I will always love you!   作:リアム

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月日が経ち、デイヴィッドが使った馬房には違う馬が入り、何頭かの馬も年齢を理由に空を駆けて行きました。
相変わらずリアムはよく働きます。自分を雇ってくれた恩、デイヴィッドへ優しくしてくれた恩。そして、穏やかな毎日を変えない様に。
浮浪者から始まったリアムの人生はストレスばかりの毎日でしたが、一頭のサラブレッドと出会ってからは沢山の色が見えました。

今日もまた、リアムは慣れた手付きで飼料を混ぜ、その身体にブラッシングを施し、時間になれば馬を放牧地に出します。
伸び伸びと放牧地を走る姿を眺めてから、久し振りにある場所へ向かい、リアムは青年の様な若々しさで笑います。

「I will always love you.」

その言葉は牧場の人間もよく知っている。
リアム・ベネットがデイヴィッドへ向けていた口癖でした。



Christmas for two.

 

Thanks and starry shoes.

 

クリスマス。

子供の時は家に煙突や暖炉が無いからサンタさんは来てくれないんだと泣いたり、煙突や暖炉が無くてもプレゼントが置いてあって首を傾げたり、一年の中でも特に楽しみなイベントだった。

成長してからは、親が寝てる間に置いているものだと理解して、中学生になってからは父親から「クリスマスは何が欲しい?」と聞かれ、分かってはいても、その言葉でこの家に赤い服のおじさんはもう来ないのだと寂しくなった。

 

「デイヴィッドは何が欲しいかな?」

 

昼間は通常通りのトレーニングを終わらせてから夕方からは一年に一度のイベントを楽しんでくれたら良いなと思い、デイヴィッドを電飾で輝く街へ連れ出した。

「クリスマスはプレゼントを渡す」なんてありきたりな計算式を解いて、隣を歩く担当へ声を掛けてもその担当は首を振る。

 

「そっか。じゃあ、少しだけ歩こうか」

 

頷き。

キラキラと輝く世界。数ヶ月前と比べたら同じ場所でもヒトの量が違う道。ワイワイ、ガヤガヤと騒がしい海を掻き分けて歩く。

はぐれない様に見慣れた淡い色のカーディガンを覆う分厚い生地のコートから飛び出たその手を軽く握る。

途中、カフェに入ってテイクアウトで飲み物を買って、2人で2つの温もりを共有した。

 

「デイヴィッド、今年はお疲れ様。トレーニングもレースも」

 

先程までの喧騒から一転、静かな世界となったいくばくかの街灯だけがある公園の隅でデイヴィッドに口から煙を吐きながら感謝を伝える。

デイヴィッドは何時もと同じ様に静かに首を振る。表情は変わらない。だけど、柔らかく少しの力を使って揺れた尻尾が見えて、自分の気持ちが伝わった事に安堵する。

 

「年が明けたら、中山金杯からスタートして、人気投票もしくは出走の資格を得られたら宝塚、そして有馬記念。初めてのG1、グランプリだ。頑張ろう」

 

軽く言ってみた言葉とは裏腹に力が入った両手に挟まれたドリンクカップは少し凹んで、カコっと軽い音を立てて蓋が外れる。

 

「……がんば、て……勝つ、から……」

 

格好悪いなと蓋をはめ直す途中、デイヴィッドが放つ小さな言葉。それは、少し前の福島民友カップのインタビューを思い出させる。

そんな彼女の頭を何度か撫でて、ぬるくなったコーヒーを飲み干す。

 

「有難うデイヴィッド。君の気持ち、確かに受け取った。一緒に、勝とう」

 

きっとデイヴィッドは欲を出さないだろうと用意していた物。センスも、好みも分からないなりに考えた靴。

持ち歩いてシワの寄った紙袋から箱を出して、中身を見せる。

 

「これだったら、普段使いでも、蹄鉄を打ってトレーニング用にしても大丈夫なものになっているから。君の趣味に合うか、は、分からないけど……俺からの、感謝。という事で……」

 

受け取れないとばかりに首を振るデイヴィッドにやっぱりかなんて思いながら、大人の意地汚さで逃げ道を塞ぐ。

 

「でも、これはデイヴィッドのサイズに合わせてるから、俺は履けないし、使えないよ」

 

だから、俺からの我儘を受け取って。

 

デイヴィッドはゆっくり、ゆっくりと迷って、迷った末に靴の入った箱に手を触れる。

自分の手を離して、しっかりとデイヴィッドに渡したそれを持たせる。

少しだけ困惑の表情と、一瞬だけ揺れた耳と尻尾。

 

「これを履いて、これからのレース。全部勝とう!」

 

夜7時。もう真っ暗になった世界の中で俺の声だけがどこまでも響いた。

それからはまた、遠くで聞こえる幸せそうな音に耳を傾けながら、都会の中ではよく見える星空を2人で眺めて、静かな時間を過ごした。

 

「……そろそろ帰ろうか」

 

身体も冷えてしまうから。と付け加えながら、渡した靴をもう一度紙袋の中に戻して、今度はデイヴィッドに持たせる。

空になった2つのドリンクカップを持って、寮への道を辿る為再び騒がしい世界の海へ飛び込めば、隣を歩くデイヴィッドが静かに俺のコートを軽く握る。

 

「あ、あ……り、がとう」

 

必死に俺の目を見つめようとしながら、騒がしい世界の中でも充分に届いた言葉を受け取る。

 

「デイヴ、どういたしまして!」

 

思わずふやけた顔に釣られたのか、デイヴィッドも少しだけ目を細めていた。

 

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