ギーツエクストラ 仮面ライダーアルデン   作:きゃぷてん

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参加者リスト(メイン)

浮世英寿/仮面ライダーギーツ
桜井景和/仮面ライダータイクーン
鞍馬祢音/仮面ライダーナーゴ
菜月 昴/仮面ライダーアルデン
江口 優里(ゆうり)/仮面ライダーアンセア
堀江 笛李(ふえり)/仮面ライダーデネク
中村 晴人/仮面ライダーフェリト
藤原 或馬(あるば)/仮面ライダーレグラ


交錯IV:戦士消失

徒花と咲いて、散ってゆく。

 

 

 とある病院の一室。そこには患者用のベッドがあり、他にもソファーや大型のテレビがあった。いわゆるVIP用の病室である。

 

 そんな部屋の中で、一人の女性が窓の側で外の景色を見つめている。

 

 その時、入り口の扉からコンコン、と音がする。

 

「入ってええよ」

 

 女性が許可を出すと扉が開かれ、花束を持った男が入ってきた。江口優里だ。

 

「……江口くん」

 

「…………植木様。お加減はいかがでしょうか」

 

「変わりないで、江口くん。ありがとうな、ウチの心配してくれて」

 

 女性————植木明日菜は微笑んでそう答えた。

 

「…………いえ、当然のことです。私にとって、植木様が健康であることが一番ですから。…………それで、記憶の方は?」

 

 優里は花瓶に花を差しながら尋ねる。

 

「…………ごめん、まだなんや」

 

「そうですか…………」

 

 首を横に振りながら俯く植木を見て、差し終えた優里は眉を下げた。

 

「…………ホンマ、ごめんな。ウチが経営してる会社や、社員のこととか、何も覚えてなくて。そのせいで、色んな人に迷惑かけてもうてる。江口くんは一番ウチの身を案じてくれてるのに、全然思い出すことが出来へん…………自分が嫌になるわ」

 

 記憶がない自身への自己嫌悪で胸を手で押さえ、顔色が沈む。

 

「そうお気を落とさないでください。私は迷惑だなんて考えていません。いつか、必ず記憶を取り戻しましょう」

 

「…………そうやね。頑張らなあかんな」

 

 優里からの励ましの言葉に、植木は再び微笑んで答えた。

 

「…………植木様」

 

 ふと、優里が顔を引き締めて植木を真っ直ぐと見つめる。

 

「ん?」

 

「私は! …………私は、貴方のことを…………」

 

「? どしたん?」

 

 最初は大きく声を出すものの、その後徐々に俯いて言い淀む優里。そんな彼を不安そうに見つめ、心配する植木。

 

「…………いえ、やっぱり……何でもありません」

 

 顔を上げて、誤魔化すように薄く笑い首を横に振る。

 

「そっか…………」

 

釈然としないものはあるが、変に詮索するのも良くないと思い、一応は納得した風にする。その後はただ雑談を部屋の中で続けた。

 

「……そろそろ、この辺りで失礼いたします。また、何か困ったことがあれば、すぐに連絡してください」

 

「うん。ありがとう、優里くん。頼りにしてるで」

 

「……はい、それでは」

 

 それから優里は部屋から出ていく。

 

 扉の前で立ち尽くす彼は、首にかけていたロケットペンダントを握りしめた。

 

「………………つくづく情けないな、私は」

 

 自嘲の言葉を吐き捨てる。それから、歩を進め始めた。

 

 

「おい昴、喜べ! 今日の昼食は外食だぞ!」

 

「おおー、マジか。……せめてノックはしようぜ」

 

 昼の頃、軽く筋トレをしていた昴は部屋の扉を開けてきた賢一にそう言われた。ノックしないことにツッコミを入れながら。

 

 その後、菜穂子も呼んで一家揃って家を出た。

 

「んで、どこ行くんだよ?」

 

「この前、同僚と一緒に食いに行った蕎麦屋だ。そこが中々美味くって美味くって!」

 

「へぇ〜」

 

「麺類だったら私、きつねうどんが好きかな」

 

「今蕎麦屋の話してたんだけど?」

 

「菜穂子も気にいるって! マジで美味いから! 特にたぬき蕎麦がな!」

 

 そうこう話していると、例の蕎麦屋についた。賢一が先頭になり、扉を開ける。

 

「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか?」

 

「三名です!」

 

「じゃあこちらに!」

 

 店内から若い男の声が聞こえてきた。案内をしてくれてるようだ。

 

「…………なんか、どっかで」

 

 聞き覚えのある声だなあ、と思いながら店内に入る昴。

 

「いらっしゃいませ…………あ」

 

「…………あぁ!?」

 

 そこにいたのは、店の制服に着替えてる桜井景和だった。

 

「昴、知り合い?」

 

「景和の知り合い?」

 

 菜穂子の声と重なるように誰かの声がした。

 

「えっ、あっ、そのー…………ゲーム仲間! ゲーム仲間なんだよ! そうっすよね、景和さん?」

 

「えっ? ……そ、そう! ゲーム仲間!」

 

 間違ってはいない。命懸けの、という枕詞はつくが間違ってはいない。

 

 ちなみに、デザグラの存在は参加していない一般人に明かしてはならないというルールがある。破れば即脱落だ。

 

「へぇ〜、そうなのねぇ。あ、私、菜月菜穂子って言います。息子がいつもお世話になってます」

 

「あ〜、いえいえ!」

 

「えっと、その人は貴方のお姉さんかしら?」

 

 菜穂子が景和の後ろにいる女性を見て聞いた。

 

「あ、そうです。景和の姉の桜井沙羅って言います! えっと、昴くんだっけ? 景和が迷惑かけたりしてない?」

 

「ちょっと姉ちゃん! 子供じゃないんだから」

 

「あはは……全然迷惑なんてかけてないです。むしろ、こっちが助けてもらってるというか……」

 

「えぇ〜、景和が〜?」

 

 沙羅が景和をジト目で見る。

 

「え、何その疑わしげな目」

 

「だってあの景和がだよ〜? 頼りにされてる姿とか想像つかないもん」

 

「ちょ、それ酷くない? ていうか、俺に家事頼りっきりの姉ちゃんがそれ言う?」

 

「うっ」

 

 景和のツッコミに自覚があったのか、言葉を詰まらせる沙羅。

 

「ふふ、頼りになる人が出来てよかったね、昴。桜井さん、これからも息子をよろしくお願いします」

 

「あ、はい、勿論です。さ、お席どうぞ」

 

 菜穂子にそう言われ、会釈する景和。その後、昴と菜穂子は賢一がいる席に着いた。

 

「いやー、後ろで見てたがまさか昴に友達が出来てたなんてな! お父さん感動しちまったよ!」

 

「感動って……んな大袈裟な」

 

「いやいや、大袈裟じゃねえよ! 喜ばしいことじゃねえか! 今日はそんな息子を祝うってことで、好きなもん頼んでいいぞ! 俺の財布が持つ限りだがな! でもって俺はたぬきそばだ!」

 

「じゃあ私はきつねそばかな」

 

「んーじゃ、俺はざるそばで。後は天ぷらもセット」

 

 その後、景和を呼んで注文をした。

 

「ん、美味しいわね」

 

「ああ、うめぇな」

 

「だろー? やはり俺の舌に狂いはなかったな!」

 

 蕎麦を美味しいと言う菜穂子と昴に満足気な賢一。そんな菜月家の様子を見て景和も微笑んでいた。

 

 

 一同はデザイア神殿に集っていた。

 

「新たなジャマトが出現しました。これより第三回戦を始めます」

 

 スバル達は青い光に包まれて現場であるジャマーエリア内に転送される。そこは緑一面な森の中だった。

 

『第3回戦、フルーツバスケットゲーム! 今回出現しているジャマト達は、それぞれフルーツを持っています。

 制限時間内にジャマトを倒して特定のフルーツを手に入れれば、ゲームクリア。終了時点で全て手に入れてない場合、脱落となります。スパイダーフォンに手に入れるフルーツの画像を送信します』

 

 昴がスパイダーフォンを確認すると、フルーツが映し出されていた。映っていたのはオレンジ、バナナ、ブドウ、メロン、桃、リンゴだった。

 

『後は、手に入れたフルーツを入れておく用のバッグも配布します』

 

 ツムリからのアナウンスがあると、昴の手にバッグが召喚された。その見た目はアルデンを象徴するクレストがプリントされたトートバッグだ。

 

「フルーツバスケットってそんなんだったか……? まあいいや、よし……!」

 

『SET』

 

「変身!」

 

『ARMED CHAIN ARRAY』『READY FIGHT』

 

 昴はバックルをセットし、仮面ライダーアルデン・アームドチェーンアレイに変身。

 

「ジャ!」「ジャ! ジャ!」

 

 その瞬間、周りから2体のジャマトが現れる。

 

「うおおっ!」

 

 アルデンは鎖を持って回し、その勢いで鉄球をジャマト達にぶつける。昔見たアニメのキャラの見様見真似だが、意外と上手くいくものだった。

 

「ジャア!」

 

 まずは一体にぶつかり、吹っ飛ぶ。もう一体のジャマトが驚いている間に鉄球をぶつけ撃破。

 

 ジャマトがいた場所には2個のブドウが落ちていた。

 

「ダブりか……まあブドウをまずゲットだな」

 

 ブドウをバッグに入れるアルデン。もう一個も一応入れておく。

 

 森の別の場所では。

 

「はあっ!」

 

 ギーツは襲いくるジャマトの攻撃を避けてキック、その後はシューターで射撃。倒したジャマトはオレンジとリンゴを落とした。

 

「よぉーし、二個ゲットだ」

 

 拾い上げてバッグに入れたあと、別のジャマトを探しに移動した。

 

「でやあっ!」「にゃーっ!」

 

 タイクーンとナーゴも同じようにジャマトを2体ずつ倒していた。

 

 タイクーンが倒した個体からはバナナ二個、ナーゴが倒した個体はメロン二個だった。

 

「うわ、被っちゃった」

 

「祢音ちゃん、俺も被ったからさ、良かったら交換しない?」

 

「良いの? じゃあお言葉に甘えて!」

 

 二人は被ってるもの同士を交換してバッグに。

 

 その他、4人のライダーもジャマトを撃破してそれぞれフルーツを回収していった。

 

 

 時間が過ぎて、前半戦が終了。昴達は次の後半戦まで待つことになった。

 

 あれから昴がジャマトを倒す中で手に入れたフルーツは最初のブドウとオレンジとメロンだった。

 

「後は確か……バナナと桃とリンゴか」

 

 残りの集めるべきフルーツを確認する昴。

 

「後半のゲームで全部回収しねーとなぁ……ん?」

 

 昴はぼやいた時、あることに気づいた。

 

「………………」

 

 ソファーに座っていた優里は蓋が開かれたロケットペンダントを眺めていたのだ。

 

「おお……綺麗な人っすね」

 

「っ!? ……菜月くんか」

 

 優里が驚いて振り返ると、そこには昴が。

 

「全く……後ろから覗き見とは関心しないぞ?」

 

「あっはは……すいません。じっーってそれ見てたからつい気になっちゃって。……もしかして、その人が優里さんの大切な人っすか?」

 

「…………ああ」

 

 優里はロケットペンダントの中にあった写真を見る。そこには、優里と植木明日菜が共に写っている写真があった。

 

「すんげー綺麗な人っすね。なんつーかこう、知的な感じ? がするというか」

 

「ふっ、分かってるじゃないか。この方は事実、頭脳明晰なお方だ。先見の明にも優れていて、話術にも長けている。それにこのような美貌を持っていながらそれを鼻にかけることもなく我々には物腰柔らかな態度で接し、相手に緊張感を与えず……」

 

「もう大丈夫です! 分かりました。その人がすごいってことがすごーく分かりました!」

 

 語り出した優里に昴はストップをかけた。このままでは延々と続きそうな気がしたからだ。

 

「む……そうか。正直まだまだ語り足りないのだが……あの方の良さを理解してもらえたならヨシとしよう」

 

「あはは……」

 

 まだ語るつもりだったのか、と内心でツッコミながら苦笑い。

 

「も〜、優里ったら〜。優里は植木さんのことになるといっつもそうなるよネ〜」

 

 笛李が目を細めて優里のことを揶揄う。

 

「まあ、それだけ優里が植木さんのことを慕っているというだよ」

 

「慕ってるじゃなくてー、恋してる、の方が正しいんじゃなーい?」

 

 晴人の言葉を聞いた笛李が、ニヤつきながらそう言った。ストレートにそれ言うのか……と昴は内心で突っ込んだ。

 

「笛李、そうやって人の感情に口出しするのは良くないぞ」

 

「否定しないってことはそういうコトでオケ?」

 

「ノーコメント、だ」

 

 つまりは想像に任せる、ということらしい。まあ、無難な答えではある……か?

 

「でも、その人も幸せ者っすね。優里さんにこんなに慕ってもらえて。……記憶、ちゃんと戻ってくれたらいいですね」

 

「……ありがとう、菜月くん」

 

 昴からの純粋な励ましの言葉に、優里は薄く微笑みながら礼を言った。

 

「あーでも、だからって俺は勝ちを譲る気はないっすよ? 俺もやっぱ願いは叶えたいですし」

 

「私も譲る気はないさ。でもせめて、どちらが勝っても恨み合いはなし、と行きたいところだな。お互い、勝利を讃えあえたら理想的だが」

 

「まあ……確かにそれが一番良い落とし所っすけどね〜、自分器ちっせぇからちょっと嫉妬しちゃうかも」

 

「ふふ、まあ、その時はその時だ」

 

「ご歓談中、失礼します」

 

 彼らの会話の間に誰かが入り込む。それはアワスのようだった。

 

「ジャマトが出現致しました。これより、後半戦です」

 

 

『フルーツバスケットゲーム後半戦、スタートです!』

 

 ツムリからのアナウンスが流れる中、昴は既にアルデンに変身して戦っていた。

 

『制限時間内にフルーツをコンプリートし、時間が0になるまで退場することなく生き残れればゲームクリアです!』

 

 それがこのゲームのクリア条件であった。何としてでもフルーツを集め切らなければ。

 

「おらおらっ!」

 

 鉄球を振り回しジャマト達にぶつけていく。

 

「ふっ!」

 

 近くではアンセアがアローを使い、エネルギーの矢を飛ばしていた。

 

「ふんっ!」「はあーっ!」「やあっ!」

 

 ギーツはマグナムシューターでジャマト達を撃ち抜き、タイクーンはニンジャデュアラーで切り裂き、ナーゴはビートアックスで斬りつけていた。

 

 デネク、フェリト、レグラもそれぞれ武器を持ち、ジャマトと戦う。

 

「らあっ! おりゃあっ!」

 

 数体のジャマトを倒し、フルーツを回収するアルデン。

 

「ジャ……」

 

「ん? って、それは!」

 

 彼の前に一体のジャマトが現れた。腰にはデザイアドライバーが装着されており、手にはバックルが握られていた。

 

「おいおい、まさか……」

 

「ジュラピラ……ヘンシン」

 

ドライバーにバックルを装填し、ボタンを押す。

 

『JYA・MA・TO』

 

蔦に包まれ、それが解けるとジャマトライダーに変身完了した。ジャマトライダーは歩き、アルデンに近づく。

 

「ちっ! らあっ!」

 

 アルデンは鉄球を飛ばし、ジャマトライダーにぶつける。しかし、本当にほんの少しだけ身体が反ったくらいで、全然効いてる様子はない。

 

「菜月くんッ! くっ!」

 

 気づいたアンセアが助けに向かおうとするが、ジャマトに阻まれる。

 

 アルデンはチェーンアレイを外し、プロペラレイズバックルをセット。操作して、アームドプロペラにフォームチェンジ。

 

 アームドプロペラを使い、直接ジャマトライダーを殴りつける。しかし連続で殴りつけても効いている様子はなく、最終的に受け止められてしまう。

  

 受け止められたプロペラは跳ね返され、アルデンは身体に連続で拳が叩き込まれた。

 

「ぐあああっ!」

 

 悲鳴を上げて吹き飛び、地面に転がるアルデン。拳によって受けたダメージも中々に堪え、少しの間動けなかった。

 

『JYA・JYA・JYA・STRIKE!』

 

 ジャマトライダーはバックルのボタンを押し、必殺技を発動しようとしていた。足に禍々しい蔦が巻きつき、溜めの姿勢に入る。

 

「ぐ……う……」

 

 まだダメージは残るが、プロペラを杖代わりにしてゆっくりと起きあがろうとするアルデン。

 

 しかし、その時にはジャマトライダーは足を地面を蹴っていた。禍々しい蔦が放たれ、アルデンの命を刈り取ろうと迫る。

 

(くっそ……こんなところで……!)

 

数秒先の自分に死が訪れると考えてしまい、悔しさと諦めきれない思いが交じる。

 

 どうにか避けようとするが、蔦が来るのが先だった。

 

 その直前——————アルデンは何者かに突き飛ばされた。

 

 地面に「うぐ」と声を上げて転がり、顔を上げると

 

「——————え?」

 

吹っ飛んでいくアンセアが見えた。悲鳴をあげて思いっきり地面に打ち付けられ、身体が横転。装甲が解けて、中から傷を負った優里が現れる。

 

「っ、ぁ、優里さん!」

 

彼の姿を見て叫ぶアルデン。優里の元へ行きたいところだが、目前にはジャマトライダーが。

 

「はああああああっ!」

 

その時、タイクーンが現れてジャマトライダーを斬りつける。

 

「景和さん……!」

 

「昴くん! あの人の所に!」

 

「っ、はいっ!」

 

タイクーンに促されたアルデンは優里の元へと向かう。

 

「優里さん! 大丈夫ですか!?」

 

 変身を解除して駆けつけ、焦燥の中、優里を抱き上げる昴。

 

 その時だった。何か、ヒビが入るような音がしたのは。見れば、優里のデザイアドライバーに嵌め込まれているIDコアにヒビが入り込んでいた。

 

 ヒビが入ると、優里の身体に赤黒いノイズが走る。それはまるで、血のように思えて。

 

 不味い。本能的に、そう思った。

 

「なんで……なんで、俺なんか、庇ったんですか?」

 

「…………若い者を守ることは…………年長者の務め…………だろう?」

 

「……………………ッ!」

 

痛みに苦しんでるだろうに、弱みを見せないようにしてるのか、薄く笑いながら優里はそう返した。

 

「……どうやら、限界のようだ」

 

「……やめて。やめて、くださいよ、そんなこと言うの」

 

死期を悟ったかのような優里の言葉を受け入れたくなくて、首を横に振りながら言うスバル。その目には、いつしか涙が。

 

「大切な人の記憶を取り戻すんでしょ!? こんな所で、こんな所で死んだらダメだ! 死んだら、もう……!」

 

「……私のために泣いてくれるとは、君は優しいな」

 

 優里は微笑んだ後、首元のロケットペンダントに手をかけた。そして強く引っ張り、引きちぎる。

 

「……あの人に……植木様に、伝えてほしいことがある」

 

 そのペンダントを、昴の手に持たせた。

 

「————愛して、いました」

 

優里が最期の言葉を告げた時、その身体は限界を迎え、塵になって消えていった。

 

『MISSION FAILED』

 

 電子音声が、優里の退場を淡々と告げた。

 

「ッ! そんな……!」

 

 優里の退場を見たタイクーンが悲痛に声を上げる。

 

「あっ」

 

 病室にいた植木は、花瓶に刺されてあった花の一つが落ちてるのを見て、小さく声を漏らした。

 

 落ちたのは、紫色の睡蓮だった。

 

 

「………………」

 

 昴はその場に座り込んで、呆然としていた。その手にはロケットペンダントが握られたまま。

 

「ジャ……!」「ジャア〜……!」

 

 そんな彼のことはお構いなく、ポーンジャマト達が迫る。

 

「っ、まずい! 昴くん! 逃げて!」

 

 それを見たタイクーンが昴に促す。しかし、彼が逃げる様子はない。

 

「昴くん! 早く立つんだ! 昴くんッ!」

 

 何度呼びかけられても、昴は反応しない。というより、出来ない状態にあった。

 

「…………俺の、せいで」

 

 自身を庇ったせいで、優里は死んだ。その事実だけが、ただただ昴の心に沈み込む。

 

 手元にあるロケットペンダントが開かれていたから見た。優里は穏やかな笑みを浮かべていた。その笑顔は、もう二度と見れない。その写真も、今や遺影のように見えてしまう。

 

「っ、ぐ、ぁ」

 

 昴は地面に手をつける。

 

「ぅぐ……ぅぅ……ごめん、なさい……ごめんなさい……」

 

涙を土に落とし、蹲って、言葉を漏らす。今の菜月昴に戦う意思どころか、逃げる意思さえ、もう。のしかかってくる人の死は、重く、重く。

 

「ジャア!」

 

「昴くんっ!」

 

ジャマトが無防備の昴に、その凶刃を向けようと————。

 

「はあっ!」

 

 昴に迫り来るジャマトを何者かが蹴った。それは、ギーツだった。

 

「立て。お前はまだ、仮面ライダーだろ」

 

 地面に蹲る昴に向けてギーツは言った。

 

「………………立て、ねぇ」

 

嗚咽混じりの声が漏れた。

 

「死んだんだ、優里さんが。俺を、かばって」

 

「……………………」

 

「大切な願いがあったのに、おれのせいで、それも叶えられなくなって、大切な人にも、もう会えないんだ」

 

フラッシュバックする優里と交わした言葉の数々。

 

「俺が、ダメだったから、俺が、弱かったから。そのせいで、死なせちまった。あの人じゃなくて、俺が、俺が…………!」

 

「それ以上は言うな」

 

昴の言葉の続きを、ギーツは言わせようとしなかった。

 

「そいつは、願いを捨ててお前を守った。何でかは知らないが、そいつなりに誇りでもあったんだろうな。だから、その死は重い。それを、冒涜するようなことを言うな」

 

「…………ッ!」

 

 その言葉を聞いて、昴は歯を噛み締める。自分が危うく、優里の死を冒涜しかけたことに、悔しさのようなものを覚えたからだ。 

 

「お前は、そのままそこで蹲ったままか? 何もせず立ち止まるのか? 自分の願いさえ、諦めるのか?」

 

「……………………」

 

「どうするかはお前が決めろ。だが少なくとも……進み続ける人間に、勝利の女神は微笑む」

 

 ジャマトライダーに向けてシューターの照準を合わし、発砲。その一発を皮切りに、戦闘開始。

 

「——————」

 

『————愛して、いました』

 

 そのように伝えて欲しいと、最後に彼は遺した。

 

昴は身を起こし、目を拭う。

 

『SET』

 

「……変身」

 

 ドライバーにバックルをセットし、小さく呟いて操作。

 

『ARMED PROPELLER』

 

 アルデンはプロペラを構え、静かに息を吐く。

 

「…………うおおおおおっ!」

 

 雄叫びを上げながら次に現れたポーンジャマト目掛けて突撃するアルデン。

 

『REVOLVE ON!』『SET FEVER』

 

 その横で、ギーツがドライバーを回転しフィーバースロットレイズバックルをセット。レバーを倒し、リールが回転する。出た柄は

 

『ZOMBIE』

 

紫色の柄、それはゾンビであった。

 

『HIT! ZOMBIE!』

 

「へぇ、ゾンビか」

 

ゾンビブレイカーの刀身を軽く撫でながらギーツが呟く。

 

「さあ……ここからが、ハイライトだ」

 

 その一言を皮切りにブレイカーのテリブルチェーンが回転を始め、ギーツがジャマト達を斬り始める。

 

 ブレイカーで斬るだけでなく、バーサークローも使いジャマトの身体を裂く。

 

 後ろからもジャマト達が来るが、それは片手に持ってたシューターで一気に撃ち抜く。

 

「うおおおおあっ!」

 

 叫び声を上げながらジャマトを殴り続けるアルデン。自分でもこんなに声あげて疲れないのかと、彼は一瞬思った。

 

 多分、止まらないために声を上げてるのかもしれない。

 

 そうしなきゃ、今もなお脳裏に映る、優里の最期で足を止めるかもしれないから。

 

「はあっ!」

 

ギーツは一度シューターをホルスターに着け、バックルを操作。

 

『GOLDEN FEVER VICTORY』

 

 目の前にいるジャマト達が足元から生成されたオレンジ色のバーサークローのエネルギーに捕らえられる。

 

 そのままブレイカーから斬撃が放たれ、拘束されてるジャマト達を一掃した。

 

『PROPELLER STRIKE』

 

「おらあっ!」

 

アルデンはオーラを纏ったプロペラを投げる。投げられたそれは高速で回転しながらジャマト達の元へ突撃し、一掃。

 

爆発したジャマト達はどさどさとフルーツを落としていく。それを急いで拾うアルデン。

 

それから程なくして。

 

『タイムアウトです! 制限時間内に、指定のフルーツを手に入れられた方はそのまま、手に入れてない方は、脱落となります』

 

ツムリからのアナウンスが行われた。

 

その後、一同はデザイア神殿に集結。

 

ホログラムに一同のリストが移され、それぞれ所有してるフルーツも映し出された。皆、ちゃんとフルーツを手に入れてるようだった。

 

「あれ、優里は?」

 

 リストに優里が載っておらず、笛李がツムリに尋ねる。

 

「……江口優里様は、お亡くなりになりました」

 

「……え?」

 

 ツムリからの宣告に、笛李は素っ頓狂に声を漏らす。

 

「……ごめん、なさい」

 

「……菜月くん?」

 

昴からの嗚咽混じりの謝罪に、晴人が反応する。

 

「……俺のせいで……優里さんは死んだんです。あの人が、俺を庇って……」

 

「そんな……それは昴くんのせいじゃ……」

 

 自身を責める昴の言葉に、そう声をかけたのは景和だった。景和の言うとおり、昴には何の非もない。

 

 だがそれで納得できるほど、今の昴のメンタルは良くない。庇われた上に、庇った本人が亡くなったのだから。

 

「そん、な……優里が……?」

 

「優里……」

 

 笛李は信じられないと言った様子で呆然としており、晴人も悲痛そうに顔を歪める。

 

「………………」

 

 昴は俯いた。

 

 退場者や脱落者を振り切って願いを叶えるはずだった。立ち止まるつもりなどなかった。

 

 今は、進めるような気がしなかった。

 

「………………優里は、最期に何か言っていたかい?」

 

「………………!」

 

『……あの人に……植木様に、伝えてほしいことがある』

 

 晴人に尋ねられた昴は、優里の遺言を思い出した。

 

 せめて、彼の言っていた植木様という人に、彼の言葉を伝えなければ。

 

「……あの、植木さんって知ってますか?」

 

 昴は優李と晴人に尋ねる。

 

「えっと……植木明日菜さんのことだネ。社長さんなんだけど、優里はその人の秘書で……それがどうしたの?」

 

「……優里さんが言ってたんだ。その人に……愛していました、って伝えて欲しいって」

 

「…………そういうのは、自分で伝えられなきゃダメでしょ…………」

 

 笛李は晴人と同じく、その面貌に悲痛を浮かべ溢した。

 

「その遺言、俺が伝えに行こうか?」

 

 そう申し出たのは英寿であった。

 

「伝えにって……何処にいるのか分かんないのに……」

 

「それなら問題はない。目処はついてるからな。まあここは俺に任せろ」

 

 自分を指差し、薄く笑みを浮かべながらそう告げる英寿。

 

「………………お願いします」

 

「僕からも、お願いします」

 

「……私からも」

 

 昴、晴人、笛李が英寿に懇願する。

 

「………………ッ」

 

 それを見ていた景和は拳を握りしめる。犠牲者を出してしまったということを悔いながら。

 

(………………私は)

 

祢音は胸に手を当て、ふと思う。このまま、願いのために戦うべきなのか? と。

 

 優里は愛のために戦い、想い人に気持ちを伝えられず死んでいった。そんな彼の屍を越えてまで……本物の愛を掴まなければならないのだろうか?

 

 これまでも、死亡したプレイヤーが出た時にはそんなことを思うことがあった。

 

 だが、諦められない気持ちだってある。

 

 どうすればいいのか、今の祢音にはまだ分からない。

 

(…………ごめんなさい)

 

 昴はただ、罪の意識に囚われていた。

 

 願いへの道は、遠ざかってゆく。

 

 

植木が病室で本を読んでいた時、扉からコンコンと音が鳴る。

 

「入ってええよ」

 

優里だろうか。彼女はそう思いながら扉の方を見た。……しかし、来たのは優里ではない別の男だ。

 

「あ、えっと……どちら様?」

 

「俺は浮世英寿。突然の来訪、失礼する」

 

「はぁ……」

 

 浮世英寿の名前は植木も聞いたことはある。テレビで出演しているのを見たからだ。

 

「それで……ウチに何の用ですか?」

 

「貴方の秘書……江口優里から伝言が」

 

「……江口くんから?」

 

「…………愛していました、だそうだ」

 

「…………え?」

 

 その言葉を聞いて戸惑ったような声を漏らした植木。

 

「……伝言は伝えた。それじゃあ」

 

「ちょっと待って! どういうことなん? 何でそんな伝言を……もしかして、江口くんに何か……」

 

「…………すまないが、それは言うことはできない。だが伝えてくれと、本人から頼まれたことは確かだ」

 

 そのまま英寿は病室から去っていく。彼を見送るしかない植木。

 

「江口くん……」

 

"愛していました"。その言葉が頭の中でぐるぐる回るようであった。

 

どういうことなのか、と思う。親愛の意味でなのか、それとも————。

 

ちゃんと、優里自身の口から聞きたいと願う植木。

 

そんな彼女が、彼が行方不明になったと知ったのは、そう遠くない話。




DGPルール
ゲーム中に命を落とした者は、この世界から退場となる。十分にご注意ください。
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