I will always love you! 作:リアム
デイヴィッドを暴力から庇う事しか出来ない日々の中でリアムは偶々、レースを行う為に日本からやって来たチームを見つけました。
デイヴィッドを助けるにはお人好しだと噂に聞いたあの日本人を頼れば良いと、日本語なんて全く分からないけれど頼るしかないとリアムは考えます。
インターネットという手頃な翻訳機がある時代に生まれた事を、リアムは初めて感謝しました。
15 percent failure.
デイヴィッドの動画を見終わったのは日付けが変わってから何時間か経った後。何回かに分けて視聴した内容ももう少しでエンディングだからと止めずにいたら、牧場勤めのリアムにとっては出勤時間までに仮眠にもならない程の時間しか残らなかった。
昔と違って、徹夜の残り香が主張する年齢となったが今日だけは良いだろうとパソコンを閉じる。
久し振りに出会ったデイヴィッドの姿、久し振りに会話をした愛馬の姿。
また明日、がやって来たセカイの話。
動画を見始めて直ぐに人間の姿となったデイヴィッドへの違和感は無くなった。それ以上に彼と、今は彼女となった相手と出会えた喜びの方が勝っていた。
彼女が物語を進めるにつれて感情の起伏、言葉の有無が変わっていく事にあの頃を思い出して涙が出た。
ゲームの中で設定されているレースに出た時も沢山祝福をされて、きっとデイヴィッドを買う人間が少しでも違ったら、アメリカで同じ様な祝福をされていたんだと思った。
宝塚記念、有馬記念に出走した時も“デイヴィッドが愛されているからこそ皆が君に夢を見た”というゲーム内のテキストに大声でそうだな、なんて言いそうになった。
ウマ娘、デイヴィッドは小さな牧場の職員を飛び越えて、日本中から沢山愛される存在になってくれた。
リアムはそれだけで、例え作られた物語でもデイヴィッドに「頑張れ」と言ってくれる人がいるだけで救われた気持ちになった。
「……もう仕事の時間なのに」
どうしようか。
俺は、こんなにも泣いてしまっている。
「あれ、ベネさん珍しいね。ゲーム?」
「ん?あぁ、デイヴィッドが登場するからってハヤタさんに教えて貰って」
「ゲーム……え!?ベネさんゲームするの!?絶対やらないと思ってた!」
「俺もハヤタさんに教えて貰うまでは知らなかった。でも、デイヴィッドが出るって聞いたら途端に気になって」
「へぇ。偏見だけど、ベネさんってデイヴィッドが他人に触れられるの嫌いだと思ってた」
「そんな事無いさ、まぁ、アサカワさんと同じ女の子になったのは驚いたけど」
「そうだよねぇー!あっ、ベネさん、アタシもウマ娘やってんの!フレンドになろー!」
「フレンド……?」
「そっからかー!」
休憩時間、リアムが一人で画面を触っていると背後から声を掛けるのは、牧場で時々お手伝いをしている獣医を目指す学生である。
アサカワはリアムから携帯を受け取ると手早く何かを打ち込み、これで良しっ!と、軽く日に焼けた働き者の手に戻す。
画面に映る「あいな」という名前のプレイヤー。
「アイナ、これがアサカワさん?」
「そう!フレンドになるとね、育成とか、サポートカードでお手伝いできるんだよー。アタシが設定してるの結構良い感じのやつだから、ベネさんもデイヴィッドちゃん育て易くなると思うよ!」
「そうか。それは有難いな」
アサカワはウマ娘をやり込んでいるのか、これがこうでそれがそれとゲームの要素を説明する。
リアムも文字でただ読むよりも分かり易く、アサカワの言葉に耳を傾ける。
「……うん!だいたいこれを覚えられてれば大丈夫だよ!」
「態々有難う、助かるよ」
「ううん。お節介だもん」
血の繋がりは無いけれど、娘が父親と一緒にゲームを遊ぶ様な光景。
リアムは、漸くゲームのシステムを理解し始めたのと同時にもう少し若ければ理解も早かったのか?と考えて、失敗率15%と表示されたスピードのアイコンに触れて、紫色の文字と共にランニングマシンからデイヴィッドが転げ落ちた。