NTR系エロゲ世界を乙女ゲー世界に変えたTS転生者   作:ダイコンハム・レンコーン

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勢いで書けるうちに書くスタイルなので粗を見つけたら優しく教えて下さいまし。


勝手と勝手

 この原作(フリスビー)がフリスビーたる所以は、どう考えてもジャンルが詐欺っている所にある。どんな賢者であっても純愛にNTRが混ざれば激昂するし、百合かと思えばTS女子×ふたなりだったりすればガンジーだって核のスイッチを連打するだろう。

 

 それ位ジャンルって言うものは重要視される。

 

 この世界はジャンルが事故っているとしか言いようがない。俺の()()竿()()のストーリーとか、NTRと言うか昼ドラ見てる気分だったぞ。

 

 

 

 

「この部屋から動くんじゃねえぞ」

「は〜い」

 

 と、今の俺は姉からの鬼電にビビり散らしヤッ君の家にお邪魔していた。勿論彼は快く引き受けてくれた。中指まで立ててくれたよ。お返しにシッペをプレゼントしたんだけど……これ暴力系ヒロインの挙動だよね。何となく彼女達の気持ちが分かった気がする。

 

「中々どうして、悪くないね」

 

 案外シックなカラーと家具で纏まった部屋は少し洒落ている。センスは悪くないみたいだ。

 

 そして年頃の男の子の部屋に入った女子がする事と言えばそう、物色──なんだが、地雷を掘り起こす可能性があるので今回は見送りだ。もっと仲良くなってからで良いだろう。

 

 流石に昨日今日で知り合った人間に部屋漁られたら好感度失くすっしょ。……あれ、これ乙女ゲーか? 

 

 大人しく待っておくのも良い女の条件だ。前世男だけど。対人関係狭かったから、すんなりこの生活にも慣れたよな。だって大体の性差なんて、社会的に決まった常識で成り立ってんだもん。社会経験薄いと、あんまり男女で考えを縛られる事も少ないのかね。

 

 さて。彼を取り巻く問題の全容は見えて来た。

 

 このまま行けば、ヤッ君は俺達の力を借りて自身を利用した組織を打倒するかもしれない。そうなった後が俺の一番危惧する所だ。一応エロゲ世界だから負けてヤク漬けENDにならないかってのも気を付けたい所だが、正直言ってその組織ってやつに余裕はないだろう。

 

 ……何と言うか、態々廃工場で足跡を残して誘い出したヤッ君に対してあの程度の練度しかない奴等を寄越した時点で『彼さえ手に入れれば、組織は再建出来る』みたいな考えが透けて見えてるんだよな。実際の所は他の競合組織に目をつけられて早々潰されるのがオチだろうに。

 

 もしこれがブラフで戦力を温存していたとしても1回目で全力出してヤッ君捕まえないのが意味わからんし。

 

 だから考えるべき問題は別のところ。

 

「……ヤッ君が誰かに惚れたら、か。どうすりゃ良いのやら」

 

 そんなそう遠くないかもしれない未来を考えても、やはり良い考えは思い浮かばない。俺の頭の出来がもうちょっと良ければな。

 

「オイ、カップラーメン出来たぞ」

「おっ、ありがとね〜! パンピーカップラーメン大好き!」

 

 別に好きになる事は悪くないが。その度合いが問題だ。カップラーメンが好きなのは別に構わないが、それ以外を受け入れないとなれば心身共に問題だろう。

 

「頂きます!」

「……いただきます」

 

 俺は1.5倍サイズと書かれたどデカいカップから、ラーメンをひと啜り。うん、めちゃくちゃ大味。

 

「……そういや、台所に見えたゴミ箱にカップラーメンの空が積み上がってたんだけど、もしかしなくても、偏食魔王でしょ」

「何か悪ぃかよ」

「身体に悪いよ。そうだね……これがぜ〜んぶ終わったら学校に来なよ」

「一丁前に説教か? そんなガキみたいな身体で」

 

 原作では主人公が三年生になって物語が開始した時に彼は学校に登校していた。今は登校してない。事件が終わったから、彼は学校に来るようになったんだろう。

 

「今ならなんと! 学校に来ればパンピーお手製お弁当まで付いてくる! って事ならどう?」

「はぁ、何で見ず知らずのオレにそこまですんだよ」

「もう、分かってないなあ。孤独を愛するのは趣味の範囲だから良いけど、孤独に縋ったら性格まで捻じ曲がっちゃうんだよ。今のヤッ君も大概なのに」

「お前喧嘩売ってんのか?」

「喧嘩で性根が直るなら売るよ、タダでも押し付けるから」

 

 ヤッ君はめちゃくちゃ嫌そうな顔をしていた。

 

 彼の人生にここまで押しの強い女子が居た事なんてそう無いだろうしな。NTRゲー世界のメイン級の女子は大体お淑やかとか清楚と言う名の若干頭がぽわっとしてる気弱女子か、一部強気だけど頭女騎士なヒロインだから成立してるのであって。

 と言うか大体のNTRってヒロインが強かだったら竿役が破滅不可避なんだよな。峰不○子みたいなヒロインに手を出したらケツの毛一本までむしり取られて終わりだろ。

 

「人は他の人の目で自分を作っていくんだよ。()()()()()()()()()()()、パンピーみたいな他人に慣れていってよ。パンピーなら幾らでも練習相手になったげるから!」

「本当に全部終わったら……考えてやるよ」

 

 そんな風に麺をズルズル啜りながら終えた会話は。ごく普通(?)のありきたり。今日の騒ぎの事なんか無かったような様子だ。こんな普通を出来るだけ長く続けられる様に、俺は今頑張ろうとしているんだと再認識する。

 

「もしさ」

「あ?」

「君に好きな人が出来たら、紹介してよね」

 

 ……今思ったが、彼が原作でハジけたのは男を好きになったからだと言うのもあるだろう。言い方は悪いが、もし女を好きでいられたなら、恋敵達に堂々と宣言出来たはずだ。だが男が女を恋敵とするには、あまりにも、壁がある。

 

「誰を好きになったとして、パンピーは応援するよ」

「馬鹿か、オレは今更誰に期待もしねえよ」

「……そっか」

 

 しがらみは目を覆いたくなるほどあって、足元は泥濘(ぬかるみ)。抜け出すには、誰であれ手が必要だ。言っておくが、正直言って主人公も、ヒロインも、竿役も、そんな嫌いじゃない。あの時間停止する生意気な似非ショタ以外は。

 

「なら、誰かに期待させられるよう努力するよ」

 

 だからせめてほんの少しでも助けになれりゃ、幸いかな。

 

「あ〜何か湿っぽくなっちゃった! お風呂借りて良い!?」

「……勝手にすれば良いだろ」

「じゃ、タオル借りるね!」

 

 俺はその場で男の子用の服を脱いで──っと。

 

「──お前」

 

 ああ……感覚が家の中だったわ。一人暮らしする前から脱衣所でも長居したくないって癖になってたんだ、これ。

 

「……ん? ヤッ君、何かあったかな」

 

 てか今トップレスでヤッ君の前に居るけど、何かラッキースケベって雰囲気じゃないな。何故? 

 

()()()、どうしたんだよ」

 

 ん、肩口から脇腹まで一本ある刀傷の事か。

 

「あ〜これ」

 

 ……確かにこれじゃ色気もクソもねえな。色々傷付く事はあっても、これだけ古傷になって残ってんだよなあ。おかげで水着もスク水タイプのしか着れないし。ワンチャンパイスラの跡って誤魔化せねえかな。いや無理か、だってパイ少ししかないもん。

 

「家出しようとした()()と喧嘩してぶった斬られちゃったんだよねえ」

「……お前の家どうなってんだよ」

「悪の怪物から人々を守る家、かな?」

「なんだよそれ。何から何まで訳わかんねえ」

「じゃ、お風呂行ってくるね〜」

 

 そうして俺は、長い赤髪を小さく纏めながらお風呂へ向かう。

 

 ったく、実家だとあんまりにも戦いに明け暮れてたせいで、男女の性差もどうでも良くなってたって今更ながらに気付いたぞ。我ながら鈍いな。あんな生活してりゃ姉も嫌気が差して出奔するのも当然か。俺の世界ではそんな事してないけど。

 

 ──はあ、久しぶりに風呂掃除しなくて良い風呂だあ。ちょっとテンション上がるなあ。

 

 

 


 

 

 

 班日(コイツ)、つくづく訳が分からねえ。

 

 無理矢理家に来たと思えば、大人しく何もしなかったり、と思えば飯時にはうるさいくらいに喋り出すし……まるでオレの堪忍袋の緒で反復横跳びされてる気分だ。

 

 ……そうなりゃ嫌でも分かる。コイツがオレとの距離をなんとか測ろうとしてる事くらいは。無神経なフリして神経質なヤツだな。

 

 間違いなく、部屋を漁られていたらオレは家からコイツを叩き出してただろうな。偶然なんかじゃない、分かっててやってやがる。

 

 そんなコイツの目が気に入らない。まるでオレをオレより知ってるみたいな態度と口振りで。

 力はある。見た目はちんちくりんで伸び代はないだろう。それ以外オレはコイツの事をまるで知らない。

 

 あの傷だってそうだ。

 

 コイツはどこからともなく現れて、オレの背負うもん全部掠めとろうとしている盗人だ。そのくせ自分からは何も残そうとしない。いや、残そうってフリだけは一丁前にしてるが、決定的なモンは何一つない。消え物ばかりで実がねえ。

 

 大事なモンは全部自分で持って(抱えて)る。だからこそ好き勝手してるんだ。最低最悪ってのはコイツの為にある言葉か。

 

「……ムカつくぜ」

 

 あの得意げな顔をぶち壊したい。そんな思いが込み上げてくる。澄ました表情が慌てふためく様子が見れたらどれだけ胸のすく思いだろうか。

 

 コイツは何も悪い事してねえ。んな訳ねえ。勝手に首突っ込んで、勝手に家まで来て、勝手に風呂入って……何でオレがこんな勝手なヤツに気を遣わねえといけねえんだ。

 

 オレの場所、オレの時間、全部オレが好きに……

 

 ()()()()()()()

 

 そりゃ、そうか。今までそんな事、()()()()()()()()()。今のオレは、自由だった筈なのに。

 

「そうだ、ここはオレの城なんだ。オレだけが勝手にすりゃ良いだろ」

 

 ──この時のオレは、どうかしてた。

 

「風呂に入る時間くらい」

 

 そう言ってオレは脱衣所に服を脱ぎ散らし浴場の戸を開く。

 

「……ちょ、え?」

 

 浴槽に浸かるコイツが居た。口を半開きにして、唖然としたコイツが。良い間抜け顔だ。少しはすっきりした。

 

「出たけりゃさっさと出ろ。風呂入ってんなら身体くらい洗ってんだろ」

「は、はい? もしかして浴場だけに欲情……はしてないね、うん」

「どこ見て言ってんだ。風呂入ってんのに寒い事言いやがって」

 

 オレは入って早々シャンプーをガシャガシャと手に取って頭を洗う。

 

「……意外に筋肉あるね」

「それなりに鍛えてたからな」

 

 目を瞑っていてもコイツの視線を感じる。

 まだ入ってる気か、コイツ。そう時間も掛からず洗い終えたオレは、頭を流す為にシャワーを手探りで探す。

 

 そして手に掠めた細いモノを掴む。が、生温かい。

 

「ちょっ、それパンピーの腕だよ!」

 

 そう言われてオレは直ぐに手を離す。何やってんだコイツ。

 

「紛らわしいなオイ」

「あ〜折角シャワー取ってあげようと思ったのに」

「何から何までやろうとすんじゃねえ。オレがやるんだよ」

 

 じゃぷん、と何かが沈む音がする。湯船から身を乗り出してまでお節介しようとしてたのかよコイツ。身体隠す気も女の自覚も無えのか。

 

「パンピーに失礼な事考えてない?」

「悪いな、それしか考えてねえ」

「はぁ〜?」

「ガキは黙って肩まで浸かって20秒数えとけ」

「後で覚えてなよヤッ君……」

 

 軽く湯に浸したタオルにボディソープを垂らし、体を洗っていく。折角の風呂だが、他人の目があるとまるで落ち着かねえ。そう言えば、孤児院の頃は金もねえから、男女お構いなしに一緒に入ったもんだな。その頃を思い出す。

 

「今度こそ……へぶっ!」

「だから自分でやるっつってんだろ」

 

 邪魔者にタオルを投げつけ、体を流したオレはそのまま浴槽に入る。

 

「え、嘘でしょ」

 

 こんなガキ体型1人居た所で何もねえ。

 入れば浴槽の湯が溢れ出す。風呂泥棒と対面で座ったオレは脚を伸ばす。

 

「邪魔なんだけど、も〜!」

「勝手に人を脅して入った風呂だろ、これくらい受け入れろよ」

「うぎぎ、それ言われたら何も言えないよねぇ……っ」

 

 目を瞑り、湯に浸る。喧しい声がノイズだ。

 

「だったら、君が諦めるまで出ないから」

「はぁ?」

「君が諦めた後でパンピーは悠々と風呂を満喫するから!」

「……」

「そんな憐れんだ目で見ないでよ!」

 

 コイツ、見た目どころか中身までガキなのか? いや、性格は間違いなくガキのそれだな。

 

「ん、お前オレの脚にケツ乗せてんじゃねえよ」

「だって脚伸ばされたらそうなるでしょ? それともパンピーのお尻によからぬ事でも考えちゃったのかなあ。さっきまでガキガキメスガキ言ってた癖に?」

「メスガキとは言ってねえよ。……でもお前がその気なら、良いぜ、分からせてやるよ」

 

 柄にもねえ挑発で、こんな下らない勝負に乗っかって。ああ、下らねえ。笑っちまうくらいに下らねえ。

 

 ……いつ振りだろうな、そんなの。

 

 

 


 

 

 

「うぅ、気持ち悪いよぉ」

 

 で、コイツは負けた。当たり前だ。コイツの方が先に入ってた上に、体格も違う。湯あたりするのはどっちかなんて目に見えてた。

 

 顔真っ赤にして湯船に倒れてたのを見た時は、ほんの少し焦ったが、風呂から出ればこの調子だ。丈夫だなコイツ。

 

「バッカじゃねえの」

「だってぇ、生意気な男の子は分からせないといけないって思ったからぁ……」

「頭おかしくなってんじゃねえか。いや、今朝からこんな感じか」

 

 オレはコイツをソファーの上に運び、1人ベランダに出る。癖で弄ろうとしたポケットの中に、タバコは無い。

 

「っ、忘れてたな。クソ」

 

 ……いつも欠かさずやって居た事だったろうに。そんな事も忘れてしまうくらい、今日は色々とあった。

 朝からコイツに絡まれ、夕暮れにはまたコイツに助けられ、夜にはコイツに家まで押しかけられ。考えてみれば主にコイツのせいだな。

 

 たった1日なのに、もう随分と長く過ごした気すらする。あの地獄から出てからこれまで、それくらい何も無かったんだな、オレ。

 ……認めるのは癪だが、()()()の考えは正しかったらしい。独りより、誰かと居る方がマシだってな。

 

「だから、オレは」

 

 何をしてでもアレを始末する。もう誰も独りにならない様に。

 

 ソファーの背もたれに顔を向け黙ってるコイツは寝てるんだろうか。なら都合が良い。オレはその隣を抜ける。そして黒革のライダースーツを着込み、玄関を出た。

 

「……行くか」

 

 停めてあるバイクに跨り、鍵を回しエンジンを唸らせる。レバーを握り、左のペダルを押し下げる。

 

 アクセルを捻り、レバーを握る手を開いていく。別れが惜しいなんて、あの時以来か。

 

 最後に、まだコイツが眠ってるだろう家を見る。

 

徒花班日(あだばなはんぴ)。悪くねえ夢だった」

 

 これがオレの勝手だ。レバーを完全に開き、アクセルを入れる。

 

 

 


 

 

 

 ──やっぱり行ったか。まあ、俺ならそうするけどな。

 

 1人カッコつけるなんて水臭い。こうしてお泊まり会までやったんだ。俺とヤッ君はもう友達だろ。止めたかったが、止めたら止めたで面倒な事になりそうだったからな。寝たふりしてる間に出て行くとか、どこの歌謡曲だ。

 

「こんな夜中に、電話繋がるかなあ」

 

 保険は掛けるだけ掛けておく。最悪一人で頑張るけどさ。

 

 さあ、また犯罪行為に手を染めないと。

 

 だって……移動の脚が無いから。

 

 

 

「──チャリ泥棒が追ってくるんじゃ締まらないなもう! ごめんなさいそこ退いて!」

 

 チリンチリンと音を鳴らして風になる俺は、立派な前科者となるのだろう。第一ヤッ君がバイク乗る描写なんて原作には無かったんだよこのヤローッ! 家に来た時立派なバイクが停まってて嫌な予感はしてたんだ。

 

 だから腕力で盗難防止用チェーン破壊して、子供用のチャリ盗んで今に至る訳。

 

「また、またムイちゃんにシバかれる……くそう」

 

 考え無しとはこの事だ。今の俺、竿役ばりのアウトローなんだが? 牢屋ってどんな感じなんだろ……。新聞に載っちゃうのか。ああ、姉になんて言えば……下手するとヤッ君の手足が無くなる……! 

 

「やぁぁっ! 全部終わったら、今度はシッペ一回じゃ済まさないからね!」

 

 ──俺は体を起こし、より一層勢い付けてチャリで夜道を爆走する。

 

 

 

 ……ムイちゃんと姉が仁王立つ明日に、怯えながら。




追記:よくよく考えたらこの主人公アク強すぎる気がして来た……。
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