語でのメールが届きました。
途中からリアムは不思議と泣いて文字をマトモに読めなくなっていましたが、要約すれば長い文章はこうです。
「貴方が大切にしているサラブレッドを引き取ります」
馬房の隅に身体を寄せ、耳も動かさずにジッとするだけになったデイヴィッドにはリアムの喜ぶ声だけが届いていました。
Layered memories.
たづなさんから衝撃の事実を告げられてから一夜明け、学園に収められているウマ娘のデータ、そのデイヴィッドのページを捲る。
他のウマ娘と比べて白の割合が目立つデータには確かにクラシックは既に終わってしまった、それよか自分が専属契約を持ち掛けるまでに一度も公式のレースには出走した事が無いという事実に目を見開く。
教官らしい人がデイヴィッドを教えていた時もある様で、あの子の潜在能力の高さはその人に鍛えられたのだと分かるが、トレーナーの記録は無い。
考える中で一番可能性があるのは、デイヴィッドの自主性の無さ。
あの子は自分が出会ってきたウマ娘、人間を含めても特に自我が薄い。
それは何故か。幼少期に何かがあったのか、それとも何か精神的な問題があるのか。
「……分からない」
思い出してみれば自分は何もデイヴィッドについて何も知らない事を思い出す。
俺は、自分が専属契約を結べた事、トレーニングを考える事に夢中になってあまりお互いの会話の時間を築けていなかった気がする。
「……だから、話をしよう。デイヴィッド」
机の上に少しのお菓子を広げて、お互いに紙コップでお茶を出す。対面に座って、デイヴィッドの目を見つめる。
「名前は、デイヴィッドで合っているよな?」
頷き
「特異な距離、勝ちたいレース、目標……は分からないんだっけ……」
頷き
「じゃあ。好きなものは?」
首を振る
「好きなものだと抽象的過ぎるかな……食べ物、人、物、本、テレビ番組、昔遊びに行った場所とか」
「すき……や、さしい。ヒト……が、好き」
「優しい人?両親とか、お友達とか?」
頷き、の後
「あと、わたし、なでて、くれたヒト」
「撫でてくれた?親御さん以外で?」
頷き
「お爺ちゃんとか、お婆ちゃんとか?」
頷き、
「それ、と、もう……ひとり」
「もう一人?誰だろう」
首を振る
「覚えてないの?」
頷き
「そっかー」
時間を掛けた割に情報量自体は酷く少ない。
でも、今まで知らなかったデイヴィッドの好きなものが知れた。家族から頭を撫でて貰うのが好き。
だけど、最後の一人は分からない。
「一応聞くけど、不審者とかでは無いよね?」
頷き
肩の荷が落ちる。
良かった〜なんて、口からフニャフニャとした自分の声が漏れる。
正直、たったこれだけでデイヴィッドの事が知れたなんて思わない。けど、ほんの半歩程度なら進む事が出来た。
もっともっと仲良くなるのは、もっともっと信頼を築くのはまだ間に合う筈だ。
これからはもっと話をしよう。
俺はずっと自分のことばかりで行動していた。
いつか、目の前に座る子が胸を張って俺の事を話してくれる様な、そんなトレーナーになってみたい。
「あ、そうだ!何か、俺にも質問してみてよ」
「し、つ、もん……」
「……ご、職……ぎょ、う……は……?」