ポップコーン☆バトル   作:小町四季

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3話【ルール説明は遊び心と共に】

「夢っ!願いっ!希望っ!幻実ゲイムに参加するのならあるのでしょうっ!?叶えたい思いがあるのでしょうっ!?」

 人身の心を煽る疑問。この世に欲望を抱かない人なんていない。

「叶えますともっ!叶えますともっ!………優勝さえ、できればね?」

 その条件が難しいのだと強く言葉を飛ばしたいところだが、その隙もなく言葉は続く。

「ですから、早くゲームを始めるためにも今回の『幻実ゲイムシーズン3予選』…っ!その名も!『二人で最強!絶対協力!タッグバトルゲイム』っっっ!」

 

 ぱーん!ぱんぱーん!

 

 スタジオの四方八方からクラッカーの音が鳴り響き、空に紙吹雪が舞う。

 えらくステレオな演出にプレイヤーの面々はあきれ気味だ。

 刹那。プレイヤーの司会はブラックアウト。目は開いているのに光が届かない。不思議な感覚にやや困惑気味の初参加者をそのままに耳に少し高い鼻声が聞こえる。

 エンマだ。

「は~い、お静かに!」

 訪れる静寂。

「いいですか皆さん?これから皆さんには、二人一組でチームを組んで戦ってもらいますっ!」

 再び訪れる困惑。

「おやぁ~?困惑してますね。まぁ…そうなりますよね!ふぅ…。いいですか、皆さん?今回はより面白い番組作りのために、実験台とさせていただきますっ!ですがご安心ください。何も理不尽なことをプレイヤーに押し付けるつもりはございません!」

 まるでパワーポイントのようにパソコンで打たれたようなフォントが、視界を拒絶された脳内に流れ込む。

 

 幻実ゲイムシーズン3予選‐試行プログラム

 

「まず初めにいつもと同じ『幻実ゲイム』のルールをお話ししましょうっ!出ておいで~!ケルベロス~!」

 頭に流れる映像の端からデフォルメされた三つ首の犬が現れる。

 二頭身程度の全身。

 深紅と漆黒の毛並みは厨二心を激しく震わせる。

 本当に見たのなら、その禍々しさと威圧感から間違いなくひるむだろう。

 しかし今!のデフォルメ姿はプレイヤー、スタッフ、視聴者に一つの強い感情を沸き立たせた!

「クーンっ!」

 

 かわいいっ!!!

 

「ん!んん…!この子はケルベロスっ!我々、エモーショナル×プレイ株式会社のマスコットキャラクター。かわいいでしょう?さて!話を進めますよ!ケルベロスっ!」

「ワウ!」

 

 かわいいっっっ!!!

 

 返事をした二頭身ケルベロスは、一度画面の外へと出ていくと真ん中の頭が、外から1つのファイルを咥えて戻ってくる。

 パソコンのあのファイル。

 カチカチとダブルクリックすると開くあのファイルだ。

 ケルベロスが口からファイルを離すとその小さくかわいい前足でポンポンとダブルクリックのような仕草をする。

 開かれるファイル。

 様々なタイトルの中の『幻実ゲイムルール説明』と言うデータを開く。

 

 流れるのは戦いの映像だ。

 然し、ただの戦いとはかけ離れてる。

 プロレスでも、喧嘩でも、ましてや演劇でもない。

 炎が暴れ、地面が荒れる。

 その中で戦う二人の戦士。

 言うならば炎の怪物と地の支配者が戦っているようなそれは兎角、非現実的で、幻想的で、狂気的な気持ちを心に満たす。胸から溢れた熱が全身に周り、体が興奮をするのが分かる。

 

 現実上でのありえない状況。

 アニメや漫画でしか見ないような状況。

 それが目の前でありありと、これでもかと言う程にリアルに行われている。

 それは言うならば『幻実ゲイム』。

 異常と正常が混ざり合い、人が人ならざる力を持って暴れる姿は神々の神話の戦いと言っても過言ではない。

「皆さんが知っておく必要があるルールは主に2つっ!」

 1拍、呼吸。

「1つはつまらない試合をしない事っ!………おや?分からないですか?」

 何度目かのざわつくプレイヤーたちに続ける。

「要するにですね…。2名の強者がヤりあって中に弱者が横槍を入れたりするな。と言う事です。まぁ…盛り上げれるなら別ですが…。兎に角っ!つまらない事、視聴者方が冷めるような事をした場合。クビを取られると思ってください。はい」

 淡々と且つ感情的に伝えられる1つ目のルール。

 ケルベロスが座り、左の首を足で掻いている。

「もう1つ。ゲーム中にバトルステージの外へ出ることは許しませんっ!もし、それが起きた場合にはリタイア判定を付けるだけでなく、即座に捕らえ、それ相応の処罰を行いますので悪しからず。どうしてもリタイアしたい場合は、この後、皆さんに配られるプラスチックカードからリタイア決行をお選びください!」

 プラスチックカード。

 読者には聞きお呼びがない言葉だろう。

 技術が大きく成長した事で生まれた名刺の代わりとでも言うべきアイテム。

 名前や経歴、特記事項が書かれたカード。

 その名の通りプラスチック製。

 色は白で、黒字で文字が書かれるのが一般的なものだが、デザインさえ提出すればその様に変更もできる。

 名前や経歴等の凹凸を押す事によりその押したものの詳細が表示される。まるでリンクを貼られていて、それをクリックするように使える。

 白紙のプラスチックカードがあれば、その場で複製も可能。

 更には、エンマ発案の独自の技術により通信等の電話的な扱いをすることも可能。

 新時代のスマホになりうる開発中のアイテム。

 それがプラスチックカード。

 通称プラカ。

 

 先程、深見が流水に渡したのもコレである。

 

「続いて、『幻実ゲイムシーズン3予選』の特別ルールっ!こちらも2つですっ!ケルベロスっ!」

「ワフンッ!」

 

 その小さな肉球で押されるファイル。

 ポンポン。

 開かれる更なるファイル。

 『幻実ゲイムシーズン3予選特別ルール』と言うタイトルのデータが開かれる。

 先程までケルベロスの後ろで流れていたリアルな戦いの映像から切り替わる。

 あっけらかんとしたスタッフ達で構成された動画。

 カメラを動かしたりしていたスタッフ達と同じく黒いTシャツに白の文字で『幻実ゲイム』。

 統一感が素晴らしい。

 

 そんなスタッフが二人一組を6人が作り、計3組が腕組みをしてスキップして回っている。なんとも気の抜ける様子だ。

「1つ目は『タッグ性』っ!良いですか?貴方達は二人三脚の1チームです。片方が脱落したら、もう片方も脱落っ!」

 右側のスタッフ二人組が、中央の二人組の内、一人を優しく殴る。明らかに大袈裟に吹き飛び、わざとらしく倒れるスタッフ。すると倒れたスタッフと相方のスタッフが同時に青い粒子となって消える。

 ガッツポーズをする勝利したチーム。

「仲間の事を思いやり、大切にし、『友情』を育みながら頑張ってくださいねっ!そして2つ目っ!『殺し合い無し』っ!今回はあくまで合格、不合格を見極める予選ですっ!ですので死者がいない方が助かるんですねぇ…ええ!分かりましたか?皆さん?そう…あなたに言ってるんですよ?岩山くん?」

 

「あぁ…!わかっ…」

 

「そして!注意事項が更にもう2つっ!」

 

「…ハハハッ!無視か!」

 

 勝利したスタッフチームの一人がナイフを持って、左のスタッフチームの一人の背中から心臓を突き刺す。しゃこ!と音がなり、血が出ることもなく、突き刺されたスタッフがど下手な殺陣で倒れ込む。

 おもちゃの刃がしゃこしゃこするナイフだ。

 すると刺されたチームは粒子となって消えて、刺したチームはケルベロスに食べられた。

 その後、画面いっぱいに『リタイア』と映し出される。

 

 分かりやすい説明だ。スタッフの大根芝居を除いては気になるところも特にない。エンマらしいと言えばエンマらしい動画だった。

 

「さてとっ!何か質問はありますか?皆様?」

 視界がザラ付き、砂嵐が起こると脳に視界が戻る。

 

 解放されたらしい。

 

「ないようですね?それではそろそろ…ゲームを始めましょうかっ!良いですか?くれぐれも殺すことが無いように。くれぐれもバトルステージから出ないように!なにより!!!決してつまらない戦いをしないよう…お気を付けください。それでは『幻実ゲイムシーズン3予選』スタートっっっ!!!」

 折角戻った視界を遮る暗闇。

 スタッフがスタジオの電気を落したのだろう。

 一瞬、ふわりと空中に落ちる感覚。

 刹那、見知らぬ廃ビルに横たわっていた。

 水波が見つめていた少女共に。




〜ひとくちデータ〜
プラカは四捨五入してスマホ。
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