NTR系エロゲ世界を乙女ゲー世界に変えたTS転生者   作:ダイコンハム・レンコーン

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ヒロインと竿役がセットになってるから普段の2倍キャラクター考えないといけない事に気付いて頭爆発しました。


探し物と探し者

 こってりムイちゃんに絞られた俺が教室に入ると、空気が静まり返った。

 

 クラスメイトの視線が一気に集まって。でもそれも一瞬の事。喧騒はすぐに戻って来た。ただひそひそと俺の昨日の試験について語る声がちらほら聞こえる。

 

 そんな中、俺に向かって一直線に来るピンク髪の子が居た。

 

「朝霧先生倒したってマジ? 激ヤバじゃん!」

「……えっと、君は?」

 

 一応彼女の事は知ってはいたが、このタイミングで来るのか。

 

 気さくな態度、誰にでも友好的、そんな彼女の名は天原周(あまはらめぐる)。異能力は天候操作、自称世界一の晴&雨女、とプロフィールにはあった。隠しルートのヒロインだ。偶々同じクラスになったが、そう言えば話した事がない。キャラが被ってるからとか、そんな理由ではない。

 

「あーし室内戦ガチの苦手だからさあ……どやって勝ったの?」

「──粘り勝ちだねえ。もう二度とやりたくないし、次からは通用しないだろうけどさあ」

「マジで?! すっっっご!」

「ふふん、凄いでしょ! まあ、一番活躍してくれたのはペアの子でね、名前は──」

 

 そんな事を教室の入り口辺りで話していると、目の前の彼女の側に人影が寄って来た。陰のオーラを発するあの子は、また今日もメグっちゃんの方へ向かって……躓いた。

 

「──あっ!」

 

 ──まるで、()()()()()()()()だと言う様に、彼女へ向かって放物線を描くセーターに隠された豊満な身体。人影は彼女を巻き込み倒れていく。

 

 だが問題はない。何故かって? これが今現れたあの子の異能力の一部だからだ。

 

「てて……あ、()()()()じゃん、だいじょぶ?」

「ごっ、ごめんなさい! 私また──」

 

 現れたのは、おどおどとした態度のメカクレ巨乳文学少女、陰島円華(かげしままどか)。彼女の異能力、インキュバスの特性は、ありとあらゆる女の子にラッキースケベを誘発するというバカみたいな力がある。

 と言うか男所帯の竿役にこんな女の子隠しルートに用意するとかホント何考えてたんだ? まあ本気出したら()()()の生えるけどさぁ!

 

「あーしはだいじょぶ。ただ、こんなトコで胸揉まれるのは恥ずいかなぁ……って」

「ひぃぃぃっ! ごめんなさあッ!?」

「むぎゅっ?!」

 

 立ち上がろうとしたマドっちが足を滑らせ、今度はメグっちゃんの顔を重厚な胸部で包んでしまった。筋金入りのラッキースケベウーマンだなアレは。

 

「やっぱり2人は仲良いねえ。邪魔者はさよならしとくよ」

 

 薄情な俺は丁度いいタイミングだと思い、その場を離れる。

 

 正直言って、主人公が絡むからあのペアはNTRになるだけであって、なければ特に問題はない2人だと思う。と言うかあのルートはNTRと言うかBSSと言うか三角関係と言うか……ジャンル詐欺的な所あったし。

 

 そうして俺は窓際最後列の席に着く。それから誰かと話す事はない。カナちゃんにみっきー君は別のクラスだしな。昨日の試験の事根掘り葉掘り聞かれるのもしんどいし、休み時間は寝たフリしてやり過ごそう。慣れたもんだよ前世で。

 

 今日は平和だと良いなあ。何かヤな予感するけどさ。

 

「まいっか。おやすみぃ」

 

 

 

 

 

「……本当に平和だった」

 

 と、あっという間に6限目のチャイムが鳴ってしまった。何も無かったな。……後はホームルームだけか。

 

 起立、気を付け、礼。そうして教壇の上に立つ担任は気になる事を言った。

 

「明日、6限目が薬物乱用防止教室に変更になるわ。最近この辺りで、ちょっとした騒ぎがあったからって、教頭先生の提案よ」

 

 すると、教室が少しザワつく。授業が潰れたから、皆少しテンションが上がってるみたいだ。俺も普段なら少し喜ぶ所だが。

 

「薬物……かあ」

 

 こんな世界でも薬に手を出しちゃう人が居るなんて、まったく夢が無い。

 そして、丁度今朝会った彼の姿が頭の中を過ぎる。薬と彼に因果が無いと見る方が無理筋。何かあったなコレは。……原作にこんな話は無かった筈だし、取り敢えず頼れる友達に聞いてみるか。

 

 

 

 放課後の教室で、俺達3人は向き合って座る。

 呼んだらあっさりと来てくれたが、2人には俺以外の友達は居ないのだろうか。俺も同じだから親近感が湧かない事もないが、普通に心配だ。

 

「……って事があったんだけど、カナちゃんとみっきー君は何か知らない?」

「……そうですわね。確かお父様が、ここの近くにある廃工場で異常に攻撃的で、自我を失った人々が彷徨いているから近付くな、と仰っていました」

 

 おお、流石にお嬢様、そう言う危険地帯の情報の入手が早い。親御さんは行ってほしくないからそう言ったんだろうがな。

 

「みっきー君はどう?」

「どっかで怪しげな薬を取引する男の人を見かけたって、クラスの人が話していたんだけど。詳しくは分からない」

 

 ……十中八九、何か起きてる。あの見た目チャラ男君が絡んだ事件か? 俺もこんな事件知らないぞ。

 

「まさか」

 

 もしかしたらコレが、彼が主人公に救われたって奴か? 

 あの話、詳細は原作じゃボカされてたから分かんのだよ。何かしらの事件で疑われて、主人公が彼の無罪を信じ抜く。確かにエピソードとしては立派な好意の動機になる気がする。なら不味いぞこの状況は。

 

 原作知識のアドバンテージが活かせない。その上主人公が先に彼と会ったら大惨事になる。と言うか既に何が起きてもおかしくないんだ。まずどっちから探す。薬か、彼か。まだ見落としている事はないか。クソッ、考えるだけじゃキリがない。兎に角動かないと──

 

「班日さん、()()深入りしようとされてますわね?」

 

「たはは、気付いてた?」

 介入するしかないか、なんて考えていた所。付き合いの長い彼女には悟られていたようだ。

 

「また?」

 

 横で不思議そうにしているみっきー君には説明してあげよう。

 

「パンピーってさ、厄介事にすぐ首突っ込んじゃうタイプでね。こう、祭りだぁ! みたいな感じ?」

 

 カナちゃんと出会ったのも、わっしょいわっしょい神輿みたいに担がれて誘拐されかけてた所を助けたからだし。その後も別件で色々あったから、これは性分なのかも知れない。

 

「厄介事を祭りって……あの試験の時もそうですけど、やっぱりバトルジャンキーか何かなのかな。徒花さんは」

「だって、ろくに娯楽も無い所で育ったし〜、日々の中に楽しみを見つけないとね!」

「……どんな場所で育ったんですか」

「スパルタンの親戚みたいな所」

「過酷すぎません?」

 

 兎に角、俺はこの事件に一枚噛む事にした。どうしてもやらなきゃいけない理由を不本意ながら見つけてしまったからには。けど、事件がどのくらいの規模で起きるか分からん以上、2人の力もあるに越した事はない。

 

「パンピーは首突っ込んじゃうけど、2人はどう? 正直、力借りたいんだけどぉ……」

 

 俺は無理なら無理だってきっぱり諦めるタイプだが、見込みがあるなら最後まで賭けるタイプだ。ギャンブルとかやっちゃダメなタイプだし、ダメな奴にも靡くタイプだと心のどっかで自覚がある。首を突っ込める余地があると思ってしまった以上、余程のことがない限り引き返す気は無い。

 

 2人がダメなら例のネタ(ウェディングドレス)でムイちゃんを強請ってみるか……どうだろう、生きて帰れるかな。

 

「僕は行くよ。前の借りを返す機会だ」

「……先に言われてしまいましたわね。私も勿論行きますわ、友達の頼みですもの」

「ありがとう2人とも。……でも少しチョロいよ〜? 無理だって思ったらパンピーの言葉でも無理って言ってよ。言わなきゃ分からないからさ」

「チョロいって……いや、チョロいのか僕? 確かにそんな気が──」

「そう言う所を言われたのではないかしら。私もですが」

 

 カナちゃんとみっきー君、何だかんだと2人が関わる様になってしまったが、今のところ関係は良好らしい。医務室で出会った時に平手打ちしてしまったとカナちゃんから聞いた時はビビったが、彼は無自覚に笑っていたそうだ。……どうやら彼はMだったらしい。

 

「じゃあ、早速3人で人探しだね」

「人?」

「……ちょっと遊んでそうだけど実際はウブそうな男の人」

 

 彼のイメージは一見ビッチだけど実は純粋なタイプのギャルの男版だ。実際の所経験人数ではビッチと呼ばれてもおかしくはないレベルなんだが、それは酷な話だろう。

 

「それは知り合い?」

 

 若干喰い気味で聞いて来たみっきー君に俺はそのまんまを伝えた。

 

「いや、今日会ったばかりだね。裏路地で近道したら偶然会っちゃってさ」

 

 そう言うと、みっきー君の表情がやや強張る。コチラをチラチラ見てるのは心配からか。そこら辺のチンピラに負けるつもりはない、とは言えこの世界何でもアリだしな。分かるぜ、俺が周りの皆にいっつも感じてる気持ちだ。

 

「……大丈夫、だとは思いますけど」

「みっきー君、心配してくれてるんだ?」

「徒花さんも女の子なんですよ。あまりそう言う所は。……いえ、すいません。分かった様な口利いて」

 

 他人の心配出来るくらいの余裕が出来ているらしい彼の姿に、俺もニッコリ。

 

「ふ〜ん? 女の子かぁ。もしかしてパンピーの魅力に悩殺されちゃったり?」

「僕は単純に心配しただけです。試験みたいな事されたらこっちの心臓が保ちませんから」

 

 眼鏡をクイっと上げた彼と、意地悪に笑ってみせる俺。距離は順調に近付いてるな。この調子で彼が闇堕ちしなくなれば良いんだけど、人ってすぐには変わらんしな。寧ろすぐ変わってしまう人は自分の軸が無いかズタボロになってる危険な状態だろう。コレで良い。

 

「……おほん。お二人とも盛り上がるのは結構ですが、その人がどこに居るのか、当てはあるのですか?」

 

 そう言われ頭の熱がスッと冷めた。そう、そこが問題だ。

 

「さっきカナちゃんが言ってた廃工場に向かうのが良いかなって、パンピーは思うんだ。ちょっとした勘だけど。その人も何か関係してそうな気がするんだよねえ」

 

 彼の異能力には言及せず、俺は廃工場へ行く事を提案した。結局、他に情報は無いしな。

 

「それが一番でしょうね」

「……遊んでそうな、男」

 

 ……何だかみっきー君が考えてるけど、これ以外には無いだろうし迷っても仕方ない。危険は承知の上で突撃だ。

 

「じゃ、決まりだね」

 

 敵は廃工場にあり、と。

 

 

 


 

 

 

 オレの孤独は今に始まった事じゃねえ。

 昔も今もオレはずっと1人だった。

 物心付いた頃も、あそこに拾われた頃も、この国に来てからも。

 

 物心付いた時には、紛争地帯に程近い孤児院にオレは居た。この時のオレが一番無知で、自由だった。

 

 中でもオレと同い年だった赤茶の髪のそばかす女が居て、そいつは何かにつけて、1人で居るオレに説教臭く絡んできて、疲れたら勝手に離れて。よく分からない奴だった事は覚えてる。

 

「ねえ、皆と遊ばないの」

「行かねえ。オレなんかが居ても、冷めるだけだろ」

「そんな事ないよ? 皆で遊んだ方がきっと楽しいよ?」

 

 けどオレは、どうしても行きたくなかった。行けば最後、その輪を壊してしまう気がした。

 

「……なら、私と2人で遊ぶ?」

「何でそうなるんだよ」

「少しづつから始めれば良いのかなって」

 

 それでもしつこいアイツに、オレは面倒くさくなって一緒に過ごす様になった。

 

()()()()は、独りで居たかったから居たわけじゃないんでしょ? なら、やっぱり私達と居た方が良いよ!」

「……好きにしろよ」

 

 そんな時間は長くは続かないだろうとも思っていた。

 でも、その終わりは余りにも突然だった。

 

「……彼を引き取りたい?」

「ええ、是非とも我が家に迎え入れたいのです」

 

 オレは見た。朝早くに孤児院の園長と話し込む胡散臭い笑みを浮かべた女の姿を。それから程なくしてオレはその女の元へ引き取られた。

 

「ぅぅっ、げんぎ、でねっ! ルヴィンっ゛!」

「……汚え。泣くなよ」

「だっでぇっ!」

 

 アイツに泣いて縋られたオレは短くまたなと言って、孤児院を後にした。女がほくそ笑む姿にも気付かずに。

 

 

 

「ぁぁあああっ!?」

「因果な物よね。まさか私達が販売した麻薬の顧客から、薬物を生成出来る子が産まれるなんて……。早く気付けて良かったわあ」

「な、に。しやがっ、た!」

「貴方に打ち込んだのは、我が社の最新の麻薬。完全に入る前は苦痛を伴うけれど、一度ゾーンに入れば絶え間ない快感に抱かれて幸せになれるの」

 

 オレはヤツらのモルモットになった。そして、オレが孤児だった理由もそこで知った。

 

 オレは薬物を摂取していた母から生まれ、父がその異能力を見出し、そこで赤子のオレが無意識に作り出していた麻薬を売り捌いていたらしい。が、そこをナワバリにしていた連中の怒りを買って処刑されたとか。オレはそのゴタゴタの最中で孤児院に拾われたと。そして目の前の奴等はオレの消息をずっと探っていたとも教えられた。

 

 薬に負けている間のオレの記憶は飛び飛びで、穴あきのフィルムみたいな状態だった。だから、体感的には孤児院で居た時よりも短く感じるが、実際にはずっと長い時間を過ごしていた。

 

 ロクでもない連中だったが、逃げ出した所で、オレにはもう戻る場所もない。孤児院に戻れば、奴等は孤児院を潰してでもオレを奪いに来るだろうとも分かっていた。

 

 オレが居るだけで、多くの人間の人生が狂っていく。それを分かっても尚、オレは生きることにしがみついていた。今となっては分からない。ただあの時のオレは、生きていればまたアイツに会えるとでも思っていたのかも知れない。とんだ頭お花畑野郎だ。

 

 その再会が、望まないモノになるかも知れないってのに。

 

「もっと、ちょうだい……気持ちいいの」

「お前は……」

「最近貴方の事をコソコソと嗅ぎ回っているネズミがいたから、捕まえて幸せにしてあげたの。貴方の力でね」

 

 そこに居たのは、いくらか成長したアイツだった。だが目は虚で、腕には青い注射痕が無数にある。

 

「虹が見えるの! とっても綺麗な! でも消えちゃう、あははははっ!」

 

 ──全部、オレのせいだった。

 

 それから暫くして、アイツは死んだと聞かされた。部下の好きにさせたと言っていたが、それ以上は聞きたくもなかった。

 

 その頃から、オレは考えるのをやめた。

 

 流されるまま、道具の様に扱われてもただ従っていた。求められるまま、誰かの上で腰を振り、腰まで伸ばした金髪を振り乱して……まるで盛りのついた雌犬みたいに。

 

 いっそ死ねたら良いと思ったが、薬じゃどれだけ苦しくても死ねない。自分から死ぬ気すら失っていた。

 

 オレから近付けば必ずソイツは不幸になる。そうオレは理解した。

 

 だからオレは、誰にも近寄らない。近付けさせない。少しでも悪ぶって相手を突き放せば、それで何も問題はない。

 

 そうして抜け殻みたいな日々を過ごしている内に、気が付けばオレはあの地獄から抜け出していた。オレを引っ張り出したヤツらは、もう安心していいと言っていたが、違う。

 

 オレが狂わせた人生の数を考えれば、本当の地獄で苦しみ抜かないといけなかった。

 

 オレは苦しんで、苦しんで、そして惨めに死ねばいい。

 

 そう思っていたのに、死に損なって来た。情けねえ事にまだ死ねず、朝でも暗い裏路地で湿気ったタバコを咥えていた。

 

 

 

「あ〜ダル。私もちょっとフケたくってさ」

 

 そんな時、オレの隣に誰かが座って来やがった。そいつの背丈は、丁度孤児院の時のアイツくらいで。けど髪は真っ赤だし目は見慣れない模様が見えるしで、似ても似つかない。

 

 なのにオレは、コイツがタバコ……実際にはただの紙切れ……を吸おうとした時、怒声を吐き出してそれを止めた。

 初対面だってのに、コイツが()()()()()()に手を出すのを、オレは見たくねえって思った。

 

「君、あんまり自分虐めちゃダメだよ〜?」

 

 そしてコイツは、余計なお節介焼くだけ焼いてどっか行っちまった。何考えてんだかまるで分かんねえ奴だったが、不思議と苛立ちはすぐに(おさま)っていた。

 

 口の中を上書きする飴玉の味が、まだ舌に残っている。

 

 最期の晩餐にしたら、しょぼくれてるな。オレには似合いか。

 

 

 ……ここの近くで、薬物中毒者が出たって話を聞いた。その薬物は恐らく、オレから作られたモノだ。奴等の頭と残りカスが、まだ生きている。そしてこんな事件まで起こして奴等はオレを誘い出そうとしている。

 

 きっとオレはこの事件の参考人だとか容疑者だとかで既に追われているだろう。でも、捕まるわけにはいかねえ。オレが捕まれば奴等は見切りを付けて海外なりに逃げる筈だ。前にそうした様に。

 

 だからオレは、その前に奴等を見つけて殺す。

 

 そして影みたいについて回る因縁にケリを付けて……アイツの所へ行く。全部終わったって伝える為に。

 

 ──その為にもまずオレは、廃工場へ向かった。




因みに1話投稿時点でストック0なので基本不定期更新です。
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