I will always love you! 作:リアム
Let's go to Kyushu someday.
目の前に立つ、私より随分背の高い彼女は動画サイトでよく顔を拝見する有名ウマ娘。
緊張で早くなる鼓動を抑え付けながら、限られた時間を無駄にしない為に一度深呼吸をして声帯を震わせる。
「は、初めまして。えっと、本、日は……お時間を作って、下さり……」
落ち着いて言葉を出した筈なのに、少し前までのコミュニケーション下手が尾を引いて頭の中では滑らかに出ていた言葉が、躓いた形で出力される。
逃げ出したくなる気持ちで目線が下がるが、目の前のウマ娘は優しく手を握ってくれる。
「そんなに緊張しないで下さい!時間はありますから、ゆっくり話しましょう!」
「は、はい……!私、デイヴィッド。です」
「ご丁寧にどうも有難う御座います、私はソノンエルフィーです!」
晴れた空に照らされた向日葵みたいな雰囲気で、白い歯を見せて笑う彼女にどんどん緊張の糸が解かされていく。
繋がれた手はもう既に離されているのにも関わらず、柔らかい暖かさが残っている様で安心する。
「それで、デイヴィッドさんは私に何を聞きたいのでしょうか?」
「そうですね、あの、私。トレセン学園を卒業したら、人やウマ娘をお手伝いや助けるお仕事をしたくて……まずは専門的な勉強からなんですけど、ソノンエルフィーさんの活動とかを見てアドバイスを貰えるかな……って」
「成る程!素晴らしい夢です!!……今の気持ちで良いのですが、デイヴィッドさんの思い浮かべているビジョンとして、助けるというのは私の様な活動なのか、それとも福祉的なものかどちらでしょう?」
「い、ちおう、後者です」
「そうですか!ふむ……」
ソノンエルフィーさんは顎に手を当て、考え始める。その姿を見て、ジワジワと足の先から「場違いな事を聞いてしまった」と申し訳ない気持ちが押し寄せた。
勢いでアポを取ってしまったが、確か彼女の活動はスポーツを広める事であり、私が投げ掛けた質問は畑違いのものだっただろう。
それなのに、こんなにも真面目に考えてくれる彼女は本当に優しい方だ。
「……すみません。迷惑な話をしました、貴重な時間も奪ってしまって、御免なさい」
「え!?いえ!いえいえいえ!悩めるウマ娘を助けるのも年長者の責務というもの!……それに、私はデイヴィッドさんへオススメしたい場所があります!」
「へ?私に、ですか?」
「えぇ!九州の方にはなってしまうのですが、“ウマ娘スマイルレースくらぶ”という施設がありまして、そこには心身に疾患を持った子が中心に在籍しています。きっと、デイヴィッドさんが思い浮かべているものと一致する場所の一つだと思いますが、どうでしょう?」
「はい……!えっと、もう一度施設名を教えて頂いても?」
ソノンエルフィーさんから放たれる言葉に耳を傾けて、用意していたメモ帳に書き留める。そして、私が紙の上に文字を書き終わったのを見計らった様に声が上がる。
「そうだ!レースくらぶには定期的にお手伝いとしてお邪魔しているので、もし良かったら次回お邪魔する時、デイヴィッドさんも一緒に行きますか?」
「いや、でも、ご迷惑では」
「大丈夫ですよ!向こうには私から一言入れますし、今年の有馬記念制覇ウマ娘ともなれば皆も喜びます!」
「本当に、良い、ですか?」
「はい!勿論です!!……あ!でも、ご両親が心配しますよね?今は無理して答えを出さなくて大丈夫ですからね!」
「はい。考えておきます……!」
私の答えに、ソノンエルフィーさんは頷いて机の上に置いた私のメモ帳に何かを書く。
私の連絡先です!と添えられ言葉に促されて目線を下げれば、綺麗な文字で数字が並べられていた。
「本当に、本当に、有難う御座います」
深く、深く、頭を下げる。
頭上から聞こえる焦った様な言葉を聞きながら、ゆっくりと頭を上げる。
少し先の未来が、楽しみになった。