I will always love you! 作:リアム
A handkerchief of thanks and declarations.
クリスマス。街並みが美しく彩られ、様々な人が楽しそうに行き交うのを目で追いながら、歩く。
本当は大目標としている「有馬記念」が控える手前、このイベントを楽しもうとするのは間違いなのかもしれない。本来なら、この時間も練習に使った方が良いのかもしれない。
しかし、休息は必要なものだ。これまで以上に強い負荷のトレーニングをデイヴィッドは重ねていて、今休息を取らなければきっと脚を痛めてしまう。それを予防するという意味でも、クリスマスなんてイベントは丁度良かった。
俺の一歩先を行くデイヴィッドはまだ湯気が立つカップを左手で持って、右手で俺の袖を弱く握っている。俺は、左手から力を抜きながら、右手で同じカップに力を込めて握る。
「どこに行きたいの?」
何度目かの問い。
デイヴィッドは数分前から俺を導くだけで、何も言わない。問い掛けても答えは返ってこない。
イルミネーションに目を向ける事もなく、ただ人混みの中を掻き分ける様にして会話もなく歩いている。
そうして、無言の時間が更に数分出された頃、遠い記憶の中にある公園に辿り着いた。
公園の中に机はない。だから、ベンチの座る部分、平らな部分を選んでデイヴィッドが自分のカップを置く。そして右腕をそっと握られて促されるままにデイヴィッドのカップの隣へ俺のカップを置く。
どうしたの?と聞くよりも先に、デイヴィッドが俺に向かって両手を差し出す。握られていたのは、今日、待ち合わせた時から持っていた紙袋。
「こ、これ……貰っ……て」
大きな通りから外れ、静かな公園の中、デイヴィッドの小さな声がよく響く。
有難うと驚きでたどたどしくなった言葉を絞り出して大切に紙袋を貰う。見ても良い?と聞いたら、小さな頷き。
紙袋を除いて、綺麗に包装された小箱を取り出して、リボンを解く。紙袋にリボンを入れて、丁寧にベンチへと置く。
「……これは」
両手で落とさない様にしっかりと持った小箱を開ければ、控えめではあるが上品なデザインと色味のハンカチが入っていた。そっと触ってみれば、質感の良い肌触りが指先に伝わってくる。
落としていた目線を、デイヴィッドへ向け直せばおずおずと口を開く。
「わ、たしからの……お礼、で、す。これなら、普段……から、使え、ま、すか?」
咄嗟に言葉が出なくて頷きで返す。
デイヴィッドはホッとした様な顔をして言葉を続ける。
「まだ、予定……あるけど、たくさん、沢山支えて貰って、今回は、わたしが……贈る番」
「え、あの、えっと……」
「僕、は……有馬、記念……か、勝つ、から!!!!」
デイヴィッドの聞いた事もない程大きな声が公園に響く。電灯や木に反響してエコーを掛けた様に音が広がる。
ジンジンと鼓膜が揺れて、どうしてか泣きそうになった。
デイヴィッドの成長か、それとも自発的に話せる様になったからか、はたまた全部か色々なものが混ざり合って、頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「有難うデイヴィッド。君の気持ち全部、全部大切に受け取ったよ。本当に、嬉しいです」
そっかと今度は少し小さくなってしまった声でデイヴィッドが答える。でも、その顔はとても満ち足りた様な表情をしていて、とても嬉しそうに見える。
両手で持っていたハンカチの入った小箱を片手で持てる様に直して、空いた方の手でデイヴィッドの手を握る。大きな声を上げて興奮したからか、そもそも俺の体温の問題か手袋越しに熱い熱が伝わってくる。
「デイヴ。勝とう、2人で有馬記念を」
大きく頷いたデイヴの後ろで、満天の星が輝いていた。