シャドウバース 短編集   作:クリリ☆

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ネメシス軍所属の引っ込み思案の少年カシムは、勝ち気で自由奔放な姉のローザに振り回され、苦悩する毎日だった。


少年カシムの苦悩② 僕がプリンを作る理由

とある日の夕暮れ時、ローザとカシムはプリンを作っていた。

 

 

 

ローザ「プリンできたよカシム。後は冷やして荒熱が取れたら食べられるよ」

 

 

 

カシム「わーい、プリンだー♪」

 

 

 

ローザ「あれ、そう言えば私達、何でプリンを作ってたんだっけ?」

 

 

 

カシム「ええと、確か…」

 

 

 

 

 

時間は遡って、昼下がり。カシムとローザはイザベルの研究所兼自宅を訪ねていた。

 

 

 

 

 

カシム「ローザ、危ないよぉ。やっぱ帰ろうよぉ」

 

 

 

ローザ「大丈夫よカシム、すっごく楽しいんだから」

 

 

 

イザベル「こんにちはローザ。あら、後ろの彼は初めてね」

 

 

 

ローザ「ああ、この子はカシム。私の弟です」

 

 

 

イザベル「あらそう、なかなか可愛い顔してるじゃない。いらっしゃい、さあ入って」

 

 

 

イザベルに促され、カシムは不安を胸に抱きつつ中に入っていった。

 

そこを治安維持のためのパトロールをしているローウェンがたまたま通りがかった。

 

 

 

ローウェン「ほう、イザベルに客人とは珍しいな。少し様子を見てみるか」

 

 

 

ローウェンはイザベルの家のドアをノックする。するとすぐにイザベルが出てきた。

 

 

 

イザベル「あら、ローウェンじゃない。どうしたの?」

 

 

 

ローウェン「いや、特に用はないんだが。いつも研究室に籠りきりのお前に客人とは珍しいなと思って、挨拶がてらちょっと様子を見に来たんだ」

 

 

 

イザベル「あらそう。彼女達には新薬の被験者になってもらってるのよ」

 

 

 

ローウェン「新薬の被験者?」

 

 

 

イザベル「ええ。今開発中なの」

 

 

 

そう言うとイザベルはローウェンを研究室に案内した。すると研究室では、ローザとカシムが床に寝そべりながら不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

 

ローウェン「なんだ、一体どうしたんだ。おいキミどうした、しっかりしろ!」

 

 

 

ローウェンはすぐ足元でうずくまっていた少年を抱き起す。

 

 

 

カシム「キ、キメたから…」

 

 

 

ローウェン「何!?」

 

 

 

カシム「キメたから、キメたから…」

 

 

 

少年はうわ言のように同じ言葉を繰り返す。さらに、隣でうずくまっている少女も言った。

 

 

 

ローザ「イキましょう、イキましょう、イキましょう…」

 

 

 

ローウェン「まさか大麻か!?」

 

 

 

イザベル「安心してローウェン。これが私が開発した新薬よ。軽い興奮と多幸感が得られるの。しかも全く中毒性がないのよ」

 

 

 

ローウェン「しかし…」

 

 

 

イザベル「しかもどこの家庭でも簡単に手に入る材料だけを使って調合できるの。それと、私は富を独占する気はないわ。レシピを広く公開して、みんなに気軽に使ってもらうの。これで日々の労働や生活の疲れを癒し、明日からの生きる活力が湧いてくるのよ」

 

 

 

ローウェン「バカな。こんな薬が簡単に手に入るようになったら誰も働かなくなる。犯罪は増加し、国が滅びるぞ」

 

 

 

するとイザベルはトロンとした目になり、ローウェンの胸の辺りを指で軽くなぞる。

 

 

 

イザベル「そんな事よりローウェン。私何だか身体が火照って熱いの。カイルの代わりにあなたが慰めてよ」

 

 

 

ローウェン「何を言ってるんだ。って、まさか、君も薬をやってるのか?」

 

 

 

イザベル「当然でしょう。正確な使用感が分からなければ他人に勧められないもの。そんな事より、ねえ、あなたが欲しいの…」

 

 

 

ローウェン「落ち着けイザベル。その気持ちは薬の効能に過ぎない。冷静になれ」

 

 

 

イザベル「なるほど。もしかしたら催淫効果もあるのかも知れないわね。後で記録に残さなくちゃ。でも今は、早く抱いてよ…」

 

 

 

ローウェン「駄目だ。俺には妻と子供がいる」

 

 

 

イザベル「大丈夫、あなたの奥さんよりも私の方があなたを満足させてあげられる自信があるわ」

 

 

 

ローウェン「そういう問題じゃない。俺には倫理的にそんな事はできない」

 

 

 

イザベル「倫理的? はっ、くだらない概念ね。幾度も次元を超越してきた私たちをそんなもので縛れると思う?」

 

 

 

ローウェン「訂正する。俺は妻を愛している。俺は愛する女性以外を抱く気はない。それが俺の信念だ!」

 

 

 

イザベル「へえ面白い。それじゃ、あなたのその信念を吹き飛ばしてみせるわ」

 

 

 

そう言うとイザベルはローウェンに接吻しようとする。ローウェンは顔を背けて必死にそれをかわす。

 

 

 

イザベル「フフフ、いいわローウェン。私、障害があると尚更燃える性質なのよね」

 

 

 

ローウェン「くそ、もはやこれ以上の説得は無理か…」

 

 

 

そうしてローウェンは国防軍に通報し、イザベルは麻薬の製造と所持の罪で逮捕される事となった。そして、禁固刑100年と執行猶予10年が付き、新薬の開発は白紙撤廃となったのだった。

 

 

 

 

 

そしてカシムとローザは…。

 

 

 

 

 

カシム「ローザ、あの薬もっと欲しいよぉ」

 

 

 

ローザ「イザベルさん捕まっちゃったし、自分たちで作るしかないわね」

 

 

 

カシム「そんな事できるの?」

 

 

 

ローザ「確か、家庭で簡単に手に入る材料だけで作れるらしいから。まずはミルクとタマゴでも調合してみようか」

 

 

 

カシム「それじゃただのミルクセーキだよぉ」

 

 

 

ローザ「じゃ、いっそプリンでも作ろうか」

 

 

 

カシム「あ、プリン食べたい!」

 

 

 

そうしてカシムとローザはプリンを作り始めるのだった。

 

 

 

 

 

おしまいw

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