I will always love you!   作:リアム

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「Have a Blast.デイヴィッド!」

「……うん。Have a Blast.」



Fangs in each other's necks.

 

Bite each other on the dirt.

 

打ち直した蹄鉄、外れないか何度も確認したゼッケン、正面のモニター近くに設置されたゲート、乾いてサラサラとした質感の砂。

久し振りにダートコースをしっかりと踏み締める感覚。

風は無い。天気も良好。体調も問題ない。トレーニングだって出来る限りはやった。

 

「デイヴィッド!ちゃんと、ウインディちゃんについてくるのだ!」

 

わたしと違う髪色の親分。

その表情は自信に満ちていて、同じ体操着にも関わらずまるで勝負服を着ているかの様なオーラを感じる。

今日のわたし達は“親分と子分”では無く“ライバル”だから、わたしも自信満々に応える。

 

「ついては、行きません。わ、たしが、前、ですから……!」

「ふぅん……面白い事を言うのだ。ちゃんと出来るのだ?」

「出来ます……っ!ちゃんと、わたしが勝利に噛み付きますから」

「良い覚悟なのだ!さぁ、ゲートに行くのだ」

 

親分が背を向けてゲートに向かう。わたしはその背を見つめながらその背を追う。

格付けの無い、わたし達だけのG1レースが始まる。

 

 

 

天候にも恵まれましたオープン戦、ダート1800メートルにて行われる太秦ステークス。本日の主役はこのウマ娘、シンコウウインディ!!!能力、注目度共に最強の一人です!

そして、2番人気には

 

レースのファンファーレが響く前、アナウンサーが一人一人を紹介していく。1番人気に推されているのは矢張りG1を複数勝利しているシンコウウインディ。

俺が見送った背中はG1レースを勝利しているとはいえ、ダートの経験は乏しく4番人気。

だけど、やる事はやった。出来るだけの事を2人で頑張って本番を迎えられた。

 

俺は、信じるだけ。

まずは足が滑らない事から。

 

ゲートイン完了!太秦ステークス、スタートしました!全員が揃った綺麗なスタートですっ!

 

「……よしっ!」

 

まずは第一関門突破だ。

目の前を走って行く背中を見送って、数ヶ月前と同じ様に大声を出す。

 

「頑張れー!!!デイヴィッドー!!!!ウインディさんも頑張れー!!!」

 

 

 

今度は失敗しない様に集中して、気を付けながら目の前が開けるのと同時に飛び出す。今度は違和感の無い完璧と言って良いスタートが出来た。

始まってからは少しの直線とコーナーがあって、坂は一つだけ。高低差もそこ以外は殆ど無い走り易いコース。でも、だからこそスピードが出易い。

 

シンコウウインディ、3と書かれたゼッケンを見ながら直ぐ後ろに身体を滑り込ませる。わたしは身体が小さいから、小柄な親分の後ろでも空気抵抗を減らせる。

先頭は逃げのウマ娘が一人、多分5バ身くらい開いて2番ゼッケンのウマ娘。1バ身もない差を開いて親分、その直ぐ後ろにわたしがいる。前回とは違って、落ち着いてポジションを取り、走れている。

コーナーを回り、観客席から離れた直線のコース。

 

「(もう少しで、上り坂があって)」

 

降りた先で、きっと親分は動き始める。

そこからが本当の勝負。

 

 

先頭集団が約3メートルの坂に入ってレースは後半戦ッ!ここからが各ウマ娘の本領を発揮するタイミング!

 

グンっと脚にかかった負荷が消えて、スピードが乗り始める。横目で残り600メートルを知らせる標識を通り過ぎて周りを確認する。後ろから隊列が動く音がして、わたしの前にいた逃げウマ娘との距離が少し縮まっていて、親分の前にいたウマ娘はわたしの隣にいる。

 

勝負を、しよう。

 

地面に蹄鉄の形が残らない代わりに、沢山の砂が舞う。わたしが、先頭に立つ。

約330メートルの直線。隣に並んだ焦茶の恐怖が牙を見せる。

 

リトル・レッドはTHxと鳴く

Ding Dong Boo

 

 

最終直線、2人のウマ娘が前に出る!3番のシンコウウインディと6番のデイヴィッド!後ろに大きな差をつけて一騎討ち!

 

「僕が勝つ!!!シンコウウインディ!!!」

「舐めるな!!!デイヴィッド!!!」

 

今、2人が全く並んでゴールインッ!!!内か外か!僅かに内、シンコウウインディが優勢の様に見えましたが、最後はカメラ判定となります!皆様は順位が確定となるまでもう少々お待ち下さい。

 

 

 

大きく息を吐く。

つい最近にも体験した、順位が確定するまでの心臓が潰されそうになる空気感。俺は何にも関係ないのに心が騒ついて目の前の柵に全体重を乗せて、無理矢理意識の矛先を変える。

 

ほんの少し自由な時間。

バ場に残るウマ娘達は自分達のクールダウンを始めていて、観客はどちらが勝ったのかとか、この後はどうするといった雑談に花を咲かせている。

俺だけがこんなにも焦っているのがなんだか場違いに感じる程、穏やかな時間。

誰かが、あっ!と声を漏らす。

沢山の視線が同じ場所に向かい、声を上げる。

 

I 3

II 6

 





「デイヴ、ナイスファイトだった!」

「……負け、ちゃいま、した」

「だけど、苦手な条件の中で完璧な走りだったよ」

「くや、しい……?悔しい、です」

「そっか。じゃあ、次はリベンジたね。これからの第一目標は有馬記念だけど、その後はたっぷり時間があるから」

「リベンジ。そっ、か。そっか……」

リベンジします。と緩く笑ったデイヴィッドの顔は晴れやかで、次の未来へ向けた瞳は煌めいていた。
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