俺の親友はスカートを履くらしい   作:ガンガンいこうぜ!

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今回は瑞希くんとのイチャイチャは無しです。ユルシテ……
久々の投稿でイチャイチャがないとか作者は磔にされた方が良い。
久しぶりに書いたからキャラエミュは大目に見てください。m(_ _)m


耳から血が出たらしい

「アハハ、田中さんはクライミングが趣味なんだね。俺、やったことないからさ、今度教えてよ」

「へぇー佐藤さんはテニスやってるんだ。俺もやってみようかなぁ~」

 

俺の友人、東雲彰人ははっきり言ってモテる。それはもう憎たらしいほどに。というか誰だお前は。

お前はいつから爽やか系男子になったんだ。ダウナー系だったろお前。

もっと言えば、小学校の時は快活系だったじゃないか。

高校入る前までに何があったんだよ。俺は悲しいぞ。

目の前で誰が見ても爽やかイケメンの笑顔を振りまきながら女子と話している彰人に対して、缶の中に入ったジュースを飲みながらそんなことを考える。

 

「あ、そういえば天樹っちは何かスポーツとかやってるの?良ければ聞かせてー?」

 

「!」

 

そんな俺の様子に気が付いたのか、田中さんが話を振ってくれた。

 

田゛中゛ざん゛優゛し゛い゛!!!

 

金髪でピアスバチバチに着けてるからなんか怖そうと思ってごめんね。めっちゃ優しいギャルだったわ。

優しい人間は誰に対しても優しいね。世界があなたみたいな人で溢れればいいと思う。

 

「……小学生の頃はサッカーをやってたな。彰人と一緒に」

 

……後はやっていたのはほとんど武道だし、今話すことではないよな。

 

「え⁉あっきーと一緒だったの?ってことは、小学校一緒?」

 

あっきー……もうそんな風に呼ばれているのか……

彰人がすごいのか、田中さんの距離感の詰め方がすごいのか、いずれにせよ俺のクラスにはすごい奴が二人いるということだ。やったね!行事で楽できそう。楽する気はないけどさ。

 

「ああ、そうだったよな彰人?」

「うん、そうだよ。よく二人で遊んでいたしね」

 

ニコリと恐ろしさを覚えるほどの満面の笑みを浮かべた彰人が俺の言葉にうなずく。

 

 

『看護師やめて医者を目指す!?どういうことだよまふゆ!?昔からなりたいって言ってたじゃないか!?』

 

夕日が街を彩る中学生の秋。

冬が近づいてきたことを表す肌寒い風が俺の頬を撫でる。

キコキコと鳴る公園のブランコに座りながら、隣のまふゆから出た言葉に対して自分の中で驚愕の感情が生まれた。

その感情のままにまふゆに追求する。

 

『そりゃ、看護師は色々大変だって聞くけど……でも!』

 

『お母さんが、看護師より医者の方が良いって』

 

『はぁ?何だよそれ、いくら母親でもそれは無いだろ。……よし、ちょっと俺が話付けてくる』

 

中学の俺はきっと万能感に包まれていたんだろう。

自分は何でもできるって思っていて、自分がいればすべて解決できるって、ナルシストもドン引きなことを本気で思っていた。だって実際にそうだったから……

だから――――

 

『やめて』

 

強く拒絶されたのは初めてだった。

 

『お母さんは、私のことを想って言ってくれたの。だから……大丈夫』

 

そう言って彼女は笑った。

人形のような、死人の顔を無理矢理笑顔にしたかのような張り付いた笑みを。

俺はきっと、それでもと、進むべきだったんだ。たとえ彼女に嫌われても。

やるべきだったんだ。なのに、俺は躊躇った。

彼女の人生に踏み込むことを恐れて、人生を背負うなんて高尚な覚悟を俺は持てなかった。

 

他人それぞれに人生のターニングポイントがあるのだろう。

俺にとってのターニングポイントはここだった。

 

だから、張り付いた笑みは嫌いなんだ。

 

 

 

何だその口調……怖ぁ……

なんかよくわからないけど気分悪くなってきたな……

ああ~お腹がグルグルするぅ~

 

俺が心の中で唸っている間でも会話は続いていく。

 

「何か二人は最強みたいな感じだね~」

「いいな~憧れる~」

 

佐藤さんがよくわからないことを言い出した。

確かに俺と彰人は結構いいコンビだったと思うけど……まあ、本人がどう思っているのかわからないからはっきりと口に出すのはやめておこう。彰人が不快になるかもしれないからな。

……それにしてもマジで腹が痛い。一旦席を外そう……

 

「あれ?天樹ッちどこ行くの?」

「ちょっと、トイレ……」

 

腹が痛いって言うより胃の痛さかこれ?

とりあえずトイレ行こう。うんそうしよう。

俺は足早に教室を出る。

手に持っていた缶は潰れていた。

 

「天樹君、すごく顔色悪かったけど大丈夫かな」

「すごくトイレ我慢してたのかも」

「絶対それだけじゃないでしょ」

「白夜……」

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、この曲聞いてみ?今のお前にぴったりだと思うぜ?」

「いいよ。今はそんな気分じゃない」

「まあまあ一回聞いてみろって」

 

教室を出てトイレで用を済ませたが、そのまま教室に戻る気にもなれずにうろうろとしていたら、生徒たちの会話が耳に入る。

文脈から察するに、何かあった男子生徒をその友達が慰めていると言ったところか。

慰めるための手段が音楽だというのが、昔の俺みたいで懐かしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

…………

………………懐かしい?

 

何で俺はこんな感情を抱いたんだろうか。

そもそも俺は音楽をやっていたのか?

 

頭の中に釘を打ち込まれたような痛みと衝撃が走る。

忘れるなと、決して忘れるなと、言い聞かせるように何度も何度も打ち付けられる。

 

「も~強情だな!ほらよっと」

「ちょ、やめろって!てか音抜けてるし!早く消せ!」

 

突然起きた自分の異変に困惑していると、さっき話をしていた男子生徒達の一人のスマホが落ちる。その拍子でイヤホンが抜け、音が流れた。

 

聞き覚えがあるイントロ。

君はまだ作曲しているのか

そのことに安堵を覚え、同時に嫌悪する。

初めて君の音楽を聴いたとき、俺はその音に夢中になった。

君の純粋な想いが、意思が、言葉が、この世界の何よりも輝いていたから

君が作曲する姿は誰よりもきれいだと思った。なのに……

何だよこれ。何だよこの音。

こんな悲しい音、君の曲で聞きたくなかった。こんな歌、俺は嫌だ。

君の音はもっと自由だったはずだ。それが今やなんだ、こんなの足枷を付けられた鳥じゃないか

……でも、こうなったのも俺が原因だ。

俺があんなこと言わなければ、奏は変わらずにいたんだ。

全部………………俺が悪いんだ。

 

 

 

すぐに持ち主が電源を消したため、廊下は何事無かったかのように今までの喧騒に戻る。

何か音が流れたと思ったが、気のせいだったか。

俺もそろそろ教室に戻ろうと思い、歩を進めると右耳からブツリと何かが千切れる音がした。

俺は音のした耳に生温かい感覚が伝うのを感じ、伝ったものを拭う。

何となく拭った手を見ると、乾いた血が手の平に付いていた。

 

「マジ……?」

 

驚愕の二文字。

何か心当たりがあるというわけでもなければ、直前に耳から血が出るほどのことをしたというわけでもない。

理性が困惑するなか、本能が治療をしろと行動を促す。

階段を下り、保健室に向かい、扉を開けた。

 

「すいません、耳から血が出たんですけど」

「?」

 

保健室の先生に本物の狂人を見たような目で見られた。

解せぬ。

 

 

 

*

 

 

 

結局保健室で手に負える案件ではなかったため、早退させられて病院に行くことになった。

とりあえず、一旦家に帰って近くの耳鼻科探すか。

病院行ったことないからどこにあるのか知らないんだよな。

行ったことあるの、親父の友人がやってる精神科だけだし。

 

「あれ?白夜君?」

 

帰路につこうとする俺に声をかける人間が一人。

声のした方を振り返ると噂をすればなんとやら、親父と友人の精神科医がいた。

 

「偶然ですね。刈谷さん」

「ホント偶然だね~ あれ?でもまだ学校やっている時間だよね? もしかしてサボり~?

いけないんだぁ~」

「違いますよ。ちょっと耳の方に怪我をしまして、早退したんです」

「……へぇ?」

 

花畑の中にいるような錯覚をさせる話し方をしながら、俺に近づいてくる刈谷さん。

このままじゃあらぬ誤解を受けたまま親父に報告されそうだったので、刈谷さんの言葉を否定し事情を話す。

俺の事情を聴いた刈谷さんの表情が少しだけ強張る。

 

「少し、見させてもらうよ」

「え?」

 

神妙な刈谷さんの表情に困惑していると、いつの間に近くにいた刈谷さんが俺の耳元に近づき原因の耳を覗き込んだ。

 

「!?」

 

突然の行動にフリーズする俺。

フリーズが解け、再起動する頃には刈谷さんは俺の耳を除き終わった後だった。

 

「……いきなり何するんですか」

「いや~ごめんごめん。少し気になってさ。所で質問なんだけど、耳が怪我するようなことって、した?」

「してないです」

「あー なるほど……悪化してるな ……白夜君、これからこれから用事ある?」

「耳鼻科行く予定が……」

「なら、ちょうどいい。うち、耳鼻科も兼任してるからウチ来れない?」

「え?そんな話初耳なんですけ「いいからいいから」ちょ、ちょっと⁉」

 

半ば強引に刈谷さんに腕を引っ張られ、連れていかれる。

場所は刈谷さんが経営している精神科だろう。耳鼻科も兼任しているとかは聞いたことがなかったが。

華奢な腕からは考えられないほどの力で引きずられて、抵抗も空しく病院に連れていかれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

「まず質問。最近変わったことは?」

「特にないですけど……あ!小学校の同級生と会いました」

「ほうほう、じゃあ何か不思議だなって感じることがあったり、おかしいなって感じたことは?」

「あーその小学校の同級生が一人っ子だったはずなんですけど、姉がいるとか言ったことですかね」

「……マジかぁ」

「刈谷さん?」

「…………その子って東雲彰人って名前?」

「そうですね」

「じゃあ、東雲絵名って名前は覚えてる?」

「すいませんなんて?」

「東雲絵名」

「ん?」

 

病院に着くなり、席に座らせられいくつかの質問をされる。どれも定期健診で答える質問ばかりだ。

質問の中で聞き取れなかった単語があったため何度か聞き返すと、刈谷さんは苦虫を嚙み潰したような顔になる。

 

「あの、なんかすいません」

「ん?あ、いや、君のせいじゃないよ。気にしないで。……今日はごめんね。時間取っちゃって。また定期健診で会おう」

「あ……はい。じゃあ、さようなら?」

 

刈谷さんの態度を不審に思いながら病院から出る。にしても、最後まで聞き取れなかった単語は何だろう。

まるで水の中で会話しているみたいだった。

 

「まあ、いいか」

 

そういえば耳の方見てもらえなかったな……

明日休みだし、明日でいっか。

 

 

一人になった部屋で刈谷はつぶやく。

 

「マズいな、どんどん悪化してる。早く何とかしないと……彼が、」

 

 

 

 

自分を忘れてしまう前に――――




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