I will always love you! 作:リアム
I'll give it my best shot.
ホテルの真ん中の階、長い廊下を歩く。靴音はカーペットに吸収されて、歩く度に落ち着いた低い音だけが響いていた。
この身体は、この脚は、皆のお陰で昔よりずっとダートを走れるものになった。
「明日が、本番……」
もう少しトレーニングをしていたい気持ちもある。まだまだわたしはダートを走るウマ娘としては粗が目立つ。
でも、レースの為に身体を休めなくてはいけない。
明日はオープン戦で、勝負服も無く宝塚記念よりは緊張という部分だけなら少しだけ気持ちが楽だ。
「あ……子分。こんな所でどうしたのだ?」
「親分、じ、自分の部屋に戻ろう、かなって」
「なんだ。子分も同じ階だったのだ」
親分が見慣れた笑顔で笑う。
最近は「ライバルだから」と自分達に集中する為にあまり顔を合わせる時間が無く、言葉に出来ない不思議な気持ちを持っていたけれど、こうして偶然でも話せる事が出来て嬉しくなる。
何の話をしようか口を開きかけて、閉じる。
「明日、良いレースにするのだ。それじゃあ、ちゃんと休むのだ」
「う、うん……」
表情は見慣れたいつも通りの親分なのに、口から溢れる聞き慣れない冷たさを感じる声。
きっと、親分は明日のレースに向けて集中している。それにわたしをライバルとして認識してくれて、いつも通りに関わらない様にしている。
寂しい。名前の無いこの感情はきっとそれだ。
話したい。でも、わたしはこのまま親分の横を通り過ぎる。
本当なら例えライバルといえど仲良く話す事もあるし、禁止されている事でもない。これはわたし達の勝手で、でもきっとわたし達らしい行動なのだ。
籠った靴音を鳴らしながら用意された部屋に入る。わたしの荷物が置いてあるだけのシンプルな部屋。
ベッドに倒れ込む。柔らかい布団に抱きとめられて少し瞼が落ちる。
太秦ステークス、ダート1800メートル、晴れの予報。芝もダートも良の予定。
親分の脚質は先行。そして、マイルの距離を得意としていて、明日のレースは正にホームと言えるステージ。
「わたしは、それに噛み付く」
合同トレーニングで可能な限り鋭く研いで貰った牙で親分の喉元に噛み付き最後まで離さなければ、きっと勝負になる。大切なのはゲートが開く瞬間。ぬかるんだ地面じゃなくても砂は滑る可能性がある。
同じレースを走る周りのメンバーを軽視している訳では無いけれど、わたしの目標はたった1人だけ。
「わたしが……僕が勝つ……シンコウウインディ」
たった1人の部屋、毛布に顔を押し付けて口に出す。頭の中に目標を叩き込む。
勝つ。僕が勝つ、あの