ポップコーン☆バトル   作:小町四季

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1話【トウモロコシは弾け飛ぶ】

 ポップコーン。

 それは、トウモロコシの実を炒って爆裂させ、塩などで味付けした食品である。主にスナック菓子として食されている。 高カロリーゆえジャンクフードに見られがちだが材料は全粒穀物であり、植物繊維やビタミン類、ミネラル分がバランスよく含まれている。 by.Wikipedia。

 

 ポップコーン。

 それは、塩、キャラメル、カレー、ペッパー等のすべての調味料を引き立てる至高の料理。言うならば、サッカーで言う所のリベロ、料理で言う所の卵であり、万物全てと手を取り合う。

 

 ポップコーン。

 それは…。

 

             ※

 

『幻実ゲイム』。

 

 この48都道府県新設の新たな県。新楽都(しんらくと)に置いてこの単語を聞かない日はない。いや、新たな日本全域に置いてこの言葉を聞かない日はないだろう。

 

 ネットと言う匿名でのコミュニケーションツールが現れて以来、人の心は日が経つごとに理性を失って行った。ある者は自身の利益を求め、社会を批判するようになった。ある者は優越感の虜となり、他者を貶め(おとしめ)、馬鹿にする快楽を知ってしまった。また、ある者は現実の様々な刺激に触れすぎた故に、思いやりは消失し、より刺激を求める様になった。

 特段。思いやりの消失は社会に大きな影響を与えた。人の心の醜さを詰め込んだパンドラの箱を片っ端から開けてしまった。より面白い物を、より楽しい事を、より便利な物を手に入れたい、見付けたい、行いたいと願う心はやがて1つの都市を作り上げた。

 

 それが日本の新設都道府県。欲望と刺激の空中都市・新楽都。

日本の東側。日本海に浮く島そのものを指す。一部の者からは、皮肉の混じった言い方で『天獄(てんごく)』と呼ばれている。その浮島の半分は、言ってしまえば戦場である。

 

 毎日、人が傷付いて、人ならざる力を以って人を殺す。

 

 それが常識となってしまったこの世界を生きている。

 

 人々が腐り、社会が壊れ、正義や倫理は崩れさった。

 

 そんな世界で生きている。

 

 僕達はきっと生きながらに死んでいる。

 

              ※

 

「レディースっっっ!あ〜〜〜〜んどぅっっっ!ジェントルメーンっっっ!テレビの前にお集まりの皆様、大変長らくおまたせしましたっ!『幻実ゲイム:シーズン3』はじまりで〜〜〜すっ!」

 狙っているのか、センスがないのか目が痛くなるような蛍光色の文字がテレビに映り、『幻実ゲイム:シーズン3』とタイトルを知らせている。文字の奥にはスタジオが見える。本棚や蓄音機、ティーポットにクラシカルな机や椅子でシックに整っている。その古びた味のある椅子に深々と腰掛け、行儀悪くも机に足を乗せている男が一人。

「毎回お馴染みっ!大人気イケメン司会者のエンマでございます〜!よろしくお願いします〜!今回は栄えある3度目のシーズン放送決定という事でっ!スペシャル企画ですっ!なんと〜!シーズン1、2の"元気"な生存者達に来ていただいていま〜す!みなさ〜ん!入ってきて下さ〜い♪」

 やけにテンションの高く、胡散臭く、煩い声で今回の出演者達を扉から登場させる。カメラがそちらを向くとブゥーーー!とドライアイスの装置が起動し、煙を足元に引き起こす。

 

「幻実ゲイム、ファーストシーズン、セカンドシーズンの参加者っ!持ち前のフィジカルと水を操る能力『白鯨(はくげい)』によって多くのプレイヤーを敗北へと突き落としましたっ!一度暴れてしまえば、そこにあるモノ全てを押し流すっ!強靭無敵の豪傑プレイヤーっ!海瀬 水波(うみせ みなみ)ぃぃぃ!」

 初めに姿を表したのは、肩幅が広く、どっしりと構えた筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)の男であった。髪は無骨なオールバックであり、後頭部で1本にまとめられている。眉や目はキリッとしていて、闘志や荒々しさを感じさせる。

「水波さん。ファンサ下さぁい〜!」

 カメラが近づいた為、合わせてエンマがファンサをする様に促すが、無表情のままにカメラに一瞥もくべる事なく、8つのゲスト用の椅子の1番エンマから遠い席に腰を下ろす。

 無表情ではあるが、エンマが嫌いなのだと言う事はひしひしと伝わる。そんなことも気にせずに、エンマは次の人の紹介を始める。

 

「同じくっ!幻実ゲイム、ファーストシーズン、セカンドシーズンの参加者っ!巧みな話術と煙の狐を従える能力『管狐(くだきつね)』を用いて、数多のプレイヤーを騙し討ちしてきましたっ!陰湿且つ狡猾で、巧妙な罠の使い手っ!畜生クソ美形腹黒男子っ!緋色 玄次郎(ひいろ げんじろう)ぅぅぅ!」

 次に姿を表したのは、糸目の爽やかで温かな雰囲気を持ちながらもどこか殺意、敵意を丸出しのある種、エンマと似ている男であった。番組中にもかかわらず、煙管を吸っている。然し、管の中に草が入っている様子は無い。それなのに、彼が息を吐く度に煙が口から溢れ出ている。

「それでは玄次郎さんっ!ファンサをどおぞ〜☆」

 チラリとエンマを一瞥し、すぐ様視線をカメラに戻す。四角形の黒い箱に見つられながらスゥゥゥーと煙管からを吸い込み、その箱のレンズに掛ける。画面が白くフェードアウトする前に見えた開かれた目は、さも自分が嘲笑されている様に感じる。

 画面が白から先程までのステージの彩りに戻ると玄次郎は、水波の横に座って絡んでいる。今度一緒に飲みに行かないかとか、好きな女性のタイプは何だとか他愛も無い話を煙と共に水波に吹きかける。

 当然、水波は無視を決め込んでいた。

 今日のゲストは計8人。エンマの鼻に付くゲスト紹介はまだまだ続く。腐った街の腐った番組で華やかな実績を持つ者達はどこか皆、寂しげに出演していた。

 

             ※

 

 一方で、そんなテレビが放送されているラーメン屋はいつもより(にぎ)わっていた。店内はざわめき立ち、視線は店内のカウンター席に釘付けである。そこには僕とそいつが居るわけだが…。見られていると言うのはあまり気分が良いものではない。

「はぁ…。やっぱり失敗だったんじゃないか?剛人(ごうと)ぉ。こんなうざいくらいにかんかん照りの真夏に食べるものじゃねぇよ。見てるだけで汗が…。ほら、もう服なんかベットベトだ。なぁ…。帰ろうぜぇ?」

「はんっ!分かってねぇなぁ!夏だから食べるんだよ!暑いもの食べたら自分の体ん中も熱くなるだろ?そうなったら外の温度よりも体温の方が熱くなって涼しく感じられるって言う寸法よ…!我ながら…!うん!天才だなぁ!」

 剛人の謎理論を説かれ、あれよあれよとこんな暑苦しく、冷房も効かないラーメン屋まで来てしまった。地獄だ。

 そんな僕達にお爺さん店主はメニュー表を渡してくれる。そしてすぐ様お冷をも出してくれる。正直、非常に助かる。ただでさえ溶けそうな程に暑いにも関わらず、クーラーの効いてない蒸したラーメン屋は死んでもおかしくないと思う程である。剛人に駄々を捏ねられなければ、来ることすら無かった。

 メニュー表に目を通す。

 塩ラーメン、味噌ラーメン、カレーラーメン、冷やし中華、チャーハンと至って普通のメニューはメニュー表の上半分で終わり、下半分は目を疑うメニューが立ち並んだ。

 田楽、お好み焼き、たこ焼き、たません、かき氷。なんだこの店は…。屋台の集合体か?

「なぁ…。これおかしくないか?」

「ん?いや別に普通だろ。おじさ〜ん!注文!塩ラーメン!」

 普通…。普通か?普通なのか?………。気にしたら負けか。とメニューを流し見ていると僕は1つの言葉に惹かれた。

 ポップコーン…。

 ポップコーンがあるのか。味は…塩こしょう。ふむ。良い。凄くそそる。これだ。これにしよう。

 剛人の注文を聞き終わりペンをエプロンの胸ポケットにしまおうとしたお爺さんに声を掛けた。

「すいません!僕も注文を良いですか?」

「はいはいぃ。大丈夫ですよぉ」

「ポップコーンを2つお願いします。ドリンクからミルクティーもお願いします」

「ポップコーン2つと…ミルクティーですねぇ。はいぃ。承りましたよぉ」

「お願いします」

 注文を伝え、ふと店内を見渡すと何処を向こうが視線が合ってしまう。目立っている。するとやけに(うるさ)い話し声が聞こえてくる。

「なっ…!なぁ!あれ…白飛 幸(しらとび ゆき)岩山 剛人(いわやま ごうと)じゃ…?」

「まさか…。こんな質素な町に来るわけねぇだろ!」

「でもあの小柄な白髪は白飛だろ?しかもあの筋肉…。絶対に岩山だって!」

「いやいや…。何でそんなビッグネームが二人でこんなラーメン屋に居るんだよ」

「おまっ…!知らねぇのかよ!?」

「何を?」

「白飛と岩山は幻実ゲイムの起点となった番組!幻影コロッセオの名コンビなんだよ!普段は敵対してるのに、コンビ戦となるとすぐ組んで、無双する!そのせいで毎回同じ様な展開になるから視聴率も下がって、番組が終わったって言われてるんだよ!白飛と岩山は昔からの付き合いで、バディなんだよ!」

 やめてくれぇ。俺はただこの馬鹿筋肉に一緒にラーメン食いに行こうとしつこく言われたから…仕方なく来ただけなんだぁ。騒ぎや注目の的になりたくないんだぁ。頼むぅ。黙ってくれぇ。

「だとよ。白飛」

「あ゛ぁ?」

 なんっで!平然な顔して居られるんだよこいつ!自信満々にな〜にが「だとよ。白飛」だぁ!こんちくしょう!殴るぞ!

「知らねぇよ。ほっとけ。」

「俺、握手してこようかな?サイン書いて来ちゃおうかなぁ?」

「頼むから静かにし…」

 

             ※

 

「我々、アドバンスプロダクションの大常連。かの幻影コロッセオ優勝タッグの片割れにしてぇ。たった一人でぇ。街一つを相手に死闘を繰り広げぇ。勝利を掴みとった豪傑。怪物並みの精神力と体力。岩の巨人を操る能力『ゴーレム』を持つ新楽都1の肝っ玉のすわった男。岩山剛人ぉ〜。」

 余りにもやる気のない声でその人物は呼ばれた。先程までの煩さの欠片もない声は煽っているようにしか聞こえない。

 然し、そんな事など気にも止めず、現れるは僕の横に居る筋肉馬鹿。テレビに映るそいつはニヤリと笑みを浮かべ、不敵に笑っている。

「はいはい。ファンサをどうぞぉ〜」

 エンマがその言葉を発するよりも前にカメラに近づいた剛人はそのまま拳を突き出しキメ顔をする。剛人流の決めポーズだ。正直ありきたりだと思うが、剛人的にはそこは気になっていないらしい。

「君なんかお呼びじゃないんだけどねぇ。運営側が煩いから仕方なぁく…ゲストにしたの…!あまり好き勝手するのはやめてもらっていいかしらぁ!?」

「そうか!それは大変だな!だが、お前は司会者なんだろ?早く最後の人呼ん出やれ」

 エンマと剛人は仲が悪い。ここまで来るとむしろ仲がいいのでは?と考えてしまう程に。

 剛人はエンマの肩をぽんっ!と叩いてそのまま空いたエンマに近い2席の奥側に座った。

 エンマはギリギリと歯を鳴らし、剛人を睨んでいたが、カメラが向いていることに気付くとごほん!と咳払いを一つして、元の端正な顔に戻る。

 そして遂に最後の一人を呼んだ。

「クリアしたゲームは数知れずっ!倒したプレイヤーは一万人以上っ!欲望に染まった新世界の風雲児っ!素早く、柔軟な機動力とポップコーンを操る能力『ポップコーン』…。捻りの無いネーミングセンスも持ち合わせるっ!白飛幸ぃぃぃ!」

 剛人と関わりが深いからか嫌味の入った自己紹介で呼ばれたのは僕自身だ。

「はぁい!ファンサをどうぞ〜!」

 笑顔でカメラを見て、手を振る。

 

             ※

 

「お…おい。やっぱりさ…」

 そんな内容が都合が悪くもテレビなんぞから流れてしまった。それは騒がしい外野に答えを教えるも同然である。

「はぁ…。何で今流れるかなぁ〜」

「こりゃあ…。完全にバレたな?」

「お前がこんなラーメン屋に連れ出すからだぞ?」

「はっはっはっ!そんな事言って!お前も乗り気だった癖にぃ!」

 ………。こいつの目は腐ってるらしい。

「んで、どうすんだよ?」

「何が?」

「バレたっつぅ事わよぉ…。」

 剛人との会話を遮るように後ろから雄叫びが聞こえる。

 全然余裕で面倒くさいんだが?あぁ…もう。折角の休日が最悪だ。

「おいっ!!!あんた等ぁ!白飛幸と岩山剛人だなぁっ!?」

「………」

「おう!いかにもだが?何か用か?」

「あんた等に恨みはねぇが…殺したら金になるんだよっ!悪いなぁ死んでくれやぁぁぁ!!!」

 ふざけた話である。幻実ゲイムの参加者はいついかなる時も強くなくてはならない。そんな幻実ゲイム運営陣が定めたルールがある。

 それがルールという範疇に収まればいいのだが、問題はそれを運営側が実行している所。

 僕を始めとした幻実ゲイムのプレイヤー、特段上位のプレイヤーはゲーム以外での討伐報酬が実はある。まぁ、幻実ゲイムのプレイヤーが一般人に負ける事など殆ど無い為、合ってもない事とほぼ変わらないような気もするが。

 

 それはそうと、叫ぶ男がジャケットの内側に隠していた拳銃を構える。

 ブレる手付きを抑え、照準は完全に僕の脳天である。

 手付きからして初めてでは無いが、多く人を殺しているわけでもないのだろう…。

「………剛人。任せた」

「あぁ!任されたが!お前はやらないのか?」

「気分じゃない」

「そうかぁー!はっはっはぁー!さぁ!来いっ!」

 カウンター席に座っていた剛人は堂々と椅子から立つ。

 180後半はあろうかと言うその巨体は是が非でも目立つ。

 そして威圧感もあり、何より怖い。

 男の手元が大きく狙いを変える。元々のターゲット出会った筈の僕はすでにフリーとなり、代わりに狙われたのは剛人の胸。怪物の如く激しく強く鼓動する心臓であった。

 

 バァン!!!

 

 ラーメン屋に銃声が響く。男が放った凶弾は真っ直ぐ心臓へと進んでいく。

 

 …筈だった。

 

 パン!と銃とは異なる破裂音が響くと銃弾は天井に向かい勢いを加速させ、木板の間に(はま)ってしまう。

 男は直ぐ様、次の弾を打とうと銃を構え直す。

 然し、それは目の前の筋肉に対しては余りにも遅く、哀れで

間違った行動であった。

 大きく振りかぶり、今にも溢れんばかりのエネルギーが1点に集中した筋肉の拳が振り下ろされる。まさに裁きの鉄槌とでも言うのだろうか。

 強力な一撃は、男の左頬を殴り付けるとそのままの勢いで、ラーメン屋の地面にまで一切の減速をする事すらなく落とされた。バゴォン!と音と共に建物が少し揺れる。丁寧な掃除が行き届いて居るのか埃や砂埃が舞い上がる事もあまりなく、白目を剥き、涎を垂らし、顎の外れた情けない男の顔がラーメン屋に晒される。

 余りにも一方的にやられた男を見つめ、顔を青ざめさせる外野に剛人は一言「次はどいつだぁ!?」と明るく放つと他にも何人かいたナイフや拳銃、バールを持っていた者達は静かに目線を逸した。

 そうなるのなら最初から無理な挑戦などしなければ良いのにと思ってしまう。普段から戦いを売っている僕達と彼の様に少し腕の立つ“だけ”の人では明確に差があるのだ。事実、剛人は能力の“の”の字すら出していない。殺していないだけ、優しい方である。

 まぁ…僕は能力を使ったのだが…。

「気分じゃないじゃなかったか?」

 剛人に問い掛けられる。確かに最初は手を出すつもりは無かった。然しそれでは…。

「お前が能力使ったら人が死ぬ上に店がぶっ壊れるだろうが…。仕方なくだ…!」

「ふぅ〜ん。ツンデレ〜!」

(やかま)しいわ!筋肉ぅ!」

 剛人が椅子に腰を掛ける。そして再びお爺さん店主の方を向くとそこにはラーメンを持ったお爺さん店主がいた。「少し伸びてしまったかもしれません…すいません…」と言って申し訳無さそうに剛人に渡す。豪快に笑いながら剛人はお爺さん店主からラーメンを受け取ると素早く割り箸入れから割り箸を取ると歯と片手だけで割り箸を割って、「いただきます」と食べ始めた。

 ズゥーと麺をすすって一口。

 更に麺をすすって二口。

 レンゲでスープを飲んで三口。

 チャーシュー、メンマ、ネギを纏めて食べて四口。

 前の物を飲み込み終わる前に口に新たな物を放り込んでいる。そして、ゴクンと喉を鳴らし、お冷をグイッと飲み干す。

 カンッとテーブルに空となったグラスを叩きつけると岩山は一言大きく叫んだ。

「うぅんまぁい!!!!!」

 岩山は嘘をつく事などできないし、上手く立ち回ったりするタイプの人でも無い。基本的に岩山の言う事は真実だ。しかも顕著に感情が顔や口に出る。

 太陽のような笑顔に、跳ねる声。

 相当美味しかったようだ。

 お爺さん店主は釣られて嬉しそうに笑顔を見せると僕にもポップコーンを渡してくれた。

 1つ手に取って、口に放り込む。

 ………。うん。美味しぃ。これは…。常連になってしまうかもな。

 

              ※

 

「幻実ゲイム…!お兄…わたし…!」

 ようやく見つけた家族の手掛かりなんだ。手放すわけには行かない。例えこの命を失ってしまうリスクがあろうともそこで引く事が出来る程私は利口でも、良い子でもない。

 面接試験は無事合格。今度の日曜日に予選を行うって言ってたっけ?

 

 予選…。

 

 まずはそこを超えなくちゃ。待っててお兄ぃ!

「おいっ!!!あんた等ぁ!白飛幸と岩山剛人だなぁっ!?」

 幻実ゲイムの面接試験を受け終わり、お腹を空かせて、初めて来た土地・新楽都の暖かな提灯の灯りが照らしている夜道を歩いているとそんな怒号が聞こえた。

 何?喧嘩?白飛幸と岩山剛人…。

 どこかで聞いたことある様な?

 不思議とあたしの足は騒ぎの起きている店へと向かっていた。ラーメン屋『翁丸』。変わった名前…。ここで何か起きてるのかなぁ?

 意識して何かを考える前に私はラーメン屋の扉を開けていた。

 

 そこで見た光景はすごかった。

 

 まず銃を持った男の人が奥の華奢な体のお兄さんに銃の照準を合わせる。そのお兄さんがボソッと何かつぶやくと隣にいた筋肉質なお兄さんが、勢い良く立ち上がる。男の人が驚いたけど、すぐさま筋肉質なお兄さんに銃を向け直して、一切の猶予もなく銃の引き金を引いた。

 バン!って銃声が、お店に響いて、黒い銃弾が筋肉質なお兄さんに飛んでいく。だけどその瞬間、華奢なお兄さんが、手を、宙に、突き出した。

 その手は元々、強く握られていたんだけど腕が伸び切ったその時、パッと手が開いて。細くて、綺麗なその手の内から黄色の小さな粒が放たれる。銃弾ほどではないけど、素早く、空を切って、筋肉質なお兄さんの前まで飛ぶそして、弾丸と当たって…。

 パン!って音が鳴り響くと黄色の粒は白く膨れ上がって爆発する。誰でも見たことのある映画のお供。それがあろう事か、銃弾を弾き飛ばす。

 銃弾は、天井の木目に挟まってしまったけど、白い塊がポトンと地面に落ちる。すぐに灰になる様に散って姿を消した。

 

 まるで魔法!

 凄いっ!凄いっ!

 

 生で見るのは初めて!覚醒能力(アビリティ)!幻実ゲイムの参加者など一部の人が使える不思議な力…。よく知らないけど、人それぞれ持つ能力は違っていて、まるでゲームや物語の世界に入り込んだかのように思わせてくれる。

 凄いなぁ…。さっきのどう見てもポップコーンだよね?ということはぁ…『ポップコーン』の能力!?凄い!カッコイイ!面白い!良いなぁ…良いなぁ…!

 ………って。私も明日から幻実ゲイムのプレイヤー!って事は…覚醒能力(アビリティ)…。使える!?

 わぁ!何だか凄くワクワクしてきたぁ!よぉし!お兄…!私…!幻実ゲイム…勝ってみせるぅ!

 

             ※

 

 ポリポリポリポリ………。

 うん。ポップコーンは変わらずおいしい。

 無心で口にポップコーンを放りながら考える。

 明日から始まる『シーズン3』。

 エンマ曰く「ちょっとしたぁ!サプライズがあるんですよねぇ。くふ…。くふふふふ」とのこと。

 はぁ…。幻実ゲイム頑張りますかぁ…。

 横のラーメンを食べ終わり、おじいちゃん店主に「おかあり!」と叫ぶ筋肉を見て再びため息が出た。

 財布の中身がゲームオーバーしないといいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〜ひとくちデータ〜
白飛はポップコーンが好き。
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