I will always love you!   作:リアム

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涙が乾いても、デイヴィッドの側から離れられないリアムを牧場の仲間達はお揃いの赤い目をしながら見守って、火葬の準備を進めます。
カランコエの歌にも訃報のメッセージが送られ、その日は、あまりにも早く時間が過ぎました。
「この牧場に来るまでを私も教えて頂きました。本当なら何年も前にこうなっていて可笑しくないものです。……貴方がいたからこそ、ここまで延ばせたんです」
獣医は、リアムの肩へ手を置きながら、静かに呟きました。
その言葉にリアムはまた、静かに涙を溢しながら、デイヴ。と震えた小さな声で呼び掛けます。
しかし、今はもうその耳は動きませんでした。



I hug its body.

 

I see your smile.

 

気温が下がり、もう半袖なんかでは過ごせなくなって、長い袖に上着を重ねる事が当たり前になって暫く、世間はクリスマス一色で、盛り上がっている。

ストーブが俺達の働き蟻になってくれて、ヤカンが音を立てる。

ハンカチで持ち手を包んで100円ショップで買った急須にお湯を入れて、少し待つ。

分かり易い様にデイヴィッドの目の中にある模様と同じ蝶のイラストが印刷されたマグカップと、真っ白なマグカップ。それの中に、抽出の終わった紅茶を淹れてデイヴィッドへ渡す。

 

「はい。熱いから気を付けてね」

「……うん」

 

静かに冷ましながら中身を少しずつ口にするデイヴィッドを横目で確認して、自分もマグカップに口を付ける。

傾けた角度が悪かったのか、勢い良く動かし過ぎたのか想像以上の紅茶が口の中に広がって思わず前のめりになってしまった。

 

遠くで聞こえるトレーニング中の掛け声と、沢山の人が日常生活を送る音。

この部屋はストーブ以外の音が無いから、全部の音がBGMになって、今までは気にもしなかった音から沢山の発見がある。

 

「……ねぇ。デイヴィッド」

 

唐突に呼び掛けてみれば、デイヴィッドは声は出さないものの此方に視線を向けて、小さく頷いて、片耳が少しだけ横を向く。

最近は周りのウマ娘と同じ様に耳の動きや、尻尾の動きが増えてきた。それ以外だって、自分から少しずつ動いて、声を出す。

デイヴィッドの心の成長になんだか家族の様な、まるで父親の様な気持ちを持ってしまう。

 

「デイヴィッド。少し、聞いても良い?」

「……い、……よ」

 

「えぇと、そうだな……あのね。言いたくないならそれで良いんだけど、昔、合宿の時。怖がってたのは、どうしてなのかなって。一応、トレーナーだし……君の恐怖に繋がる様な事は、したくないな。って……」

 

恐る恐る聞いてみれば、デイヴィッドは初めて動揺を見せる。

大きく目を開いて、何度か世界を見渡す。

そうして、音も聞こえない程小さな、でも確かに大きな深呼吸をしてからマグカップをギュッと握って、口を開いた。

 

「む、かしから……違う。ある日、突然、夢を……見る様に、なった」

 

「……酷い、夢を見る。残酷な夢だ。地獄の様な。夢だ」

 

「僕はその夢が怖い。怖かった……だって、ずっと罵られて、身体を叩かれて、怖い瞳で見つめられるから」

 

「毎日、毎日……同じ、夢を見て」

 

「眠る度に見る夢に怯えて、いつしか、自分の心を守ろう、と、何も……感じなくなった」

 

普段とは考えられない程に饒舌な言葉。

割れんばかりに力を込められたマグカップは震えて、その瞳からはポツリ、ポツリと見慣れた無色透明が落ちる。

あぁ。聞いてしまった。この子の持つ深い所を。思い出したくも無い、口にもしたく無いであろう領域へ、土足で入った。

 

「……だけど、」

 

言葉が変わる。

彷徨っていた目線が俺に向く。

 

「だけど、一つだけ、地獄の底で見えた暖かい光があった」

 

初めて見た。綻び。

キラキラと青色が輝いて、初めてデイヴィッドの歯が見える。

 

「僕は、」

 

「わたしは、彼に、有難うを、言いたくて」

 

 

 

 

 

「そっか」

 

デイヴィッドを両腕で抱き締める。同年代と比べても比較的小さな身体は簡単に俺の腕の中に収まってしまう。

震えない声帯。動かない身体。でも、小さな指先だけは俺の袖を掴んでいる。

 

「嫌な事言わせちゃってごめん。教えてくれて、有難う」

 

「デイヴィッド。俺と一緒に、その“彼”を探そうか」

 

腕の中で小さく頷くデイヴィッド。

だけど、次の瞬間には現実が頭を過って、急いで腕を戻して、もう一度最初の座り位置に戻る。

 

「これからは、デイヴィッドが嫌な夢を見ないくらい沢山の楽しい思い出を作っていきたいね」

 

まずは……

なんて、口にする俺の言葉に相槌は返って来なかった。

だけどこの肩から伝わる温もりのお陰で、言葉が止まる事は無かった。

 

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