I will always love you! 作:リアム
デイヴィッドが遺したものは、消えない思い出と、ほんの少しの鬣だけです。
白く清潔な紙に包まれたそれをリアムは抱き締めながら漸く現実を飲み込みます。
もう、馬房に行っても最愛はいない。
もう、その温もりは感じられない。
訃報のメッセージを読み、送られてきた数個の花束の前に膝をついて地面を撫でる。
「有難う。出会ってくれて。君は、本当に宝物だった」
これからは、君に土産話が出来る様に頑張るよ。
外で吹いた風が馬房に入り込み、リアムと綺麗な花々を軽く揺らしました。
Just for you.
少し前の蝉の声がよく聞こえた時間から一転、寒さで目が覚める毎日となった今、トレセン学園に通うウマ娘達も夏服から冬服へと移り変わり、日常的に上着を着ている姿をよく見る様になった。
「ホラ、子分。ウインディちゃんのやつだけど良ければ着るのだ」
担任からの説明があった故かいつの間にか冬服へと着る物が変わっていたデイヴィッドの目の前に、シンコウウインディが一つの紙袋を机に置く。
デイヴィッドは相変わらず紙袋をジッと見るだけに収まっていたが、ウインディは何時もの様子で手のかかる子分なのだと顔に映しながら、紙袋から中身を取り出す。
ウインディが取り出した物。どこの学校で使っても問題が無い様な、色味の落ち着いたシンプルなデザインのカーディガンであった。
「お前、何時も寒そうだからあげるのだ」
デイヴィッドの夏服と冬服との違いは半袖か、長袖か。生地が薄いのか厚いのか。その程度しか無い。
程良く筋肉のついた脚は雪が降ろうが関係無く一年中膝を晒して、両手を手袋で覆わず、外を歩く時もコートなんて物は無い。
特別デイヴィッドが寒さに強ければ良いが、それは違う。
表情や耳の動きから読み取れないだけで、冬の日のデイヴィッドはどこか身体を震わせていた。
「さ、着てみるのだ」
ウインディが促せば、デイヴィッドはゆっくりと両手でカーディガンを受け取り袖を通す。
淡い色味の生地がデイヴィッドの雰囲気に良く似合っていた。
「うん。サイズは大丈夫そう、これで冬もあったかいのだ」
「……あ、ありが……と……う」
「どういたしまして!」
ニカっとウインディが笑い、それに釣られてなのかデイヴィッドがほんの少し口角を上げる。
今までは気味の悪い程に変わらない、言ってしまえば仏像の様だったデイヴィッドの表情が最近は変わる様になった。それこそ、デイヴィッドがレースに出る様になってからは特に。
「あっ、そういえば、レース優勝おめでとうなのだ。ウインディちゃんと同じダートで優勝するなんて、子分も中々やるのだ」
「う、ん」
「デビューは芝だったけど、これからはダートなのだ?」
「あ、えと……これか、らは、芝を……走ります」
「そっか。まぁ、ウインディちゃん同様、子分も頑張るのだ!」
「がんばり……ます……!」
珍しく勢いの良い言葉ウインディは一瞬驚いた様に目を大きく開いた後、再びチャームポイントの白い歯を見せながら笑って、怪我には気をつけるのだ。と、言った所でタイミング良くチャイムが鳴り、ウインディは少し手を振ってから自分の席へ戻って行った。
授業が始まってからもデイヴィッドは自分の袖口にある見慣れない色を見つめ続け、珍しく板書を写しそびれた。
同日。
トレーナー室で待っていたトレーナーがデイヴィッドの姿を見て驚いた後、安心した様に笑った。
「もう冬なのに、デイヴィッドが何時も寒そうな格好だったから俺の上着を持って来たんだけど、今日はあったかそうで良かった」