I will always love you! 作:リアム
記憶に残るものより少しだけふっくらとした身体。
骨が浮く事は無く、充分な栄養が行き届いているのだと毛艶を見ればよく分かりました。
男が身体を震わせて何も行動を起こせないのも気にせず、栗毛の馬は男に尻餅を搗かせる勢いで顔を押し付けます。
「……あぁ!デイヴ!俺のデイヴィッド!良かった、良かった!」
溢れる涙を拭いながら馬の首を抱き、男は安心した様に笑います。
「デイヴィッド!もっと、もっと幸せになれ!」
Unknown aptitude.
ジュニア級に年長者が混ざったメイクデビューは多くの反響を呼んだ。
「デビューできて良かった」
「良い走りだった」
「これからも頑張れ!」
デビューが遅れたのは何か事情があるのだろうと察したレースのファンは多くの応援コメントをSNSに送る。しかし、その中には悪意あるコメントも混ざっている。
「一人で走らせろ」
「わざわざクラシックを無視してまでやりたかったのが後輩虐め?最悪だな」
「この時期にデビューするとか言い出したウマ娘もそれを許可したトレーナーも頭可笑しい。こんなん不平等じゃん」
“何故そうなったのか”を知らなければ、自らの正義にのみ従ってコメントを残せる。
例えそれが間違いだったとしても、コメントを消して知らんぷりをしてしまえば何も無かった事になる。
悲喜交交なコメント。
唯一の救いは、悪意の矛先に立たされたトレーナーとウマ娘がSNSに疎い事である。
「まずはメイクデビュー勝利おめでとう!デイヴィッド!」
メイクデビューの後、トレーナー室に集まったトレーナーとウマ娘。
漸く一歩を踏み出したばかりではあるが、トレーナーの喜びは凄まじく、既にG1級のレースを勝った後の様な飾り付けをトレーナー室に施している。
「お、げさ……?」
「大袈裟じゃないよ!そもそもウマ娘がメイクデビューをストレートに勝ち上がれる方が奇跡に近い。逆に控えめな方だよ!」
「そう……」
トレセン学園において、多数の功績を挙げているトレーナーやウマ娘からしたら「やり過ぎ」の一言であしらわれてしまう事も、一般的なトレーナーやウマ娘だとそうでは無い。
沢山のお菓子を机に広げ、飲み物を用意し、太り気味になるのを気にせずパーティーを行うのも自然の摂理なのである。
「それで、次のレースなんだけど、予定なら福島民友カップを予定している。ダートの1700メートルレースだね」
「うん。……か、つ…………?」
「勝てる様にトレーニングを積んでいこう。脚の負担を考えてダートのレースへ出走するつもりだから、明日からは今でとは違うトレーニングもやっていこう」
「…………しょ、う……ち」
ちびちびと紙コップに注がれたお茶を口にするデイヴィッドを見つめながら、トレーナーである愛以山は内心で「ダートの方が適性高かったらどうしよう」なんて事を考える。
時々現れる、びっくり適性なウマ娘。
現役時には芝を走っていたが実はダートの適性が高かったり、ダートの適性かと思っていたら芝でも充分走れたりとウマ娘の適性は時に難しい所がある。
「まぁ、そこはダートを走ってみてから決めよう」
「?きめる……?」
「何でもないよ」
笑いながら愛以山は笑う。少しずつ自分で行動を起こせる様になっただけで無く、感情に伴った動きも増えた担当ウマ娘である。