NTR系エロゲ世界を乙女ゲー世界に変えたTS転生者   作:ダイコンハム・レンコーン

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時間停止モノの9割は偽物。
ムイちゃんの異能力がパンピーに干渉しちゃってるガバがあったので修正しました。


自信と奮進

 熱いまま行動出来るのは、若い頃だけだ。歳を取れば嫌でも行動に思考が伴って、動きが鈍くなる。身体が若くなって、動き方もすっかり若返ったなと俺は思う。

 

 ──学校。ひと月ぶり以上か。白い校舎を見上げて抱く感情にはもはや感傷すら混じっている気がする。

 

 校門は閉じている。警備員はあくびしながら停止していた。お仕事お疲れ様。

 

 私服姿で学校ってのも珍しい体験だ。今の俺はポニーテールにシャツとショートパンツって動き易さ重視の格好をしている。

 

「当たり前か」

 

 今は休み時間じゃなく授業中か。

 

「よっ……と」

 

 俺は門を飛び越えて中へ入る。頼むから時間停止は解除してくれるなよ。

 

 ……俺は見慣れた校舎を、不思議な心地で歩き回る。教室で勉学に勤しむ学生達を横目に廊下を歩く。昔はサボりたくなったら保健室に行って寝込んでたもんだが、それまでの道中に似た気分だ。行くのはムイちゃんの所だけど。

 

「何か違和感と思ったら、パンピー今私服だったんだ」

 

 つくづく非常識な世界だが、こう言う事態になると改めてそう思う。イケナイ事してるみたいでテンション上がるぞ。

 

「お、居た居た」

 

 歩き回って体育館。グリッドが刻まれた床を見れば1発でここが普通の体育館でない事くらいは分かる。普通の体育館が窮屈に思えるくらいの広さで、とびきり頑丈。非常時のシェルター認定を受けているくらいだ。バリバリ攻撃系の異能力でも傷一つ付かないとされていて、俺も腕一本犠牲にヒビを入れられるかどうかってトコだな。

 

 そんな場所でジャージ+ポニテ姿のムイちゃんは今日も生徒をしばき倒していた。……正確にはその姿で止まっていた。黙ってれば美人なんだよなこの暴力変態教師。

 

「またチャックが虐待されてる」

 

 ジャージ姿だが、胸元を留めるチャックが今にも弾けそうなくらいの双子山。これを見ても興奮どころか若干の嫉妬心が滲み出す様になったのは、俺の心が健全に女子になりつつあるからか。

 

 因みに他の女子はこれを見てカッコいいとか、地味に……いや派手に女子人気はある。わりかしキャーキャー黄色い声援を浴びている印象だ。俺なんか彼女の姿見るたびに戦慄が走るぞ。

 

「んじゃ、時間潰さないとね〜」

 

 そうして俺は体育館の隅に居座り、時間が経つのを待とうと思ったが、流石に暇なので、学校探検してみようかと考える。

 

「……折角の機会だし色んな場所、見て回ろっかな!」

 

 出来るだけポジティブに、楽しもうとする者にしか楽しみは訪れないのである。

 

 

 


 

 

 

「定番のサボりスポット……屋上! ──っと、早速1人発見」

 

 普段行かない様な場所を巡りたい俺は早速まだ見ぬヒロインと出会ってしまった。

 彼女は漫画やアニメでよく見るパーカーの上からブレザーと言う着こなしで、屋上を囲む金網に背を預けている。顔は間違いなく美少女だが、暗い青のウルフカットと紫紺の瞳には隠しきれない気怠げな雰囲気を纏っているな。

 

『こんな所で、授業サボるとからしくないじゃん。アタシもだけどさ』

 

 ──彼女のルートに入った時の最初の言葉がこれだ。

 

 主人公の幼馴染ヒロイン、異村(ことむら)加々美(かがみ)。ヒロインどころか竿役含めて1番ヤバそうな異能力の持ち主だと思ってる。

 

 何せ、彼女の異能力は『手で影に触れるとその人の可能性の姿を呼び出す』と言う力。

 

 口で言っても分かりづらいかも知れないが、プラスマイナスどちらに傾くか分からない女神の泉で自由にガチャ出来る能力って感じだ。

 

 例えば今の俺に能力が使われた場合、誰かと結婚して母になった俺や、何かあって闇堕ちした俺が出てくるかも知れないと言う事。しかも当人にはそれを制御出来ない……影に触れたら無条件に異能力が発動してしまうのだ。

 

 その発動条件のせいで、俺の異能力でも防御が出来ない。が、呼び出される方の俺が同じ異能力を持っているので基本的には不発になるだろう。

 

 あ、言ってなかったがその可能性の姿が持つ異能力は据え置きだ。だから竿役だった子とかに触れて闇堕ちした姿を呼び出されたらその時点で世界の危機が始まる。……クソゲー過ぎんか。

 

 影に触れてしまえば、その人の嫌な一面もあっさりと明るみにしてしまう。そんなだから彼女は誰かと居るのを嫌い、ポケットに手を突っ込んでいつも屋上でぼっちを気取っている。彼女のルートではそんな彼女に久しぶりに幼馴染だった主人公が会う所から話は始まるんだが──

 

「──っ誰、アンタ!」

「……あれ? 時間動いてる」

 

 気付いたら、雲が流れていた。目の前には絶対零度の視線を向けてくる彼女が居る。

 

「誰と聞かれたら答えちゃうのがパンピー! 私は徒花班日って言うの。今は私服だけど、一応ここの生徒だから、宜しくね!」

「……名前なんて聞いてない。ここから出て行けって事!」

「そんなつれない事言わないでよ……ってこんな事前にも言った気が」

 

 ムイちゃんトコへ直行しても良い気がしたけど、なんとなく今話しておきたいと思った俺は、ちょっとだけ彼女にアプローチをかける事にした。

 

「ま、君が誰かは知ってるよ、異村加々美ちゃん! コトちゃんって呼んでも良いかな?」

「良い訳ないでしょ」

「所でコトちゃん」

「話聞いてなかったの?」

「不良の言う事は聞いちゃダメってお姉様が」

「私服で学校来てサボるアンタも大概じゃないの?」

「じゃ、お揃いって事で」

「もしかしなくても最初から会話する気ないでしょ」

 

 その目が不機嫌に吊り上がっていくが、俺は努めて気にせず話を続ける。

 

「それもお揃いだよね?」

「……何が言いたい訳」

「深く知らない、なのに知った気でいる。まるで今のパンピーみたいに」

 

 コトちゃんはその異能力の副作用的なものであらゆる『可能性』を不随意に観測出来てしまう。内的にしろ外的にしろ、そうなる可能性があると言う事は、そう言った要素の根っこもまたその人にあると言う事で、当人すら知り得ない事を知れる彼女はある意味でプレイヤー的な上位の視点を持てると言う存在だ。

 

「でもパンピーの可能性は見えないでしょ」

「……何で知ってるのかって聞くのも面倒臭くなってきた。でも可能性が見えないのは、偶然に決まってる」

「残念、パンピーが異能力を無効化する異能力者だからだよ」

「へぇ、そう」

 

 コトちゃんは冷静を装っていたけれど、一瞬目を見開いた事は分かる。俺の目は良いからな。

 

 彼女の前まで歩いて行き、徐にしゃがみ込む。

 

 俺の目線はスカートの中に向けられていた。

 

「……ふ〜ん、縞パンなんだ」

「っ! 変態!」

 

 そう言うと、慌てて身を屈めるコトちゃん。折角可愛らしい所もあるのに、見せないなんて勿体ない。

 

「パンピーは変態さんじゃないよ。ただ可愛らしいものとカッコいいものが好きなだけだから」

「どう言う言い訳なの、それ!」

 

 こちらを睨み付ける彼女の顔はやや赤い。基本的にダウナーなコトちゃんだけど、割りかしピュアだ。だから1人の竿役の運命が狂うんだけどね。

 

「もっと表情豊かになった方が、意中の子にも振り向いて貰えるかもねえ? ──あの異能力2つ持ちの男の子でしょ」

「……っ! 何でそれを!」

「普段コトちゃんが無意識の内にやっちゃってる事をパンピーもしてみただけ」

 

 困惑する彼女に俺は言う。

 

「本心を知られるのは、今日のパンツの柄を知られるより恥ずかしい事なんだよ。偶には真実の鏡越しに相手を見るんじゃなくて、手探りで相手を知ろうとしても良いんじゃないかな。そこで分かった気になったら、勿体ないでしょ?」

 

 授業終わりのチャイムが鳴る。そうして立ち上がった俺は、ショートパンツのボタンを外し、少しだけ前を開く。

 

「見ちゃったから、お返し。ふふふ、実はパンピーも縞パン派だったんだ」

「アンタ……やっぱり変態じゃないっ!」

 

 手で隠しても指の間から俺のパンピーを覗く姿、やはり彼女もムッツリスケベだ。まあオープンスケベはムイちゃんと俺くらいだけど。

 

「スケベ同士、仲良くしようね〜」

「もう二度と来ないで!」

 

 屋上のドアを開き、俺は別れた。さて、今日の本題だ。

 

 

 


 

 

 

「──で、私に何が聞きたい」

「今絶賛労働中のシロ君……在代刻(ありしろきざむ)君の事なんだけど」

 

 俺は今、体育館の倉庫の中、ムイちゃんと2人きりで会話していた。身体に張り付く汗ばんだ運動着が余計に危ない色香を放っているが、度々マンツーマンの()()()()を受けて来た俺からすると死の予兆の類義である為、別の意味で緊張する。

 

「ああ、ヤツの事か」

「ムイちゃんは、シロ君が今も働き詰めだって知ってるの?」

「……そうか。お前はあの静止した世界に入れるんだったな。一応、知ってはいる。度合いは分からないが。問い詰めてもいつも申し訳無さそうに逃げられていた」

 

 そう言う彼女の顔は珍しく自信を欠いている。俺は見て来た事を語る。

 

「やはり、そこまでヤツは自分を追い詰めていたか」

「あれ? 何か心当たりあるんだ」

「……ヤツは人一倍責任感の強い男だ。ああなって居るのは──」

 

 シロ君が急に動き出したのは、もしかして、もしかすると──。

 

「まさか、ヤッ君の事件のこと?」

「ああ、そうだ。時を止める力がありながら、かつての襲撃時犯人をみすみす逃してしまっていた事。助けるのが遅れてしまった事をヤツは心の底から悔いていた」

 

 かつてヤッ君が助け出された時。この前戦った人の身体を奪う異能力者は、抜け殻を残して逃げていた。それ故に死亡したものとして扱われていたが、俺達が戦った事でそれが明らかになってしまった。

 

「……私も、申し訳ない事をしたと思っている。特にお前には」

「うんうん、え? 何で?」

「その手を、汚させてしまったからだ」

「ん、ああ、彼女の事は事故みたいなものだったし、正直言って実感も無いし、パンピーは平気だよ?」

 

 俺はあの時、組織のトップである彼女を消す気でいたのは間違いない。

 あそこで逃せば碌な事は起きないと言う確信があったからだ。

 

 そんな俺の何気ない言葉を聞いたムイちゃんは苦い顔をして少し俯き、また顔を上げる。

 

「それなら良いが……『それ』には決して慣れるな。お前は少しどころではなく、命をやり取りするのに躊躇いが無さすぎる」

「あんな命懸けの試験とかやっちゃってそんな事言っちゃうんだ〜、へ〜」

「……あれはお前に自分の限界と危機管理を覚えさせるつもりでしたんだが、余り意味はなかった様だな」

「ちょっ、何を……へぶっ」

 

 そう言うとムイちゃんは、濡れた自分の胸元に俺の頭を片腕で引き寄せた。汗臭くはない……よく運動する人の汗は余り臭くないと聞いたが、そう言う事だろうか。

 

「私も、従兄弟(ダーリン)の様な若者が真っ直ぐに育つ世界を夢見ていたが……ままならないな」

「そう呼ぶのは正気を疑われるからやめた方が良いよ」

「従兄弟かお前の前でしか呼んでないぞ」

「タチ悪いなあ」

 

 まあ、ムイちゃんにも一応善性はある。訓練や試験と称して全力で叩き潰す頭のおかしい人ではあるが。そんな彼女がシロ君の事をそう表するのなら、信頼には足る。

 

 ……なら、尚更止めたい所だ。責任感で命削ってもらうなんて、ヤッ君は望まないだろう。

 

 ムイちゃんの胸から解放された俺は、学校の外まで送って貰った。

 

「やはり私はヤツの事を見られていなかった」

「そこはパンピーがその分言っておくから。ムイちゃんは普段通り接してあげれば良いんじゃない?」

「……そうだな」

 

 あの頑なさは責任感と使命感から。ならその重荷を退けられるのは誰だろうか。ヤッ君? いや、何言われたとしてもなんか余計に気負いそうだし、ムイちゃんからは逃げてる実績があるし──そもそも時間停止に耐性がないと、誰に合わせた所で逃げられる。

 

 そうなって来ると、今度もまた俺が一肌脱がないといけないのか。

 

 ただ逃がさないのなら、方法はもう一つある。みっきー君の力を借りれば、異能力だけ禁止する事も出来るだろう。多分良い雰囲気で終われない選択肢だろうが。

 

「いやいやいや! それは最終手段。まずはやれる所までやろう」

 

 それからまた時が止まったのは、その日の夜の事だった。

 

 

 


 

 

 

「……どこに居るんだろう、シロ君は」

 

 止まった時の中もすっかり見慣れたものだ。俺は夜の街を走り回っていた。

 また海の向こうとか言い出されたら手を付けられないが……基本的にシロ君はこの街を拠点としているらしく、探せば案外見つけられる。

 

 夜道故か、道中でちょっとした不審者が居たりするのを〆ながらも、探す事数時間。

 

 通り掛かった公園で、何かの音がした。恐らくは、声。

 

「──い」

「あっちから何か……」

「─らい」

 

 距離を詰めるごとに、その声は鮮明さを増す。

 

「──嫌い嫌い嫌い嫌い!」

「っ! 何を!」

 

 その姿は見慣れた姿だった。だが雰囲気はまるで違う。

 

 彼が振り上げた拳の先には、鈍く光る包丁。目の前には、今朝会ったコトちゃんが棒立ちになっていた。

 

「待って!」

 

 俺は咄嗟に2人の間に割り込んで、その包丁の刃を横から打ち抜いて弾き飛ばす。

 

「……っ、お姉ちゃん、誰」

「え? いや、パンピーちゃんだよ? 超絶美少女なパンピーを忘れちゃった?」

 

 彼の顔色はこの前よりは幾分か良くなっているが、その表情は溢れんばかりの怒気に満ちている。

 

「頭おかしい人なんだね。見た目もバカみたいだけど」

「……急にどうしたの? 人が変わったみたいに。まるで別人、だよね?」

「……そっか、お前も"お兄ちゃん"を虐めてるんだ」

 

 ──殺気が出てる。マジで殺す気かシロ君。……いや、シロ君かどうか怪しい気すらするが。

 

 その口調、立ち振る舞い、何から何まで別人。目の良い俺だから良く分かる。今目の前に立っているのは──

 

 そんな思考の隙を突くように、彼は一歩踏み出す。

 

「っと!?」

 

 だが、次の瞬間には彼は既に目と鼻の先に居た。その手に、さっき弾き飛ばした筈の包丁を握り締めて。

 

「あれ、外しちゃった」

「……容赦ないね」

 

 咄嗟に身を捻り、顔を目掛けてすっ飛んで来た致命の一撃を躱す。

 文字通りの間一髪。ひらり舞う毛の一本が視界を滑り落ちた。

 

 ──俺はまた距離を取る。

 

「いつの間に包丁を握り直してたのかなあ。もしかしてマジシャン? てじ◯ゃ〜にゃ、とか言ってみようよ」

「……次は外さない」

 

 ちょっとした冗談もいまは火に油を注ぐだけ。どうしようもない程に濃い殺意は実家の原風景を思い起こさせる。

 

「このネタ……古過ぎたかな」

 

 ──再び、彼の姿が残像を残して掻き消えた。

 

 あまりにも唐突な出会い。

 だが俺は()()()()()()()

 

「っ!」

「何で逃げるのさ! 死んでよ大人しく!」

こう言うのは(全方位攻撃)経験あるからね!」

 

 何で俺が今攻撃されてるのかさっぱりだが、その無邪気な邪気……いや怒気と殺気に溢れた彼の姿。やっぱり彼は──

 

「よっと! 名前とか! 教えて! 欲しいなっ!」

「っ……良いよ、どうせ直ぐに居なくなるし。──ボクの名前はムクロキザム。お兄ちゃんを虐める奴は許さない」

 

 多分彼の言うところのお兄ちゃんって……シロ君だよなあ。

 

「いや、虐めてなんかないんだけど……。でも、話し合う気が無いなら仕方ないよね。パンピーが気が済むまで付き合ったげるよ、クロ君!」

「……そんな事言って、後悔しないでよ」

 

 身を屈め彼の姿はまた消えた。恐らく『加速』したんだろう。俺が見たままに理解した事だが、そこに戦力差をひっくり返す程のアドバンテージはない。

 

 ……もしかして、あれ時間停止じゃなくて時間操作だったって事か。もう面倒臭さしか感じないんだけど。しかも間違いなく俺の1番苦手なタイプの異能力。

 

 俺の予測が正しければ──この戦い、ムイちゃんと戦った時の焼き直しになる。

 

「さあ、どうしようか」

 

 こうして、俺とクロ君だけの真夜中の戦いが始まった。

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