NTR系エロゲ世界を乙女ゲー世界に変えたTS転生者   作:ダイコンハム・レンコーン

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思った以上に伸びがあったので調子乗って続きを出しました。

戦闘描写は力量足りないから早めに流します。


変わる世界とキャラクター

 この世界の主要キャラクターは敵味方問わずインチキ染みた奴らだけだ。

 

 目の前で生徒の骨を粉砕しかねない攻撃を振り回す教師の屑こと朝霧無移(あさぎりむい)もまた同じ。

 対面すれば現実じゃ分からなかった事も嫌でも分かる。例えば……攻撃方法とか。

 

「どうした? 考え事か!」

「殺意キメて来ないでよ!」

 

 今も風切り音と共に耳元を警棒での突きが掠めた。何が怖いって見れば分かるけど、あの人、攻撃の予備動作が終わる直前にテレポートして来てるんだよ。

 ほら、また何もない所で脚を振り上げたかと思えば──。

 

「っ! テレポートしても、勢いは消えないとか。凄いねっ……!」

 

 俺が防御に構えた()()()()()が走る。普通、攻撃には攻撃に必要な威力を作る為の隙と、その威力をぶつけた後、元の体勢に戻す為の隙が必要になる。前隙、後隙とでも言おう。

 

 だけどこの人、それをテレポートを使って俺の間合いの外で完結させてるから、常に隙の無い攻撃が致命を与えようと飛んでくる。クソゲーも大概にしろ。

 

 右、左、下。蹴りからアッパーカットに足払い。真下の地面以外からならどこからでも攻撃が出来るし、上からの攻撃は予備動作をカットせずとも、俺と彼女の体格差プラス位置エネルギーで有効打を乱発出来るからタチが悪い。

 

 対して俺は、ちょっと実家でトチ狂った修行受けただけのほぼ無能力者。反射と読みだけで劣勢止まりにまでしか持ち込めない。

 

「久しぶりだな、ここまで保つ生徒(おもちゃ)と対峙したのは」

「邪悪な副音声聴こえてるよ!」

 

 彼女の足払いに、俺はその脚を踏み台にし跳躍し、膝蹴り。

 だが、そのカウンター気味の膝蹴りを以ってしても尚、彼女にとっては遅過ぎるらしい。

 

 ──やっぱり当たらない! 

 

 次の瞬間には彼女の姿は無い。

 けれど、ここで止まると手痛い反撃が来る。俺は身を捻って頭上に迫る踵落としを紙一重で回避した。

 

 すれ違いざま、彼女の獣の威嚇みたいな笑みが垣間見えた。さながら俺は喧しい兎とでも思っているのか。

 

「……楽しんでるね、ムイちゃん」

「そう見えるなら、そうなんだろうな」

 

 気分はクソラグ回線の相手と戦ってる気分。実際、見えない相手に攻撃し出したと思ったら自分のトコに一瞬で飛んでくるのは正にソレだ。回線弱者がよォ……。っといけない、前世の恨み節が出て来た。

 

 今は、目の前に集中、集中。

 

 集中したとしても、運ゲー極まってるのは否めない。四次元空間で戦ってる気分だ。人の形をした化け物に見えてきた。いや実際化け物か。

 

「行くぞ」

 

 彼女が走り出す。次来るのは、ラッシュか……精神削れそう。

 

 走りながらも当然、消えた彼女。俺は着ていたブレザーを脱いで振り回す。

 

「真横っ!」

「──そう言う方法もあるか」

 

 喧嘩殺法とある程度の基礎を織り交ぜた俺の()り方は良くも悪くも自由だ。服だろうが色仕掛けだろうが必要なら何でも使う。

 

 今だって、振り回すブレザーをレーダーに初撃を防いだ。

 

「もっと見せてみろ」

 

 が、彼女に絡みついたブレザーは容赦なく遠方にテレポートさせられた。取りには行けない、二度目は無い。シャツを脱ぐ余裕も無いし──いざと言う時は引き裂いてでも脱ぐか……流石にみっきーが寝てる間に負けましたじゃ締まらない。

 

 また、彼女が目の前から消える。微かに見えた足元、地面に影──上だ。

 

 彼女は上空に居た。警棒を地面に突き刺す体勢だ。俺は後ろにステップする。すると彼女は()()()()()()()()に再びテレポートし、上空から()()()()で降ってくる。回避すれば、また同じ事の繰り返し。

 

 ──何だ。レパートリーが切れたのか? 

 

 俺はそんな楽観的な考えに浸ろうとして、止めた。身体は冷静に回避を繰り返す。嫌な予感がする。

 

「ん、あれ……?」

 

()()()()()()()()()()()()? 

 

 そう感じた瞬間、嫌な予感は確信に変わった。高所から落ちる物は、場合によっては弾丸と同等の破壊力を持ち得る。そんな筈、いや……おい、嘘だろ。

 

 五月雨の様に降り注ぐ彼女の攻勢を捌くのだけでも一苦労だが。背筋を撫ぜる悪夢の予兆が気になって仕方ない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 原作では、そんな描写無かったよな──。いや、時間停止相手じゃそんな描写書く暇無え……クソッ、死んだら恨むぞライター。

 

 そして、いく十度目の落下を経た彼女の速度は、最早()()()()()()()()()程になっていた。俺もバックステップなんて悠長は出来ず、ただ走り逃げ回る状態。

 

 おかしいな……試験の筈なのに死が間近に迫ってる感覚がするぞ──。具体的にはゲーセンで対面相手が灰皿片手にこっちに来たみたいな。『あっ、死ぬ』とかそんな刹那の走馬灯だ。これで死んだら重大インシデントじゃないか、まあ、俺が死んでもまともに訴える親は居ない気がするけどな。

 

「試験終了だ」

 

 それは、死刑宣告にも似ている思い響きに感じた。

 

 頭上からその声が聞こえた次の瞬間──

 

 俺は()()()()()()()()()()()()

 

 

 


 

 

 

「安……ろ。……は致……には、……ない様に外して……」

 

 聞き慣れない女の声で、微かに意識が浮上した。薄く開いた瞼の中、見通した簡素な景色の中に赤と白が重なっていた。あれ、僕は試験の──……試験の最中じゃないか。

 

「負け……めるか?」

「容赦、無さすぎ……」

 

 その声と並んで、もう1人の声、徒花さんの声がした。そうだ、僕は気絶して、徒花さんが1人で──っ!? 

 

 霞んだ視界のピントが合ったその瞬間、僕は絶句した。その先には血で真っ赤に染まった、徒花さんが居たから。彼女は試験官を見上げながら、笑っていた。

 何があったのか分からない。けど徒花さんは僕が居ない間も試験を続けて、そうなった事くらいは判る。あんなになるまでやる必要なんか、ないだろうに。

 

「諦めないか。私の従兄弟(ダーリン)と同じ目だ」

「はひ……そりゃ、どうも、ね」

 

 警棒を捨てた試験官は膝を突く徒花さんの首に手を伸ばす。

 

「だってパンピーは、っ」

 

 何で、あの人は笑ってる──負け惜しみ、違う。楽しいから、違う。多分、彼女は負け戦が好きなタイプじゃない。短い間だったけど、あの自信家に、ただ負けを受け入れるって感じはしない。

 

 そうか……勝てるから。

 

「これが終わったら、補習だな」

「……っ! ……ぁっ!」

 

 今まで僕の力を頼る奴は、みんな自分の身を切る事もなく、ただ僕を利用するだけだった。

 

 真っ赤に染まる彼女の顔が、今度は青白くなっていく。

 

 彼女は違うのかもしれない。どんな言葉を並べても、彼らは僕に目を合わせなかった。けど彼女は僕の目を、真っ直ぐに見てくれたから。

 

 ああ、ここで終わったら、彼女に何も出来ずお別れだ。望んでた事だろう。

 

 今日会ったばかりの縁だって。失くしたっても、構わないだろう。なのに僕は、まだ彼女から目を逸らせない。見ようとしなかったのに、今だけは、彼女の目を見たかった。彼女が何を考えているのか、分からないまま、終わりたくなかったから。

 

 彼女がこれまでと一緒の連中なら、こんな事にはなってなかったろう。

 彼女がただの気狂いなら、僕は目を逸らし続けていたろう。

 彼女がただ善意の人間じゃないって言うのは、どっかで気付いてた。でも、そこにあるのは微かでも、善い想いだって事に気付いてしまったから。逃げられなかった。

 

 立ち上がる事も難しいくらいの脱力感。辛うじて上げた顔を、彼女が見ていた。僕と、目が合った。観るものを引き込む、螺旋の目に、射抜かれた。

 

 誰も居ない、僕だけの部屋に迷い込んで来た、見知らぬ人──僕を、信じてくれる? 

 

『し、ん、じ、る』

 

 彼女が開いた口が、そう見えたから。僕は決めた。もう一度、目を見てみようって……誰かの為に。自分の為に。

 

 彼女の目が、閉じていく。全部終わる前に、僕は言いたかった。

 

 

 

「──っ僕を、僕を見ろぉっ!!」

 慣れもしない、辿々しい叫びを。想いをぶつけた。

 

 誰に言った言葉か、教えたくはない。彼女にだって。

 

 

 

 そうして『虚空の魔女』が目を見開いて振り返り、試験がどうなったのかは──言うまでもないだろう。

 

 

 


 

 

 

「いやあ、助かっちゃったねみっきー君」

「別に、大した事はしてません」

 

 試験は無事終わった。いや俺は無事じゃないが? 何だよ致命傷にはならないよう外したとか。いや、出血多量って言葉ご存知? 

 

 そう言う訳で今、医務室の中からみっきー君の異能力で『虚空の魔女』は反省を促されていた。全身黒タイツでカボチャ被せてる訳じゃない。そうしてやりたい位だがみっきー君にターゲティングされても嫌だから、『(バカ)は生徒相手に暴行を働いた体罰教師です』ってプラカード掲げさせてセンター一周の刑で手を打った。

 

「でもあんなの、良いんですか?」

「……ちょっと後悔してる」

「やっぱり」

「『私はウェディングドレスを着て従兄弟に結婚を迫りました』とも書いておけば良かったかな」

「そっち? と言うか何ですかその情報、聞きたくなかったんですけど」

 

 そう、これこそ彼女の地雷。16になった主人公の家にウェディングドレスを着て直接テレポートして婚姻届を書かせようとしたと言う犯行現場の一部始終がムイちゃんルートの主人公の回想で語られている。ヒロイン辞めちまえ。

 

 勿論この事は誰も知らない、主人公とあの人以外は。俺が知ってるのはひとえに原作知識によるものだ。

 

 もし彼女が時間稼ぎの意図を察してしまいそうになったら、これを言って冷静さを奪う算段だったが……これ言ってたら俺ガチで死んでたな。口封じでね。流石に死ぬタイプのバッドエンドは原作にも無かったぞ。

 

 だが、彼女もこんな世界の住人らしく最後の詰めが甘かった。まるで最強の女騎士が最弱のゴブリンに不覚を取られる様に、最後の一瞬でひっくり返された。俺もなるたけ油断はしない方が良いな。この世界(エロゲ世界)に女として生きてるだけでデバフをかけられてるようなモンだし。

 

 催眠、時間停止、薬物精製、肉体改造、常識改変……etc。知ってる奴も知らない奴も、相手は山程居る。身内にも。やだもうこの世界。

 

 友人を助けるのも一苦労……でも。

 

「持つべきは友、だね」

「えっと、それって誰ですか」

「いや、君だけど」

「はあ、そうですか。……え?」

「え?」

 

 まあ、それもそうか。俺的には一戦共にすれば友達みたいな感覚だったが、そう言う人も居るか。

 

「勝手にパンピーが思ってただけ、か」

「いや、僕も、多分そう思ってますから」

 

 彼の言葉にびっくりして、その横面を見上げると目線が合う。プラスチックレンズの向こうの瞳は、少しだけ濁りが薄まっている気がする。心なしか、違うね。彼が一歩進んだ証拠だ。

 

「さっきより良い目してるね」

「そう、ですか」

「出来れば敬語も抜けたら良いんだけどね〜?」

「それは……おいおいでお願いします」

 

 それなら、頑張った甲斐もあるってもんよ。正直言って、原作の隠しルート解放に苦行こなしたレベルの疲労感だけど。

 

 まあ、休めば忘れるか。

 

 だから、ちょっとだけ……休もう。肩、借りさせてくれ。

 

「っ、徒花さん、何を……」

「──すぅ」

 

 今は、この達成感に浸って惰眠を貪りたい。だけ。

 

 

 


 

 

 

 医務室のベッドの上で、僕は呟いていた。

 

「僕達、勝ったんだ」

 

 今更に、そう実感するのは生徒手帳に表示されたランクが『Cプラス』を指しているからだろう。こうして肩に身体を預け、眠りこける彼女のおかげだ。彼女の長い赤髪が、自分の肌に触れていると気まずい感じがするけど、彼女を掴んで動かすのもハードルが高い。

 

 こんな所で、自分の対人経験の無さを恨めしく思うとは。我ながら情けない。

 

 所で、隣の彼女はどれくらいランクを上げたのか。僕はつい魔が差して、寝台の脇に置かれたキャビネットから、彼女の生徒手帳を拝借し、それを覗いてみた。

 

「えっ?」

 

()()を見た僕が、上ずった声を上げていたのは仕方ない事だったと思う。

 

『Dマイナス』

 

 確かに、僕と一緒に試験を乗り越えた彼女の生徒手帳には、最低ランクが表示されていたのだから。

 

「徒花さん、これ」

 

 そう言って身を捩った僕は、遅まきに気付いた、彼女が眠りの中にあった事に。支えるものがない徒花さんの身体がずり落ちて、重力によって地面に引き寄せられていく。

 

「っ、あ!」

 

 僕は咄嗟に彼女の身体を抱き込んで寝台の方へ倒れ込んだ。まるで、添い寝するみたいな体勢になり、僕は急いで離れようとした。が。

 

「徒花さん! 無事ですか!?」

 

 ──医務室に飛び込んで来た、神長倉さんの姿が視界の端に映る。

 

「……あ、貴方は──何を」

「違っ、これは徒花さんを──」

 

 神長倉さんの冷たい視線が、僕の脇腹に突き刺さる。

 

 分かってる、僕が完全に悪い。勇気を出して──諦めよう。

 

「申し訳、ありません」

「……破廉恥ですわぁっ!」

 

 芽吹きの春の入り口に立つ余寒の候。

 

 澄み切った空に、高らかに平手打ちの音が響き渡る。

 

 春先だと言うのに、紅葉を見るなんて──でも、不思議と悪い気持ちは無かった。

 

 それはきっと、変わり始めたから。

 

 僕も、世界も。




こんなタイトルと中身だから見るの躊躇してしまうかもだけど、それでも見てくれたアナタに感謝を。取り敢えずプロローグは完!
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