俺の親友はスカートを履くらしい 作:ガンガンいこうぜ!
あれから無事中学を卒業でき、神山高校にも合格した。ラッキー。
神山の制服に着替え、家を出る。
外に出た瞬間桜が舞い、暖かな風と共に桜が舞う。
暖かな陽気と鳥のさえずりが、新たに始まる生活を祝福しているように感じた。
「ヘックシュ!」
そういえば俺、花粉症だったわ……
ティッシュ、ティッシュ……
ポケットから出したティッシュで鼻をかんでいると、隣の家からキィーとドアが開く音が聞こえた。
音に反応してそちらを見ると、俺の幼馴染の朝比奈まふゆがいた。
まふゆは過去に見せてくれた笑顔ではなく、表情が抜け落ちた顔でこちらを見ていた。
俺は助けられなかった。
あの時君の言葉を無視して、その手を握っていたら結果は変わっていたのだろうか
……たらればの話をしても意味はない。彼女を助けられなかった。その結果がすべてだ。
誰もいなかった。ドアが開いた音が聞こえたのは空耳だろうか。最近こういうことが多い。
きっと疲れているんだろう。本格的にひどくなってきたら病院行こうかな。何かあってからじゃ遅いし。
俺は隣の家をそのまま通り過ぎようとして、何かに引っ張られた。
振り返ると、まふゆが俺の制服の袖を掴んでいた。
その手は無意識だったらしく、まふゆは困惑した表情をして俺の制服から手を離す。
君を助けられなかった俺は、君に関わる権利なんてないだろう
振り返ると、後ろには誰もいなかった。
ただ、桜が落ちている道があるだけ。
気のせいだったのかな……?
俺は首を傾げながら、神山高校へと足を進めた。
***
人の波に流され、時に逆らいながら神山高校へ向かう。やはり、通勤ラッシュとここが都心なのも相まって人が多い。
だがそんな人の波も、神山高校へと近くなっていくと減ってきた。そして神山高校付近になると、スーツ姿の人はほとんどいなくなり、同じ制服を着ている人間しか見えなくなってきた。
「びゃーくや!」
トンっと軽快な音と共に背中に軽い衝撃が走る。
視界の端に入るピンクの髪。
フワッと髪から香る、花と甘い果実の匂い。
振り返るとそこには、神山高校の制服に身を包んだ瑞希が立っていた。
「おはよう!」
「おはよう。瑞希」
挨拶を返すと、瑞希の表情が緩む。
「髪型、変えたんだな」
中学生終盤の頃の瑞希はロングヘアだったのだが、今の瑞希はそのロングヘアをゆるく巻き、サイドテールに纏めている。
「あ、気づいた?どう?カワイイでしょー?」
「ああ、カワイイよ。本当に」
「ふふーん。でしょ?やっぱりボクって何でも似合うからねー」
「ああ、本当にな」
瑞希と話しているうちに、神山高校に着いたみたいだ。
校門を通ると、生徒達が校舎の入口付近で溜まっているのを見つける。
大声で叫んでる金髪の人が見えるな。
……関わっちゃいけない人だな。あれは。
「よし瑞希。クラス見に行こうぜ」
俺は瑞希の手を引き、クラスの掲示板に向かった。
「天樹、天樹……あった。1-Cか」
「白夜見つかった?」
「ああ、瑞希は?」
「ボク、A組~白夜は?」
「俺はCだな」
「あっちゃー。別々かぁー。一緒が良かった~」
しょんぼりとした様子を見せる瑞希に猫の耳を幻視したと同時に、少しいたずら心が沸いてきた。
「ふ~ん。中学の頃はあんなに嫌がってたのになー?」
「うぐっ。最初の頃の話はやめてくれませんかね……?」
露骨に顔を苦くし、俺に許しを乞う瑞希。
「天樹君。これ以上ボクに関わらないでくれるかな」
キリッと効果音が付きそうな顔を意識して言う。
瑞希の顔は恥か羞恥で赤くなる。
「あー白夜のイジワルー!」
「ハハハ、ごめんごめん」
「天樹白夜?お前、白夜か?」
俺の名前を聞いた後ろに立っていたオレンジ髪の男が振り返って、俺の名前を確認してきた。
「え?あ、ああそうだけど……」
困惑しながらオレンジ髪の問いに答えた。
俺が答えると、オレンジ髪は目を輝かせる。
「白夜!久しぶりだな!俺だ!覚えてないか?彰人だよ!東雲彰人!」
マシンガンのようなスピードで話され、混乱しながら聞いた名前を記憶から引っ張り出そうとする。
えーと、東雲彰人、東雲彰人……あ、
思い出すのは、よくサッカーを一緒にやっていたオレンジ髪の少年の姿。
「彰人!小学校で一緒だった彰人か!久しぶり」
「ああ、そうだ!久しぶりだな白夜。久々に会ったら雰囲気が変わってびっくりしたぜ。それに髪色も」
「ハハハッ!細かいことは気にするな!ていうか変わったのはお前もだろ!めっちゃイケメンになってるじゃねーか!」
「うるっせ!……あーところで彼女さんですか?すみません。邪魔しちゃって」
そう言って、瑞希に小さく頭を下げる彰人。
あ、瑞希のことを彼女だと思ってるのか。
「あー違うぞ彰人。紹介する。こいつは暁山瑞希。中学からの親友だ。で、瑞希。こいつが東雲彰人。俺の小学校の頃の友達だ」
「よろしくね。東雲君」
「ああ、よろしくお願いします」
「多分同い年だから、敬語はいらないよ」
「あーそうか。じゃあよろしく。暁山」
「うん。よろしく」
「じゃあ自己紹介も終わったところだし、三人で教室行こうぜ。彰人は何組だったんだ?」
「C。お前と一緒だ」
「えーボクだけぼっちー」
俺達は三人で談笑しながら、校舎に入っていった。
***
「あ、ボクこっちだ。じゃあまた後でね」
瑞希が俺達に手を振り、A組のクラスへと向かう。
「おう。また後で」
俺達も手を振り、瑞希を見送る。
「俺達も教室に入るか」
そう言って彰人が教室の扉を開け、入っていく。
俺もそれに続いて入っていった。
各々の席を確認した後、入学式まで時間があるため俺達は談笑することにした。
「それにしてもお前。なかなかやるな」
「やるなってなんだよ?」
彰人がニヤニヤと笑みを浮かべながら、俺を小突く。
「暁山のことだよ。狙ってんのか?」
「はぁ?あいつをそういう目で見たことないって」
「へぇー」
ニヤニヤと愉悦混じりの笑みを浮かべる彰人。
あーこいつ……
「はい!この話おしまい!」
「は?いや聞かせろよ」
「ここから先は有料コンテンツですー」
「逃げやがったな………………なあ、今週のどっか空いてるか?」
急に静かになったと思ったら、なんか神妙な顔になった彰人。
「別に暇だが……どうした?」
「あーいや。家、来れなぇかなって」
ポリポリと頭をかく彰人。
「お前んちに?何で?」
気まずいのか、目線をそらされ彰人は言う。
「絵名がその……お前に言いたいことがあるってな。ほら、覚えてるだろ?うちの姉貴だよ」
「……何を言ってんだ彰人は?
お前に姉なんていないだろ。ついに頭おかしくなっちまったのか?心配だぞ俺は。
「は?それどういう――」
「はーい。席につけー。これから入学式についての説明するぞ」
彰人が俺の言葉に対して、何か言おうとした瞬間教室の扉が開いた。
「また後でな」
「……ッ」
俺は彰人との会話を切り上げ、席に着いた。
こうして、久しぶりに会った旧友との会話は奇妙な形で終わった。