I will always love you!   作:リアム

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リアムとデイヴィッドは牧場と、支援するカランコエの歌のメンバーからは「家族の様だ」と言われました。
リアムがやってくれば例え微睡んでいたとしても耳をピンと上げ、尻尾を振りその身体に顔を押し付けるデイヴィッドと、小さな時間が出来ればその時間を必ずデイヴィッドへと使ったリアムの行動は誰が見ても一目瞭然であり、支援者向けのホームページに載せられた馬具を使わずともリアムの後ろをついていくデイヴィッドの姿。晴れた日の休憩時間に放牧地で寝転んだデイヴィッドのお腹に頭を乗せて一緒に休むリアムの姿。
そんな一人と一頭の種を超えた、どんな言葉にも当てはまらない確かな「絆」は、デイヴィッドが眠りに就くまで、眠った後も永遠でした。
 


This is a service.

 

Instead, smile.

 

『福島民友カップ』を週末に控えた今日、リフレッシュを兼ねてトレーニングでは無く、デイヴィッドとのお出掛けにやって来た。

目の前に広がるのは、見慣れた商店街。

デイヴィッドは俺の「どこに行きたい?」という言葉に特別反応は示さなかったが、その足取りはしっかりとしていて、真っ直ぐに一歩を踏み出して行った。

 

「デイヴィッド、何処へ……って、此処は」

 

デイヴィッドが徐に立ち止まった店の前。

様々な野菜が並び、手書きの札が立ち並ぶ八百屋。

真っ直ぐに店内を見つめる瞳は変わらず、磁石でくっ付いたかの様に動かない身体。

 

「お?おおお!!なんだぁ!あの時の嬢ちゃんじゃねぇか!」

 

俺がどうするべきかと考えていれば、唐突に耳へと入ってくる男性の声。目を向ければ店名が入ったエプロンをした、快活そうな人が一人立っていた。

 

「久し振りだなぁ?って、なんだもしかして隣の人はトレーナーってやつかい?」

 

デイヴィッドが頷く。

そして、八百屋の男性と俺の視線が合う。

 

「えっと、その……失礼ながら、デイヴィッドとはどんな関係が?」

「関係か……一年くらい前によ、フラフラな状態でここら辺を走ってたんだ。だけど、それがあんまりにもヤバそうな状態だったんで、俺が人参ジュースを渡した関係だな!……あの時は聞き忘れたが、嬢ちゃんデイヴィッドって言うんだな。良い名前だ!」

 

そう言って、男性はグリグリと孫にする様な手付きでデイヴィッドを撫でる。デイヴィッドの方もどこか満足そうに目を閉じる。

そして、撫でられた後、デイヴィッドは静かにポケットから可愛らしいがま口を取り出す。

 

「……ジュース……もら、った……か、ら」

「態々金払いに来たのか?なんだデイヴィッドは良い子だなぁ。でも、金はいらねぇよ。あれは買い物に来た子供達に全員漏れなくサービスしてるもんだ」

「……そ、う……わかった」

 

大人しく持っていたがま口を仕舞うデイヴィッド。

例え、デイヴィッドの「そうしなければいけない」という常識からだとしても自ら動きたいと思った相手。

デイヴィッドのこれまでを考えると、あまりにも珍しい存在。

 

「あの!すみません!」

「あぁ。どうした?」

「申し遅れましたが私は、デイヴィッドと専属契約をしているトレーナー、愛以山楓と言います」

「ご丁寧にどうも。俺は千萱、千萱(チガヤ)(イサオ)という」

 

千萱さんと手を合わせる。ゴツゴツとした、俺とは違う働き者の手と、まるで父親の様な、なんでも受け止めてくれる様な大きな背中。

 

「あの……デイヴィッドは週末に福島民友カップを走ります。年が明けたら中山金杯に向かって、その次は宝塚記念、ラストランは有馬記念を予定しています」

「そうかぁ……頑張れよ、デイヴィッド」

「それで、私はまだ数ヶ月ではありますが、デイヴィッドと一緒に歩いて来て、こんなにも大人に対して自然に接する姿を初めて見ました」

「そうなのか?いやぁ、嬉しいもんだ」

「だから、どうか、どうかお願いしますッ!デイヴィッドへの応援を、宜しくお願いします……!」

「お……ねがい、し、ます……?」

 

勝手に感情的になって、勝手に頭を下げた俺を真似てデイヴィッドも頭を下げる。

商店街では中々見ない、異質な光景。

それでも千萱さんは大きく笑って、俺達の頭を上げさせる。

 

「いやぁ!良いな!青春、って感じだ。流石に店をやってるモンで遠出は出来んが、中山なら行けるかもしれねぇから、俺にも応援させてくれ。宝塚と有馬だっけ?は人気投票するんだろ。そん時はこの商店街全員まき込んでデイヴィッドを応援するよ」

 

少し焼けた素肌と対照的な白い歯。

俺達の頭を撫でる大きな手。

優しい性格の千萱さんにならデイヴィッドが懐いてしまうのも、分かる気がする。

 




 
僕の抱えた記憶の中。
お父さんとお母さん、お爺ちゃんやお婆ちゃん、大切にしてくれた皆の他に大好きだと思う存在がいる。
僕を撫でてくれたヒト。
僕に優しく語り掛けてくれたヒト。
悪夢を見てもそのヒト達を思い出せば、少しだけ心が晴れた。
一番好きなのは怖がらないでと慰めてくれたヒト。

だけど、目の前で笑うこのおじさんも好きだと思う。
どうしてか。は、分からないけれど、きっと、その声がどこか聞き覚えのある「よく来たね」って、「この場所は怖くないからね」って安心させてくれた言葉に似ていたから。
 
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