NTR系エロゲ世界を乙女ゲー世界に変えたTS転生者   作:ダイコンハム・レンコーン

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なんかいつの間にか作品が伸びててすごいなと思いました(小並感)
皆、読んでくれてありがとうね!


チャラ男と俺

 夕焼けを背負い、俺達は走る。青春なんて柄じゃないが、この思い出もいつか時が経てばそう感じるだろうか。なんてらしくないノスタルジックに浸りながらも、俺は()()()()のつばを押さえながら2人の方を向く。

 

「じゃ、()が最後列で良いかな」

「はい、私が最初に入り幹島さんが周囲の警戒を、ですわね」

「2人の足手纏いにならないよう頑張るよ」

 

 ケープに色付き眼鏡を掛けたカナちゃんに、俺と同じ様にボロい帽子で顔を隠すみっきー君に、最期の確認をした所だ。

 

 今の俺は男の子用のジャケット、シャツ、ズボンに身を包み長い赤髪もキャップの中にしまった完全なる男装スタイルである。準備が良過ぎると2人には驚かれたが、昔はこう言う格好の方が落ち着いた時期もあったんだと言ったら、何か察された。厨二病とかじゃないからな断じて。

 

 あ、俺が何でこんな口調になってるかって言うと──

 

「工場の敷地に入ったら名前は呼ばないこと。後は顔を隠す事を忘れない様に。多分相手はロクな奴等じゃない、名前も顔も知られたら百害あって一利なし。引き返すなら今のうちに」

 

 そう、素性を隠す為である。これは今から対峙するかも知れない相手に対してでもあるし、騒ぎを起こす事になった時、学校側にバレない為の小細工だ。最も、カナちゃんは異能力が目立ち過ぎるからバレるリスクが高い。高いのだが……彼女にそう言うと──

 

『この力は盾であり剣、今のお二人に一番必要な力である筈。友の露払いも出来ずに、明日からの私は何を誇ろうと言うのですか?』

 

 こう言われたら仕方ない。元々俺が誘ったんだし、やっぱ付いて来ないでは通用しないでしょ。

 

 って事で3人で廃工場に乗り込む事になった。

 

 廃工場の敷地面積はそこそこ。かつて鉄鋼を製造していたと言うそこは巨大な窯やガスを排出する塔で高低差もかなりのもの。朽ちかけたキャットウォークが縦横無尽に張り巡らされたこの場所は映えスポットなんて言われてちょっと前に若者がやって来ていたんだが、今はもうガランとしている。確かに超巨大ジャングルジムみたいでワクワクするな。

 

 ただ、それくらい入り組んでるって事は悪いネズミ達がチューチュー集まって来やすい場所でもあるって事だ。

 

 もうじき日暮れ。夜中は襲撃する側には格好のタイミングになる。そもそも誰かいるのかすら分からない状況故に、使える手は思い付いたら使っていこうと決めた次第。

 

「じゃあ行こう。前、頼むよ」

「承知いたしましたわ」

 

 トンとカナちゃんの背を叩くと、頷き1つでずんずんと進み始める。夕闇に紛れ、放置されて伸び切った雑草の影をすり抜け、まず俺達は一番大きな建物の中へ向かう。

 

「……広いな」

「ですが所々風化して脆くなっていますわね。気を付けませんと手を切りますわ」

「誰もいないか。次行こう」

 

 時に取り残されたかのように古ぼけたコンベアにレール。錆が至る所に侵食していて、今にぶっ壊れそうな雰囲気だ。場合によっちゃ本当に壊れるかもだけど。

 

 ……しっかし、静かだな。戦力は軒並み向こうに回してんのかもな、とか言っちゃうくらい、誰の気配も無い。誘い込まれたか、あの噂は囮か。囮だったら誰に対してのって話になるんだが。

 

 スマホのカメラでクリアリングしながら進む事数十分。いよいよこの建物も調べ終わろうとしていた。

 

「残るは地下か。2人とも門限とかは大丈夫? まだ時間かかるけど」

「構いませんわ、元より最後まで付き添う覚悟です」

「こっちも一人暮らしだから、大丈夫」

 

 そうして、地下の扉を開くと何やら甘い香りが仄暗い下り階段の向こうから立ち込めてくる。芳香剤にしては、やや強めだ。多分、アタリだな。

 

 俺は階段をスマホのライトで照らす。

 

「足跡が行ったり来たり、ここで近い間に人の出入りがあったって事か」

「そう。俺達もそろそろ気合い入れないとヤバいかもね」

「なら……先に準備してしまいましょう」

 

 そう言うとカナちゃんは壁に手を付けると、その一部分を金属の棒と盾に変えてみっきー君に手渡す。俺は持てないからいつもと同じ空拳だ。どの道実家での訓練のせいで何か些細なものでも武器にすると殺しかねないし……異能力者に対抗する為の技だから基本的に殺意あり過ぎなくらいの技のレパートリーしてんだよね。

 姉も普通に銃とか使えるし。でも『刀と違って幅広の斬撃を()()()()()のが玉に瑕』とか言ってたけど、本当は異能力者じゃないの君、って言いたくなったよ。ワ◯ピースのマ◯モ頭かな? 

 

「ありがとう」

「それはあくまでも護身用。無理はなさらないでください。では私も──」

 

 次は彼女が自身の装備を作っていく。と言っても一瞬だ。

 

 彼女の身を白い鋼が包んでいく。何故か本編じゃなくミニゲームでしか出てこない本気モード、名前は確か白鉄無垢(しらがねむく)だっけか。見た目は完全にフルプレートの白騎士だ。地味に俺含めた3人の中で一番背が高いだけあって、見栄えもする。一見鈍重そうだが、寧ろ金属を操る錬金の応用で関節部の動きを加速させられる分、俊敏になっている。常時力を使う分疲れるらしいが……。

 

「でもやっぱカッコいいなあ」

「ふふ、お褒めいただき光栄ですわ」

 

 俺の呟きに、白騎士の兜が上下に揺れる。これで準備オーケー。さあ行こうか、地下へ。

 

 

 


 

 

 

 階段を降りると、扉が一つ。油を差していないのか、ギイと鳴る扉を抜けると、そこは広い空間を見下ろすキャットウォークの上だった。

 

 何に使われた空間かは皆目見当もつかない。ただ壁や地面には、何か抉り取ったような痕や傷跡が付いている。パッと思いつく所では、やはり戦闘の跡か。

 

「余り長居したくはありませんわね」

「え? お化け屋敷みたいでワクワクしない?」

「……図太過ぎませんか」

 

 そのままキャットウォークの先へ進むと、どこからか音がした。

 

 ──……カン。

 

 金属の打ち付け合う甲高い音。もしかしなくてもこれは──。

 

「誰か居る。急ごう」

 

 音のする通路の先へ向かうと、より一層その音の間隔も狭まっていく。カナちゃんが音を遮る扉を錬金で音もなくこじ開けると、そこには数人のガスマスクを被った全身を重装備で固めた何者かに囲まれた今朝のチャラ男君が居た。

 

「ッチ! 次から次へと! 鬱陶しいんだよ!」

 

 微かなライトに照らされた部屋で、彼はスタンバトンでそれらと応戦していた。

 

 向こうも捕縛を目的としているのか、銃でも刃物でもなく、スタンバトンを持っていた。なるほど、彼らから奪ったのか。原作ではそんな腕っ節描写されてなかったんだが、まあ色黒の金髪なら出来て当然だろう(偏見)。

 

「あの人が俺の探してた人だよ」

「あの囲まれてらっしゃる方ですわね」

「見た目、チャラいな」

「見た目で人を判断してはいけませんわよ?」

「……そうだね、ごめん」

 

 彼は関係者だが、事件を起こした奴等の協力者でもないって事か。なら助けに行かない道理はないよな! 

 

「先行く!」

 

 扉のあった暗がりから飛び出した俺はチャラ男君を飛び越え、その背後からスタンバトンを振りかぶったガスマスクに蹴りを叩き込んだ。

 

 そして振り返り一言。

 

「ごめん、待った?」

「誰だテメェ、そんな約束もしてねえよ!」

「つれない事言うなあ。あっ、今朝の飴玉、ちゃんと食べたかい?」

 

 彼の驚く顔が、持ち上げたキャップのつばの先に見える。ドッキリ大成功って所か。

 

「……まさかテメェは」

 

 俺に続いて飛び出したカナちゃんが、長く分厚い持ち手の付いた鉄板を振り回し、ガスマスク達を塵芥の様に吹き飛ばしていく。可憐な女騎士と言うか、もはや暴力装置だなアレ。アレで大砲やら銃やらまで作れるから、歩く武器庫と言っても差し支えない。

 

 それに比べれば俺達の戦いの地味さたるや。片やステゴロ、片や薬物。異能力なんて格好付けた呼び名には似つかわしくないアウトローさだ。

 

「俺達も地味にやっていこう、なっ!」

「おいケツ叩くなシバくぞコラァッ!」

 

 そう言いながら俺達は合わせた背中を離し、ガスマスク共に向かっていく。

 

「何だコイツらは!?」

「そんな事言ってる場合かい?」

 

 正面のガスマスク君の足元にスライディングで近付いた俺は、棒立ちの足を掬い上げひっくり返す。そのまま両足を脇に挟みジャイアントスイング。

 

「そ〜れっ!」

「クソッ! あの子供を殺せ──ヒュッェ!?」

 

 足を竦ませるガスマスク君達にそれを放り投げれば、次は孤立したガスマスク君に身長差を活かした頭突金的(ずつきんてき)。足をハの字に曲げて倒れた彼は残念ながらここで末代だ。

 

 この前は防戦一方だったが、本来はこう至近距離で暴れるのが俺のやり方。武器持ち相手なら何は兎も角懐に入る事が肝要だしな。徒花家の教えの一つにもある。

 

「何つう馬鹿力だよ……」

 

 そう背後から聞こえたチャラ男君の声に、俺はそうだろうと心の中で肯首する。自分でもそりゃそう思うさ、でもそうなってるんだから利用しない手はない。こんな小さな身体でもこんな膂力が出せるから昔々の化け物様々だ。今でも生きてる奴は居るが……のじゃろり妖狐とか言う鉄板ネタみたいなヒロインが。

 

「あ、そうだ」

 

 スタンバトンでの突きを躱し、伸び切った腕をアッパーでかち上げる。

 

「アババババッ!?」

 

 自らで肩にスタンバトンを当てて自分をスタンさせるガスマスクを尻目に、俺は何としても言わなければいけない事を思い出した。

 

「……君のタバコで生徒指導喰らったから、後でシッペ一回ね?」

「はぁっ?! こんな時に何を!」

「こんな時だから言うの!」

 

 咄嗟のあまりつい元の口調に戻ってしまったが、そう言わなければ彼は事が終われば逃げる気だったろう。逃す気は無いぞ。厄介な女に目をつけられた時は諦めるに限るって教えてやろう。ムイちゃんみたいなのは特におっかないんだ。

 

「とりあえず待っといてよ?」

「ッチ! うざってぇ奴だなテメェは!」

「それが取り柄なんだよね!」

 

 周りを見れば既にガスマスク君の多くは壁や天井から生えた鉄の輪で拘束されたり、気絶したり、催眠で同士討ちしたりで総崩れ。……思ったよりも練度が低い。こっちの2人がインチキ染みた異能力持ちなのもあるけど。いやに脆いな。態々全身防備でチャラ男君の異能力を対策してた割には苦戦してたようだし。

 

 ──後は消化試合だ。

 

 

 

 

 

「──とりあえず、君で最後っ!」

「があっ!?」

 

 最後の1人に飛び延髄蹴りをかまして締めた後、その場には静寂が漂っていた。こんな初対面だから仕方ないでしょ。だから俺が紹介しよう。

 

「これで終わりか。この口調も久しぶりだと慣れないなあ」

「……お前、男だったのか?」

 

 チャラ男君は訝しげな様子でこちらを見て来た。

 

 ……は? 俺は超絶美少女のパンピーちゃんだが。と一瞬暴に目覚めかけたが、この世界のヒロインに実は体型ロリキャラは居ない。主人公の妹ですら、そこそこスタイルが良い。だからきっと彼らにはこの慎ましい美が分からないのだろう。

 

 って事で彼の手を掴んで自分の平たい胸に当てさせる。

 

「どうだ? あるだろちょっとくらい」

「……何やってんだテメェ!? 変態か!!」

 

 俺にそんなセリフ言う方が悪いだろぉ? 挑発されたらつい喧嘩だって買いたくなるタチなんだよ。

 

「は、はしたないですわよ()()……っ!? んん!!」

「ごめん、ちょっとだけ黙ってて」

 

 催眠で口を閉じさせるとは、みっきー君ナイス。原作でも闇落ちしてから余り使わなかった異能力を応用交えながらバリバリ使いこなしてたし、そう言う所のセンスはかなりあるらしい。

 

「恥じらいは好きな相手にだけ見せる事にしてるからさ」

「だからって他人に恥じらいを捨ててんじゃねえよ」

「やっぱり痴女なんじゃ……」

「アレ? 思ったよりも貞操観念硬い感じ? 君達盛りのついたオスじゃなかったの!?」

「何意外みたいなリアクションしてんだよ!」

「僕も巻き添え喰らってない?」

 

 お前らオレ/僕を何だと思ってるんだ的な目線が2人から飛んで来たので、いい加減本題に入ろう。

 

「とりあえず、こんな場所はとっとと出よう。この人らに話を聞いた後でね。……大丈夫?」

 

 俺はみっきー君に目配せした。

 

「大丈夫」

「あぁ? テメェら何を──」

「ちょっとしたお話を、ね?」

 

 

 


 

 

 

「……先生経由で警察には連絡した。これで──じきにアイツらは取っ捕まっちゃうよ〜!」

「切り替えすげぇなオイ」

「見れば見るほど訳が分からないな、あの人は」

 

 廃工場を後にした俺達は、素顔を晒して彼と対面していた。

 

「聞きたい事はオレにもあるって感じか」

「そうだね。パンピーは君に色々と聞かないといけなくってさ。まず、君の名前とか」

 

 ここまで来たんだ。逃す気は毛頭ない。皆だってそうだろう。

 

「教えてくれないとシッペがコブラツイストにレベルアップするから」

「どうやんだよこの体格差で……。しゃあねえ、一応助けられたしな。オレの名前は矢崎(やさき)ルヴィン」

「じゃあヤッ君って呼ぶね? あっパンピーの名前は徒花班日、よろしくね!」

「好きにしろよ。どうせ拒否権なんて用意してないだろ」

「あの……失礼ですが」

 

 そう話している俺達の横から、カナちゃんが入ってくる。流石に原作ではみっきー君に手を差し伸べてただけあって、不良チックな見た目なんて気にせずコミニュケーションを取れるみたいだ。だからNTRたワケなんだが……善因善果なんてあったもんじゃねえのがNTRの世界だ。寧ろ善人の方がNTRされる率高いような──俺も天使顔負けの()()()だし? 気を付けないとな。

 

「矢崎さん、貴方の異能力は──」

「一度摂取した事のある薬物を自由に皮膚から薬液として精製出来る能力だ」

「……あのガスマスクが言うには、矢崎君を利用してもう一度組織を再建させるって話だったけど」

「つまり、ヤッ君を利用しようとしている連中をヤッ君は潰したい」

 

 ……最初は、主人公がヤッ君の無実を信じた、なんて考えてたが。これは多分、主人公が組織の壊滅に協力したって感じだな。とすればこれが正道の筈。

 

「パンピーは、その話乗っちゃおっかな!」

「徒花さん、そう言うのは警察とかに話した方が良いんじゃ」

「あのガスマスク君が言うには、まだ組織は再建してない。なら今のソイツらの強みは小規模で小回りが効く事。警察さん達に尻尾を掴まれたと思った瞬間、ソイツらは全部切り捨てて頭だけでも逃げ出すかも。だよね、ヤッ君?」

「……テメェ、随分と察しが良いんだな」

「そろそろテメェじゃなくてパンピーって呼んでも良いんだよ?」

 

 エロくもなんともない悪党がのさばるのは見ていて気分が良いもんじゃない。協力は惜しまないつもりさ。

 

 みっきー君が聞き出した所によると、彼女はここからまた離れた場所にある廃棄された地下鉄の駅に身を隠しているとか。早々に動かないと逃げられそうだな。

 

「……()()は、随分お気楽だな。こっちの気も知らないで」

「知られたくないんでしょ? なら知ろうとする方がアレじゃない?」

「っ、調子狂うぜ」

 

 それに、気になる事はまだある。

 

 あのガスマスクの下にあった人の姿──あの中に、()()()()()の人が何人か居た事。皆実家の事は何も言わなかったし、単なる偶然だと思いたいけど。

 

 ……何はともあれ、いち段落ついたし、今日の所はお家へ帰ろうか。って事で、皆とは解散。一応、自己紹介は皆済ませたし俺はヤッ君の携帯番号交換したから、後はスムーズに会えるだろう。

 

 そうして残ったのは、俺達2人。

 

 事が終わったので、マナーモードにしていた携帯を点けてみる。……あ、これは。

 

 

 

「じゃ、ヤッ君。今日は君の家に泊まるから」

「…………は?」

 

 いやさ、今携帯見たら着信履歴とメールの欄が姉一色に染まってたのよ。「遅いけど何かあったの」とか、「お姉ちゃんに言えない事でもあったの」とか、「お姉ちゃん、無視されるの寂しい」とか。普段とは似ても似つかない口調で心配してくれるのは良いけど、こんな妹どころか子供扱いされたら、将来俺が嫁入りしたりしたらどうなるか益々不安なんだけど。

 

 ちょっと家に帰るのが怖くなって来たから、ヤッ君の家に泊めてもらおう。

 

「だからお願い!」

「オイ色々省略してんじゃねえ、『だから』の前はなんなんだよ!」

「じゃないと警察さんに今の事バラしちゃうぞ〜っ?」

「お前さっき言った事忘れてんのかスカスカ頭!」

 

 ──そう言う訳で俺は、人生で初めてのお泊まり会をするのであった。




尚お姉様は押っ取り刀で街に飛び出し職質される模様。
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