俺の親友はスカートを履くらしい 作:ガンガンいこうぜ!
瑞希の秘密を知ってから数日が経った。
別に何かが変わったわけではない。いや、一つ変わったことがある。気づいたことと言えばいいだろうか。
「なあ、あの噂知っているか」
「ああ、聞いたよ……確か」
廊下を歩いていると聞こえる話し声。
ボリュームを落としているのか、近くを通らないと聞こえない。
……また瑞希の話だ。
噂というのは広がりやすい。特に他人を攻撃できる噂は。
……あまり、聞いていて気持ちのいいものではない。不愉快だ。
一言言いたい気持ちを抑える。
今ここで騒ぎを起こしても、困るのは瑞希の方だ。
煮えたぎる気持ちを抑え、職員室に向かった。
「失礼します」
職員室の扉をノックし、中に入る。
俺が来たことに気が付いた先生が、瑞希のクラスの担任を呼ぶ。
「すまないな
俺に形だけの謝罪をするのは瑞希のクラスの担任。
「いえ、暇だったんで別に。それで、何の用ですか?」
「ああ、これを暁山に渡してくれ」
そう言って渡されたのは、一枚の紙だ。
渡された紙を見てみると、進路希望調査と書かれている。
「暁山と仲がいいのはお前ぐらいしかいないからな。暁山には、来週までに提出しろと言ってくれ」
「分かりました」
帰りに家寄って渡せばいいか。
「それにしても暁山は、何で学校に来ないんだ?何か知っていたりするか?」
白々しいなこいつ。
本当は知ってて、見て見ぬふりをしてる奴が。
いい教師演じてんじゃねぇよ。3流教師が。
「さあ?瑞希にもいろいろあるんじゃないですか?では、そろそろ帰りますので」
心の中の毒を隠すように取り繕い、ありきたりな言葉を吐く。
「おう。気をつけて帰れよ」
靴に履き替えるために下駄箱に向かう。
自分の下駄箱に向かう途中、数人の男子生徒に呼び止められた。
「おい、天樹。ちょっといいか?」
「何か用?」
呼び止めてきたのは、学校内でも目立っている男達。
「まあ、ちょっと話すだけだよ」
「これから帰りか?じゃあ、帰りながら話そうぜ」
「いや、寄るところがあるから用があるならここで話せよ」
「その寄るところって、暁山の所か?」
「そうだけど?」
俺がそう言うと、男達は眉をひそめる。
「……暁山の噂、知っているよな?」
「ああ、知ってる」
「じゃあ、今の学年の空気分かるだろ?お前も協力しろよ」
なるほど。つまり、瑞希と仲良くするなってことか。
「聞きたいんだが、なぜ瑞希にそこまでするんだ?」
俺が問い掛けると、一人の男が困惑した様子で言った。
「いや、気持ち悪いだろ?」
「気持ち悪いって……それだけで?」
救いようねぇなこいつら。
「だってそうだろ?男のくせに女の服着たいとか、異常じゃねーか」
……だめだ、我慢できなくなる。
「そうか。じゃ、俺帰るわ」
「え、おい、待てって!」
背を向けた俺の肩に手を置かれる。
「何だ?」
「話聞いていたか?学年の空気読めよ!」
胸ぐらをつかんで、怒鳴る男。
ムカつくなぁ。
「はぁ……お前、確かサッカー部だったよな?」
「アァ⁉だから何だよ⁉」
俺の突然の質問に、少し驚きながら返す男。
「サッカーは好きか?」
「好きだけど……だから何だよ?」
「そうか。じゃあ、誰かにお前がサッカーしていることを馬鹿にされたらどんな気持ちだ?」
「そりゃあ、悔しいけど……」
「お前らが瑞希にしたことは、それと同じなんじゃないのか?」
俺はそう言うと、胸ぐらを掴んでいた男の手を強引に引きはがす。
「いいか、よく聞けよ。
他人の好きなことを否定する権利は誰にもない。それを晒上げ、嘲笑うこともな」
「って、お前らに行っても意味がないか」
俺は自分の靴に履き替え、学校の玄関を出る。
瑞希の家に向かう道中、俺は後悔していた。
いくら我慢できなかったとはいえ、これじゃあ、瑞希の立場をさらに悪くするだけじゃないか。
瑞希に謝ろう。
***
「というわけで、本当に申し訳ございませんでした」
「わ、分かったから、頭上げて……」
瑞希の部屋に上がり、学校で起きたことを話して土下座した俺。
頭を上げろと言われたので頭を上げる。
「ボクのことで怒ってくれたのは嬉しいし、今更何言われても平気だから……そんなに気にしないで?」
そう言われながら手を差し出される。
まあ、瑞希が気にしないならそれでいいか。
「ところで、パソコンで何してたんだ?」
「ああ、動画作ってたんだ」
よく見てみると、モニターには編集ソフトが開かれていた。
「動画?」
「うん、前に話したでしょ。コラージュ作ってるって、そのコラージュ使って動画作っているんだよ」
「ほーん」
「ていうか、
瑞希に言われて思い出す。そうだった。忘れるところだった。
「はい、これ」
俺はカバンから、貰っていた紙を瑞希に渡す。
「進路希望調査?」
「ああ、来週までには出してくれって」
「……白夜は進学?」
「?そうだけど」
「へぇーどこの高校行くの?」
「神山高校ってところ。歩いていける距離だし」
「ふーん、じゃあ、ボクも同じ所にしよっと」
「いや、大事な進路のことだしもっと悩めよ」
「別に、白夜がいればそれでいいもーん」
そう言って、ベットに寝っ転がる瑞希。
「俺がいればいいって……俺だっていつでも一緒に居るなんてことできないぞ」
「……分かってるよ。冗談だってば」
そう言うと、瑞希は俺に背を向ける。
「ならいいが……進路はちゃんと決めろよ。瑞希の人生に関わることだからな」
「はーい」
「俺はもう帰るからな。じゃあ、また明日」
「バイバーイ」
ベットに寝っ転がったまま、手を振る瑞希。
俺は、その姿を見ながら扉を閉めた。