遊戯王5D's外伝 異界の決闘神官   作:ナタタク

4 / 14
第4話 フィールとは

「う、ぐう…!!」

痛みがひどくて起き上がることのできないヒイロが目を開くが、そこは真っ暗な空間で、見えるのは雪だけだ。

そのせいか肌寒さを覚えてくる。

動くことができないため、そのままあおむけの姿勢になっていると、かすかに誰かの泣き声が聞こえてくる。

その方向へ這って進んでいく。

進むほどその声がはっきりと聞こえてくる。

その声はヒイロの記憶に深く焼き付いている少年と少女の物。

「龍可…龍亜…」

進んでいき、見えてきたのは雪に埋もれた誰かがうつぶせに横たわり、それに覆いかぶさって泣いている。

「…!…!!」

おそらく、倒れている人間の名前を叫んでいるのだろうが、なぜかその名前がヒイロには聞こえない。

そばにはひざを折った龍亜の姿があり、彼は茫然と空を見上げている。

「ボクの…せいだ…。ボクに、力がなかったから…。…が死んで、龍可が、泣いて…」

「なんだ、これは…龍可、龍亜!」

痛みに耐え、進み続けるヒイロの手が伸びる。

手が届いたのは倒れた人間であり、その手はなぜかヒイロのものとよく似ていた。

 

「…!!」

「よかった…目を覚ましたわね」

急に視界が真っ白な天井へと変わり、肌寒さが和らいだ部屋の中へとヒイロの居場所が変わる。

体に違和感があり、確認すると包帯で巻かれていることがわかる。

そして、そばにいる女医と思われる白衣で眼鏡をかけた女性にヒイロは視線を向ける。

眼鏡をかけた

「ここは…?」

「病院よ、あなた…ひどいけがをしていたわ。遊星が見つけていなかったら、どうなっていたか…」

「遊星が…そうか、あいつに助けられたということか」

「ええ…あなたが変なことを聞いてきたから、嫌な予感がして、探してくれていたのよ。詳しいことは、私にもわからないけれど…」

「礼を言わないと、な…。遊星はどこにいる」

「彼は今、サテライト中央の練習コースに…でも、だめよ。今のあなたは動ける状態じゃ」

「いや、もう問題ない」

ベッドから立ち上がり、病人服を脱いだヒイロは体に巻かれている包帯をとっていく。

包帯を自分でとっていること、そしてベッドから自分で出て、自分の足で立っているヒイロの姿に女医は驚きを隠せなかった。

遊星が見つけ、病院に担ぎ込まれたときのヒイロは傷だらけな上に骨折が複数あり、しばらくは歩くことさえできないはずだった。

包帯が取れ、露出するヒイロの肌には傷が一つもない状態で、見るからに健康そのものといえる状態だった。

「世話になった」

取った包帯を女医に押し付け、壁に掛けられている服と荷物を手にしたヒイロが机に治療費を置いて出ていく。

女医は理解が追いついていないようで、ただ彼を見送ることしかできなかった。

 

街中をストライクチェイサーが走り、練習エリアへと向かう。

走るヒイロの脳裏に、かつて龍亜がシグナーの力を自分に託して復活させてくれた時に手に入れることになり、シグナーの力を失ってなお手元に残り続けている命の石が浮かぶ。

ジージャンのポケットの中にあるそれはこの世界でも機能しており、ヒイロの傷をいやしていた。

「また、これに助けられたということか…」

骸骨騎士には確かに会うことができた。

だが、結局彼もヒイロがこの世界に来たこととは無関係であり、カードが渡されただけ。

このカードにどういう意味があるのかはわからないまま。

だが、そのせいなのか、夢の中で龍亜と龍可の悲しむ姿が見えてしまった。

(遊星もジャックもいた…ゴドウィンとイェーガーも…。お前たちもこの世界に存在するということか…?だとしたら、他の奴らと、俺自身は…)

考える中で練習場に到着し、ヒイロはストライクチェイサーを止める。

サテライトに存在するこの練習場は決闘疾走を愛する人々の手によって、ジャンクをかき集めて作られており、決闘疾走者であればだれでも使える施設だという。

そこには女医が言っていた通り、遊星の姿もある。

そして、彼とデュエルをしているのはオレンジのマフラーと茶色の混じった白いライダースーツとヘルメット姿をした小柄な少年で、彼のDホイールは蜂のように見えた。

デュエルが終わり、ヒイロの姿が見えたのか、遊星がヒイロの元へ走ってくる。

「ヒイロ、なぜここにいる!?体は…!!」

「もう治っている。お前が病院へ連れて行ってくれたと聞いた、助かった」

「そ、そうか…だが、どうなっているんだ?あの怪我、一晩で治るものじゃないだろう?」

「さあな。そんなことよりも…特訓か?」

「あ、ああ…D1GPのためにもな」

「あんたが兄貴の言っていた、ヒイロ・リオニスって人だな!」

「お前は?」

「俺は伊集院セクト!兄貴のライバルだ!」

胸を張って自己紹介してくるセクトに対して、ヒイロは一切反応を見せない。

まるで自分だけ空回りしているように感じられ、固まるセクトを無視してヒイロは彼と彼のDホイールを見る。

(伊集院セクト…少なくとも、元の世界であったことのないデュエリストか‥)

「ああーーー!もう、お前!兄貴に感謝しろよ!!お前のDホイールは兄貴が徹夜して直してくれたんだぞ!でないと、今ここまで走れてねーからな!!」

「そうか…助かる。俺のDホイール、手間かかっただろう?」

「ああ、だが…いいDホイールだな。手入れが行き届いている。大切にしているんだな」

「もちろんだ、長い間使ってきたからな」

かつてヒイロが乗っていたトライチェイサーがトオルとミサキをはじめとした数多くの仲間の手によって生まれ変わったそれは今のヒイロにとっては仲間とのつながりの証。

この世界のそれが元の世界から一緒に来たものなのか、それとももともとこの世界に放置されていたものなのかはヒイロには分からない。

だが、もしこれが自分のものだとしたら、このように日頃から整備していると胸を張って言うことはできる。

「お前もグランプリに出るなら、特訓していったらどうだ?デュエルの実力はわかっているが、フィールについてはどうにかしないとな。セクト、付き合ってやってくれるか?」

「別にいいけど、兄貴は?」

「俺は…もう少し考える。ただ、走るだけではだめだということだけはわかったが、まだ方法が見つからないからな」

「ああ、兄貴ーーー!」

走り去っていく遊星に対して抗議するように大声を上げるセクト。

だが、遊星が特訓の中で何かにもがいていることはわかっている。

今日ここにきて、ここまでの時間に十数回デュエルをしたが、それでも彼は満足していない。

「心配するな、あいつなら問題ないだろう。じゃあ、教えてもらうぞ。その、フィールというものを」

「お、おう…。といっても、俺が教えられるのは基本的なことくらいだからな。ま、デュエルをしながらやろうぜ。兄貴が教えてくれたんだ、強い決闘疾走者だってな!なら、お前に勝てば、兄貴にさらに近づけるってもんだ!」

「なるほどな…なら、受けて立つ」

 

「ヒイロ・リオニス…か…」

Dホイールと共に観戦用のスペースに到着した遊星はスタートラインに立つセクトとヒイロを見る。

今までは直接決闘疾走することばかりしか頭が回らなかったが、こうして冷静に眺めることでもっと別の何かを見つけられるかもしれない。

かつてのセクトが教えてくれたように。

(考えると、お前には教えられてばかりだな…セクト)

 

「行くぜ!」

「ああ…」

「デュエル!!」

 

ヒイロ

手札5

LP4000

 

セクト

手札5

LP4000

 

「俺の先攻。俺は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。俺のフィールドにカードがない時に発動でき、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚を墓地へ捨てる」

 

手札から墓地へ捨てたカード

・C:Aサウンドキャット

 

「そして、俺は手札から《C:Hネオン》を召喚」

 

C:Hネオン レベル3 攻撃1000

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地に存在するC:A1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。俺は墓地の《サウンドキャット》を《ネオン》に装備。そして、《サウンドキャット》の効果発動。装備モンスターであるレベル3の《ネオン》に装備カードとなっているレベル3の《サウンドキャット》をチューニング」

「装備モンスターと装備カードでシンクロ召喚!?兄貴が言ってたけど、そんなのアリかぁー!?」

「熱情を奏でし奏者よ、未来を焦がせ。シンクロ召喚。現れろ、《C:Hブレイブロッカー》」

 

C:Hブレイブロッカー レベル6 攻撃1600

 

「《ブレイブロッカー》の効果。装備カードとなっているC:Aの効果によってシンクロ召喚に成功した場合、俺のフィールドのC:Hシンクロモンスターの攻撃力は800アップする」

車椅子を蹴飛ばし、ロックの魂に目覚めた《C:Hブレイブロッカー》がギターを鳴らし、それの呼応するかのように周囲が燃え上がる。

 

C:Hブレイブロッカー レベル6 攻撃1600→2400

 

「まだだ。さらに俺は手札から魔法カード《二重召喚》を発動。この効果によって俺はこのターン、もう1度通常召喚を行うことができる。俺は手札から《C:Hアンノウン》を召喚」

 

C:Hアンノウン レベル4 攻撃1500

 

「《アンノウン》の効果。手札の《アンデッドブレイカー》を《アンノウン》に装備。そして、《アンデッドブレイカー》の効果発動。装備状態のこのカードを特殊召喚する」

 

C:Aアンデッドブレイカー レベル3 攻撃1000(チューナー)

 

「レベル4の《アンノウン》にレベル3の《アンデッドブレイカー》をチューニング。屍を切り刻む刃よ、戦士に鎧を与え、冥府の番人とせよ。シンクロ召喚。現れろ、《C:Hゾンビバスター》」

 

C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃2600→3400

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ヒイロ

手札5→0

LP4000

場 C:Hブレイブロッカー(《C:Hブレイブロッカー》の影響下) レベル6 攻撃2400

  C:Hゾンビバスター(《C:Hブレイブロッカー》の影響下) レベル7 攻撃3400

  伏せカード1

 

セクト

手札5

LP4000

場 なし

 

「いきなり攻撃力3400と2400のシンクロモンスター!?でも…負けねえぜ!!俺のターン、ドロー!!」

 

セクト

手札5→6

 

「へへ…俺は手札から魔法カード《封印の黄金櫃》を発動。こいつはデッキからカードを1枚選択して除外して、除外してから2回目の俺のスタンバイフェイズ時に、この効果で除外したカードを手札に加える。俺がデッキから除外するのは《共振虫》!こいつが除外されたとき、デッキから昆虫族モンスター1体を墓地へ送ることができる。俺はデッキから《ゴキポール》を墓地へ送る!そして、《ゴキポール》の効果!こいつが墓地へ送られたとき、デッキからレベル4以下の昆虫族モンスター1体を手札に加える!俺はデッキから《G戦隊シャインブラック》を手札に加える!そして、この効果で通常モンスターを手札に加えた場合、そのモンスターを特殊召喚し、そいつよりも攻撃力の高いモンスター1体を破壊できる!飛び出せ、《G戦隊シャインブラック》!!」

セクトのデッキから飛び出してくる擬人化したゴキブリというべきモンスター。

ここは男性陣しかいないため、びっくりする程度で済んでいるが、もし女性の決闘疾走者がいて、ゴキブリに耐性がなければ激しく動揺してクラッシュする見たいが見えただろう。

ヒーローのごとく主人の不利に登場した黒き勇者は大きく跳躍し、体をひねった後で《C:Hブレイブロッカー》めがけて飛び蹴りを披露する。

蹴りを受けた《C:Hブレイブロッカー》は地面を転げた後で敗北した怪人のように爆発し、それをバックに《G戦隊シャインブラック》は華麗な着地をしてみせた。

 

G戦隊シャインブラック レベル4 攻撃2000

 

C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃3400→2600

 

「くっ…。だが、俺は墓地の《ネオン》と《アンノウン》の効果を発動。まずは《アンノウン》の効果。このカードは相手によってC:Hシンクロモンスターが破壊されたとき、墓地から特殊召喚できる」

 

C:Hアンノウン レベル4 守備1000

 

「そして、《ネオン》の効果。墓地のこのカードと破壊された《ブレイブロッカー》をデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする」

 

ヒイロ

手札0→1

 

「そして、俺は手札からチューナーモンスター《デス・メイフライ》を召喚!」

尻尾に3本の刃がついた黒いカゲロウが出現し、《G戦隊シャインブラック》の正面を飛び始める。

 

デス・メイフライ レベル1 攻撃400(チューナー)

 

レベル4の《シャインブラック》にレベル1の《デス・メイフライ》をチューニング!悪魔の刃を持つカマキリの力を見ろ!!シンクロ召喚!現れろ、《デモンズ・マンティス》!!」

《デス・メイフライ》の背中にひびが入り、そこから飛び出した霊体がチューニングリングとなり、それを《G戦隊シャインブラック》が駆け抜けていく。

そして、その姿をドクロが刻まれた鎌を持ち、下半身がDホイールのような構造のモンスターへと変貌した。

 

デモンズ・マンティス レベル5 攻撃2100

 

「攻撃力2100…?攻撃力だけなら、《ゾンビバスター》の方が上回っているが…」

「それで終わるなんて、アリえねえぜ!シンクロ素材になった《デス・メイフライ》の効果。このカードをシンクロ素材としたモンスターはターン終了時に破壊される代わりに、ターン終了時までその攻撃力を元々の攻撃力の数値分アップする!」

「何!?」

《デス・メイフライ》の魂が《デモンズ・マンティス》の鎌に乗り移り、黒い炎が鎌全体から発生し始めた。

 

デモンズ・マンティス レベル5 攻撃2100→4200

 

「攻撃力4200!?」

「昆虫だからってバカにすんじゃねえぞ!!なめてかかれば、大けがするってことを教えてやるぜ!見ろ、こいつがフィールだ!!」

アクセルを踏み込んだセクトが加速するとともに、燃え上がる《デモンズ・マンティス》の刃が《C:Hゾンビバスター》を襲う。

チェーンソーで受け止め、放出する毒で鎌を溶かそうとするが、黒い炎が毒を焼き尽くし、無力化していく。

最終的に鎌で真っ二つに割かれる形で《C:Hゾンビバスター》が切り裂かれ、衝撃波がヒイロを容赦なく襲う。

「うおおおお!!」

「どうだぁ!俺のフィール!加速することで仮想立体映像が現実化して、リアルなダメージになる!で、Dホイールのスピードとモンスターの攻撃力が高ければ高いほど、強くなる。これがフィールだぁ!!」

「なるほど…そして、攻撃のタイミングに合わせて加速か…」

 

ヒイロ

LP4000→2400

 

「やるな、セクト…こうも簡単に2体のC:Hを倒した上に、先制までするとはな…」

初めてであったセクトは確かに決闘疾走者として未熟で、サテライトでは誰にも勝利することができなかった。

だが、サテライト最強の決闘疾走者である遊星に勝つことを目標に誰よりも決闘疾走と向き合ってきたことは先日セクトとデュエルをし、あと一歩のところまで追いつめられた遊星自身がよく知っている。

ただ、セクトが使うフィールは攻撃力と速度に頼る単純なもの。

それだけで勝てるほど、D1GPは甘くはないのだが。

 

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド!同時に、《デス・メイフライ》をシンクロ素材とした昆虫族シンクロモンスターはターン終了時に破壊される!」

強大な力を得た大小というべきなのか、鎌のみに宿っていた炎が《デモンズ・マンティス》の肉体すべてを襲い、容赦なく焼き尽くしていく。

「そして、破壊される《デモンズ・マンティス》の効果発動!このカードが破壊されたとき、手札・デッキ・墓地から俺のエースカードを呼び出し、そのカードの装備カードになる!出てこい、俺の最強カブト!《ポセイドン・オオカブト》!!」

炎に包まれた《デモンズ・マンティス》の肉体を突き破って飛び出したのは《デモンズ・マンティス》の大鎌を手にした純白のカブトムシのような鎧をまとった大男だった。

鎌にはもはや炎は宿っていないが、それでもその切れ味は健在のようだ。

「そして、《デモンズ・マンティス》を装備した《ポセイドン・オオカブト》の攻撃力は1000アップする!」

 

ヒイロ

手札1

LP2600

場 C:Hアンノウン レベル4 守備1000

  伏せカード1

 

セクト

手札6→2

LP4000

場 ポセイドン・オオカブト(《デモンズ・マンティス》装備) レベル7 攻撃2500→3500

  伏せカード2

 

「俺のターン!」

 

ヒイロ

手札1→2

 

「俺は墓地の《ゾンビバスター》の効果を発動。C:A装備カード以外の効果または通常のシンクロ召喚で召喚されたこのカードが破壊された次の俺のスタンバイフェイズ時に、このカードは墓地から特殊召喚できる。甦れ、《ゾンビバスター》」

 

C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃2600

 

「そして、俺は手札からフィールド魔法《アームド・フィーバー》を発動」

発動と同時にヒイロの背後に金色の装飾がいくつも施された巨大なスロットマシンが出現する。

上側に表示される配当表に表示されているのは???のもの以外はすべてC:Aをデフォルメされたものとなっていた。

「でかいスロットマシン!?こんなのアリえねー…」

「《アームド・フィーバー》は1ターンに1度、デッキから3枚のC:Aを相手に見せ、相手はその中からランダムに1枚を選択する。そして、俺は選択されたカードを特殊召喚し、それ以外のカードをデッキに戻す。俺が選択するカードはこれだ」

 

・C:Aガンフォックス

・C:Aシノビラクーン

・C:Aナックルベアー

 

「なら、俺はこいつを選ぶ!!」

画面に表示された裏面のカード3枚の内の右側をタッチすると同時にスロットがまわり、そろったのはオレンジ色の熊の絵柄だった。

「お前が選んだカード、《ナックルベアー》を特殊召喚」

両拳に装備されたブースター突きのグローブが特徴的なオレンジ色の毛皮の熊がスロットマシーンから飛び出す。

 

C:Aナックルベアー レベル4 攻撃1800(チューナー)

 

「そして、《ナックルベアー》の効果。このカードを《ゾンビバスター》に装備する」

ブースターに火が入り、《C:Aナックルベアー》から分離したグローブが《C:Hゾンビバスター》の両腕に装着される。

新たに手にしたそれを試すかのようにジャブを2,3回行った後で拳を標的である《ポセイドン・オオカブト》に向ける。

一方の《ポセイドン・オオカブト》も鎌を握り、相手の動きを伺い始めた。

「装備カードとなった《ナックルベアー》はターン終了時にデッキに戻るが、装備モンスターの攻撃力が1000アップする」

 

C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃2600→3600

 

「そして、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。いけ、《ゾンビバスター》」

アクセルを吹き込むと同時に《C:Hゾンビバスター》のグローブのブースターも点火する。

走り出した《C:Hゾンビバスター》が拳を振りかぶり、《ポセイドン・オオカブト》も鎌を振るう。

スピードがある程度上昇したところで拳と鎌がぶつかり合い、攻撃の余波がセクトを襲う。

「くう…衝撃がきたぁ。なんだよ、できるじゃないかぁ!」

わずかダメージ100のため、小規模ではあるが確かに衝撃がセクトを襲っていた。

 

セクト

LP4000→3900

 

「まだだ。あとは破壊した《ポセイドン・オオカブト》の攻撃力分のダメージを」

「それは無理だぜ!《デモンズ・マンティス》を装備したモンスターが戦闘を行うとき、お互いのモンスターは戦闘では破壊されない!」

「…《ナックルベアー》を装備したモンスターが攻撃を行ったターン、装備モンスター以外は攻撃できない。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド。ターン終了と同時に《ナックルベアー》はデッキに戻る」

強制的にグローブが腕から外れ、グローブはどこかへ飛び去っていく。

再びチェーンソーを手にする《C:Hゾンビバスター》だが、死んでから本番のその力が再び使えるかは彼には分らない。

 

ヒイロ

手札2→0

LP2600

場 C:Hアンノウン レベル4 守備1000

  C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃3600→2600

  伏せカード2

  アームド・フィーバー(フィールド魔法)

 

セクト

手札2

LP3900

場 ポセイドン・オオカブト(《デモンズ・マンティス》装備) レベル7 攻撃2500→3500

  伏せカード2

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

セクト

手札2→3

 

「悪いけど、これがラストターンだ!《ポセイドン・オオカブト》は相手の攻撃表示モンスターを攻撃して、その攻撃でモンスターを破壊できなかった場合、続けてもう1度そのモンスターに攻撃できる!この効果は1ターンに2度発動できる!」

「《デモンズ・マンティス》の効果で戦闘破壊できない状態での攻撃か…」

今のヒイロのライフ2600、そして《ポセイドン・オオカブト》と《C:Hゾンビバスター》の攻撃で発生するダメージは900。

それを3回受けたとなると、ヒイロの敗北が決まる。

「いくぜーーーー!!《ポセイドン・オオカブト》!!」

一気に加速したセクトと共に《ポセイドン・オオカブト》は力の限り鎌を《C:Hゾンビバスター》にふるう。

その姿はあたかもジャックが使用した《天刑王ブラック・ハイランダー》の攻撃のようにも見えた。

まず一撃が振るわれ、チェーンソーとぶつかり合い、攻撃の余波がヒイロを襲う。

「ちぃ…遊星のライバルを名乗るだけあるな…」

 

ヒイロ

LP2600→1700

 

「もう1発!」

鎌を持ち直し、逆方向から振るわれる鎌。

今度は左手の鉤爪で受け止めるが、チェーンソーと比較して質量がないことから爪が砕け、破片がヒイロをかすめる。

 

ヒイロ

LP1700→800

 

「さあ、次でとどめだぜ!これが俺のフィールだぁ!!」

更に加速するセクトと、とどめの一撃を真上から振り下ろす《ポセイドン・オオカブト》。

チェーンソーを持ち直そうとする《C:Hゾンビバスター》だが、チェーンソーが限界を迎えており、これを受けると砕けるのは明白だ。

「終わりだああああああ!!」

鎌とチェーンソーがぶつかり合い、大きなひびが入るチェーンソー。

これで勝利は決まったと笑うセクトだが、すぐにその表情が固まる。

バキリと音を立てて鎌の刀身が砕けた。

「何!?何が…どうして!?」

「俺は罠カード《突撃旋風》を発動した。モンスターの攻撃宣言時、相手の魔法・罠カード1枚を破壊する。俺はその効果で《デモンズ・マンティス》を破壊した。これで、攻撃力は《ゾンビバスター》が上回る」

互いの武器が砕け散り、すかさず懐に飛び込んだ《C:Hゾンビバスター》が《ポセイドン・オオカブト》の額めがけて頭突きを決める。

強烈な頭突きを受けた《ポセイドン・オオカブト》がコースに転落し、爆散する。

「うおおお!!でも、ダメージ100なら、大したことねえぜ!!」

 

セクト

LP3900→3800

 

(必要であれば、最初の攻撃の時でも《突撃旋風》を発動できた。わざわざ3回目に、致命傷ギリギリのダメージを負ってまでこのタイミングに発動した理由は…)

「俺はもう1枚の罠カード《セカンド・サイボーグ》を発動。俺が戦闘ダメージを受けた相手のバトルフェイズ中に発動でき、受けた戦闘ダメージの合計の数値以下の攻撃力を持つサイボーグ1体をデッキから特殊召喚できる。俺が受けた戦闘ダメージの合計は1800。よって、デッキから《ナックルベアー》を特殊召喚する」

 

C:Aナックルベアー レベル4 守備1300(チューナー)

 

「また、《ナックルベアー》!?なら、こいつならどうだ!!俺は罠カード《奇跡の残照》を発動!このターンに戦闘破壊された《ポセイドン・オオカブト》を復活させる!」

頭突きで損傷した兜を新調した《ポセイドン・オオカブト》が額をさすりながら再びフィールドに舞い戻る。

 

ポセイドン・オオカブト レベル7 攻撃2500

 

「まだバトルフェイズは終わってないぜ!《ナックルベアー》を攻撃だ!!」

装備カードとしての効果を知っている以上は《C:Aナックルベアー》はフィールドに残すわけにはいかない。

本来の武器であるトライデントを手にした《ポセイドン・オオカブト》がそれで《C:Aナックルベアー》を串刺しにした。

「俺はこれで、ターンエンドだ!!」

 

ヒイロ

手札0

LP800

場 C:Hアンノウン レベル4 守備1000

  C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃2600

  アームド・フィーバー(フィールド魔法)

 

セクト

手札3

LP3800

場 ポセイドン・オオカブト レベル7 攻撃2500

  伏せカード1

 

「俺のターン!」

 

ヒイロ

手札0→1

 

「《アームド・フィーバー》の効果。俺が選択するのはこの3枚」

 

・C:Aガンフォックス

・C:Aシノビラクーン

・C:Aビルドディアー

 

「さあ、選べ…伊集院セクト」

「こんなピンチでまた運任せって、アリえねえぜ…。俺は左側のカードを選ぶ!!」

「お前が選んだのは《ガンフォックス》だ。《ガンフォックス》を特殊召喚」

 

C:Aガンフォックス レベル2 攻撃400(チューナー)

 

「《ガンフォックス》の効果。このカードを《ゾンビバスター》の装備カードにする」

チェーンソーを失い、鉤爪も破損した《C:Hゾンビバスター》に使える唯一の武器となった銃。

頼りなく、慣れない武器だが、もはやそんなことを言っていられる場合ではない。

「《ガンフォックス》を装備した《ゾンビバスター》の攻撃力は400アップ」

 

C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃2600→3000

 

「攻撃力3000!?」

「そして、《アンノウン》を攻撃表示に変更」

 

C:Hアンノウン レベル4 守備1000→1500

 

「バトル。《ゾンビバスター》で《ポセイドン・オオカブト》を攻撃」

銃を握っているにもかかわらず、発射する様子はなく、むしろ突撃を仕掛けてくる。

「なら、俺は罠カ…」

「俺は墓地の《突撃旋風》の効果を発動!俺のシンクロモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地のこのカードを除外することで、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。そして、《ゾンビバスター》の攻撃力をダメージステップ終了時まで500アップさせる」

 

C:Hゾンビバスター レベル7 攻撃3000→3500(ダメージステップ終了時まで)

 

「いけ、《ゾンビバスター》」

「な、な…」

「装備カードとなっている《ガンフォックス》の効果により、お前はこの戦闘で破壊された《ポセイドン・オオカブト》の元々の攻撃力分のダメージを受ける!」

劣勢となり、セクトの後ろを走ることになったヒイロが急速に加速を開始する。

《C:Hゾンビバスター》もまた、走るスピードを上げていき、《ポセイドン・オオカブト》に迫る。

「これは…」

遊星から見ると、セクトの後ろをヒイロが真後ろから追走している状態で、フィールのエネルギーが高まっている証として激流疾風が発動している。

肉薄した《C:Hゾンビバスター》が銃身で《ポセイドン・オオカブト》を殴りつけ、地面にあおむけに倒れさせる。

右足で体を押さえつけると、銃口を《ポセイドン・オオカブト》の顔面に押し付ける。

そして、ヒイロがセクトを追い抜いたと同時に引き金を引き、圧縮されたエネルギーが発射され、《ポセイドン・オオカブト》が破壊される。

「どわああああああああ!!!!」

後ろから襲い掛かる激しい衝撃波でDホイールごと吹き飛ばされたセクトはコース上を転げまわっていた。

 

セクト

LP3800→2800→300

 

「Dホイール、走行不能か…」

セクトのDホイールが転がっている様子、そして寝返ったことから意識があることはできたものの、既にDホイールから離れているセクト。

決闘疾走のルール上、停車もしくは走行不能となったプレイヤーが敗北することになるため、これでヒイロの勝利が確定となった。

「大丈夫か?伊集院」

ストライクチェイサーを止めたヒイロがセクトの元へ走り、彼の手を握る。

すると同時にヒイロの脳裏に何か得体のしれない光景が飛び込んでくる。

真っ黒な暗闇の中を歩くセクト、そんな彼のそばにいる2つの頭と黒髪の女性の上半身がついたいびつなドラゴン。

手を離したと同時に光景が消える。

(今のは…?)

「ヒイロ…今のって…」

体を起こしたセクトもまた、ヒイロに触れた瞬間に見えた光景に驚きを隠せなかった。

海の中を漂うヒイロと、そんな彼を抱きかかえた青いドラゴンの姿。

なぜこんな光景が見えたのか、そしてその中で見たドラゴンが何か。

「ヒイロ、セクト!」

Dホイールに乗ってここまで来た遊星の姿を見たことで、一度二人の仲の光景に関する疑問が隅に置かれる。

「2人とも、いいデュエルだった」

「兄貴…」

「少し、マシな顔になったみたいだな」

「…?そうか?」

「ああ…今回のデュエルで一番の収穫を得たのは、お前だったみたいだな、遊星」

ジャックとのデュエルのショックから抜け切れず、初めてデュエルをしてきた時までの遊星は憔悴しているようで、余裕がない状態だった。

だが、今見る遊星の表情はヒイロの知っている遊星に、アクセルシンクロを習得した時の遊星に近く見えた。

「にしても、ずるいぜヒイロ。あんなフィールができるなら、最初からやれよー」

「すまないな、だが…おまけでフィールというものがわかった気がする。感謝する。だが、Dホイールが…」

「大丈夫だって、この程度のクラッシュなら、どうってことないって!」

「すまないが、ヒイロ。今の走行なんだが…少し聞いてもいいか?」

「ああ、構わないが…」

(兄貴、なんか生き生きしてるぜ…)

ヒイロ自身は無自覚で行い、発言させた激流疾走。

この中に遊星はジャックに勝利する一筋の光を見出しているようで、しばらく遊星の質問と彼らの練習に付き合わされることになった。

 

 

 

 

デス・メイフライ(漫画オリカ・調整)

レベル1 攻撃300 守備300 チューナー 闇属性 昆虫族

(1):このカードをS素材として昆虫族モンスターのS召喚に成功したときに発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時までそのモンスターの元々の攻撃力分アップする。この効果を受けたモンスターはターン終了時に破壊される。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドに存在する「魔王龍ベエルゼ」の攻撃力がアップしたときに発動できる。墓地に存在するこのカードを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたこのカードはフィールドから離れたとき、除外される。

 

デモンズ・マンティス

レベル5 攻撃2100 守備1000 シンクロ 闇属性 昆虫族

昆虫族チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードが破壊されたときに発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「ポセイドン・オオカブト」1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。その後、墓地に存在するこのカードを装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。この効果でこのカードを装備したモンスターの攻撃力は1000アップする。

(2):(1)の効果でこのカードを装備したモンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、お互いのモンスターは戦闘では破壊されない。

 

 

突撃旋風(アサルト・サイクロン)(漫画オリカ・調整)

通常罠カード

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度発動できる。

(1):モンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する。この効果の対象となったカードの効果は無効化される。

(2):自分Sモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できず、戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力を500アップさせる。

 

セカンド・サイボーグ

通常罠カード

(1):自分が戦闘ダメージを受けている相手バトルフェイズ中に発動できる。このターンに自分が受けた戦闘ダメージの合計分の数値以下の攻撃力を持つ「サイボーグ」モンスター1体をデッキ・墓地から特殊召喚する。

 

アームド・フィーバー

フィールド魔法カード

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズ時に発動できる。デッキから「C:A」モンスター3体を選択して相手に見せ、相手はその中からランダムに1枚選ぶ。そのモンスター1体を特殊召喚し、残りをデッキに戻す。

(2):フィールドゾーンに存在するこのカードが破壊され、墓地へ送られたときに発動できる。自分フィールドに「C:Hトークン」2体を特殊召喚する。

 

C:Hトークン

レベル1 攻撃0 守備0 トークン 地属性 戦士族

「アームド・フィーバー」の効果により特殊召喚される。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。