TS少女は平安時代に失恋していた   作:トートロジー

3 / 4
感想や評価ありがとうございます
オリ主視点をいつになったら書けるのか、このままじゃいきなり戦いを挑むバトルジャンキー的な感じになってしまうし……。


烏鷺亨子は嫌悪する

 

 

 

 

「……この呪力反応、フィルか」

 

 東京に位置するとあるマンションの一室、ソファでくつろいでいた羂索はポツリと独り言を口にした。

 彼の目が見据えるのは少し離れた場所にある呪術高専、感知したのはそこで展開された領域。

 かれこれ二十年は顔を合わせていない友の呪力を、その肌で感じ取ったのだ。

 

「殺傷能力を限りなくゼロに近づけ、それだけでなくむしろ相手にメリットを与えるという縛りにより成り立つ領域。アレには君も散々手を焼いたんじゃない?」

 

 空いている大きな窓、その先のベランダに彼は視線を向ける。

 何もない空間に向かって、明らかに誰かへ向けた問いを放つ。

 宿儺の直感や六眼には及ばないまでも、彼の呪術的知覚能力は他の術師に比べて当然ながら高い。

 それに加えて部屋に張り巡らされた仕掛け、呪術と科学の混同探知。

 だからこそ彼には視えていた、呪具と術式により巧妙に隠された彼女の姿を。

 

「キモッ、なんでいるってわかるのよ」

 

 数秒程して彼女が姿を現す。

 黒いスーツに身を包み、特徴的な目をした女、彼女こそ元・藤氏直属暗殺部隊『日月星進隊』の元隊長にして現代に甦りし術師。

 名を烏鷺亨子、空を面で操る術式を持つ。

 

「君の術式で隠せるのは視覚情報だけ、だから呪具で呪力も隠したんだろうけど想定が甘かったね。戦闘用のボディじゃない時の私が、自分の住処になんの仕掛けも施してないと?」

 

「……しばらく平和に暮らしてて忘れてたわね、常在戦場の感覚。監視カメラでも仕掛けてたの?」

 

「サーモグラフィーと呪力を込めた札の合わせ技だよ。呪霊や術師、加えて泥棒の接近すら察知する事が出来る」

 

「百均の防犯グッズよりは使えそうね……私にオマエの根城に入れって?」

 

 そう言いながら黒スーツの内ポケットを探り、一本のUSBを取り出す烏鷺。

 それを見ながら羂索はソファから立ち上がり、キッチンから椅子を持ってきた。

 入室の誘いだと受け取った烏鷺は、最大限の警戒を持って彼には問いかける。

 

「少し聞きたい事もあるしね、言っておくけど罠はないよ。なんなら縛りでも結ぶ?」

 

「……まぁ、私もフィルからの届け物があるし入ってあげるわよ。『今日一日両者は互いに縛りを結んだ対象に呪術を行使しない』って縛りを結ぶのなら」

 

「ならそれで───「待て、『今日一日両者は互いに一切の危害を加えない』に変更ね。現代に馴染んでるオマエなら呪術関係ない銃火器を使ってくる可能性がある」

 

 烏鷺の羂索に対する評価には未知の要素が含まれている。

 平安の頃のままなら逃げも出来ずに瞬殺される、などと言うことはないが千年経って彼がどれ程強くなっているかわからない。

 少なくとも全くの無成長ということはないだろう、更に狡猾になっているかもしれない。

 ならば薬品、銃火器、徒手空拳、ありとあらゆる戦闘の手段は封じておくべきだ。

 それが烏鷺の思考、かつて暗殺者としてこき使われていた故の慢心なき行動。

 

「相変わらず疑い深い、フィルの能天気さを欠片でも受け継がなかったのかい?」

 

「慎重の私と大胆のフィルでバランス取れてるからいいのよ」

 

「そうかい?二人揃って激情型にしか見えないけど」

 

 烏鷺と羂索は縛りを結ぶと、テーブルを挟んで向かい合った。

 烏鷺は改めて羂索を観察する。

 額の縫い目は平安時代と変わらない、注目すべきはその性別だろうか。

 黒髪の女性、何処にでもいるような普通の女性を彼は乗っ取っているのだ。

 確かに羂索は目的のためならば手段を選ばないような人間ではあるが、まさか性別の壁すら超越するとは思ってもいなかった。

 そこまで考えたところで、そもそも自分は羂索の元々の性別を知らないじゃないかと思い出す。

 まぁ、男だろうが女だろうが信用できない嫌な奴には違いないと結論付け烏鷺は思考を終えた。

 

「……最初に一つ、はっきり言って私はオマエに関わりたくない。呪物化の恩はあるけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のはフィルだ」

 

「私としても君には興味がないからね、そのUSBとフィルの情報さえ手に入れられれば満足だ」

 

「あっそ」

 

「辛辣だね」

 

「……あぁもう、ムカつくからこれ言ってやるわよ。オマエへの嫌がらせとフィルへの意趣返しで一つ教えておいてあげる」

 

 変わらない、むしろ昔より悪化しているな、というのが羂索の烏鷺に対する見解だった。

 昔と動揺に感情を隠すという事を知らない、暗殺者の皮を剥いだ中身の精神は幼児同然、そう分析している羂索の平常心は烏鷺の次の言葉で掻き乱されることになる。

 

「フィル、オマエの事が恋愛的に好きらしいわよ」

 

「…………………マジ?」

 

 本日初めての汗が、羂索の額に浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

「不死身束縛彼岸舞踊」

 

 教室をベースとして展開された領域、五条悟の行動は素早かった。

 無下限によるガードを整え直し、過去最大の警戒を持って標的の対処に当たる。

 

「疑ってはなかったけどさぁ!マジでオマエ最優の術師なのかよ!」

 

「だからそうだって言ってんじゃん」

 

 フィルの術式は呪術界では有名である、何故なら術式の正体は長年人類が追い求めた『不死』であるからだ。

 とある皇帝は水銀を飲み、貴族は処女の生き血を浴び、人魚の肉を食べ、それでも到達できなかった生命の極致。

 呪力が尽きない限り無限に発動し続ける術式、尽きる事なき再生能力。

 

「この領域内では俺も不死になるって訳か……」

 

 開示された領域内のルール、両者への不死の術式の付与。

 一見すると此方へのデメリットが無きに等しい領域、だが五条悟は既に気付いていた。

 この領域とはあまりに相性が悪いと。

 

「もうわかるだろ?この領域内では展開した俺にも新たに不死の効果が付与されるんだ。つまりは元からある生得術式を使わなくても、俺は不死のままでいられる」

 

「領域展延を纏っての攻撃、無下限を攻略しようって魂胆か」

 

「そう、思う存分アンタの無限を破れるって事」

 

 発動中は生得術式が使えないという欠点を持つ領域展延、しかしこのやり方なら発動は可能。

 千年生きる相手が展延を使えないなどとは、最初から思っていなかった。

 だがしかし五条悟は疑問に思っていた、この領域は俺じゃない相手には無力に等しい。

 無下限という特殊な相手でもなければ、使う意味はないだろう。

 

「単純な術式のバフの恩恵はあるだろうけど、それでもオマエの領域不便過ぎねぇ⁉︎」

 

「元々この領域は拷問用だからな、戦闘は考慮してねぇんだよ」

 

「物騒だな!」

 

 戦いが始まり、彼らは駆ける。

 地面に大きく縫い目のような模様が描かれた、その領域を。

 

 

 

 




領域は心象風景に基づいて作られる


千年前、結局オリ主はびびって告白できませんでした。
相手が恋愛事に興味なさそうなので、告白しないまま失恋してしまったのです。

Q領域を発動している時点で生得術式使ってない?そのまま展延は無理でしょ

A鶏が先か卵が先か問題を利用して呪術のバグを意図的に引き起こしています

Q戦闘用ボディじゃない羂索をどうして烏鷺は警戒しているの?

A烏鷺「そもそもそこから疑わしいのよ、わざわざ戦闘用じゃないって強調する意味あったの?ブラフよブラフ、アイツ性格悪いし」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。