ひたすら闘争を望むユリアスと、必死に恩返しをしようと頑張るカティアの勘違いギャグストーリー。
とある山に人を襲う大蜘蛛が住み着いたという噂があり、ユリアスが退屈しのぎに力試しをしようとやって来た。すると、人が住む家ほどの大きさの巨大蜘蛛を見つける。
「ふむ、確かルインウェブスパイダーと言ったか? まあ、どうでもいいか。どうせこれから私に屠られる運命だ」
ユリアスは蜘蛛に闘気を向けると、すぐに蜘蛛は殺意をユリアスに向けた。そして、口から鋼鉄よりも頑丈な蜘蛛糸をユリアスに向けて吐き出した。ユリアスはそれを避けようと思えば避けれたが、あえてそれを受け、全身が蜘蛛糸でがんじがらめになる。蜘蛛は身動きの取れないユリアスに襲い掛かって来た。しかし、ユリアスは全身に力を込めると、簡単に蜘蛛糸は千切れ落ちてしまった。
そしてそのまま迫りくる蜘蛛に向け、爪に力を込めて全力で切り裂いた。すると、蜘蛛の顔は激しく切り裂け、そのまま絶命してしまった。
「この程度か。期待したのだが、存外につまらんな」
帰ろうとしたユリアスは、蜘蛛の巣の片隅に一羽のコウモリが捕えられているのを見つける。ユリアスは何となく気まぐれで、そのコウモリを巣から解き放ってやる。
「貴様を捕食する者はもういない。貴様は蜘蛛との生存競争に勝ったのだ。さあ、好きな所に飛び立つがいい」
コウモリは時折ユリアスの方を振り返りながら、大空を羽ばたいていった。
その夜、ユリアスが屋敷(城?)のリビングのソファで退屈に身を委ねてまどろんでいると、入り口のドアをノックする音が聞こえた。極まれにユリアスの屋敷を訪ねて来る者はいるが、そのほとんどが王国軍の討伐隊か、命知らずな旅の武芸者達だった。そのどちらもドアをノックして、主の出てくるのを待つような事はない。
「来客か。珍しいな」
ユリアスはソファに寝そべったまま外に向けて言った。
「開いている。入りたまえ」
ドアが開き、ゴスロリ服に身を包んだ少女が入って来た。少女はユリアスを見ると深々と頭を下げる。
「私はカティアと申します。旅の途中でこの辺りまで来たのですが、日も暮れてしまい、それで一夜の宿をお借りできないでしょうか?」
ユリアスは不審に思った。ゴスロリ服の少女が一人で旅? しかも、少女からはかすかに血の匂いが漂っていた。
(ふむ、見た目は華奢な少女だが、内面から強い魔力を感じる。しかも漂ってくるかすかな血の匂い。こいつは相当な数の獲物を屠って来たのだろう。フフフ、こいつは面白い)
「いいだろう。その代わり、今晩私と一戦交えさせてもらおう。せいぜい楽しませてくれよ」
実はカティアは昼間に助けられたコウモリで、ユリアスに恩返しに来たのだった。
(一戦交えるって、まさか、喧嘩!? なわきゃないよね。男と女が一戦というと、まさか…。何か恩返ししようと思って来たけど、まさかこんなストレートに身体を求められるなんて)
ユリアスは闘いの事を言ったのだが、カティアはすっかり身体を求められているのだと勘違いしてしまう。
「貴様、腹は空いているか?」
「え!? あ、はい、少し…」
「そうか、ならば食堂に食べる物がある。今日、大蜘蛛を始末したら被害を受けていた住民がお礼だと言って勝手に置いて行った。好きに食べるといい」
「ありがとうございます」
カティアは食事をしながら混乱した頭を整理する。
(せっかくここまで来たのに、何もしないまま帰る訳にはいかない)
カティアは食事を済ますと、リビングまで行き、覚悟を決めてユリアスに話しかけた。
「お待たせいたしました」
「来たか。では表に出てもらおうか」
「えっ、外でするのですか!?」
「うむ、貴様はかなりの使い手のようだからな。激しさのあまり屋敷を破壊してしまう懸念がある」
「あの、恥ずかしいので、外はゆるしてください」
「問題ない。ここは人など滅多に立ち寄らぬ、人目を気にする必要はない。存分に動き回れるぞ」
「でも、無理です。私、初めてですし…//」
「初めてだと。とてもそうは思えんな。貴様からは強者の香りがする。そう、その血の匂いだ。今までどれだけの獲物を屠ってきた」
そう言えばカティアは数日前から生理になっていた事を思い出した。
「あの、血の匂い、してます?」
「ああ感じるぞ、プンプンとな! 貴様、今までどれだけ返り血を浴びてきた? 一度身体に染み付いた血の匂いはそうそう隠せるものではない」
(ふえええん、返り血なんて浴びた事ないよぉ)
「あの、やっぱ今夜は止めにしません?」
「馬鹿を言え、私はもう興奮が抑えきれん。むしろ今晩は寝られないものと思え!」
「はいすいません、頑張ります」
カティアは顔を真っ赤にしながら言った。そして、外だけは許して欲しいと重ねて頼み込み、結局屋敷内で一番広い、エントランスでやる事で話がついた。そして、二人は1m程の距離をとって対峙する。
「さあ始めよう。構えろ」
「構え? ああ、体位の事ですね。どのような体位がお好みですか?」
「私の好みだと?」
(ほう、様々な戦闘スタイルを持っていて、相手に合わせて使い分けられるというのか。これは面白い!)
「私は小細工は好かん、もっともオーソドックスなものでいい」
「オーソドックスというと、正常位ですね。それだと、床が固いのは辛いので、お布団を敷いてもいいですか?」
「布団を敷くだと!? 馬鹿を言え、そんなもの邪魔で仕方ない。ダメだ」
「はい、すいません」
そう言いながらカティアは上着のボタンを外していく。
「おい貴様、何をしている?」
「あの、服が邪魔かなと思い、脱ごうかと」
(ほう、服の下に運動用のユニフォームを着こんでいるというのか。これはなかなか準備の良いヤツだ)
そうしてカティアは上着を脱ぎ棄てると、下着が露わになった。そして、そのままブラのホックを外そうとする。そこまで来て、ようやくユリアスは違和感に気づいた。
「おい待て。貴様、それは何の真似だ!?」
「えっ? ですから、服を脱ごうかと」
「何のために?」
「あなたに抱かれるために、ですけど?」
「はあ? 何がどうしてそうなった!?」
「えっと、実は私、今日助けてもらったコウモリで、命を救われた恩返しをしようと思って来たのですが、あなたが私と一戦交えたいというので。それってつまり、男女の営みの事ですよね?」
「馬鹿を言え! 一戦とは文字通り一戦だ、闘いだ。私にとって退屈な日常の唯一の潤いが闘争なのだ!」
「え? ええー!?」
カティアは勘違いしていた事に、急に恥ずかしくなり、ペタリとその場に座り込んでしまう。
「興が削がれた。私はもう寝る」
ユリアスはその場を立ち去ろうとする。
「あの、ちょっと待ってください。何か、腰が抜けて立てないんですけど」
「知らん。自分で何とかしろ」
「うううぅ、助けてくださいぃ」
カティアは涙目になってしまう。ユリアスは小さくため息をつくと、カティアが脱ぎ捨てたドレスを掴み、そのままカティアをお姫様抱っこで担ぎ、リビングのソファに下ろしてやる。
「とても紳士的なんですね」
「以前、機械人形を引きずって歩いた事がある。その時に身体に傷がついたと小言を言われたのでね」
「あの、このまま来てもいいんですよ?」
「いらん。だがまあ、厚意は受け取っておこう。気が済んだらどこへなりとも立ち去るがいい」
「いいえ、まだ何も恩返しできていません」
そうして、カティアはしばらくユリアスの屋敷に住みつき、身の回りの世話をして恩返しをしたのだった。
おしまいw