ポケットに煌めきを詰めて   作:NiwaNiwa

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更新が!1週間遅れて!!申し訳ございませんでした!!!
”なるべく”毎週更新できるように頑張っていきますが、なるべくの裁量は私次第ですので、どうか、許して……

謝罪はこの辺にして、本編をどうぞ!


第10話~私の決めた事だから~

「かのんサン……」

「可可ちゃん……」

 

 私の実家である喫茶店にて、私と可可ちゃん、両者が向かい合う。そこには甘い雰囲気などいっぺんたりとも無く、ピリリとした空気が張り詰めていた。

 そして。次にアクションを起こしたのは可可ちゃんだった。

 

「やっぱり退学しマショウ、かのんサン! あんなコンチキショーがいる学校で可可の部活が出来るわけありません!」

「ねええぇぇぇやめてよ可可ちゃん! 考え直してよおぉぉぉ!」

 

 再び出番を与えられた退学届を握りしめて、可可ちゃんがズカズカと出口の方に突き進む。学校に自作の退学届を提出でもしに行くのだろうか、私はそんな可可ちゃんの腰に抱きついて彼女をなんとか引き留めようとする。そのやり取りを見ているピチューはオロオロし、ペラップは私達の頭の上を飛び回っている……所謂、カオスが展開されていた。

 何故、こうなったのかと言うと……

 

***

 

「何度来ようが答えは同じです」

 

 葉月さんの冷酷な声が耳朶に刺さる。可可ちゃんの決意を知った私は、もう一度葉月さんへと交渉を持ちかけに、可可ちゃんと一緒に生徒会室へと出向いた。

 

「なんで……」

「同じ説明を何度もするのは非効率極まりないのですが。詳細は彼女から伺っては如何ですか?」

「わっかんないよ! 部活って、生徒がやりたい事をするために集まるだけじゃん! それの何がいけないの!?」

「……確か、貴女方はポケモンに関する部活動をやりたいと聞きました」

「そうだよ。それがどうかしたの?」

「はぁ、本当に何もわかっていないのですね」

 

 怒りを通り越して呆れすら感じさせられる葉月さんの態度。思わず言い返しそうになったけれど、それを圧して葉月さんの言葉は続く。

 

「ポケモンの教育に力を入れているこの結ヶ丘で、ポケモンに関する活動はどんなモノであれ、他の学校より秀でていなくてはなりません。でなくては、この学校の価値が下がってしまう」

「そう……要するに、レベルが高ければいいの? レベルが高いってなぁに? どんな例があるか言ってみてよ!」

「まぁまぁ、かのんサン……葉月サン、かのんサンはポケモンと触れ合うのが凄く得意なのデスよ!」

「どうでしょうか。ポケモンすら持っていない貴女が?」

「そ、それなら大丈夫だよ。出ておいで! ペラップ、ピチュー!」

 

 葉月さんがポケモンを持ってない私を標的にするのは想定済み。私はボールからペラップとピチューを呼び出す。目の前に現われた2人を見て、葉月さんが目を見開いたのを感じた。これなら……!

 

「……ペラップとピチューですか。この辺りでは珍しいポケモンですね。譲って貰ったのですか?」

「違うよっ。私が自分で捕まえたの」

 

 葉月さんは自分のスマホをペラップ達に向けて、レベルを測っている。

 

「レベルは……8と3。予想は出来ていましたが低いですね。それに、ピチューならすぐにでもピカチュウ、ライチュウへと進化させられるのに。やはり貴女の技量はその程度と言う事でしょう」

「別に、いつ進化させようが私の勝手だし。ピチューの意思だって」

「言ったでしょう。ポケモンはトレーナーの技量を測る手段の一つだと。貴女と言い、こちらの方と言い、この程度のポケモンしか従えられない貴女達が、ポケモントレーナーとしてレベルが高いとは思えませんね」

 

 プッツン。私の中で何か糸が切れたような音がした。今の葉月さんの発言は、私の怒りを沸騰させるのには充分だった。そうだよ。言い返されっぱなしで癪だったんだよ……!

 

「この程度って……一体誰のポケモンの事を言ってるつもり!?」

「あら、わからないのですか……そんな貴女の為にもう一度言って差し上げます。ポケモンに関する活動はどんなモノであれ、他の学校より秀でていなくてはならない。どうしてもと言うのであれば、他の学校にでも行く事ですね」

 

 そう言って、荷物を持った葉月さんは私達を置いてさっさと出て行ってしまった。

 

「ちょっと、待ってよ葉月さん!」

「もういいデス、かのんサン。行きマショウ……」

「う、うん……」

 

***

 

 そうして、私達も帰ってきた後、今に至るというワケ。正直、葉月さんに煽られるようなマネまでされてムカついた。でも、かといって学校を出てっていい理由にはならないよね。

 

「あぁんな学校にいてもしょうがないデス! 2人で別の学校に出て行ってやるデスよ!」

「今更だけどさ、そんなの無理に決まってるでしょー!」

 

 私を引きずって行こうとする可可ちゃんを抑えながら叫ぶ。

 

「お姉ちゃん、あんた何やってるの……?」

「聞かないで……可可ちゃんに聞いて……」

「大丈夫デスよ、かのんサン。編入試験で他の学校に行く事が出来るではないデスか。かのんサンの家はどの辺デスか?」

「家? 家……いえ……ここです」

「そうデシタ。ではこの近くの学校を……」

 

 待って待って。どんどん話が勝手に進んじゃってるんだけど……そもそも、親がそんなの許してくれるわけがない。

 

「かのんサン、書類を提出しに行きマショウ!」

 

 遂に、私の制止を振りほどいて可可ちゃんが飛び出して行ってしまった。

 

「あ、ちょっと可可ちゃん! お母さん、行ってくる!」

「え、えぇ……あんた、学校止めたいとか思ってたり」

「止めないってば! ペラップ、ピチュー、行くよ!」

 

 ペラップとピチューを肩に乗せて家を飛び出す。私が。私がこの学校を受けたいって思ったんだ。そりゃ、バトル科じゃなくて普通科になっちゃったけど……でも、自分の意思でこの学校に入ったから。それは可可ちゃんも一緒だから。あの子を止めなくちゃ。

 

***

 

「可可ちゃん!」

 

 数分後、なんとかヘトヘトな可可ちゃんに追いつくことが出来た。そう言えば、体力無かったよね、可可ちゃん……

 

「ぜぇっ……はぁっ……なん、デスか……」

「可可ちゃん……可可ちゃんは、それでいいの? 学校、やめちゃっていいの?」

「で、デスがぁ……」

「言ったでしょ。可可ちゃんは、コンテストがしたくてあの学校に入った。もう少し……もう少し、考えてみようよ! 可可ちゃんのやりたい事、全部やれるような事!」

「かのんサン……」

「好きなことに、おしまいなんてないんでしょ?」

「……!!」

 

 可可ちゃんがビックリするのも無理はない。だって、これは。

 

「可可ちゃんの言葉。私に教えてくれよね。可可ちゃんの言葉があったから、私はまた頑張れるようになった……ペラップとピチューと出会えた。今度は、可可ちゃんの番だよっ」

「かのんサン……ハイッ!」

 

 よかった。なんとか聞き入れてくれたみたい。

 

「そもそも……そんな手作りの書類じゃ受理してもらえないと思うけどな」

「アイヤ、そうデスかね」

「うんうん。出すにしても、ちゃんと正式な書類じゃなきゃ」

「ふむふむ、それもそうデスね」

 

 ま、退学届なんてそうそう出すもんじゃないと思うけどね。

 

「可可ちゃん、この後どうする?」

「可可は……あ、そうデシタ。まだまだ引っ越しの片付けが終わっていないので……それに、作りたいモノもあるので」

「そっか、私も手伝おうか?」

「大丈夫、可可1人でやれマス!」

「そっか……余計なお世話だったみたい、ごめんね?」

「謝らないでクダサイ! かのんサンは優しいデスね、エヘヘ」

 

 うぎゅ……褒められると、ちょっと照れくさいな。てか、作りたいモノってなんだろ? ちょっと気になるけど……可可ちゃん1人でやりたい事だろうから、私が首を突っ込むべきじゃないよね。

 

「では、バイバイデス!」

「うん、またね」

 

 可可ちゃんに別れを告げて、家に戻る。なんだかいっぱい叫んで疲れたし、お茶でもしようかなぁと思っていたら。

 

「うぃっすー未来のチャンピオン……えぇっと、ちゃんぽん……」

「あれ……ちぃちゃん?」

 

 向かい側から自作のラップを口ずさみながら登場する、幼馴染みがそこにいたのだった。果たして今のがラップ、なのかどうかはわからないけど……

 

***

 

「ちぃちゃん、飲み物何にする?」

「いつものモモンティーで」

「はぁい。それでさ、葉月さんの弱点って見つかった?」

「ドラゴンゴーストじめんひこう……」

「その弱点じゃなくって」

「もう、私来たばっかりだよ? がっつき過ぎ。ちょっとはゆっくりさせて?」

「うっ。ごめんってばぁ」

 

 そう。実は、ちぃちゃんにはある調査を頼んであったのだ。葉月さんの弱点を探って貰うこと。仲の悪いグループがいるとか、実はむしポケモンが苦手とか。なんでもいいから、あの子の弱みを握りたかったのだ。

 しばらく待ってるとお茶が運ばれてきた。ちぃちゃんはカップからただよう、好物のモモンのみの香りを堪能しながら一口、お茶を啜る。

 

「ふぅ……それで、葉月さんの弱点だったね」

「うんっ。どうなのどうなの」

「弱点は、そうだなぁ。一言で表わすと……」

「弱点は……?」

「弱点は……」

「弱点は……!」

「……シビルドン」

 

……えっ。どういう意味。“れいとうビーム”の当たり所が悪かったかのような顔をしているであろう私を見て、ちぃちゃんが付け足す。

 

「弱点はない、ってこと」

「弱点がない……」

 

 シビルドン。でんきうおポケモン。でんきタイプで、特性はふゆう。つまり弱点がない……

 

「……シビルドンだね」

「うん、シビルドン」

 

 そういえば、どことなくあのポニーテールがシビルドンに似てるかもしれない。そうか。そうだったのか。

 

「葉月さんは、シビルドンだったんだ……」

「かのんちゃん、何言ってるの……?」

「あれ、違う?」

「違うよ。バトル科の子に色々聞いて回ったんだけど……」

 

 ちぃちゃんが言うには、葉月さんは成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗エトセトラ……可可ちゃんとのバトルの時もその片鱗が見られたけど、バトル科周りの皆には頼りにされている。

 

「それに、理事長も学校を創った葉月さんのお母さん……葉月花さんと知り合いらしいし。あの子がダメって言った事をひっくり返すのは、相当難しいんじゃないかな」

「そっか……」

「あのね、かのんちゃん」

 

 私の思案顔を見てか、ちぃちゃんが続ける。

 

「既にある部で活動するとか、普通に放課後に集まるとかじゃダメなのかな? そうすれば怒られる事だってないし……」

 

 ちぃちゃんの提案も充分わかる。きっと、私達の事を思って言ってくれてる事だってわかる。でも、それでも私達は。

 

「それじゃ、ダメなの」

「なんで!」

「今のままじゃ、あの学校は全部葉月さんの思い通りになっちゃう。それに、それは……可可ちゃんの、本当にやりたい事じゃないだろうから」

「でも……認めてもらえなかったんじゃ、結局そのままだよ……」

「別の方法を考えるよ。なんとかして、可可ちゃんがやりたい事をできるように……」

「どうやって? いつまでに? 本当にそれで大丈夫なの?」

 

 ちぃちゃんはとっても不安そうな表情をしてる。そんな顔をさせて申し訳なさもある……どうすればいいかなんて、まだわかんない。わかんないけど。

 

「ごめん、ちぃちゃん。もう決めた事だから。それに、可可ちゃんと一緒なら。ポケモントレーナーとして、もっともっと成長できる気がするんだ」

 

 一度決めた事は、絶対に曲げない。ポケモンと一緒にいることも。可可ちゃんを手伝う事も。

 




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