I will always love you! 作:リアム
とあるトレーナーとウマ娘
何万人という数のファンから祝福され、世界の真ん中で彼女は笑う。昔より随分と受け答えができる様になったインタビューを行いながら、時折軽く土で汚れた尻尾を揺らしている。
その姿をカメラで捉え、シャッターを押す。
「おめでとう、デイヴ」
レースが終わってからたった数時間の間に何度も口にした言葉。絶えず溢れ出す祝福。
あんな素晴らしい走りをする彼女がもう競技者として表舞台に立たなくなるのは辛いし、引き止めたいとも思うが、トレーナーとして優先するべきなのはウマ娘を未来へ送り出す事。こんなペーペーの俺でも、それを害する事はあってはならない。
「応援、有難う……御座いました!」
耳の先が地面に着くのではないかと勘違いする程深く頭を下げたデイヴィッドは歓声と同じ拍手を贈られる。
あぁ、幸せだな。
俺はずっと、デイヴィッドから幸せを貰っている。
春。
ウマ娘と出会う季節にトレセン学園の敷居を跨いだ一人の男は、腕時計を確認しながら一直線にとある場所に向かう。
ザーザーと水音が響く噴水に腰掛ける。久し振りに味わうほのかな冷たさと、硬さ。頭の中に思い出が流れてくる。
「あの、トレーナー」
俺から見て右の位置、静かに増える気配に目を向ける。トントンと優しく動く尻尾と、世界の音に反応する二つの耳。「良い天気ですね」と緩く笑う顔。
「今日も素敵な一日になりそうだね」
「はい。新しい出会いにピッタリの季節です」
「俺は新しい出会いできるかなぁ」
「できますよ。トレーナーなら」
「有難う。デイヴィッドも新しい生活が始まるな」
「これからは勉強勉強勉強です」
「ははっ!デイヴィッドなら大丈夫だよ!夢に向かって走っていこう」
「はい!全力で走ります!」
俺の言葉に続く言葉。色とりどりの声で会話をする。
デイヴィッドがほんの少し教えてくれた夢の話を交えながら授業が始まるまでの時間を過ごす。俺の不安と、デイヴィッドの不安はまた違うものだけど、互いに共有しして笑い合う。
「では、私はここら辺で」
「うん。有難う!授業頑張って!」
「はい!また放課後に!」
小走りで小さくなっていく背中を見つめながら、手を振る。約束していた今日は、デイヴィッドと俺が並走する日だ。勝てないと分かっているが、記念として、ウマ娘の凄さを今一度感じる為。
「よし、やってやるぞ!」
付け焼き刃だとしても、デイヴィッドを驚かせられる様に軽くストレッチをする。
タンタンと何度か軽く飛んで両頬を叩く。
「せーのっ!」
一歩を踏み出す。昔よりは体力のついた身体。
きっと、スタートダッシュだけなら、ウマ娘にも負けない。
エンディングはもう少しあります。