NTR系エロゲ世界を乙女ゲー世界に変えたTS転生者   作:ダイコンハム・レンコーン

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前話から1週間くらい間が開き過ぎたから前話のをひとつまみ……。

時の止まった世界の中で終わらない停学期間を過ごしていたパンピーは時間停止で疲労困憊の在代刻(ありしろきざむ)と遭遇する。しかし本人がワーカーホリック過ぎて(仕事が)やめられない止まらない。

それから少ししてパンピーは夜な夜な包丁を持った在代刻の中に居るもう1人、ムクロキザムが可能性の存在を呼び出せる異能力者のヒロインの1人異村加々美(ことむらかがみ)を襲おうとしていた所に武力介入、コレを阻止する。

時間停止で動かない異村加々美を連れて帰宅したパンピーだったが、家の外の声を辿るとそこには、インキュバスの力を持った異能力者兼竿役、陰島円華(かげしままどか)が時間停止下で動く姿があった──。

あらすじ、完。


アレとコレ

「はい、お菓子!」

「ありがとうございます。これ、手作りですか?」

「そう! こう見えてもパンピー、そこそこ女子力あるんだよ?」

 

 俺が今しがたマドっちに手渡したのは、手作りカップケーキ(女子力の塊)。こんな暇な時間には丁度良い趣味だった。腹の足しにもなるし、将来的にもプラスになる。

 

「まだ熱い……本当に時間が止まってるんですね」

「これでも暫くパンピーが持って冷やしてたんだけどね。本当の出来たてなら熱くて食べられないよ〜?」

 

 時間が止まってるおかげか、今もこのカップケーキは出来たてほやほやのしっとり食感だった。マドっちも遠慮がちながら、カップケーキをむぐもごと食べ進めている。こんな風に落ち着いて、動く人間を見られるのも数時間ぶりか。……あれ? 何かこの前から1週間と一日位経った気がするんだが、いや、気のせいか。

 

 まあ、課題は山盛り、次善の策はまるでナッシング。こんな状況じゃ頭の中が可笑しくなるのも無理はない。

 

「……所で、ソファーに置かれてるあの人は」

「大丈夫大丈夫、ちょっと素敵な置き物くらいに思っておいて。あ、お触りはダメだよ。パンピーもこれ解けたらあの子に土下座するつもりだし」

「は、はあ」

 

 コトちゃんは置き物そのもの、ソファーに横倒しの彼女にマドっちは前髪に隠れた表情を引き攣らせていたが、本心はどうだろうか。何せマドっちの異能力は──言わずもがな。

 

 ガッツリエロゲ世界に迎合した異能力の持ち主が、単にドン引くだけの筈もない。手を腰に置いてソワソワしている彼女に向かって言ってみた。

 

「身動き取れない女の子見て興奮しちゃった?」

 

 少しねっとりと、ぬるま湯をひた掛ける様に優しく投げた一言に、彼女は顔を紅くして、すぐ青褪めている。あらあら。

 今のコトちゃんはソファーに横になっているが、下はスカート。縞パンが見えちゃってる訳。年頃の子には刺激が強かったかしら。

 

 やや肉感的な太腿をぎゅっと閉じて後退りする彼女の動揺具合に少し笑ってしまったが、仕方ないだろう。これじゃまるで思春期の男の子だ。

 

「……っ! い、いきなり何ですか!?」

「アタリみたいだねえ。いやあ、健全健全!」

 

 笑ってマドっちの怒りを流した俺は、反応がすこぶる良いモノだからもう少しだけ彼女を弄りたくなってしまう。俺だって(元)男だ。可愛い女の子に興味を持たない訳もない。

 

「ねえ、いつから動けてたの?」

「それは──体感、1週間前くらいで」

「……じゃあ、溜まってるんじゃない?」

「溜まってる……って、な、何を」

 

 座った姿勢でそのまま下がるマドっちに、俺は女豹の様に近付いていく。犯罪的な光景だ、色々な意味で。そして彼女は、何かに気付いた様子で()()()()を抑える。まるで込み上がる何かを押し込めようとしている様だ。俺も男だから、分かるさ。

 

 彼女もまた失礼だが竿役だ。当然ある物はある。

 

 マドっちはある程度溜まり過ぎるとインキュバスの本能と言うものが露出し自我を失う。それによってギャル系ヒロインのメグっちゃんを襲ってしまうのだが……お人好しの彼女はそれを許し、それ所か()()のお手伝いと称してナチュラルにNTR(?)が始まる。ついでに主人公の霊圧も一瞬で消える。この作品では珍しく過去が暗過ぎないタイプの竿役ちゃんだ。

 

 だがなし崩しは良くない。一時の誤りと言ってしまえばそれまでだが、マドっちはそれを後々に引き摺ってしまう事になる。

 

「それをパンピーの口から言わせるなんて、マドっちやるね」

「っそんなつもりは──」

「……でも我慢は本当に身体に毒だよ。1人で出来るなら、1人でやれば良いけど、出来ないなら正直に言ってよね? パンピーだけなら良いけど、ここには抵抗出来ない状態の子も居るし」

 

 俺は上目遣いにマドっちの顔を仰ぐ。もし、彼女が完全に自我を失いそうになるのならそうなれば、少し手荒な真似をする事になる。

 

 異能力に溺れた者を陰で狩る事も徒花家の使命らしいけど、俺はそんなの御免だ。この前はなし崩し的にやっちゃったが。あんな上手く行くのが続く事も、小心者な俺にあんな事を続けられる気もしない。

 

 そしてマドっちについてだが、ラッキースケベ体質になるだけならまだ可愛げがあるが、今見た光景にそんな物はない。彼女の異能力の本質はタチの悪い幽霊(インキュバス)に取り憑かれた様なものだ。カラス除け──原作では終ぞ見ることは無かったが、マドっちの中に「何か」が居る様な描写もあった。

 

「パンピーはマドっちの異能力の事、よく分かんないけどさ。男の子の気持ちならそれなりに分かるつもりだよ」

「っ……つもりだけなら、幾らでも言えますよ」

 

 マドっちの気に触ったか、そのただでさえ幸薄そうな雰囲気に翳りが差す。まあ幾ら異能力がある世界だからって、性別が逆になる事なんてそうそう無いもんな。マドっちはしかも現在進行形でそうなりかけてる訳だし、理解されないと思っても仕方ない。

 

「でも今、マドっちの異能力で少し分かった事があるんだよね」

「何を、分かったんですか?」

「マドっち、君今落ち着いてるよね? 下も」

「──! 本当だ……」

 

 マドっちがスカートを触ると、さっきの盛り上がりは無くなっている。乙女がするには破廉恥な行為かもしれないが、それだけの驚きがあったのだろう。説明するならばあのマジカルなブツは本来マドっちにないモノ。異能力の産物だ。なら俺にそれが向けられた場合どうなるか。

 

「パンピーの異能力は、パンピーに向けられた異能力の無効化。マドっちが興奮しちゃっても、こっちが相手ならすぐ収まるって事だね」

「……いつもあんなに苦しかったのに」

 

 彼女の異能力は、とにかくエロだ。例え本人がどう考えて居ようとハプニングは起こるし興奮してしまう。それがどうしようもないと分かっていても、自分が情けなくなる時もある筈だ。

 

「思考がすっきりする。まるで暗くて長いトンネルから抜けたみたいに」

 

 そう言う時は、俺を思い出せば良い訳だ。まるで決して高めてはならない時に、母親の顔を思い出して鎮める様な感じで。なんてこった不名誉か名誉か分かんねえ。

 

「な、なら……四六時中徒花さんの事を考えていたら、いつもこんな風に──」

「いやいやいや! 怖いよそれはそれで!」

「……っ、ご、ごめんなさい! こんなの久しぶりで」

 

 そう言って彼女が立ち上がり頭を下げると、服のポケットからスマホがこぼれ落ちる。俺は咄嗟に腕を伸ばし、それを掴み取る。

 

「おっと、危なかったね……え?」

 

 だが、不用心にも彼女のスマホのロックは設定されていなかった。掴み取った拍子にスマホを点けてしまった俺の目に飛び込んで来たのは──官能的な描写に富んだ文字の羅列。俺の目が良過ぎたばかりに、あらゆるピンク色の情報が脳裏に焼き付く。これは単なる官能小説ではない、これは──

 

「──『時間停止モノ』じゃん!」

「……ぁぁああっ! こ、これは! 違うんです! さっきまでSF小説だと思って読んでたんです!」

「言い訳アクロバティック過ぎない?」

 

 確かに時間を操るなんてSFめいた話だが、これはサイエンス・フィクションでもすこし・ふしぎでもないだろう。せいぜい性欲・ファンタジーって所か。

 

 ……さっきまでマドっちはこんな物を読んでいた訳か。

 

 しかしマジモンの時間停止中に時間停止モノなんてまたタイミングが良いのやら悪いやら。まるでこれじゃ()()だろ。

 

 

 

 予習──ん? 待てよ。

 

「これ、マドっちが今動けてる理由……?」

「は、はい? 何を急に」

 

 俺のピンク色な淫乱脳細胞が限りなくあり得ない可能性を妄想する。

 

 あり得ない、だが異能力ってのは散々体感した通り破茶滅茶なもんだ。それに、彼女がインキュバスの異能力を持っていると言うだけで、その理由足り得るかもしれない。

 

 インキュバスと言う異能力には、正直言って訳の分からない所も多い。原作にはインキュバスっぽい事なら出来るかも程度の描き方をされてたが、それなら単純なラッキースケベや(存在が)マジカルなアレが生えるだけに留まりはしないだろう。

 

 淫魔と言えば、エッチ。──もしかしなくても、だ。マドっちはエッチな事に耐性があるんじゃないか、ってのが俺の今の考えだ。

 

 ただ、今はその理屈を完璧に証明する方法は無い。

 

「ねえ、マドっち。時間停止ってエッチだと思う?」

「何を急に!?」

「答えてよマドっち! エッチな物はエッチだって言って良いんだよ!?」

「どうして私が悪いみたいになってるんですか!」

 

 ただ、エッチには個人差がある。

 

『かわいそうなのは抜けない』と言う人がかわいそうな物を心の底からエッチだと思うだろうか。

 

『NTRとか頭おかしい』と言う人が、NTRモノで抜けるだろうか。

 

 だからこれは多分、その人がエッチだと思った事に対する耐性。

 

「……そう言うココロで見てたんだよね? さっきのを! 体感1週間前に!」

 

 急に詰め寄った俺にマドっちは顔を背ける。それでも理由が分かるだけでスッキリするもんだよ。

 

「それは、あの……ええ、はい」

 

 彼女は気まずそうに両方の人差し指の先と先を突き合わせる。なんと慎ましい事だろうか。あれ?

 

1. スケベしようや……と迫られる。

2. エッチなモノを見られ問い詰められる。

3.女の子はなし崩しに首を縦に振る。

 

 まるでNTRモノのヒロインではないだろうか……いや、今俺が竿役みたいなポジションになってないか? 別にメグっちゃんのヒロインを取ろうとなんてしてないんだからね!

 

 ……精神衛生上良くないから考えるのは辞めておこう。

 

 そして、さらに俺は一縷(いちる)の望みに縋るつもりで聞いてみた。

 

「じゃあ、()()()()モノは──」

「あんなの見れたものじゃないです。下品過ぎます!」

「クソォッ!」

 

 Hに上品もへったくれもねえだろうがっ……。

 いや、純愛は上品なのか? だがハードプレイの純愛は──頭がおかしくなりそうだ。そこ、もうとっくになってるとか言わない。

 

 ……いやいや、それは別に良い。今は彼女が時間停止下でも動ける理由が少し推測出来た事を喜ぼう。正直言って、俺1人じゃ殺し合いにでも持ち込まないとクロ君を止められる気がしなかったからな。それでも相討ちがギリだろうけど。

 

「こんな事をどうして聞いたんですか?」

「多分の話なんだけど、マドっちがエッチだと思った事に耐性があるんじゃないかなってさ」

「……どう言う発想ですか。その、えっち過ぎます」

「マドっち……それ君が言う?」

 

 ……でも今回の相手は、一応手加減する気があったらしいムイちゃん先生じゃなくて、人を()るのも厭わない似非ショタ君だ。覚悟もしていないマドっちを巻き込むのは、流石に不味いとは思ってる、が。

 

 俺はまだシロ君の事も、クロ君の事も何も知らない。

 

 このまま殺し合って終わらせるにはまだ何も。そんな終わり、鬱ゲーだけで充分だ。

 

「──そうだ。ねえマドっち」

「……次は何ですか」

「そう警戒しないでよ」

 

 はっきり言って、今思い付いた事にはリスクしかない。寧ろ全てを終わらせる可能性の方が高い気がする。けど確実に勝てる根拠が無いなら、俺はロマンに賭ける。

 

「このままだと、世界はほんの少しだけ悪い方向に進むかも知れないんだよね。女の子が1人死んで、もしかしたら1人の先生が手篭めにされる。パンピーの知る限りでは、ただそれだけ。それに何をしてもしなくても、状況はもっと悪くなるかも知れない」

「また変な事を──」

 

 Q:本人が話し合いムードじゃないなら。

 A:パラレルな本人から話を聞き出してやる。

 

 彼らが何者か、彼が何をしようとしているのか。そんな事の為に、彼女達の力を借りようとしている。無責任な奴だよ俺は全く。

 

「だからさ。この2人で、いや3人で! この世界、少しだけ良くしてみない?」

「──それは」

「バッドエンドなんて100ある内の1つで良いの! そればっかりだと辛いでしょ!」

 

 あんまりこんな経験、慣れたくもないんだが。その分こっちも命賭けるから許してほしい。我が儘でごめんな。

 

「……話を整理してください。訳が分かる様に」

「じゃ、ひとつ聞いてよ。無茶に無謀なパンピーのお話をさ」

 

 さて、いっちょ──やりますか。

 

 

 


 

 

 

「──どうしよっかなあ。お兄ちゃんを苦しめるヤツ、全員殺したらお兄ちゃん生きててくれるのかな」

 

 どこかの家の屋根の上に寝転んで見上げる月は消えかけていた。でも消えても無くならない、ボクらもこうだったら良かったのに。

 

「ねえ、お兄ちゃんはどうしたら止まってくれるの」

 

 お兄ちゃんの命は、今に消えかけてる。消えれば最後、戻らない。それは死ぬのと一緒だ。これ以上力を使うのなら、ボクはお兄ちゃんを守る為に何だってする。

 

 けど、お兄ちゃんにボクの声は届かない。身体を奪うのだって、本当はしたくなかった。人助けをする時のお兄ちゃんの顔は好きだったから。

 

『僕がやらないといけないんだ』

 

 でも、ある時を境に変わってしまった。どこかの違法な薬物工場で金髪の子を助けた日から。

 

 お兄ちゃんは、いつの間にか何かに追われる様に人助けをする様になった。……したい事が、しなくちゃいけない事に変わってた。

 

 ボクは、お兄ちゃんがそこに居れば良いと思ってた。その為なら、この力だって全部お兄ちゃんの為に使えれば良いと思ってた。けど、お兄ちゃんが消えちゃう位なら、他のものが消えてしまえばいい。

 

 でも、その先にボクが好きだったあの笑顔は無いんだよね。

 

「どうしたら良いのかな。ここまで何もしなかったボクが悪いのかな。だったら……全部ボクがどうにかしないと、いけないよね」

 

 ボクはずっとお兄ちゃんの温かな心の中で過ごして来た。ボクもお兄ちゃんが消えない様にただ加速の力を使い続けてた。

 

「……お兄ちゃんの邪魔はさせない」

 

 消えかけの月に、手を伸ばしてみる。時計の針を手で押し留めるように。

 

 そう出来れば、そうなれば良かったのに。

 

 全部、もう遅いって分かってるのに。

 

 ……何で、お兄ちゃんは皆を助けて来たのに、誰も助けに来ないの。だから、皆、皆嫌いだ。許さない。

 

「誰か──助けてよ。お兄ちゃんを」




こいつら全然女の子に矢印向いてねえな?
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