「我が息子の今日のサテライトでのデュエルは見させていただきました。なるほど、世界とはまだまだ私の想像など及ばぬほど広いということでしょう…」
「御託はいい。何のつもりだ?デュエルを強制的に中断させて…」
「なに、息子の無礼を止めたかったまでのことです。それに、あなたたちのデュエルをこのままの状態で続けるなど、あまりにも忍びない。あなたとジャックがデュエルをするのであれば、もっとふさわしい時、ふさわしい場所がよいでしょう。それに…あなたも、このままの状態では全力でデュエルなどできないのでは?」
物言いはヒイロが知っているあのゴドウィンと変化はなく、モニターに映る何もかも見透かした態度も変わらない。
だが、ゴドウィンのいう通りである以上、何も言い逃れはできない。
「今ちょうど、あなた方の元へ使者を送っています。既に到着しているでしょう?イェーガー」
「はい、長官」
(イェーガー…やはり、お前もいるのか)
背後にいきなり現れたどんぐりピエロがフフフと笑う。
元の世界では市長としてかつての治安維持局の負の遺産の清算をしつつ、破滅の未来が訪れることがないように今も戦い続けている。
だが、今ここにいるイェーガーはその覚悟を決める以前の、ゴドウィンのもとで暗躍していた頃の彼に見えた。
「初めまして、私は治安維持局副長官のイェーガー。こちらは長官からあなたへの贈り物でございます。ささ、お納めください」
サササとヒイロのそばに来たイェーガーが右手に正方形の白い封筒を差し出す。
それを受け取ったヒイロはすぐに封を破り、中に入ってある1枚のカードを見る。
「《栄光のチェッカーフラッグ》…」
「これは、招待状です。ネオドミノシティで始まる世界規模の大会…D1GPの!」
「D1GP…(フォーチューンカップやWRGPのようなものか…)なぜ、俺だ?俺の素性などわからないだろう」
「ええ…確かに、あなた様の先ほどのデュエルを見させていただき、治安維持局のサーバーにも問い合わせをしましたが…あなたについての記録が何一つない、まさにゼロ。ですが、D1GPの参加資格はただ一つ、決闘疾走者であることのみ。人種も性別も犯罪歴も一切問いません。無論、何の記録もないあなたも、例外ではございません」
「無論、参加するか否かはあなたの自由。ですが、決闘疾走者であるあなたなら、進むべき道は一つのみであると私は思いますが…。では、また」
「待て、ゴド…」
通信が切れ、モニターがブラックアウトする。
一方的に何もかもを言われ、妙な大会の招待状まで渡してきた真意を代わりにイェーガーに詰問しようとしたヒイロだが、そばにいたはずのイェーガーの姿も消えていた。
そして、視線は最後に残ったジャックに向けられる。
「父上とイェーガーのせいで、興が冷めたわ!貴様…名は?」
「…ヒイロ・リオニス」
「…覚えておこう」
ホイール・オブ・フォーチュンを発進させたジャックが一気にスピードを上げ、あっという間にヒイロの視界から消えていく。
再び一人になったヒイロは渡された招待状、そして海の向こうに見える町の景色に目を向ける。
(本当に別の世界に来てしまったというのか、俺は…。だが、なぜだ?なぜ俺はここにいる…?)
ネオドミノシティの中央に位置する治安維持局本部。
その最上階に存在する長官室でゴドウィンはD1GP参加者および招待状の送付先の名簿をタブレット端末で確認していく。
先ほど招待状を受け取ったヒイロの項目が追加され、彼の個人情報が表示されるが、やはりというべきか、名前と性別以外の一切の情報がなしと表示される。
名前も性別も、先ほど手動で記入したため当然ではあるが、本来であれば名前と性別を入力するだけで出身地や経歴などのそれ以外の情報は自動的に入ってくるシステムになっている。
それはどこの国の人間であろうと同じことで、だからこそ一切わからないということは異常といえる。
「ヒイロ・リオニス…一切の経歴のない異邦人…」
次に先ほどのデュエルで使用されたヒイロのカード情報を確認していく。
これまでの全公式戦の記録に照会をかけたが、その中に先ほどヒイロが使用したサイボーグシリーズのカードは存在しなかった。
だが、カードデータサーバにはそれらのカードはもともと存在するものとして記録がされていた。
先ほどのデュエルにおいても、違法なカードや禁止カード、投入枚数を超過した制限カードを使用した場合は反応しないようにすべてのデュエルディスクが設定されていて、仮にサイボーグシリーズのカードがすべて存在しない物であれば、デュエルディスクに一切反応することはない。
だが、ヒイロはジャックとのデュエルでそれらのカードを問題なく使用していた。
(存在しないはずの人間…まさかとは思うが、『あなた』が呼んだのですか…?」
日が昇り、住民たちがあるものは仕事のため、あるものは登校のために動き出す時間。
ヒイロを乗せたストライクチェイサーが走り抜けていく。
表示されているサテライトの地図、そしてその中で目的地として設定している病院へと走っていく。
(お前もいるんだろう…?遊星)
ジャックとのデュエルが中断した後、ヒイロは遊星のDホイールが倒れていた場所まで戻ったが、既にその場にはなにもない状態だった。
水路から這い出た痕跡などがあったことから、おそらくはどうにか自力で水路から出て戻ったととるべきだろう。
サテライトの住人に話を聞くと、遊星はかなりの有名人であったため、あっさりと彼がいるであろう場所を知ることができた。
「サテライト最強の決闘疾走者か…」
まだこの世界に来て2日しか経過していないが、立て続けに顔を見ることとなったかつての世界における仲間、そして敵。
D1GPに出るか否かを決めるためにも、まずはそうした人間を手の届く範囲で直接会うことで自分がここに来た理由を確かめたいと思っていた。
目的地となっている病院に到着し、その入り口付近には遊星のDホイールが停まっている。
ストライクチェイサーを降りるとほぼ同時に入口の扉が開き、中からヒイロのよく知る遊星が出てきた。
「不動遊星…だな」
「お前は…?」
いきなり声をかけられたことに驚く遊星は声をかけてきたヒイロの顔を見る。
見慣れない顔であるヒイロに若干警戒する彼の手にはカードが握られており、それは昨晩イェーガーから渡された招待状と同じものだった。
「ヒイロ・リオニス…。旅人だ。昨日、絶対王者とデュエルをしたと聞いた。だからか?お前もD1GPの招待状を手にしたのは」
「…ああ、そのようだ」
ストライクチェイサーを遊星のDホイールのそばに移動させ、隣同士で病院の壁に背中を置く。
そこから遊星はわずかな間黙り込み、その後で口を開く。
「…俺は、奴とのデュエルでプライドを失った」
「プライド?」
「俺のデュエルは…奴に、絶対王者に何一つ通用しなかった…」
遊星の脳裏に浮かぶのはヒイロが現場に到着する直前までのこと。
とある事情で病院まで急いでいた遊星はジャックと遭遇し、無理やり彼とデュエルをすることになった。
デュエルは終始ジャックのペースであり、デュエルを終えた時間がたった今でもジャックに勝利する自分をイメージできていない。
サテライト最強のデュエリストと呼ばれ、自分のデュエルに、そしてフィールに自信を持っていた遊星はあの一敗によってデュエリストとしての自分の存在を根底から崩された。
「だから、プライドか…。俺にはわからないな」
「何…?」
「それより…気になるのは骸骨騎士だな。俺にとっては…」
サテライトにおける都市伝説である馬に乗った決闘疾走者である骸骨騎士。
夕日の合わせ札という儀式をすると出会うことができ、レアカードが与えられるという。
遊星が病院にいるのはその夕日の合わせ札をしたという彼の仲間が骸骨騎士によって負傷したためだという。
「ああ…骸骨騎士のデュエルも、フィールも恐ろしかった…。あの時は奴の馬を止めることで勝利したが、もし止めることができなかったら…負けていたかもしれない」
「(骸骨騎士…奴が俺がここに来たヒントなのか…?)そうか、邪魔をしたな」
壁から体を離したヒイロはストライクチェイサーに乗る。
すると、それに続くかのように遊星もDホイールに乗った。
「何のつもりだ?」
「俺とデュエルをしてほしい。お前も、ジャックとデュエルをしたんだよな?」
「ああ…最も、横やりが入って中断したがな。勝ってもいなければ、負けてもいない」
素性がわからない存在な上にジャック相手に勝っても負けてもいないとなると宙ぶらりんな状態もここまで来るのかと思えてしまう。
だが、そんなヒイロの心境など遊星には関係ないことだ。
「奴に負けた俺…奴に負けなかったお前…その違いを確かめたい」
「そうか…」
病院前で2台のDホイールが隣り合わせで停車する。
互いにカードを引き、あとはデュエル開始と同時に発進させるだけとなる。
「そういえば、名前を聞いていなかったな。お前は…?」
「…ヒイロ・リオニスだ」
「ヒイロか…わかった」
(こっちの世界の遊星とデュエルか…。ジャックはともかく、今のお前ではな…)
「「デュエル!」」
ヒイロ
手札5
LP4000
遊星
手札5
LP4000
デュエル開始と同時に発進し、先に走るヒイロは早速手札に手を伸ばす。
「先攻は俺だ。俺はモンスターを裏守備表示で召喚。カードを2枚伏せ、ターンエンド」
ヒイロ
手札5→2
LP4000
場 裏守備モンスター1
伏せカード2
遊星
手札5
LP4000
場 なし
「俺のターン!」
遊星
手札5→6
「このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から特殊召喚できる。《ジャンク・フォアード》を特殊召喚」
ジャンク・フォアード レベル3 攻撃900
「そして、手札から《ネジ巻きの見習い戦士》を召喚」
大小さまざまなネジで構成された体と剣を模したネジを手にした小人が現れる。
ネジ巻きの見習い戦士 レベル2 攻撃500(チューナー)
「レベル3の《ジャンク・フォアード》にレベル2の《ネジ巻きの見習い戦士》をチューニング!大地の痛みを知る傷だらけの戦士よ、その健在を示せ!!シンクロ召喚!出でよ、《スカー・ウォリアー》!」
ネジ巻きの見習い戦士がバラバラになり、構成していたネジがチューニングリングとなる。
それをくぐった《ジャンク・フォアード》の姿は体中を傷で覆われ、それを包帯で隠した戦士へと変わる。
先ほど近くで話していた時に服の下に隠れた包帯がかすかに見え、まだ心身の傷が回復していない今の遊星を現していると言えた。
スカー・ウォリアー レベル5 攻撃2100
「バトルだ!俺は《スカー・ウォリアー》で裏守備モンスターを攻撃!ブレイブ・ダガー!!」
右手に装備している幅広の短剣を振るう《スカー・ウォリアー》が裏守備モンスターにそれを突き刺す。
裏守備となっていた《C:Hアンノウン》は砕け散るが、ヒイロはそれを気に留める様子を見せない。
「罠発動。《サイボーグ・オペレーション》。俺のフィールドのC:Hが戦闘・効果によって破壊されたとき、デッキからサイボーグモンスター1体を手札に加える。俺は《C:Hネオン》を手札に加える」
「サイボーグ…そんなカードがあるとはな。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
ヒイロ
手札2→3(うち1枚《C:Hネオン》)
LP4000
場 伏せカード1
遊星
手札6→3
LP4000
場 スカー・ウォリアー レベル5 攻撃2100
伏せカード1
「俺のターン」
ヒイロ
手札3→4
「俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。その効果により、俺はデッキから《C:Aサウンドキャット》を墓地へ送る。そして、手札から《C:Hネオン》を召喚」
倒れた《C:Hアンノウン》に代わり、現れたのは真っ黒なセーラー服姿で、両足が義足となっている白い髪の少女だった。
義足が不完全なためか、スラスターのついた車椅子に乗った状態で、飛行してヒイロに追随する。
C:Hネオン レベル3 攻撃1000
「このカードの召喚に成功した時、墓地に存在するC:A1枚を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。《サウンドキャット》を《ネオン》に装備」
ヘッドフォンをつけ、赤と青をベースとしたギターを背負った猫が現れると、持っていたギターが《C:Hネオン》の手に渡る。
「そして、装備カードとなった《サウンドキャット》の効果。装備カードとなっているこのカードと装備モンスターでシンクロ召喚を行うことができる」
「何!?装備状態でのシンクロ召喚だと!?」
「レベル3の《ネオン》にレベル3の《サウンドキャット》をチューニング。熱情を奏でし奏者よ、未来を焦がせ。シンクロ召喚。現れろ、《C:Hブレイブロッカー》」
ギターを手にした《C:Hネオン》の体を赤と青をベースとしたライダースーツ状の衣装で包まれる。
すると彼女は立ち上がり、今まで足変わりとなっていた車椅子を蹴り飛ばすと髪を震わせ、ギターを奏で始めた。
C:Hブレイブロッカー レベル6 攻撃1600
「《ブレイブロッカー》の効果。このカードがサイボーグ装備カードの効果によってシンクロ召喚された場合、俺のフィールドに存在するサイボーグモンスターの攻撃力は800アップする」
C:Hブレイブロッカー レベル6 攻撃1600→2400
「攻撃力が2400に!?」
「バトル。《ブレイブロッカー》で《スカー・ウォリアー》を攻撃。ブレイブ・ボルト」
《C:Hブレイブロッカー》のギターの弦が発射され、それが《スカー・ウォリアー》の胴体に突き刺さる。
その状態で上半身を回しながらギターを弾き、同時に発生する高圧電流が傷だらけの戦士の体を貫いていく。
「ぐううう…だが、《スカー・ウォリアー》は1ターンに1度、戦闘では破壊されない!」
「だが、これでお前に300のダメージが入る」
遊星
LP4000→3700
(どういうことだ…?ダメージが軽い…?この程度のフィールでジャックと戦ったというのか…?)
決闘疾走において、わずかなダメージであってもフィール次第でDホイールやプレイヤーを傷つけ、体勢を崩すことができる。
実際、遊星もジャックとのデュエルでわずかなダメージを受けただけで大きく体勢を崩しかけた。
はっきり言って、このヒイロのフィールは決闘疾走をつい最近始めた初心者レベルといっても過言ではない。
「俺はこれでターンエンド」
ヒイロ
手札4→2
LP4000
場 C:Hブレイブロッカー(《C:Hブレイブロッカー》の影響下) レベル6 攻撃2400
伏せカード1
遊星
手札3
LP3700
場 スカー・ウォリアー レベル5 攻撃2100
伏せカード1
「おい…!これがお前の全力じゃないだろう!?加減をしているつもりか!」
「俺のデュエルが納得いかないのか?」
「そうだ、ジャックと戦ったお前のフィールがあまりにも軽い。ダメージも衝撃もろくにない。どういうつもりだ!」
「悪いが、俺はそのフィールというものがわからない。理由は言えないが、決闘疾走は最近始めたばかりだ。デュエルそのものは昔からしていたがな。決闘疾走やフィールについてもその時に知ったばかりだ」
「なんだと…!?」
ヒイロの見てくれの年齢から考えると、その最近始めたという答えについては別に驚くほどのものではない。
遊星も幼いころからデュエルをして、決闘疾走そのものを始めたのは4年ほど前。
それまではマスタールールでのデュエルで力量を磨いてきた。
だが、その中でも決闘疾走やフィールのことは常識として知っていた。
ネオドミノシティだけではなく、決闘疾走が全世界で普及している今はそれが当たり前の環境といえる。
そのフィールと決闘疾走を知らずにデュエルをしてきたというのについてはとても信じられなかった。
(嘘ではないみたいだが…信じていいのか?奴のその言葉を…)
「お前のターンだ、早くしろ」
「くっ…俺のターン!」
遊星
手札3→4
「俺は手札から魔法カード《武闘円舞》を発動。俺のフィールドのシンクロモンスター1体と同じ能力値を持つ《ワルツトークン》1体を特殊召喚する」
ワルツトークン レベル5 攻撃2100
「そして、俺は手札から《ジャンク・チェンジャー》を召喚」
ジャンク・チェンジャー レベル3 攻撃1500(チューナー)
「《ジャンク・チェンジャー》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、俺のフィールドのジャンクモンスター1体のレベルを1つ変動させることができる。俺は《ジャンク・チェンジャー》のレベルを1つ下げる」
ジャンク・チェンジャー レベル3→2 攻撃1500(チューナー)
「レベル5の《ワルツトークン》にレベル2の《ジャンク・チェンジャー》をチューニング!シンクロ召喚!光を切り裂け、《セブン・ソード・ウォリアー》!!」
セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300
「そして、俺は手札から装備魔法《錆びた剣-ラスト・エッジ》を《セブン・ソード・ウォリアー》に装備!このカードを装備したモンスターの攻撃力は800アップする」
セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300→3100
「そして、《セブン・ソード・ウォリアー》の効果。1ターンに1度、このカードに装備カードが装備されたとき、相手に800のダメージを与える!イクイップ・ショット!」
《錆びた剣-ラスト・エッジ》を右手に握る《セブン・ソード・ウォリアー》が左手からビームを放ち、それがヒイロに命中する。
ジャックとのデュエルと同様、衝撃はストライクチェイサーに伝わり、ふらつきながらも体勢を立て直してスピードを上げる。
ヒイロ
LP4000→3200
「バトル!《セブン・ソード・ウォリアー》で《ブレイブロッカー》を攻撃!」
攻撃命令と共にスピードを上げる遊星のDホイールが斜めに放置されている鉄骨を使って大きく跳躍する。
そして、壁伝いに走行を続けてスピードをさらに引き上げていく。
「セブン・ソード・スラッシュ!!」
ほんの一瞬の間に7回もの剣撃が《C:Hブレイブロッカー》を切り裂いていった。
バラバラになった彼女が爆散すると、激しい衝撃波が襲い掛かり、さすがのヒイロも大きく体勢を崩し、軌道が大きく乱れる。
ヒイロ
LP3200→2500
「ふん…俺は墓地の《アンノウン》と《ネオン》の効果を発動する。まずは《ネオン》の効果だ。このカードが墓地に存在する状態で俺のサイボーグシンクロモンスターが相手によって破壊されたとき、墓地のこのカードと破壊されたシンクロモンスターをデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。更に、《アンノウン》は同じ条件で墓地から特殊召喚できる」
ヒイロ
手札2→3
C:Hアンノウン レベル4 守備1000
「なら俺は《スカー・ウォリアー》で《アンノウン》を攻撃!ブレイブ・ダガー!!」
次も己の手で倒すといわんばかりに《スカー・ウォリアー》が真正面から《C:Hアンノウン》に向けて、短剣を突き立てた状態で突撃する。
正面からの突撃は彼の体を両断して消滅させた。
「《スカー・ウォリアー》がフィールドに存在する限り、相手は他の戦士族モンスターを攻撃対象にできない。俺はこれで、ターンエンド」
ヒイロ
手札3
LP2500
場 伏せカード1
遊星
手札4→1
LP3700
場 スカー・ウォリアー レベル5 攻撃2100
セブン・ソード・ウォリアー(《錆びた剣-ラスト・エッジ》装備) レベル7 攻撃3100
伏せカード1
ヒイロのフィールドからモンスターがいなくなり、逆に遊星のフィールドに2体のシンクロモンスターが残った。
《スカー・ウォリアー》によって《セブン・ソード・ウォリアー》は攻撃対象から外れ、ライフもまだ3700もある。
(あとは、このターンをしのげば…)
強力なモンスターをヒイロが呼び出したとしても、《セブン・ソード・ウォリアー》は自らの装備カードが墓地へ送られたときに相手フィールドのモンスターを破壊する効果を持つ。
そして、自らが装備したカードを自らの手で破壊することもできる。
更に、《錆びた剣-ラスト・エッジ》は墓地へ送られたとき、相手に800のダメージを与える。
その際に《セブン・ソード・ウォリアー》の攻撃力は2300に戻ることになるが、ヒイロの残りライフを考えれば十分な攻撃力だ。
(こちらの世界の遊星はまだまだ…ということか。《スターダスト・ドラゴン》か、それに相当するカードがないからか?俺も同じだが…)
ジャックとのデュエルを終えた後、改めて今手にしているデッキを確認したが、その中にはヒイロとともにいた精霊たちのカードも当然ながら、入っていなかった。
ある程度コンセプトは理解したが、こうしてそれをあらかた理解したうえでデュエルをするのは今回が初めてだ。
どちらもまだまだ、だが、今回については遊星には決して負けることはないという確信がヒイロにはある。
「(遊星…そんなぶれた感情では、勝てる相手にも勝てないぞ)俺のターン」
ヒイロ
手札3→4
「俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、《C:Hサイファー》はリリースなしで召喚できる」
フィンガースナップの音が響くとともに、正面の建物の屋上にヘッドギアで顔を隠した男が出現する。
白いローブで身を包む彼の両手両足はすべて義肢となっており、その場から動くことなく疾走する両者をそこから見守っていた。
C:Hサイファー レベル6 攻撃2000
「《サイファー》の効果。このカードがアドバンス召喚、もしくは自らの効果で召喚に成功した時、デッキから3枚の《C:A》を選択する。そして、相手はランダムにその中から1枚を選択し、選択したカードを手札に加えるか、装備カード扱いとして《サイファー》に装備し、それ以外のカードを墓地へ送る。俺が選択するのはこの3枚だ」
選択されたカード
・C:Aガンフォックス
・C:Aアンデッドブレイカー
・C:Aナックルベアー
遊星のDホイールに表示された3枚のカードは裏向きとなって自動的にシャッフルされる。
その中の1枚をタッチすることで、洗濯されたと判断される。
「一つだけ言っておく。お前がこの中で最も選択してはならないのは《ガンフォックス》。それを選んだ瞬間、お前の負けが決まるぞ」
「何…?」
「考えて決めるんだな」
クロウのようにはいかないが、それでも今の遊星の対しては動揺を与えるには十分だ。
全容がわからない相手ほど怖いものはなく、ジャックとの敗戦のショックからも抜け切れていないのだから。
遊星の手が止まり、時間が無くなっていく。
その間にスピードを上げたストライクチェイサーが優勢を追い抜いていく。
「決闘疾走のルールでは、先にゴールすることも勝利条件の一つだったな?」
「…俺が選択するのは真ん中のカードだ!!」
タッチしたと同時にヒイロのデッキから選択されたカードが排出され、手札に加わる。
そして、残った2枚のカードが墓地へ送られる。
「…悪いが、外れだ。お前が選択したのは《ガンフォックス》。俺はこのカードを手札に加える」
「装備しないだと…?」
「サイボーグは召喚方法によって効果が変わる。俺は手札から永続魔法《リボルブオン》を発動。その発動処理として、俺は手札からレベル4以下のC:A1体を特殊召喚できる。俺は《ガンフォックス》を特殊召喚する」
C:Aガンフォックス レベル2 攻撃800(チューナー)
「レベル6の《サイファー》にレベル2の《ガンフォックス》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、現世と浮世を欺く銃士、《C:Hミラージュガンナー》」
神主のような白装束姿となり、両手にリボルバーを手にした《C:Hサイファー》が屋上から飛び降り、一回転するとそのまま両足で着地して見せた。
C:Hミラージュガンナー レベル8 攻撃2600
「《ミラージュガンナー》の効果。このカードは1ターンに1度、墓地に存在するC:A1枚を装備カード扱いとしてこのカードに装備する。俺は《ガンフォックス》を《ミラージュガンナー》に装備する。《ガンフォックス》を装備した《ミラージュガンナー》の攻撃力は400アップ」
C:Hミラージュガンナー レベル8 攻撃2600→3000
「《ガンフォックス》を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える」
「だが、《スカー・ウォリアー》の効果により、お前は《スカー・ウォリアー》しか攻撃対象にできない!そして、《スカー・ウォリアー》は1ターンに1度、戦闘では破壊されない!」
「そうだな…。だが、俺は《リボルブオン》の効果を発動。このカードは1ターンに1度、俺のC:Hシンクロモンスターの効果をサイボーグ装備モンスターによる効果でシンクロ召喚された状態とそれ以外の状態とを入れ替えることができる。俺はその効果により、《ミラージュガンナー》のもう1つの効果を使う。このカードがサイボーグカードを装備している時、フィールド上の存在する装備カードの数に1を加えた回数だけ、相手モンスターを攻撃できる。今、フィールドに存在する装備カードは2枚。よって、《ミラージュガンナー》は3回攻撃ができる」
「攻撃力3000の3回攻撃だと!?」
「いいや、俺は更に手札から速攻魔法《ブーストタイム》を発動。俺のフィールドの装備カードを装備しているC:H1体の攻撃力をターン終了時まで1500アップする。これで、《ミラージュガンナー》の攻撃力は4500になる」
「馬鹿な!?」
白装束に炎のような赤いラインが追加され、2丁拳銃にも炎が宿る。
C:Hミラージュガンナー レベル8 攻撃3000→4500
「バトル。《ミラージュガンナー》で《スカー・ウォリアー》を攻撃。フォックスマグナム」
炎をブースターのように両足から発生させた《C:Hミラージュガンナー》が2体の戦士に猛追するとともに2丁の拳銃から炎の弾丸をこれでもかと発射していく。
リボルバーであるにもかかわらず、マシンガンのように連続して放たれる弾丸の雨を《スカー・ウォリアー》は遊星と《セブン・ソード・ウォリアー》をかばい、一身で受ける。
「俺は罠カード《シンクロン・リフレクト》を発動!俺のシンクロモンスターが攻撃対象となった時、その攻撃を無効にし、相手モンスター1体を…」
「無駄だ。《ブーストタイム》の効果を受けた《ミラージュガンナー》が攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時までカード効果を発動できない」
「何!?」
「終わりだ…遊星」
次々と放たれる炎の銃弾は《シンクロン・リフレクト》の発動の隙を見せることを許さず、全身が炎上した《スカー・ウォリアー》がその場で崩れ落ちた。
炎の銃弾はそのまま遊星と《セブン・ソード・ウォリアー》を襲う。
「装備している《ガンフォックス》の効果。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える。最も、もうその必要もないがな」
「うわあああああ!!!」
遊星
LP3700→1300→0
サイボーグ・オペレーション
通常罠カード
このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールドに存在する「C:H」モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られたときに発動できる。自分はデッキから「サイボーグ」モンスター1体を手札に加える。
ネジ巻きの見習い戦士(漫画オリカ:調整)
レベル2 攻撃500 守備800 チューナー 地属性 戦士族
(1):このカードをS素材とする場合、他のS素材は戦士族・機械族モンスターでなければならない。
(2):このカードが墓地に存在し、このカードをS素材としてS召喚に成功したSモンスターが戦闘・効果で破壊されたときに発動できる。墓地に存在するこのカードを守備表示で特殊召喚する。その後、破壊されたSモンスターはデッキに戻る。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドを離れたとき、ゲームから除外される。
C:Hネオン
レベル3 攻撃1000 守備500 効果 闇属性 魔法使い族
このカード名の(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードの召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「C:A」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(2):このカードが墓地に存在する状態で、自分フィールドに存在する「C:H」Sモンスターが相手によって破壊されたときに発動できる。墓地のこのカードと破壊されたモンスターをデッキに戻し、自分はデッキからカードを1枚ドローする。
C:Aサウンドキャット
レベル3 攻撃400 守備0 チューナー 光属性 獣族
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分メインフェイズ時に自分フィールドに存在する「C:H」1体を対象に発動できる。フィールド上に存在するこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターには以下の効果を適用する。
●1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドのモンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。その戦闘で発生する相手へのダメージが倍となる。
(2):このカードが自分の「C:H」モンスターに装備されている場合に発動できる。このカードと装備モンスターを素材として「C:H」SモンスターのS召喚を行う。
(3):「サイボーグ」カードの効果によってこのカードが装備されている場合に発動できる。装備されているこのカードを特殊召喚する。
C:Hブレイブロッカー
レベル6 攻撃1800 守備1900 シンクロ 光属性 戦士族
「C:A」チューナー+チューナー以外の「サイボーグ」モンスター1体以上
(1):このカードがS召喚またはS召喚以外の方法で特殊召喚に成功した時、その内容によって以下の効果を適用する。
●「サイボーグ」装備カードの効果によるS召喚:このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドに存在する「サイボーグ」モンスターの攻撃力は800アップする。
●通常のS召喚もしくは「サイボーグ」装備カード以外のカード効果による特殊召喚:このカードが自分フィールドに存在し、自分フィールドに「サイボーグ」SモンスターがS召喚されたときに発動できる。自分の墓地に存在する「C:A」モンスター1体を装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。このカード名のこの効果は1ターンに1度しか使用できず、この効果を発動したターン、自分は「サイボーグ」以外のモンスターをEXデッキから特殊召喚できない。
C:Hサイファー
レベル6 攻撃2000 守備2000 効果 闇属性 戦士族
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールド上にモンスターが存在する場合、このカードはリリースなしで召喚できる。
(2):このカードのアドバンス召喚に成功した時、または(1)の効果によって召喚に成功した時に発動できる。自分はデッキから「C:A」モンスター3枚を相手に見せ、相手はランダムに1枚を選択する。選択されたカードを手札に加えるか、装備カード扱いとしてこのカードに装備し、残りのカードは墓地へ送る。
(3):自分フィールドに存在する「C:H」Sモンスターが相手によって破壊されたとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。破壊されたそのモンスターを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、次の自分スタンバイフェイズ時にこの効果で除外されたこのカードを手札に戻す。
C:Hミラージュガンナー
レベル8 攻撃2600 守備2300 効果 炎属性 戦士族
「C:A」チューナー+チューナー以外の「サイボーグ」モンスター1体以上
(1):このカードがS召喚またはS召喚以外の方法で特殊召喚に成功した時、その内容によって以下の効果を適用する。
●「サイボーグ」装備カードの効果によるS召喚:自分バトルフェイズ開始時、このカードが「サイボーグ」カードを装備している場合に発動できる。このターンのバトルフェイズ中、このカードは通常の攻撃に加えてフィールド上に存在する装備カードの数だけ相手モンスターを攻撃できる。この効果を発動したターン、自分は直接攻撃を行えない。
●通常のS召喚もしくは「サイボーグ」装備カード以外のカード効果による特殊召喚:1ターンに1度、自分の墓地に存在する「C:A」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
リボルブオン
永続魔法カード
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードの発動処理として、自分は手札に存在するレベル4以下の「C:A」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):自分フィールドに存在する「C:H」Sモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターのS召喚またはS召喚以外の方法での特殊召喚の方法によって以下の効果を適用する。
●「サイボーグ」装備カードの効果によるS召喚:そのモンスターを通常のS召喚もしくは「サイボーグ」装備カード以外のカード効果による特殊召喚されたものとして扱う。
●通常のS召喚もしくは「サイボーグ」装備カード以外のカード効果による特殊召喚:そのモンスターを「サイボーグ」装備カードの効果によるS召喚されたものとして扱う。
ブーストタイム
速攻魔法カード
(1):自分フィールドに存在する装備カードを装備している「C:H」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1500アップさせる。また、この効果を受けたモンスターが戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで相手はカード効果を発動できない。ターン終了時、この効果を受けた装備モンスターが装備しているカードをすべて破壊する。
「…」
敗北した遊星のDホイールが停まり、あまりのことに遊星が呆然とする。
怪我をしていることもあり、極力スピードを落としたためか、4000近い合計ダメージであるにも関わらず、遊星とDホイール本体へのダメージは軽いものだった。
「今のお前では俺には勝てない。自分や仲間、デッキを最後まで信じることができない今のお前ではな」
「ヒイロ…」
「少しは、頭を冷やすんだな」
動かぬ遊星を無視したヒイロが走り去っていき、それを遊星は見送ることしかできない。
そして、ギリギリと手袋から音が響くほど力のこもった拳を自分の膝にたたきつけた。
夕方となり、誰もいない廃墟の工場の屋上にヒイロは立つ。
ヒイロの手には《C:Hサイファー》と《C:Aガンフォックス》が握られており、その2枚のカードを空にかざす。
「骸骨騎士…聞かせてもらうぞ、お前が俺をここに呼んだのか否かを」
目を閉じたヒイロは2枚のカードを重ね合わせた。