I will always love you! 作:リアム
Acute gives power to David.
大雑把な分け方ではあるが、ダートを走る時は芝よりもパワーが必要になると言われている。10月に向けてしっかりと砂の上で走れる身体を作る為に、筋トレメニューの変更や、再び先輩に頼んでダートを専門に教えているトレーナーへアポを取ったりとデイヴィッドが授業に参加している間にあれこれと走り回る。
そして、放課後。
俺とジャージに着替えたデイヴィッドと、合同トレーニングを受けてくれたトレーナーと同じくジャージ姿のウマ娘がダートコースの脇で顔を合わせる。
「あたしはワンダーアキュート。宜しくねえ、デイヴィッドちゃん」
柔らかい色の髪色を持つウマ娘が、優しい声色でデイヴィッドへ向けて挨拶をする。デイヴィッドは目をウロウロとさせて、緊張した面持ちで小さな声で「デイヴィッドです」とだけ口にする。
「おやまぁ。緊張してるのかい。でも、大丈夫よぉ」
ほわほわとした雰囲気を持つそのウマ娘はどこまでも穏やかで、これならばデイヴィッドは大丈夫だろうと唯一の懸念点を捨てる。
「それでは、本日は宜しくお願いします」
俺は、目の前にいる先輩トレーナーへ頭を下げる。
担当するウマ娘が穏やかな性格だからか、そのトレーナーも穏やかで優しそうな雰囲気があり、俺自身も安堵する。
二人にウォーミングアップに移ってもらい、俺らは今回のトレーニングメニューを確認する。
相手はウインディさんと同じ脚質、同じ適性を持つウマ娘だから併走をするにあたって得られるものはきっと多い。
「そういえば、デイヴィッドさんはどうしてダートを走る事になったんですか?戦績を見る限り、芝で充分やっていけると思うのですが」
「やっぱり、そう思いますよね。実は、デイヴィッドと昔から仲良くしてくれている親分の様なウマ娘がいるんですけど、デイヴィッドはその子とライバルとして競いたいという気持ちを持っていて、前回の宝塚記念で自信が生まれたって感じですかね」
「へぇ、それは素敵な関係性ですね。我々も気合を入れないと!」
そう言って、先輩はウォーミングアップを終えたアキュートさんの元に駆け寄るとバンバンとその背を叩き始める。
勢い良く、いくらウマ娘と人間の力差があれど流石に少女相手にはヤバいのではないかと勘違いしそうになる程強く、背を叩く。
アキュートさんは力が湧いてきたよぉ!と何も問題が無さそうに握り拳を作っている。
「……え、えっと、俺達もやって、おく?」
隣のデイヴィッドに聞いてみる。
デイヴィッドは、表情は変えず、だけどしっかりとした意志を持って首を振った。
そうだよね。なんて言いながら、トレーニングが開始された。
「アキュートはそのままスパートを掛けて!」
「デイヴィッドッ!アキュートさんに喰らい付けるレベルにならないと親分との勝負も夢のまた夢だよ!」
「えい、ともーー!!」
「う、ん……!」
デイヴィッドはやはり、アキュートさんから3バ身、4バ身と離される。アキュートさんはスパートを掛けているといえど、それはデイヴィッドも同じ。スパートを掛けた状態で離されるのは、実力の差でもある。
だが、トレーニングを始めたばかりの頃よりは差が縮まっている。
やっぱり、デイヴィッドの才能は底がしれない。
たらればでしかないけれど、あの子が不可解な恐怖に苛まれず、最初から優秀な人の元でトレーニングを受けていたらどうなっていたのだろうか。
三冠バになって、G1をいくつも獲って、海外遠征なんかもして、凄い賞を貰っていたりしたのだろうか。
そんな事を考えてしまう程、彼女の走りには夢がある。
「お疲れ様。ほら、後であたしと一緒にぽりぽりさんを食べようねぇ。美味しくて元気が出るし、塩分補給にピッタリなんじゃよお〜」
「は、い……た、食べ……ま、す」
アキュートさんがケロリとした顔で持ってきていた荷物の中からタッパーを取り出して蓋を開く。
そこには切り揃えられた白い何かが入っていて、トレーナーさんもどうですか?と促されて一口貰えば、丁度良い塩っけとどこか懐かしさを覚える味が口の中に広がった。
「なんだか、お茶碗山盛りの白米が食べたくなる味だね」
「おやまぁ。それは嬉しい言葉じゃねぇ」
ホワホワと笑うアキュートさんを見ると、なんだか縁側でお茶を飲んだ昔の記憶を思い出すようだった。