NTR系エロゲ世界を乙女ゲー世界に変えたTS転生者   作:ダイコンハム・レンコーン

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10万文字記念のオマケ、ラストです。短めです。


徒花と日常③

 どうせなら、格好いい力を持って生まれたかった。あのクラスのお嬢様みたいに金属を操ったり、()みたいにプラズマと引力を操ったり、先生みたいにテレポートを操ったり。

 

 ……僕に与えられたのは、『催眠』──目と目が合った相手を意のままに支配出来る力。ヒロイックなんて言葉には程遠い。

 別にヒーローなんて目指してないけど、それくらい望んだってバチ当たりじゃないだろう。

 

 ……なんて後ろ向きに生きて来た。それに後悔はしていないけど、最近は少し変わって来た事もある。

 

 僕は夕暮れが迫る学校の屋上にひとり。先生に頼まれて屋上の施錠をしに来たついでに、少し景色を眺めていた。

 

「眼鏡外したんだ」

 

 そこにまた1人、やって来た。

 

 長い赤髪が風に煽られ炎の様に揺らめく。彼女の名は……徒花班日だ。理不尽が服を着て歩いている様な存在である彼女の異能力は、『自らに向けられた異能力の無効化』。そのおかげで僕は彼女の目は見ることが出来る。見ているこちらが呑まれそうな、暗い赤の瞳は、他の人とは違って真っ直ぐに僕に向けられていた。

 

「少しは前を向かないと、と思いまして」

「へぇ、でも眼鏡無いと困ったりしない?」

「大丈夫です、度は入ってませんから」

「伊達だったんだ、へ〜。因みに視力は?」

「5.0です」

「はははっ、みっきー君も冗談なんて言うんだね」

「本気ですが」

「えっ……?」

 

 彼女に対しての第一印象は『変な人』だけだった。異能力と元来の性根の暗さが人を遠ざけ、いつしか独りが当たり前だった僕の前に、急に彼女は現れた。それからはどういう訳か、クラスカースト上位のお嬢様とも友好関係を持つに至っている。

 

「ま、まあ、それは置いといて。カナちゃんとはどう?」

「どう、と言われても。不定期に会話してる位ですが」

「それで良いんだよ。あの子、お嬢様な立場のせいで中々他の子と気楽にお話出来ないからねえ」

 

 不意に落ちた水のひと雫のように、僕の水面(せかい)を掻き回す彼女の事を、何ひとつ僕は知らない。

 

「どうして」

「ん?」

「どうして、徒花さんはそう他人に構えるんですか」

 

 誰かを気にして生きるのはエネルギーを消耗する生き方だ。それが出来る彼女は、確かにエネルギーに満ち溢れている。けれども、無限じゃない筈のそれをどこから絞り出すのか。彼女が何故動くのか、知りたかった。

 

 すると彼女は、頭を掻く仕草、悩んだ様子で少し間を空けて話し始める。

 

「それは、多分君のせいだよ」

「僕が……?」

 

 普段の快活さとは掛け離れた、憂いを帯びた表情。幼い子供に見まごう姿の彼女とのギャップが、よりそれを強調している。

 

「あんまりさ、頑張りたくない時があったりするでしょ。人って」

「僕からすれば、貴女はずっと全力に見えますけど」

「そうだねえ。でも君と出会った時は、ある意味破れかぶれだったから」

 

 そう言うと、彼女は制服のリボンを緩め、肩を晒して見せた。

 

 僕は一瞬硬直し、慌てて視線を逸らそうとしたけど、彼女の肩口にある深い傷跡を見てしまった。

 

「その傷、()()()()()()()()()?」

「古傷。昔色々あってさぁ。家出する兄貴を止めようとしたら、()()だよ? 酷くない?」

 

 そう語る彼女に恨み辛みの色は無く、どこか懐かしむようだった。僕は彼女の家の事なんて、ろくすっぽ知ってない。ただ、そんな家どうかしてるなんて答えを望んでいないのは分かる。

 

 まるで仕方なかったと諦めているみたいで、一言で言えば彼女()()()なかった。

 

「また徒花さんが何かしでかしたんじゃないんですか?」

 

 気付けば、煽る様な言葉が口から飛び出していた。そんなつもりは無かった筈なのに。

 

「そうかもねえ」

 

 いつもなら、あざとく怒る素振りを見せていそうな所が、どこか張り合いの無い返事。彼女の目はどこか遠くを見つめていた。

 

「そんな事があったからさ、最近までずっと頑張っても仕方ないって思ってたんだよね」

 

 そう言えばそうだ。初めて彼女と会った異能力審査試験、彼女のランクは

『Dマイナス』。異能力を無効化する、なんて受け身の異能力だからこそ、評価されなかったんだと思っていた。でも、それは違ったんじゃないか、今更ながらにそう思う。少なくとも、相手を選んで戦っていれば過去の試験でも一定の評価は得られた筈だ。

 

 それをしなかったのは、彼女が諦めていたから、か。

 

 でもそれは、将来を棒に振るかも知れない話だ。あの時、やや自暴自棄になりかけていた僕が思うのも何だけど。()()()()()()()()()でもなければ、僕ならそこまで振り切れない。

 

「……でもさ、あの時君が会場に居て。なんとなくほっとけないって思った」

「僕は徒花さんに、なんとなくで助けられた訳ですか」

「ああいや、別にそんなテキトーな話じゃないよ!?」

「いえ、それ位気楽にやってくれた方が良いんです。僕だって重く考えずに済みますから」

 

 ほっとけない。これが彼女の原動力の一つなのは間違いない。正義感だとか、義務感だとか、そういうものとは毛色が違う……変な話、親兄弟に向ける親愛の様なものにも感じる。初対面の彼女が僕に抱くには、少し的外れに思える感覚だけど、不思議としっくりくる。

 

「貶してる訳じゃないんですよ。でも徒花さんみたいにその『テキトー』な感覚で接してくれる人が居るのが、良い時もあるんです」

「そっか、それなら良かったかな」

 

 それが良いか悪いかは身も蓋も無い話、時と場合による。あの時の僕にはそれがハマったんだろう。

 

「で、ほっとけない君を見て、少し力になれないかなって」

 

 徒花さんにとってお兄さんの家出は忘れられない失敗だったんだろうと思う。あの彼女が諦めていたくらいに。その時、僕を見つけてしまった。彼女にとって僕の行く末は、コインの表と裏だったのかも知れない。

 

「……僕の勝ち負け、と言うよりは何かしらの変化を徒花さんは期待してたんですよね」

「凄いね、そこまで分かっちゃうんだ。もしかしてエスパー?」

 

 目を丸くして驚く彼女。少し出し抜けた様で気分が良い。

 

「違いますよ。少なくとも徒花さんは分かりやすい人ですから」

 

 同じくらい読めない人でもあるが。

 

「そ。君が変われたのなら、こっちも変えられる、変われる筈だって。今思えば、あの時──()()()()()()()()()()()んだよ。無責任だけどさ」

 

 自惚れじゃなければ、だ。諦めていた彼女が、それを忘れるほどの理由に会ったから、彼女は再起する事が出来た。という事になる。僕にはあまりピンとはこないけど、どれほど大きな理由だったんだろうな、僕は。

 

 隣の彼女の表情には、いつからか飄々とした薄い笑みが蘇っていた。

 

「だから、ありがとう。こうしてられるのも、君が居てくれたからだよ」

「正直なところ、お礼を言われる様な立場じゃないと思ってます。でも納得が必要なら、受け取りますよ」

「さっすが〜、理解のある彼君ってやつ?」

 

 変わる理由を誰かに求める。

 そんなのは良くある事だと僕は思う。一見すると超然として見える彼女もただの人だった。不思議と僕は安心していた。

 余りに出来過ぎた人は、却って人に距離を置かれてしまうから。誰にも関われない事の辛さは、分かっているつもりだ。

 

「……ふぅ、話したら少しお腹減っちゃった、これからどっかで何か食べてかない?」

「ふわっとしてますね。でも良いですよ、行きましょうか」

「けって〜い! じゃ、行こっか!」

 

 ぐいぐいと彼女に背中を押され、僕は屋上を後にする。

 

 ……願うならば、また彼女が諦めてしまう様な事が起きなければいいと思う。

 

 出会ってから日は浅いけれど、彼女は軽薄そうに見えて頑固なのは分かってきた。だからこそ、その心を折る出来事となれば相当なものになるだろう。そんな目に遭って欲しくはない。彼女は僕の恩人だから。

 

 何も起きなければそれで良い、何も起きなければ。

 

 ──ある日の一幕《肆》・完




みっきー君と出会ってなければ一生モブルートでした。というお話。

『終わらない春休み編(仮名)』は以上です。次章『蜃気楼の初恋編(仮名)』でお会いしましょう。ではでは。








NTRエロゲーの世界なので、パンピーを脳破壊してみたいなって思うんですがどうですか。

パンピーくんちゃんの好きな所は?

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