ポケットに煌めきを詰めて   作:NiwaNiwa

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どうも! 卒研だったり蓮ノ空のアーカイブ見たりで中々執筆の時間が取れませぬ……

今回は本編より少し早めに、あの子が登場……?

お楽しみに!


第14話~教えて!すみれ先生!~

 こっちに来るのは二回目だっけか。深緑に囲まれながら、私はコンテスト科の教室……可可ちゃんのクラスを訪ねていた。

 

「失礼しま~す」

「あ、澁谷さん。唐さーん、お友達来たよー」

 

 うわ、名前覚えられてる……可可ちゃんが話したのかな? まぁ、知られてて困る事じゃないし、ただ友達って呼ぶより楽だよね。

 

「あ、かのんサン! どうぞ、入ってクダサイ」

「あれ? 唐さんに用事じゃないの?」

「うん……今日は別の人。平安名さんに用事があって」

「平安名さんなら、あっちの窓際に……」

 

 可可ちゃんのクラスメートが手をやった方を見ると、窓際に件の人物……平安名すみれさんがいた。窓から差し込む日差しが金髪に反射して、煌めいている。思わず、ほぅと溜息が出る程に綺麗だった。

 

「あの、平安名さん。ちょっといい?」

「はい……って、あんた。この前の」

「少しお話があるんだけど」

「何? この前みたいに部活の勧誘なら」

「それとはまた少し違って。その、平安名さんに、先生を頼めないかなって」

「……先生?」

 

 訝しむ平安名さんを連れて、私達は中庭へと移動した。中庭の木の麓のベンチに腰掛けた平安名さんは、髪の毛をクルクルと回しながらこっちの言葉を待っている。私達は、自己紹介も兼ねてこれまでに起きた事を簡潔に平安名さんに話した。

 

「成る程ね……早い話、その子の為に私がコンテストのイロハを指導しろって事ね」

「お願い出来るかな?」

「お断りよ」

 

 返答はバッサリ一言。あっけなかった。

 

「なぁんでデスか! こんなに頼み込んでるのに……」

「私にメリットがないじゃない」

「そこを何とかぁ……同じコンテスト好きのよしみで」

「イヤったらイヤよ。私、そんなに暇じゃないんだから」

 

 可可ちゃんが頼み込んでも、返答が変わる様子はない。

 

「私からも、お願い」

「別に、私とあんたって仲良くないじゃない。免じられるような関係じゃないんでしょ」

「それはっ、そうですけどぉ。ね、お礼はするからさ」

「……ふぅん、ギャラを出す気はあるのね。じゃ、今日の放課後にまた声をかけて頂戴」

 

 それだけ言って立ち上がった平安名さんは、サッサと行ってしまった。その背中を見送る可可ちゃんはほっぺをぷっくり、ホシガリスみたいに膨らませていた。

 

「なんデスか、あの人。足下を見て……少し苦手デス」

「まぁまぁ……でも、これで可可ちゃんの先生問題も解決したね」

「だといいのデスが。本当にあの人でいいのでショウカ?」

「実力は確かなんだもん。ね、平安名さんを信じてみよう?」

「……ハイ」

 

 丁度、昼休憩が終わるチャイムが鳴り響いたから、私は普通科の教室に戻った。可可ちゃん、ちゃんと平安名さんの言う事を聞いてくれればいいんだけど。

 

***

 

 放課後を告げるチャイムが鳴って、私はコンテスト科の教室へと直行した。

 

「失礼しますっ。可可ちゃんと平安名さん、いらっしゃいますか?」

「そんなに急がなくても、逃げないわよ」

「あ、平安名さん」

「……短い付き合いでしょうけど、そんな他人行儀じゃなくていいわ」

「そう? じゃあ、すみれちゃん。よろしくね」

「ん。あの可可って子は先に行ってるから、私達も行きましょうか」

 

 そうして、2人で歩き出した。黙っているのもなんだし、すみれちゃんに世間話を振ってみよっと。

 

「すみれちゃん、小さい時にポケモンコンテストに優勝するなんて凄いね!」

「ま、この私の実力を持ってすれば当然? ってとこかしら」

「やっぱり、相棒ポケモンはミロカロスなの?」

「そうね。大きい子だし、不意にボールから出ちゃったら大変だから学校には連れてきてないけど……」

「そっかぁ。いつか会わせて欲しいな」

「……そうね。いつかね。かのんは、どんなポケモンを持っているの?」

「私なんてまだ駆け出しだよ。ペラップとピチュー。2人ともすっごく可愛いんだよ」

「そう。駆け出しでジムに挑戦するなんて、アンタこそ凄いじゃない」

「えへへ、そうかな」

 

 そうして話しているウチに、いつもの練習場所へと辿り着いた。すみれちゃんの言った通り、既に可可ちゃんも来ており、ちぃちゃんと手持ちの子達も準備運動をしている……という事は、今日はこの後走り込みかぁ。

 

「ちぃちゃん、やっほー」

「あ、かのんちゃん! うぃっすー! っと、そちらは……」

「平安名すみれよ。一応、可可の先生ってヤツかしら?」

「私は嵐千砂都! かのんちゃんの先生してますっ。先生同士、仲良くしようね!」

「そうね、よろしく」

 

 ちぃちゃん達の挨拶も済んだところで。早速2組に別れて、練習を行う事にした。

 

「それじゃ、私達は走ってくるから! すみれちゃん、可可ちゃんの事よろしくねー!」

 

***

 

 かのんと千砂都さん……まぁ、向こうも私をちゃん付けしてたし、こっちも呼び捨てでいいわよね。2人とポケモン達を見送った後、私は早速、私に教えを請いたいと言う人物……可可に向き直った。

 

「それじゃ、可可」

「むぅ……本当に、アナタを信じていいのデスか?」

「朝の態度は悪かったと思ってるわ。自分でも少しつっけんどん過ぎたと思ってるし。それよりコンテストの事、色々教えて欲しいのよね?」

「まぁ、そうデスけど」

「だったら、早いところ始めちゃいましょ。アナタがどれぐらい基礎知識を身につけてるか、とかも気になるし」

「……わかりマシタ。よろしくお願いしマス」

 

 向こうもその気になった所で……早速、色々と聞き出す事にした。まずはこの子とそのポケモンが、どの程度のスペックの持ち主か知らなきゃね。

 

「まず、アナタがコンテストで一緒に出ようと思ってる子を出して頂戴」

「はいっ。(おいで)花漾海狮(オシャマリ)!」

「シャマ!」

 

 その子がモンスターボールから出したのは……オシャマリか。見た目も可愛いし、初心者用のポケモンの進化形として人気もある。第一印象は良さそうね。

 

「それで、どの部門に出ようと思っているの?」

「それは勿論、“かわいさ”部門デス!」

「ふぅん。それで、覚えてる技は……」

 

 私はオシャマリにポケモン図鑑をかざしてこの子が覚えている技を調べる。オシャマリの画面の横に表示されたのは“バブルこうせん”、“アクアジェット”、“チャームボイス”、“つぶらなひとみ”の4つ……

 

「この中で一つ、いらない技があるわね。何かわかる?」

「なっ、なんデスとー!? え、えぇっと……どれデスか?」

「……アナタ、コンテストの事はどれぐらい知ってるの?」

「えぇっと、テレビで見ていいなと思って、それぐらい……」

「それで中国から!?」

 

 即決と言うか、凄い行動力ね。この子の事はただの留学生ぐらいにしか思っていなかったけど、まさかそんな行動力があるとは思ってもいなかった。

 

「テレビで見てて……コーディネーター達が何をやってるかわかる?」

「技を出してアピールしてるのデスよね! 可可にもそれぐらいわかりマス、舐めないでクダサイ」

「はぁ……その程度じゃベロリンガにも舐められるわよ」

「むっ、なぁんデスかその言い草!」

「はっきり言うわ。アンタ、全然ダメ。なんでコンテスト科で入学できたかも不思議なぐらいだわ」

「はああぁぁぁ!?!? ちゃんと入試と実技試験を突破しマシタが!?」

「ふぅん。じゃ、その時の技を見せて貰える? 実技の試験は自分の希望する部門に則って、3ターン連続で技を出してその出来によって決まる。アナタの実力がどれぐらいか、一度見させて貰うわよ」

「言わせておけば次から次へと……やってやるデスよ! 可可がアピールするのは勿論、“かわいさ”デス! 花漾海狮(オシャマリ)圆瞳(つぶらなひとみ)魅惑之声(チャームボイス)泡沫光线(バブルこうせん)!」

「シャーマーッ!」

 

 オシャマリが次々と技を繰り出す。成る程ね……これはまぁ、実技も合格してておかしくはないわね。

 

「たまたま地雷を踏み抜かずに済んでたのね」

「なっ、可可が合格できたのがたまたまだって言いたいんデスか!」

「別にそうとは言ってないけど。でも大丈夫。この私が来たからには、次はたまたま勝っただなんて言わせないわ。ちゃんと実力でアナタを勝たせてあげるから。安心なさいったら安心なさい」

「ぐぬぬ……悔しいデスが、アナタは実力だけはあるそうなので。よろしくお願いするデスよ」

「はいはい。じゃあ、必要な技から順を追って説明してあげるから。紙とペン、ある?」

 

 不満そうな可可だけど、紙とペンをカバンから取り出してこちらに渡す。私はその紙に五角形を描いて、“かわいさ”を一番上の頂点に書いてから時計回りに、“かしこさ”、“たくましさ”、“かっこよさ”、“うつくしさ”と書き足した。

 

「まずはこれを見て。可可とオシャマリが出ようとしているのは、この“かわいさ”部門よね」

「そうデス」

 

 私は可可に見えるように、“かわいさ”を上から何度も丸で囲む。

 

「コンテストって言うのは、4体のポケモンが5ターン使って技を繰り出して、どれだけ部門にあった自分のポケモンの魅力……今回の場合は、“かわいさ”をアピール出来るかの勝負なのよ。ここまではわかるのよね?」

「わかるデス」

「ん。感覚はわかってるみたいだし、後は細かなシステムを理解するだけよ。ここに入学出来たって事は地頭はあるみたいだし、アナタになら簡単に理解できるわ」

「本当デスか!」

 

 ふふっ。食いついた食いついた。少しキツイ言葉を投げすぎていたし、ここらで飴を与えてやる気を引き出さなきゃね。可可の顔が段々と笑顔になってきたところで、私は再び教鞭を手に取る。

 

「技を使って“かわいさ”をアピールする……要するに、出来るだけ“かわいい”技を出せばいいのよ。今のオシャマリが“かわいさ”をアピール出来るのは“つぶらなひとみ”と“チャームボイス”ね」

「成る程成る程」

「“かわいさ”部門で“かわいい”技を使ったアピールをするとボーナスでポイントが貰えるから出し得よ。それに、“つぶらなひとみ”は次のターンのアピールが最初になって、“チャームボイス”は最初にアピールすれば貰えるポイントがうんと跳ね上がる……このコンボは公式じゃないけど、積極的に使って行きたいわね。た、だ、し。同じ技を連続でアピールしちゃうと飽きられて、逆にポイントが下がっちゃうから気をつけなさい」

「ほわぁ~! そうなんデスね! 花漾海狮(オシャマリ)、可愛い技ををいっぱい持っていたのデスね!」

「シャママ~」

「そうね。それから、“バブルこうせん”。この技は“うつくしい”技だけど、自分より前にアピールしたポケモン全員を妨害……要するに、ポイントを奪う事が出来るわ。“うつくしい”技は“かわいさ”部門で出しても特にマイナスな効果がないわ。アピールの順番は前のターンでポイントが多かった順に決まるから、自分よりアピール出来たポケモンのポイントを奪っちゃいなさい」

「わかったデス。という事は、いらない技と言うのは……」

 

 ふふっ。流石にここまで来れば、この子も気づいたようね。私は再び、紙の五角形をペンで指す。

 

「そう。“アクアジェット”。これを見て貰えばわかるけど、“かわいさ”と“かっこよさ”は対角線上にあるわよね。ついでに“たくましさ”も。これは“かわいさ”部門で“かっこいい”、“たくましい”技を出すと逆にポイントが減っちゃう事を表わしてるわ。その逆も然りね」

 

 私は、“かっこよさ”と“たくましさ”の上にバツを付ける。

 

「だから、“かっこいい”技である“アクアジェット”は何か別の技に変えた方がいい……そうね、オシャマリが今すぐ思い出せる、“うたう”がいいんじゃないかしら。これも“かわいい”技だし、自分より後にアピールするポケモンを緊張させる……技を出しにくくするわ。“つぶらなひとみ”と組み合わせる選択肢が増えるわね」

「う~、覚えることいっぱいで頭がこんがらがってきたデス……」

「もう少しの辛抱よ。纏めるとオシャマリは、“つぶらなひとみ”で先頭に出つつ、“チャームボイスで自分のポイントを伸ばし、他のポケモンには”うたう“や”バブルこうせん“でポイントを伸ばすのを妨害する。基本はこんな感じでやっていけばいいと思うわ」

「成る程、大体わかったデス!」

「おっけー。そして、最後にもう一つ、一番大事な要素……“エキサイト”について説明するわ」

「えきさいと……?」

「そう。“かわいさ”部門のコンテストで“かわいい”技を出すと会場全体の“エキサイト”が上がるの。その“エキサイト”がマックスに……具体的には、5回目の“かわいい”技が出されると、その技を出したポケモンにボーナスでポイントが入るの。だから、会場全体の“エキサイト”を見極めるのも重要ね」

「ほえぇ~……」

「逆に、さっきも説明した対角線の技……“かっこいい”、“たくましい”技を出すとエキサイトが下がっちゃうわ。上のランクまで行くと、敢えてそういう技を出してエキサイトを調整する技術もあるけど……ま、今回アナタが挑戦するのはノーマルランクだし、難しい事は考えずにガンガンポイントを稼いでいけばいいと思うわ。エキサイトの調整も、“うつくしい”技の“バブルこうせん”で充分だと思うし」

「わかりマシタ!」

 

 さて……コンテストの基礎について私が説明出来るのは、こんなところかしらね。あ、そうだ。もう一つ忘れていたわ。

 

「可可、オシャマリにポロックやポフィンは食べさせてる?」

「ハイ! 可可、ポフィン作りが得意デスよ!」

「なら、“あまい”きのみで作ったポフィンを食べさせなさい。そうすればオシャマリの“かわいさ”のコンディションが上がって一次審査の印象がよくなるわ」

「わかりマシタ! オシャマリはあまぁいのが好きなのデスよ。いっぱい食べマショウね!」

「シャマ!」

「それじゃ、座学はこれぐらいにして……後はどれだけかわい~く技が出せるかひたすら特訓!」

「ハイ! よろしくお願いしマス、すみれサン!」

 

 そうして、私は可可への座学を終了し、特訓を始めるのだった。

 




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