I will always love you!   作:リアム

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Completed.

 

Starry Clothes for You.

 

トレセン学園の中にある一室。とある人間に与えられているトレーナー室、外からのトレーニングに勤しむ声が聞こえてくるその中に影は三つ。スーツを着た男と、首から名札を掛けた女、簡易的に作られた試着室の中に佇むウマ娘。

トレーナーらしき男が朝からソワソワとしていた今日は、担当するウマ娘デイヴィッド専用の「勝負服」が届けられる日であった。

細かい項目を全て埋める為、時間を掛けて行われた採寸と、欠片しかなかったデザインを縁と少しの居酒屋代を使いまとめて貰ったデザイン画を送ってから数ヶ月、形になった物がこのトレーナー室へと運ばれた。

 

「デイヴィッドさん。そろそろ大丈夫ですか?」

 

学園に入る許可が下りている事を示す名札を掛けた、勝負服を製作する会社の担当者がカーテンで遮られた先の空間へ声を掛ける。

数秒の間を置いて、空間が遮られているからかほんの少し質の変わったデイヴィッドの声が「はい」と、簡素に応える。

 

「それでは、開けますね」

 

無意識の配慮か、それとも緊張からか唯一の男である愛以山楓はカーテンが開かれるその瞬間、一歩、もう一歩、リズム良く数十センチだけ後ろへと下がる。

レールに嵌め込まれた金具が動いて、聞き馴染みのある音が静かな部屋の中に響いて、デイヴィッドの姿が晒される。

主張は激しく無いものの落ち着いた存在感を見せるフリルの付いた白いシャツに、首元を彩る深い色の青い宝石が付いたリボン。ショートパンツに、ハイソックスとそれを留めるソックスガーター、少しだけ高さのあるブーツ。

全体的にシンプル。そして、品の良い格好でまとめている中で特徴的な少しだけ肌を透かしたレースのグローブ。

 

「・・・・・・あとは、こちらですね」

 

サイズ感や、布の質感、不備が無いかを手早く確認して手に持っていたそれをデイヴィッドの肩に掛ける。

日本人なら見慣れた、着物の形で作られた羽織。メインの色は黒で、裾の所だけ暗い色味のオレンジ色がグラデーションになった金糸の刺繍が蛍光灯をキラキラと反射させている。SNSで時々見る事がある和服と洋服をミックスした雰囲気の勝負服。

デイヴィッドが羽織へ腕を通し、仕上げにウエスト部分でベルトを締める。

 

「これで全てですね。苦しくはありませんか?」

「だ、いじょうぶ・・・・・・です」

「では、これで勝負服は完成となります。お疲れ様でした」

「あ、りがとう、ございます」

 

二人が満足げに頷き合い、ウエストにあるベルトへ手を掛ける瞬間、一人がジッと息を潜めていた愛以山へと顔を向ける。

 

「そういえば、このタイミングで記念撮影をする方も多いのですが、トレーナーさんはどうされますか?」

「え、あっ!写真!?」

「はい。レース後ですと少なからず汚れが付くので、綺麗な状態でも記念にという方が多くいらっしゃいますよ」

「へぇ・・・・・・確かに、そう、ですね。どうしようかな」

 

顎に手を当て、唸りながら、百面相を晒し考える。

記念撮影はしたいが、勝負服を着た担当の姿は本番で、トロフィーを持った姿を一番先にしたいという大きな欲。

 

「・・・・・・今は、辞めて、おきます」

 

今にも倒れそうな程、苦しそうな顔で結論を出す愛以山の言葉に、それもプロとして慣れているのか「分かりました」とだけ笑顔で頷き、羽織を脱がせ、再びカーテンを締める。

ゴソゴソと着替える音と外からのトレーニングの声だけが聞こえる部屋の中で、大人の二人は並んでウマ娘の着替えが終わるのを待つ。

暇になったのか、純粋な興味か、隣に立つ愛以山に向かい女は口を開く。

 

「どのレースに出る予定ですか?」

「えっと、宝塚記念です。SNSの力を借りてどうにか〜って感じです」

「そうですか。この仕事に就いて、沢山の表情を見てきましたけどこんなにもウマ娘の方が落ち着いていて、トレーナーの方がソワソワしているのは初めてです。だいたい二人共盛り上がっているか、落ち着いているか、ウマ娘の方がトレーナーよりも盛り上がっているの三択なので」

「そうですよね。でも、だからこそ、俺はあの子が一番高い表彰台で満面の笑みを浮かべている姿を見たい」

「良い、夢だと思いますよ」

「有難う御座います。俺は、半人前どころか足りてない所ばっかりですけど、どうにかやってやりますよ」

 

力を入れてもそれ程盛り上がらない腕を曲げて、愛以山は笑う。少し眉が下がっている様な、頼りない笑み。

けれど、長年ウマ娘とトレーナーを多少なりとも見守る立場にいるその人にはよく伝わった。

「この二人は、きっと、大丈夫だろう」なんて根拠の無い確信と、「何かをやってくれるだろう」という安心が。

 

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