ちなみに、タイトル縛りは1章のみです。大変なんやで、考えるの。
第8話~初めての一日~
ペラップとピチューが仲間になった後、私は全力ダッシュで学校へと向かっていた。何故かって? 学校に遅刻したからであるっ!
校門をくぐって、ダッシュで教室へと向かう。ガラリ、とドアを開けた瞬間、教室中の視線を私が独り占めにしていた。
「澁谷さん、遅刻ですよ。一体何をしていたのですか?」
「ごめんなさい、中川先生……少し、ポケモンを」
「ポケモン……?」
「ふふっ、見ていてくださいね」
そう言って私は、これ見よがしに両手に2つのモンスターボールを取り出した。
「出ておいで! ペラップ、ピチュー!」
パカッ、とボールが開いて、ペラップとピチューが中から飛び出してきた。クラスの子達の、息を吞む音も聞こえる。
「澁谷さん。この子達は?」
「今朝、野生のポケモンに襲われていたところを助けて私が捕まえたんです!」
「そうなんですか。それはよかったですね」
「はいっ!」
うんっ。ちゃんと説明したし、これで遅刻はチャラ……
「で、す、が。遅刻は遅刻です。それに、今は国語の時間なのですから、ポケモンを出す必要はありませんよね? この授業が終わった後に職員室に反省文用の原稿用紙を取りに来るように」
「はい……」
などと言う、甘い考えは通用しなかったようだ。
***
授業と授業の間の中休憩で、私は職員室へと原稿用紙を取りに行ってから、教室へと帰ってきた。
「全く。中川先生も酷いよねー」
「ピッチュ」
「ソウダ! ソウダ!」
ペラップとピチューを肩に乗せながら、教室の扉を開けたその瞬間、
「かのんちゃんっ!」
ナナミちゃん、ヤエちゃん、ココノちゃんの3人が私を出迎えてくれた。
「うわ。3人とも、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも! ポケモン、ゲットしたんだね!」
「うんっ。私の……初めてのパートナーだよ」
「ピッチュ!」
「うわぁ~、ピチュー! 可愛いね! 撫でてもいい?」
「包帯のところじゃなきゃいいよ。ピチュー、私のお友達のヤエちゃんだよ」
ヤエちゃんが、ピチューの方に手を伸ばす。ピチューは、ヤエちゃんの手にすり寄って気持ちよさそうな顔をしてた。
「ピッチュー」
「ねぇねぇ、私はペラップ撫でたいな!」
「勿論。ペラップ、大丈夫?」
一方ナナミちゃんには、ペラップを撫でて貰おうと思ったのだけれど。
「イヤッ」
「あ、あれ~?」
「こぉら、ペラップ? この子も私のお友達だから、優しい子だよ?」
「ヤダ! ヤダ! ニンゲンコワイ!」
ペラップはそっぽを向いて、私の肩から飛び上がってしまった。
「ペラップ~、降りておいでよ~」
私が声をかけても、ペラップは天井辺りを飛び回って降りてこようとしない。
「ごめんね。この子達、捨てられていたところを助けたんだ。だから、ペラップの方はまだ人間不信なのかな」
「そうだったんだ……」
「ピチューの方は大丈夫そうなんだけどね。ねっ、ピチュー?」
「ピチュ!」
元気よく返事を返してくれたピチューとは対象的に、ペラップはぷいっとそっぽを向いたままだった。
***
昼休憩になった私は、お弁当を持って、とある場所へと向かっていた。途中にすれ違う人達から視線を貰うのは……私の肩に乗せた、ペラップとピチューのおかげだろう。やっぱり、この近くでは珍しいポケモンなんだね。
「カノン、カノン」
「ん、どしたのペラップ? というか、もう私の名前覚えてくれたんだ!」
偉い、偉いとペラップの頭を撫でてあげる。とっても気持ちよさそうな顔をしていた。私には心を開いてくれているらしいけど、やっぱり他のみんなにも同じように接して欲しい。特に、これから会いに行く子には。
「カノン、ドコイクノ」
「コンテスト科の教室。可可ちゃんに2人の事、報告しに行かなくちゃ」
「ピチュピチュ?」
「うんっ。可可ちゃんは、私の友達だよ」
2人と話ながらしばらく廊下を歩いていると、段々周りの人が着ている服が濃紺色から深緑色へと変わっていく。そのまま歩みを進めた私は、可可ちゃんのクラスの前へと辿り着いた。教室へ入ろうとしていた適当な子に声をかける。
「あのぉ……」
「はぁ~い。あれ、普通科の子がどうしたの?」
「えぇっと、可可ちゃんに会いに来たんですけど」
「くーくー? あぁ、留学生の子ね。ちょっと待ってて」
その子は教室の中へと駆けていった。そうだっ。待っている間に良い事を思いついた。可可ちゃんを、少しビックリさせてあげようっと。
「ペラップ、ピチュー。ごめん、少しこの中で待っててね」
「ペラ?」
「ピチュ?」
私は2人をボールの中へとしまう。しばらく待っていると、可可ちゃんがパタパタとこっちに歩いてきた。
「かのんサ~ン! どうしたんデスか、可可のクラスまで?」
「ちょっとね。お昼、付き合ってくれる?」
「可可は無問題デスよ! 寧ろ、かのんサンとお昼を一緒にできて嬉しいデス♡」
ギュッ、と無邪気に私の腕に抱きついてくる可可ちゃん。なんだかちょっとこそばゆい。こういう風に友達にされたの、初めてかも。
「よし、今日は天気もいいから中庭にでも食べに行こっか」
「ハ~イ!」
私達はそのまま中庭へと移動した。さて、準備は完了。私は可可ちゃんの手をほどいて、彼女に向き合う形へ移動する。
「かのんサン……?」
「えへへ。可可ちゃんに見せたい……会わせたい子達がいるんだ」
私はポケットにしまっていた2つのボールを、ボタンを押して大きくする。
「まさか!」
「そのまさかだよ。出ておいで! ペラップ、ピチュー!」
私は手に取ったボールを、上に放り上げた。
「ピッチュー!」
「ペラップ!」
「ホワァ~!! かのんサン! ポケモンを捕まえたのデスね!」
「うんっ!」
ストンッ、と私の肩に着陸した2人を見て、可可ちゃんの目はキラキラと輝いた。ふっふっふ。驚いてくれたようで何よりだよ。
「これで可可と一緒、ポケモントレーナーデスね!」
「うんっ! ほら、可可ちゃんもポケモン出して。一緒にお昼ご飯食べよ?」
「ハイッ! そういえば、まだかのんには紹介してなかった子もいマシタね」
「えっ、そうなの?」
可可ちゃんはそう言って、2つのモンスターボールを取り出す。
「
「シャマ!」
「チャム!」
可可ちゃんが取り出したボールを投げると、そこから出てきたのはオシャマリと……ヤンチャム。これまた可可ちゃんに似合う可愛らしいポケモンだった。
「うわぁ~っ、可愛い! 可可ちゃん、ヤンチャムも持っていたんだね」
「ハイッ! では改めて、お昼ご飯にしマショウか!」
「うんっ!」
私は予め購買で買っておいたポケモンフーズを、ペラップとピチューに食べさせる。一方、可可ちゃん達のポケモンはというと。
「ハイッ。2人とも、喧嘩せずに食べるデスよ~」
「シャママ」
「チャッム」
「可可ちゃん、それって……ポフィン?」
確か、きのみを使って作るシンオウ地方で有名なお菓子だった気がする。ポケモンのコンディション……かっこよさや、うつくしさ、かわいさみたいなステータスに影響を与えるお菓子だよね。
「ハイ! 可可はポフィン作りが得意なのデス。よかったら、かのんサンのポケモンにも食べて欲しいデス!」
「いいの? ありがとう!」
私は可可ちゃんから2つ、ポフィンを受け取った。ペラップもピチューもきっと喜ぶよね。
「はい、2人とも。可可ちゃんお手製のポフィンだよ」
「ピチュ! ピチュ、ピチュ…」
ピチューはポフィンを受け取ったかと思うと、すぐにムシャムシャと美味しそうに頬張っていた。いっぽうペラップはというと……。
「ほら、ペラップも」
「イヤ」
「こらペラップ。せっかく可可ちゃんがくれたんだから」
「イヤ!」
ペラップは、バサバサと中庭の木の枝へと留まりにいってしまった。
「もぉ~、ペラップってば……ごめんね、可可ちゃん。実はこの子達、トレーナーに捨てられてた子達っぽくて」
「え、そうなんデスか?」
「うん。元はトレーナーのポケモンだったから、ピチューは人懐っこいんだけど……ペラップは逆に、だからこそ人の事が信じられないみたい」
「そうなんデスか……」
可可ちゃんは、複雑そうな顔をしていた。そりゃそうだよね、誰だって捨てられたポケモンだなんて聞いたらそんな顔をするに決まっている。私の手の平に収まったままのポフィンを見ながら、なんとかペラップがもう一度他の人達を信じられるようにならないか、考えてみようと、そう思ったのだった。
「このポフィン、せっかくだから私が食べてもいい?」
「あ、それは……」
「いただきまーす……酸っぱ!!!!!」
***
「たっだいまぁ~!」
今日の授業を終えた私は、上機嫌で家へと帰ってきた。ペラップの事は後で考えるとして、まずは私に最高のパートナーが2人も出来た事を喜ばなくっちゃ。
「おかえり、かのん。どうしたの? 何かいい事でもあった?」
「ふっふっふ……それ、聞いちゃう?」
「えぇ、お姉ちゃんなんだか気持ち悪い……」
「きっと2人とも驚くよ! 出ておいで! ペラップ、ピチュー!」
そう言って私は、ボールを放り上げた。ボールからは当然、私の大好きなパートナー達が飛び出してくる。
「ピッチュ!」
「ペラップ!」
「えっ……ポケモンをゲットしたの!?」
「お姉ちゃんが!?」
「もう、開口一番でそれは失礼なんじゃない? ねぇ、2人とも?」
「ピチュチュピ」
「ソウダソウダ!」
「……ね、お母さん。ありあ。これで私もポケモントレーナー、だよね?」
そう。ずっと、お母さん達にはポケモンの事で心配かけちゃってたから。この2人を真っ先に見せたかったのは、実は家族だったりしたんだよね。
「そうね……かのん、おめでとう」
「うんっ! ありがと。それじゃ私、お部屋に荷物片付けてくるから! 晩御飯はこの子達のも用意しておいてね~!」
「こら、かのんってば!」
お母さんの引き留める声を無視して、私は2階への階段を駆け昇って、自分の部屋へと突撃した。
「さぁ。ペラップ、ピチュー。ここが今日から2人のお家になる、私の部屋だよ!」
「ピチュー…!」
「ウチ! ウチ!」
「あははっ。2人とも、それ~っ!」
私は2人を抱えたまま、ベッドへとダイブ。ベッドの温もりと、2人の温もりに包まれて幸せ気分が胸いっぱいに広がる。
「ピチュピ! ピチュピ!」
「カノン! カノン!」
「ふふっ、2人ともくすぐったいよぉ」
2人とのじゃれ合いを一通り堪能したところで、私はペラップに気になった事を聞いてみる。
「ねぇ、ペラップ。私の周りの人は、みんな優しい人だよ? だからもう少し、みんなを信じて欲しいんだけど……」
「ペラ…」
「……私もね、ポケモンを信じられない時があった。ポケモンが怖い時もあった。でも、2人と出会えた。私ね、これから先も色んなポケモンと友達になりたい。だから、ペラップにも同じように、色んな人と友達になってほしいな?」
そこまで言って私は、ペラップに向き合う。
「私とペラップ、2人で一緒に頑張ろ?」
「…ガンバル!」
「うんっ。それでこそ私のパートナー!」
「ピッチュ!」
「あははっ。勿論、ピチューも一緒だからね!」
「ピチュピ!」
3人で抱き合って、笑い合う。その後は、お母さんが作ってくれた晩御飯を食べて、
「ピチュ! ピチュ! ピチュ!」
「ウマイ! ウマイ! ウマイ!」
「凄い食べっぷりね、この子達」
「久しぶりなんだよ。お腹いっぱい食べるのが」
一緒にお風呂に入って、
「ペラー!」
「こら、ペラップ!シャンプー怖くないから逃げないの!」
ポカポカ気分のまま布団へダイブ。
「ふぅ……今日は最高の一日だったな。2人と出会えたから」
「ピチュピ」
「ペラップ」
「ふふっ」
2人とも今日は初めての事だらけで疲れたのか、折り重なるようにして瞼を閉じる。
「なんだか、兄妹みたい」
2人をそっと撫でながら、私も夢の世界へと落ちて行く。
「おやすみ、2人とも」
これから先、いっぱいキラキラした思い出を作って行こうね。
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